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「総資産の圧縮」で持たざる経営を目指す

「総資産の圧縮」で持たざる経営を目指す  長期的な財務の目的として、「自己資本を増やしていくこと」を紹介しましたが、もう1つ重要なこととして、「ムダな資産を減らし、総資産を圧縮すること」があります。「自己資本比率」を導き出す式の分子は自己資本(純資産)、分母は総資産です。自己資本を増やすだけでなく、ムダな資産を減らして分母の総資産を圧縮すれば、「自己資本比率」を上げることができます。これは、今、ビジネスの世界で見直されている「持たざる経営」を目指すことでもあります。  本章の冒頭で紹介した B/ S( 223ページ)をもう一度よく見てください。  ポイントは、 B/ Sの左側の「資産」です。「総資産を圧縮する」というのは、やみくもに資産を減らすことではありません。「持っていても事業に寄与しない資産は売却して現預金に変え、できるだけ借入金の返済をする」ということです。  総資産を圧縮する方法には、大きく5つの方法があります。 ●①定期預金や定期積金を「すぐ使えるお金」に変える  総資産を圧縮する方法の1つ目は、定期預金や定期積金を、変えられるときに普通預金や当座預金に変えることです。「すぐに使えないお金」から「すぐに使えるお金」に変えておくのです。 ◆ 5000万円の定期預金・ 8000万円の融資がある場合  定期預金の利率は 0・ 1%、融資の利息は 1・ 5%とします。受取利息は 5万円、支払利息は 120万円です。差し引き 115万円の利息を支払います。  この場合、実際に手にする現預金は 3000万円です。つまり、 115万円の利息を払って、 3000万円を借りていることとまったく一緒なのです。左の図に示すように、実質金利はなんと 3・ 8%にもなります。金融機関側は十分にこれを理解しています。

 いざ会社の業績が悪くなり、これらを解約して急いで現預金を作ろうとしても、金融機関にとっては大事な融資の原資なので、すぐには応じてくれません。預金にもかかわらず「固定化」しているのです。今の時代、金融機関にお金を預けてもほとんど利息はつかないので、定期にする意味はありません。  借り入れと定期預金、定期積金が複数ある場合は、金融機関ごとに実質金利を出し、借入金の金利が高いところから金利の引き下げ交渉か定期預金等の解約を検討しましょう。 ●②受取手形・売掛金などの債権を現金化する  2つ目は、受取手形・売掛金といった債権を現金化することです。「受取手形」は「裏書き」して支払いに使ったり、「割引」して割引料を払って現金化することができますし、「売掛金」は買い取ってくれる会社に手数料を支払って売り払い、「ファクタリング」での現金化も検討します。「ファクタリング」とは、売掛金などの売掛債権を第三者に売って現金にすることです。第三者は売掛債権を買い取り、その回収を行います。  回収サイト(支払ってもらえるまでの期間)についても、短縮交渉ができるものはないかを調べて、交渉します。また、よくあるのが、長く未回収になっている債権です。こうしたものはすぐにも回収して現金化しましょう。 ●③適正在庫数をチェックし不良在庫をなくす  3つ目は、自社の適正在庫数をチェックし、不良在庫をなくすことです。  商品・製品、原材料等の在庫の圧縮ができないかを考えます。定期的に実地棚卸ができるようにして、常に回転期間を短くする努力をし、不良在庫をなくします。 ●④立替金・仮払金をチェックし精算する  4つ目は、立替金、仮払金のチェックと精算です。立替金や仮払金は、経理担当者に任せきりで、自分で中身を把握していない社長が多くいます。自分でチェックするか、あるいは毎月経理担当者にチェック、精算してもらってください。 ●⑤固定資産をチェックし不要なものを現金化する  5つ目は、固定資産をチェックし、不要なものを現金化することです。建物、付属設備、構築物、車両、器具備品、土地などが相当します。その土地や建物などが本当に必要なのかどうかを、常に考えるようにしてください。  本業以外で所有している資産を売れば、現預金が入り、借入金も返済できます。売却損が出れば節税にもなります。また、購入ではなくリースや賃借に変えることも考えます。本業以外で所有している資産は、売却して現金化を検討しましょう。  投資有価証券、出資金、ゴルフ会員権なども無形の固定資産です。本当に今の経営に必要かどうかを考えてください(中小企業で株への投資がしたいなら、社長個人でやってくださいというのが社員の思いです)。  敷金や保証金は、一部でも返金してもらえる可能性があります。更新時は必ず交渉しましょう。ちなみに、弊社が借りているオフィスは 600坪ありますが、保証金も信じられないくらい安くしてもらっていますし、更新のお金も払っていません。  長期貸付金があれば、一部でもいいので回収の交渉をしましょう。これが残っていると、金融機関からすれば貸せない理由になるので、融資を受ける際に不利になります。「あなたの会社を信用してお金をお貸ししているのに、他に貸しているとはどういうことですか?」と言われます。

