心の底から「頼みます」という心持ちでいるだろうか。社員に対して、深い感謝と慰労の気持ちを根底にもっているだろうか。
松下事業の発展段階が進むにつれて、経営者はその心根を命令調から依頼調、感謝調へと変えていくことが大切やと思うんです。
どういうことかというと、十人とか百人ぐらいの部下を使っているときは、経営者は率先垂範というような態度で「これをやってくれ、あれをやってくれ」という命令で事が足りるし、それで業績もあがると思います。
しかし、千人、二千人になったら、そういう命令調だけでは人は動かないと思うんです。動いても、感激して動くんやないでしょう。
言葉や態度は同じでも、自分の心の底からは命令調をなくさなければいけません。
「こうしてください。ああしてください。頼みます」という心根が必要やと思うんです。
そういう心根をもっていれば、言動は一緒でも、その響きが違ってきますから、相手もそれに感じて動いてくれると思いますな。
それがさらに、一万人とか五万人というようになれば、言葉は同じでも、心根は〝拝む心〟というほどになることが大切やという感じがします。
そういう心根をもたずして、「自分は社長だから、自分は偉いのだから命令しているのだ」ということでは、一万人という人はおそらく動かないでしょう。
「この仕事は自分一人ではできない。知識も要る。技術も要る。そういうものはみな部下がもっている。その人たちが動いてくれて、初めて仕事ができるのだ」というような心持ち、そしてまた部下の人たちが仕事をしてくれることへの深い感謝と慰労の気持ち、そういうものが根底になくてはならないと思うんです。
私自身は、会社が大きくなり、人が増えてくるにつれて、そういうことを心がけてきましたし、同時に、事業部長やとか、関係会社の社長といった立場の人に、私と同じようにそういう心根で仕事をしてくれるよう訴えてきました。
そして、実際にそのような心持ちでやっている人は、みなある程度成功しているように思うんですが、いかがでしょうか。
〔一九八〇〕
出典一覧(掲載順)本書は、『松下幸之助発言集〈全45巻〉』(PHP研究所、一九九一年~一九九三年刊)、『松下幸之助の経営問答』(PHP研究所、二〇〇〇年七月刊、二〇〇五年四月文庫化)に収録されたものの中から、現代の経営リーダーの方々の参考に資すると思われる内容を厳選し、見出し・要約文等の新たな補足・修正作業を行なって編集したものである。
初出誌・メディア等については、左記に明記した(企業名は当時のもの)。
なお、◇をうった項は『松下幸之助発言集』のみに、◆の項は、『松下幸之助の経営問答』のみに、の項は双方に収録されている。
序にかえてP1『語り継ぐ松下経営』(橋荒太郎著)一九八三年十月発刊P2同掲書P5YPO(青年社長会)日本支部例会一九六四年四月八日P8◇住友五社会合同講演会一九六九年十月十三日~章1◆サロン・ド・関西講演会一九七八年八月二十二日2『サンケイ新聞』一九七七年一月一日3◆第一回住友講演会一九六二年三月二十日4『30億』一九七六年七月号5松下電器第十三回経営研究会一九六五年三月二十二日6『Voice』一九七八年十二月号7第八回軽井沢トップ・マネジメント・セミナー一九六五年七月十三日8『週刊ダイヤモンド』一九六九年五月十九日号9『30億』一九七六年九月号10『サンケイ新聞』一九七六年一月一日11『サンケイ新聞』一九七六年五月七日12◆全国全商連近畿地区協議会講演会一九六四年八月二十五日13◇機械記者クラブ懇談会一九六一年三月十四日14◇経団連記者クラブ記者会見一九六二年五月二十四日15◇経済同友会東西会講演会一九六七年十二月七日16『フォト』一九六一年八月十五日号17『Voice』一九八〇年二月号18日本銀行管理者研修一九六七年十一月二十九日19日本青年会議所ゼミナール一九六三年八月二十一日20◇久保田鉄工販売研修会一九六二年五月十日21NHK教育テレビ「これからの中小企業」一九六八年七月二十九日放映22『30億』一九七六年三月号23『活性』二十一号一九七八年十一月発行24◇経済同友会東西会講演会一九六七年十二月七日25住友信託銀行幹部研修会一九六四年十一月二十八日26◇第九回関西財界セミナー一九七一年二月三日27◆第六回軽井沢トップ・マネジメント・セミナー一九六三年七月十五日28◆『日米・経営者の発想』一九八〇年一月発刊29日本生産性本部第八回生産性労働問題懇談会一九七一年三月十六日30大阪市工業会連合会青年経営研究会創立五周年記念講演会一九六七年十一月十四日31◇東海銀行経営相談所経営講演会一九六三年十一月八日32NHK総合テレビ「視点『私の危機脱出論』」一九七八年四月三十日放映33日本青年会議所ゼミナール一九六三年八月二十一日34『サンケイ新聞』一九七六年五月十三日35『サンケイ新聞』一九七六年一月一日36『30億』一九七六年二月号37◇NHK総合テレビ「この人と語ろう」一九七六年三月十五日放映38第六回住友講演会一九六三年二月二十一日39日本青年会議所ゼミナール一九六三年八月二十一日
40◇『週刊東洋経済』一九七九年十一月十七日号41『30億』一九七六年四月号42◆『日米・経営者の発想』一九八〇年一月発刊
社長になる人に知っておいてほしいこと述者:松下幸之助編者:PHP総合研究所PHPInstitute,Inc.電子書籍化にあたり、『社長になる人に知っておいてほしいこと』二〇一一年一月五日発行第一版第十一刷を底本としています。
電子書籍版発行者:佐藤悌二郎発行所:株式会社PHP研究所京都市南区西九条北ノ内町11番地〒601-8411http://www.php.co.jp/digital/製作日:二〇一一年六月一七日本書の無断複写(コピー)は著作権法上での例外を除き、禁じられています。
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