「どういうわけか、うちの会社は女性社員がすぐにやめてしまうんです。能力のある女性にはどんどんやりがいのあるポストを任せるようにしていますし、もちろん給与にも男女の差はないようにしています。何が原因なのでしょうかねぇ。私には女心はわからない……」とぼやくある社長さん。
女性を活用できないようではいまの時代、成功しません。
社長さんの悩みが深いこともよく理解できます。
この会社はタオル製品をつくっていて、新製品の開発など、女性の感覚はこの会社の大きな武器になっているのです。
女性社員が定着しないのは、深刻な問題でしょう。
❖トイレ、更衣室がきれいだと女性社員の定着率がアップする
さっそく女性社員に集まってもらい、かけ値のない本音を話してほしいといったところ、ある社員が「私、神経質なのかもしれませんけど、会社のトイレに入る気がしないんです。
なるべく家ですませてくるか、お昼休みにランチに行くファミレスなどのトイレを使うようにしています」 この一言に堰をきったように、「更衣室がせまくて汚い。しょっちゅう掃除をしていないみたいで、ときどき臭いがこもっていることもあって……」「社員食堂は安くて味はまあまあなんですけど、雰囲気がいまいちで……」と口々に、社員用の施設に対する不満が飛び出しました。
いつも来客用のスペースしか知らず、来客用のトイレしか利用したことがない私には驚くような話でした。最近の女性は職場を選ぶときの条件の1つに、職場の設備等の環境をあげる人が増えています。
なかでもトイレは最重要ポイントの1つ。
更衣室の清潔さをチェックポイントにあげる女性も想像以上に多いことに気づかなければいけません。
この社長さんは古い考えのもち主で、女性社員を確保したい、そのために、と思いつくのは、給与や昇格などの男女差をなくすこと、後は出産、子育てのための支援を充実させることだと考え、それらにはそれなりに力を入れてきました。
もちろん、そうしたことも大事な課題です。
でも、最近の若い世代、特に女性は、働く環境にも大きな関心をもっていることを心に留めなければいけないでしょう。
❖社員の絆を強くするカフェテリアのような社員食堂
百聞は一見にしかず、といいます。
あれこれ話をするよりも、実例を見せたほうがインパクトが強いのではないか、そう考えた私はある日、この社長さんを、大手の化学品メーカーに連れていきました。
午後から、この会社の女性社員の会社に対する要望をヒアリングし、その結果を踏まえてアドバイスする予定があったので、担当者に事情を話し、社員食堂でランチを一緒にとる機会を設けてもらったのです。
この会社は少し前に新社屋が完成したばかり。新社屋では最上階のいちばん眺望のいいスペースに社員食堂をもってきました。
もちろん、呼び名も「食堂」ではなく、「サロン・ド・フルール」(花のサロン)と名づけ、ホテルのラウンジのようなインテリアでまとめられています。
これまでは、本社ビルの最上階などは社長室や重役室のためのスペースと決まっていたもの。
しかし、最近は、社内でいちばんいいスペースは社員のためのスペースに割く会社が増えています。ほかにも、眺めのよい上層階に社員のためのアスレチックジムを設けている会社もあれば、社員が午後、軽い睡眠をとれるスペースを用意している会社もある……という具合で、最近は、社員の待遇改善といえば給与アップ、という考えだけでは通用しない時代になっています。
中小企業では大企業のようなわけにはいかない、という事情もわかります。でも、いまやそういう時代になっているのだという認識はもち、できるかぎりの配慮はすべきでしょう。
この社長も、最上階の社員食堂を見学してからは考え方を大きく軌道修正。それまでトイレや更衣室、社員食堂を清潔で心地よい場にするということには気が回らなかったと苦笑していました。
そこで、私は「まず、トイレと更衣室をリフォームしたら? 最近では、コンビニだってトイレがきれいじゃないと評判が落ちるといわれているようですよ」とアドバイスしました。
社長は素直な人で、さっそくトイレと更衣室をリフォーム。せまいながらも化粧スペースもつくったところ、女子社員の喜びようは想定以上。更衣室には大きな姿見サイズの鏡を備え全身をチェックできるようにしました。
これからデートという日など、念入りなおしゃれができて、これも女性社員には何よりうれしい配慮だといえるでしょう。
トイレ、更衣室の改善で手ごたえを得た社長さんは、次に社員食堂の改善に取り組みました。
それまで地下にあった食堂を中庭に面した日当たりのよいところに移し、ウッドデッキ風のカフェスペースも設けたのです。
すると、それまで社員食堂は利用せず、コンビニで買ってきたパンなどを作業スペースのかたわらでボソボソ食べるだけだった社員たちが 3人、 4人と連れ立って中庭の食堂に行くようになり、ランチ後も、お茶を飲みながら時間いっぱい楽しげに談笑する姿が見られるようになったのです。
こうした談笑から社員どうしの絆が生まれ、おたがいにがんばって仕事を続けていこうと意欲をかきたてられるようになっていきます。
その結果、社員の定着率は格段と引き上げられていくはずです。
会社にとっていちばん大事な人は従業員です。従業員が快適に働ける環境を整えること。これは会社にとって最優先課題だと考えるべきです。
▼清潔で心地よい環境で働きたい。社員のそうした気持ちに応えるためにお金をちゃんと使う。
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