1行取引が危険だという理由はほかにもあります。
意外なことに、ほとんどの経営者は、借入銀行も手形を振り出す銀行も、入金口座も同じ銀行にしておいて平然としています。
私にいわせれば、これほど危険なことはありません。
手形は手元にお金がないので「いついつ支払う」と約束して振り出すものです。
しかし、もし、支払い期日がきたときに、振出人の預金残高が 1円でも不足していれば、受取人は額面全額は受け取れず、その手形は不渡り手形になります。
6か月の間に 2回以上、不渡り手形を出すと、「銀行取引停止」の処分を受け、すべての銀行に不渡り報告(不渡り手形を出した者の名前を通知すること)が行われます。
この処分を受けると 2年間融資を受けることができなくなり、上場企業の場合は上場も廃止されます。
「銀行取引停止」処分を受けると資金繰りはさらに厳しくなり、ほとんどの場合、事実上、倒産とみなされてしまいます。
借入している銀行で手形を発行した場合に、その銀行への借入返済を止めて、銀行ともめることがあったとしましょう。
銀行は倒産させたいわけではないのですが、お金がその銀行の口座に入った瞬間に手形決済資金を借入返済資金に変更し、資金を回収しようとします。
銀行としては、何よりも借入金の返済が優先されるのです。
その結果、手形決済はできなくなり、不渡りになって倒産、ということになってしまうわけです。
❖入金口座は借入銀行と別の銀行に開設する こんな当たり前のことがわからないまま、社長の座に座っているなんて! と誰でも気づきそうなことなのですが、会社の入金口座を借入銀行に開設している社長は相当に多いのが現実です。
借入銀行に会社の入金口座があると、銀行はどこから、いつ、いくら入金があるかをただちに把握してしまいます。
賃貸事業ではほとんど借入銀行に家賃の入金口座をつくります。
ほとんどの銀行が「テナントの家賃もうちの銀行に振り込むようにしてください」と要求するからです。
これでは、借入金の返済が滞りそうになったとき、どうぞ、入金口座を押さえてくださいといっているのも同じです。
銀行は、家賃分収入の差し押さえがすぐにできるように情報を収集しているというわけです。
入金口座をできるだけ分散させておくことも非常に重要です。
経営者として肝に銘じておきましょう。
子会社や関連会社の取引銀行を分散させておくことも重要なポイントです。
取引銀行が同じだと透明性が増すというメリットはありますが、同時に、銀行が担保率を確保したり、本体の会社に保証を求めたり、銀行側にとって有利な貸し方を提案してくることがよくあるからです。
会社ごとに取引銀行を分散しておけば、そうしたことを防げます。
こうして銀行を分散して、銀行ごとに担当者名、渡した書類などを明記し、ファイルして日頃からきちんと管理しておくようにします。
それができていないと、銀行に突っ込まれたとき、取引上不利になるようなことまでうっかり口にしてしまうようなことが起こらないともかぎりません。
銀行と交渉するときには、少しの齟齬も起こらないように、こちらも万全の備えで臨まないとヤブヘビになることもある、と心にとめておきましょう。
❖社長の個人口座を会社の取引銀行に開設しない 社長の個人口座を、会社の取引銀行につくっているのであればこれも危険、というより、無神経だといいたくなります。
個人情報をむやみに明かさない。
これは現在では常識ですが、それは外部にもらさないというだけで、銀行内の個人口座の出入りを銀行が知らないはずはないと思わないのは不思議です。
貸出をする場合、銀行は個人情報も集めて審査します。
個人情報を集めて管理、利用するのはお手のものだと考えていなければいけません。
取引銀行に口座があれば、社長個人はどんな入金がいくらあって、どんな支払いをしているか。
預金の引き出し、キャッシュカードの引き落とし、他行への振り込みなどもいつでも追跡できます。
口座の記録は社長の活動をリアルに物語る、強力な個人情報特定ツールだと認識すべきです。
もちろん、配偶者の個人口座がその銀行にある場合も同様です。
個人の資金を借入銀行に預金していた社長が会社の調子が悪くなったとき、銀行はこの預金を担保に入れるようにと要求してきました。
実際の預金を握られてしまっているので、社長は銀行のいうままにならざるを得ず、結局は倒産してしまった例もあります。
▼会社の入金口座、社長の個人口座は借入銀行とは別の銀行に開設する。
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