社長の「数字の読み違い」が判断ミスに直結する
社長が作る経営計画、そしてその実体である「経営計画書」は、中長期の目標を前提として、 1年間の売上高や利益などの数字目標を定めることが基本となります。
社長は経営幹部と一緒に、あるいは幹部を含む社員みんなと協力しながらこの計画を作り、目標達成のために組織を動かしていきます。
中小企業では、経営計画は社長が精魂込めて作るものです。
もちろん会社なので、幹部社員の力を借りたり、人によっては全社員の協力を得て作ったりするのが一般的です。社長が「この計画で進む」と決断したら、「経営計画書」を全社員で共有し、納得してもらってから全社一丸でその達成に邁進するだけです。こうして社長も社員も、経営計画の目標を達成するために日々努力していきます。
ここで重要なのは、社長は目標の達成度を、「経営計画書」と「月次決算書」で定期的にチェックし、その都度、しかるべき対策を打つことです。
具体的には、 1年間の「経営計画」から導かれる、毎月の利益計画の計画値と、毎月の「月次決算書」の実績値を照らし合わせて、もしズレがあるようならその原因を探り当て、問題に対して対策を打っていきます。
「達成度をチェックし、さらに伸ばすところや問題点を見つけ、対策を打つ」このサイクルを回すことが、「会社を経営すること」なのです。
●決算時と日々の舵取りでは「数字の読み方」を変える
しかし、多くの社長がこのサイクルを回せていません。なぜでしょうか? 一番の理由は、「はじめに」でも説明したように、社長が「月次決算書」の実績値の読み方を間違えているからです。年度末の決算時の読み方で、「月次決算書」の数字を読んでいるのです。
中身は同じでも、表の形やその読み方が違うだけで、まったく違う結論に達することはよくあることです。 また、そもそも P/ Lや B/ S、 C/ Fの本質を知らず、「月次決算書」の数字の読み間違いをしていることもあります。 経営判断をする際に、月次 P/ Lや月次 B/ Sなどの数字を読み間違えているのは、社長だけではありません。 驚くべきことに、会計のプロである税理士・公認会計士も、多くの人が読み間違いをしています。なぜなら、会計のプロは税務上正しいとされる財務諸表を作ることが仕事だからです。 決算や税務申告に使う書類は法律上間違いのないことが最優先され、多くの社長は経営判断をする際にその方法に沿って作られた決算書の指標を使おうとします。 もちろん、 P/ Lや B/ Sの数字は正しいもので、まさしく経営の成績を表すものです。そこに書かれた売上高や利益、現預金残高や借金などはまぎれもない事実ですし、そこから導かれる経営指標は経営の根幹ともいえる情報です。
ただ、何を間違ってはいけないか、つまり正しさの種類が、決算・税務申告時と、日々の経営判断では違うということです。 イメージしやすいように、次ページに、 ①決算・税務申告用の「年次決算書」、 ②一般的な「月次決算書」、 ③弊社で使っている「月次決算書」を図解しましたので、ぜひ大まかな違いをつかんでください(くわしくは次章以降で丁寧に解説します)。
決算・税務申告用の「年次決算書」は、ひと言でいうなら税金を計算するために正しい方法・書式で計算して作る書類です。「年次決算書」では 1円たりとも間違えることは許されませんし、「年次決算書」を受け取る側(税務署や決算公告を読む株主やステークホルダー)も、それを要求します。 一方で、経営判断の際に必要なのは、数字の意味を理解するための「月次決算書」です。「月次決算書」は、会社経営の本質を正しく表していることがポイントとなります。 忙しい社長がひと目見て、会社のビジネスで何が起こっているのか、会社の財務状況がどうなっているのかを瞬時に把握できる書類であることが重要なのです。 社長の経営判断ミスは、時に致命的で、最悪、倒産にまで直結するものです。ですから社長は、会社の状況をきちんと把握できる資料をできるだけ早く作り、その本質をすばやくつかむ必要があるわけです。 まとめると、決算時に求められる決算書類、いわゆる財務諸表はあくまでも「財務会計」用のもので提出用。一方、経営判断に使う月次決算書類は「経営分析ツール」で、「管理会計」ではこちらを使います。 この2つは、違うものをそれぞれ作るのではなく、そもそも同じもの(残高試算表)から、見え方が違うように作ると考えればいいでしょう。 社長は常に状況が変化する中で、期中にさまざまな経営判断をし続ける必要があります。 その時に、月次の財務諸表の見方をちょっと変えて見ること。それが間違った判断をせず、正しく経営の舵取りをするための最初の一歩になります。
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