はじめに「日本経済はようやく景気が回復してきました」 最近こんな話題がメディアで報道されていますね。 あなたは景気が上向いているという実感が湧いているでしょうか? おそらく二つ返事で答えられる人は多くはないでしょう。実際、多くの中小企業の社長から「うちはまだまだ景気回復の恩恵を受けていない」という声が聞こえてきます。 どうやら景気がよくなったのは大企業中心の話で、多くの中小企業経営者にとっては「不景気」が続いているのが実感のようです。 でも、ちょっと待ってください。 非常に厳しいですが、「景気回復の恩恵を受けたい」と願うような他力本願の社長には、恩恵なんてなかなかやって来ません。 ほんとうに稼いでいる「儲かる社長」とは、世の中の景気がどうであれ意に介さず、独自の工夫と行動力でお客様を増やし会社を成長させていきます。 それでは、どうやったら「儲かる社長」になれるでしょうか? 実は、「儲かる社長」と「ダメ社長」を分けるのは、ちょっとした考え方や行動の違いです。1つひとつは小さな差ですが、それが積み重なると大きな業績の差となって表れてきます。 ●「儲かる社長」には共通点がある 私は、政府系金融機関である日本政策金融公庫に 26年間にわたって勤めた後、経営コンサルタントとして独立開業しました。 現在の主な仕事は、起業しようとする人への支援と中小企業の資金調達のサポートです。 これまで 3万人以上の経営者とお会いしただけではなく、儲かっているかどうかという経営の実態を目の当たりにしてきました。 日本政策金融公庫に勤めていた間は、中小企業に対する事業資金の融資の仕事に携わりました。もっとも長く担当したのは、融資の申し込みをしてきた中小企業に対して、融資 OKとするか NGとするかを判断する審査の仕事です。「融資の申し込みをする中小企業」というと、「赤字で資金繰りが厳しいからお金が必要なのだろう」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。 順調に利益を上げているからこそ、金融機関から資金を調達しようとしているケースもあります。生産能力拡大のための設備投資を行ったり、新規事業を始めようとしたりする企業も多いのです。 融資の仕事を通じて私が感じたのは、「儲かっている社長には共通する特徴がある」ということです。 それは、社長としての心構えのほか、計画や戦略、お金に関することなどの面で、明らかに共通する考え方や行動習慣があるのです。 ●「ダメ社長」から「儲かる社長」へ変わるための方法とは もしあなたが、「自分は稼げないダメ社長かもしれない」と思っているとしても、どうかご安心ください。 本書でご紹介している「儲かる社長」の考え方や行動習慣を知って、それらに近づく努力をすることで、必ずや「ダメ社長」から脱却することができるでしょう。 私が自信を持ってそういえるのは、明確な根拠があるからです。 実は私は、儲かっている社長に会うと、いつもこんな質問を投げかけます。「社長、今とても順調でいらっしゃいますが、過去にはご苦労されたことはありますか?」 すると、必ずといっていいほど、「全財産が 1万円になったことがある」「借金の返済に追われて大変だった」「商売をやめようと思うほどのどん底に落ちた」といった答えが返ってくるのです。 そして、「なんとかこの状況を乗り越えよう」と考えて、決してあきらめずに粘り強く経営上の工夫を重ねた結果、「儲かる社長」になれたのだというのです。 たとえば、あるハイテク素材を製造している会社の社長は、今は収益が右肩上がりに増えてとても儲かっていますが、 10年前には投資に失敗して倒産の危機に直面していました。 しかし、それであきらめず、技術力を生かして斬新な製品の開発を続けた結果、なんとか挽回し会社を成長させることができました。 つまり、最初から「儲かる社長」という人はほとんどいなくて、自分なりの努力をすることで「ダメ社長」を脱却したということなのです。 ウソだと思うなら、あなたの身近にいる「儲かる社長」に同じ質問をしてみてください。 ●起業して間もない社長にも知っていただきたい 私は、起業支援の仕事にも力を入れており、これから起業する人や起業して間もない社長へ、事業を軌道に乗せるべくアドバイスをしています。 平均すると週に 5 ~ 6人の起業家と会って、事業計画を聞いたり起業後に直面している問題への解決策を考えたりしています。 起業家のなかには、首尾よくスタートを切ったものの、 1、 2年経過した頃に「事業がなかなかうまくいかない」と悩んでいる人が少なくありません。 そこで私が「成功している経営者のほとんどは、同じような悩みを抱えた時期があり、それを乗り越えていますよ」という話をすると、元気を取り戻して「なんとか事業を続けたい」という意欲を示します。 ただし、意欲だけで業況を改善させることはできません。 一刻も早く「儲かる社長」の特徴である考え方や習慣を知って、前を向いて行動していくことが重要です。
●「儲かる社長」は人生を心から楽しんでいる 中小企業の社長というと、「朝から晩まで仕事をしてなんとか生活している苦しい立場の人」というイメージで語られることが多いと思います。 稼げない状態が続いていると、そのとおりのことがいえるかもしれません。 しかし、「儲かる社長」は、社長としての仕事に生き生きと打ち込んでいるばかりではなく、自分の人生を目一杯楽しんでいるのです。 そして「儲かる社長」は、必ず自分が実現したい夢を持っています。 それを実現するための計画を立て、思う通りに人を動かしてまい進することにより、着実に夢の実現に近づいていきます。 ですから、 24時間いつでも仕事のことを考えていますが、それを苦労だとは思わないのです。 それどころか、「毎日が楽しくて仕方ない」と思っています。 あなたもそんな人生を送りたいと思いませんか? 本書をお読みいただいて、ぜひ「儲かる社長」になってください!経営コンサルタント・資金調達コーディネーター 上野 光夫
○もくじ 「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣はじめに第 1章 ▼ ▼ ▼心構え編 01儲かる社長は「儲かる」という言葉を発し、ダメ社長は「貢献」という言葉を発する。 02儲かる社長はいつも不安を抱え、ダメ社長は自信満々。 03儲かる社長はワンマン経営で、ダメ社長はチームプレー重視。 04儲かる社長は不景気をチャンスと思い、ダメ社長は不景気を嘆く。 05儲かる社長は小さな失敗を繰り返し、ダメ社長は失敗を犯さない。 06儲かる社長は泥臭く、ダメ社長はカッコいい。 07儲かる社長はプライドが低く、ダメ社長はプライドが高い。 08儲かる社長は引き際を考え、ダメ社長はいつまでも居座る。第 2章 ▼ ▼ ▼計画・戦略・戦術編 09儲かる社長は長期計画を立て、ダメ社長は短期計画を立てる。 10儲かる社長はやらないことを決め、ダメ社長はやることを決める。 11儲かる社長は朝令暮改で、ダメ社長は一度いったことは変えない。 12儲かる社長は考えることに時間を割き、ダメ社長は考えるよりもまず行動する。 13儲かる社長は経営理念を追求し、ダメ社長は経営理念を忘れる。 14儲かる社長は事業に深さを追求し、ダメ社長は広さを追求する。 15儲かる社長は他社のホームページを見て、ダメ社長は自社のホームページを見る。 16儲かる社長はモノマネし、ダメ社長はオリジナリティを追求する。第 3章 ▼ ▼ ▼人事労務・人的マネジメント編 17儲かる社長は社員を増やし、
