どんな会社も初めの一歩は小さな規模から、であるはずです。
そして、そのころは、事業計画を立てるのも、営業に出かけ販売してくるのも、金勘定もすべて自分でなんとかこなしていたでしょう。
ところが事業が拡大すると、当然、 1人で何もかもやる〝ワンオペ〟ではやっていけなくなってきます。
その結果、社員を増やし、税理士など外部の人間に任せるという体制へと進んでいきます。
ある意味、それは当然です。
事業規模が拡大してくれば、仕事の幅も量も増えてくるのです。
信頼するスタッフを育てていかなければ、会社も育っていきません。
ここでよく起こる失敗が、その社員、あるいは外部スタッフに何もかも任せてしまい、自分は製造や販売など得意な仕事に専念してしまうことです。
ある顧問先の例です。
化粧品の製造販売をしているこの会社は、化粧品市場の大きな変化の波にうまく乗って、業績をぐんぐん伸ばしていました。
化粧品業界にもネットショッピングという時代の大きなうねりは容赦なく押し寄せてきており、以前のように大手が市場を寡占するという形ではなくなってきています。
10代など若い世代に向けた遊び感覚の強い製品がネットや通販でよく売れる時代に移り、さらに、小規模でも特筆すべき品質や商品に特化して急成長を遂げている会社が出てきています。
この社長は若い世代向けの市場に着眼し、ユニークなヒット製品を連発するようになっていました。
❖必ずダブルチェック、トリプルチェックする。
これは鉄則 社長はここが事業を一気に伸ばすチャンスだと思い、 2、 3年前、経理担当の社員を雇いました。
お金に関することはすべてこの社員に任せ、社長は営業活動に専念するという体制を整えたのです。
ところが売上が伸び、利益も十分出ている。
銀行からも順調に融資を受け、すべてが好循環だという数字が出ているのに、なぜか資金繰りが苦しくなってきたのです。
苦しまぎれに社長の個人資産を崩してその場をしのぐ。
そんなことを繰り返しているうちに、ついに銀行から呼び出される事態になってしまいました。
さすがの社長も「これは何かおかしい」と思うようになり、税理士に依頼して人を派遣してもらい、すべてのお金の出入りをチェックしたところ、経理担当者がお金を横領していたことが発覚しました。被害額はなんと 5000万円。
いきなり倒産とはなりませんでしたが、今後、 5000万円を純益で埋めていくには相当の時間と忍耐が求められるでしょう。
❖銀行員と実印はどんなことがあっても人任せにしない
社長は銀行印も実印もこの経理担当者に任せていたというから、開いた口がふさがりません。
どんなに信用できる人だとしても、これだけは絶対にやってはいけません。
人間はもともと非常に弱い存在です。
目の前に自由になりそうなお金があれば、つい手を出してしまう。
日産のゴーン元会長の例は人間の弱さ、もろさを如実に物語っているといえるでしょう。
この会社の場合は、横領した経理担当者を責める前に、お金のすべてを人任せにし、自身はろくにチェックしていなかった社長が自分自身を責めるべきです。
会社に不祥事が起こる原因は、必ず社長にあることを肝に銘じておかなければいけません。
お金の動きこそ経営の原点であり、お金が会社の成否のカギを握っていることをちゃんと理解している社長ならば、お金の動きは、まず、社長自身がしっかり目を光らせているべきです。
とはいえ、社長には社長の仕事もあります。
日頃の経理作業を担当者に任せること自体をダメだとはいいません。その場合は、絶対にダブルチェック、トリプルチェック体制をとること。そのための人件費をケチったり、適当な人がいないなどといっている場合ではありません。
わざわざ、チェックのために人を採用しなくても、「お金を受け取る人、勘定する人、入金する人」をそれぞれ別々にすれば、事実上トリプルチェック機能が働くようになるはずです。
規模の大小にかかわらず、 1人の人間がお金の出入りに関するすべてができるという体制は絶対にとらないこと。リスクを避けるためのお金はちゃんと使う。これは経営の鉄則です。
❖インターネットバンキングの利用などリスクヘッジを考える
お金のことはけっして丸投げしないという認識も大事です。
社長自身が時々、通帳の残高・現金残高と帳簿上の残高を突き合わせるなど、チェックを怠らないこと。それも毎月〇日などと決めて行うのではなく、ランダムにチェックをするようにします。つまり、抜き打ちでやることが原則です。
金銭トラブルを起こした人に理由を聞くと、最初はほんの出来心、金額もごく少々であることがほとんどです。ところがチェック体制があまく、バレない、表沙汰にならないことが続くと、つい、 2度、 3度と回を重ねていき、金額もしだいに大きくなってきます。その結果、しだいに大きな罪を重ねていってしまうのです。
社長の金銭管理のずさんさは、結果的に、人を追い込む結果を招き、その人の人生を狂わせることにもなってしまいます。
銀行印と実印はたとえ女房であっても渡さない。これも絶対に守るべき鉄則、いや、原則です。それぐらいの心構えでないと何かあれば中小企業は倒産してしまいます。
常識で考えたら、そんな危険なことをするはずはないでしょう。
しかし、実際に、相談にこられる方のなかにも、「毎日のことですからね。いちいち、私が判を押していたんじゃめんどうでたまらないんですよ。
まあ、うちの経理は固すぎるぐらい固い人間なので、間違いを起こすようなことはあり得ないんですが」という社長はけっこういます。
印鑑の管理がめんどうくさいというなら、印鑑の必要がなく、パスワードを入力すれば利用できるインターネットバンキングの採用を検討するなど、自分なりのリスクヘッジを積極的に考えるべきです。
▼会社に不祥事が起こる原因は、必ず社長にあると肝に銘じる。
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