保険積立金は不要に積み立てていませんか?  保険については毎年見直すことをおすすめします。以前は適正でも今では過剰だという場合がよくあります。また、今解約するといくらお金が入るか、保険解約益がいくらになるか、保険金一覧表を作成してください。  このような方法で、不要な資産、ムダな資産を見直し、総資産を圧縮していきます。  ただ、単に見直すだけではなく、自社の B/ Sがどういう構造になっているかを念頭に置いたうえで進めてください。  ここまで見てきたように、ムダな資産を圧縮しながら負債を減らし、自己資本を増やしていくこと、さらに手元に十分な現預金を残しておくことが、会社の財務体質を強化することです。  そして、これこそが中小企業の社長にとって最も大事な仕事なのです。

おわりに  私は中小企業専門の税理士・会計士として 40年間、中小企業の経営を会計事務所の経営者としての立場から見てきました。  新しいお客さまに出会うたび、また数多くの経営計画セミナーや財務体質改善セミナーの講師として受講生に出会うたびに、ほとんどの経営者が数字をよく理解していないことを知りました。  私は最初、これは経営者の勉強不足からくるものだと思っていましたが、そうではないことに気づきました。中小企業経営者は誰からも、 B/ S、 P/ Lの目的や読み方、活用の仕方を教えてもらっていなかったのです。  中小企業の経営において、数字面で一番身近にいるのは会計事務所です。  しかし、ほとんどの会計事務所は税務申告やコンサルティングはしても、結果として一番大事な B/ Sと P/ Lの目的と読み方を、経営者や幹部に教えていません。  わかっていて教えていないのではなく、今まで考えてもいなかったので教えられなかったのです。これが中小企業経営者が数字を読めない理由だと気づきました。  私の考える会社経営の目的は、「中小企業で働く社員と家族を幸せにすること」です。そのための手段として、会社は持続的に成長しなければならない。そして、結果を出さなければいけません。  成長するために経営で大事なことは「財務」と「マーケティング +イノベーション」と「人づくり」であると思っています。   B/ Sと P/ Lを読めるようになることが財務の基本です。 B/ S、 P/ Lもまず目的を明確にする。その目的を実現するための手段として、年に一度の決算書ではなく工夫された月次資料が必要です。  古田土式・月次決算書では、年計表、未来会計図表、月次推移変動 P/ L、累計 B/ S、累計キャッシュフロー計算書、 B/ Sレベルで儲けた利益がどこに消えたかを教えてくれる資金別 B/ Sなどがあります。  そして、目的が明確で手段としての資料があったとしても、活用しなければ意味もありませんし結果も出ません。結果を出していただくためにお客様の社長、幹部、ときには社員にも毎月月次決算書の説明をします。  社長、幹部が数字に強くなるコツは、まずは数字に慣れることです。そして、学ぶべき数字を絞り、繰り返し毎月チェックすることです。「月次決算書」と「経営計画書」を使って経営すれば、利益計画も実現し、財務体質も強くなり、絶対に潰れない会社にすることができるのです。  最後に、本書は弊社執行役員で税理士である川名徹氏との共著です。川名氏には主に第 5章と第 6章の執筆を担当してもらいました。この場を借りてお礼を申し上げます。   2022年 11月古田 満

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