ダメ社長は社員を減らす。 18儲かる社長はイエスマンを雇い、ダメ社長は反骨精神のある人物を雇う。 19儲かる社長は従業員満足を気にし、ダメ社長は顧客満足を気にする。 20儲かる社長は給与体系を社員に公開し、ダメ社長は給与体系を秘密にする。 21儲かる社長は人事評価の基準を明確にし、ダメ社長はブラックボックスで評価する。 22儲かる社長は社員を褒めまくり、ダメ社長は叱りまくる。 23儲かる社長は社員を信用せず、ダメ社長は社員を信用する。 24儲かる社長は社員教育に金をかけ、ダメ社長は社員教育には無関心。 25儲かる社長は社員のプライベートに踏み込み、ダメ社長はプライベートを知らない。第 4章 ▼ ▼ ▼お金・会計・経理編 26儲かる社長は 100万円をドブに捨て、ダメ社長は 1万円を追いかける。 27儲かる社長は積極的に税金を払い、ダメ社長は節税に走る。 28儲かる社長は現預金の残高を見て、ダメ社長は利益の数字を見る。 29儲かる社長はどんぶり勘定、ダメ社長は経理に細かい。 30儲かる社長はできるだけ多く借金をし、ダメ社長は無借金経営を目指す。 31儲かる社長は取引銀行が多く、ダメ社長は 1行しか取引がない。 32儲かる社長は融資を受けるコツに詳しく、ダメ社長はコツを知らない。 33儲かる社長は銀行員と飲みに行き、ダメ社長は銀行員を避ける。 34儲かる社長は仕入先に儲けさせ、ダメ社長は仕入れ値を徹底的に値切る。第 5章 ▼ ▼ ▼マーケティング・営業編 35儲かる社長は商品を売ることに注力し、ダメ社長は商品をつくることに注力する。 36儲かる社長はよく営業で外出し、
ダメ社長はいつも社内にいる。 37儲かる社長は金庫に顧客リストを入れ、ダメ社長は金庫にお金を入れる。 38儲かる社長は新規客を大切にし、ダメ社長は既存客を大切にする。 39儲かる社長はお客様を区別し、ダメ社長はすべてのお客様に同じ対応をする。 40儲かる社長は広告宣伝費をかけ、ダメ社長は広告宣伝費を削減する。 41儲かる社長は ITに詳しく、ダメ社長は I Tを避ける。 42儲かる社長はクレームを喜び、ダメ社長はクレームを嫌う。第 6章 ▼ ▼ ▼人脈構築・対人交渉編 43儲かる社長は人から情報を得て、ダメ社長はネットで情報を得る。 44儲かる社長は二枚舌とハッタリを使い、ダメ社長は正直に生きる。 45儲かる社長は懐が深く、ダメ社長は脇が甘い。 46儲かる社長は地域社会に溶け込み、ダメ社長は地域社会を無視する。 47儲かる社長は著名人と仲良くなり、ダメ社長は著名人の威を借りる。 48儲かる社長は人をもてなし、ダメ社長は人にもてなされる。 49儲かる社長はプレゼン能力を鍛え、ダメ社長はプレゼンの場を避ける。 50儲かる社長は筆まめで、ダメ社長は筆不精。おわりに
01/儲かる社長は「儲かる」という言葉を発し、ダメ社長は「貢献」という言葉を発する。 大阪では商売人同士が道で出会うと、こんなお決まりの会話が交わされます。「儲かってまっか?」「ボチボチでんな ~」 大阪には「商売は儲けるために行うもの」という文化がごく普通のこととして根付いています。 私が大阪で出会ったある税理士の話をしましょう。 この税理士は、 50名ほどの職員を雇っている比較的大きな事務所を経営していました。 そして日頃から、事務所のなかだけではなく外の人に対しても、「うちの事務所は儲かることが第一目標」と公言していたのです。 事務所の財務諸表を見せていただくと、驚くほど儲かっていて、しかも年々成長していました。お客様からいただく顧問料が特別高いというわけではなく、きめ細かなサービスが評判となり、順調に顧問先が増えていることが儲けにつながっているのです。 その時、私は風変わりな所長だなと思いましたが、改めて考え直してみると、面白いことがわかりました。 それは、この税理士事務所の所長が変わっているのではなく、儲かっている社長は皆必ずといっていいほど、この「儲かる」という言葉を多用しているということです。 一般的に、「儲かる」という言葉を発することに抵抗がある人は少なくありません。「拝金主義でイヤな会社」と思われるのではないかという不安があるために、「そんなことを口に出すのはちょっと…」と思うようです。 なかには、「自分の儲けよりも世のため人のために尽くす」という主義の社長もいます。たとえば、ある食品スーパー会社の社長は、こんな立派なメッセージを社内外に発していました。「わが社は食を通じて地域の皆様に貢献します」 たしかに、地域住民にとってはいいメッセージですが、この会社は結局売上が伸び悩み、コストがかかり過ぎて赤字が続いたために、廃業を余儀なくされました。 では、なぜ廃業に追い込まれたのでしょうか? もちろん、原因は多岐にわたるかと思いますが、1つは従業員にも「貢献」だけをいい過ぎたために、社内に「儲かる」ための視点や行動が不足してしまった、ということではないでしょうか。 商売とは、付加価値のある商品やサービスを提供することにより、利益を出す活動です。日々、「どうやったら儲かるか」ということを追求して利益を生み出さなければ、事業を継続し続けることはできません。 儲けるために、ビジネスモデル、マーケティング、マネジメントなどを研ぎ澄ましていくことが、事業経営の醍醐味といえます。 商売をして儲けることは、決して悪いことではありません。不法行為や社会的に問題のある事業で儲けるのはもってのほかですが、お客様に喜んでいただける事業で儲けることができれば称賛に値します。 なお、「儲かる」のいい方は、相手によってうまく使い分けることで、その効果を最大限に発揮することができます。 従業員に対して、「会社が儲かったので給与や賞与を上げる」ということをいって実行すれば、会社が儲かるための工夫をしようとするモチベーションが高まります。 銀行に対して、「儲けるためにこのような方策に取り組んで成果をあげている」と説明することで、信用が得られて融資を受けやすくなります。 堂々と「儲かっている」ということによって、お客様が集まり、さらに儲かるようになるものです。「儲かる社長」になるためには、まず社長が自分自身に「儲かる」といい聞かせることです。「儲かる」という目的意識を明確にして、ビジネスを工夫して組み立てていくことによって、ほんとうに「儲かる社長」になれるのです。 01/儲かる社長は、「儲かる」という目的意識が明確である!
私が、これまで 3万人以上の社長と会って気づいたことがあります。それは、会社の業績と社長の心理状態には密接な関係があるということです。 ・自信満々でポジティブな雰囲気を漂わせている社長 ・ネガティブな不安を口にする社長 大きく分けて 2種類のタイプの社長がいます。どちらのタイプがうまくいく傾向にあると思いますか? それぞれの会社の業績を比べると、不思議なことに、実は後者のほうがいい傾向にあるのです。 私が、金融機関の九州の支店で仕事をしていた頃の話をしましょう。 同じ時期に、 2人の不動産会社の社長と出会いました。 そのうち 1人は、大きな声で話す豪快な人で、自分の商売について自信満々に語っていました。新たに売却用不動産を購入するために、融資を申し込んできたのです。決算書をみると、前期は好調でかなりの黒字を計上していましたが、今期に入ってからの試算表では、深刻というほどではなかったのですが、売上がかなり減少していました。 私 「今は不動産がなかなか動かないからたいへんではないですか?」 社長「うちは営業力があるから、物件さえあれば業績は回復する!」 片やもう 1人の社長は、対照的に物静かな雰囲気で考え方がネガティブな人物でした。「今は不動産がなかなか動かないから、厳選した物件を仕入れる必要がある」と、慎重な見通しを持っていました。 ところが、業績をみると、売上・収益ともに安定しており内部留保も厚く、企業としての維持力は盤石のように思えました。 私 「それでも御社の業績は安定して推移していますね」 社長「いえいえ、たまたま商談がうまくいっているだけで楽観はできません。これから相当に情報を集めて戦略的に営業活動をしていかなければなりません」 この 2人の社長に会ってから約 2年後のことです。「自信満々社長」の会社は、業績が急激に悪化してしまいました。強気に業務拡大路線をとったものの、資金繰りが悪化してしまったのです。 一方、「ネガティブ社長」のほうは、順調に利益を伸ばして従業員も増えていました。情報収集を綿密に行ったうえで、物件を特定の地域の売りやすいものに絞って集中的に販売したことが功を奏したようです。 私はこのような結果になった要因として、「社長の慢心が大いに関係あるのではないか」とみています。 自信満々な社長は、経営環境に変化があったり会社に問題点が発生したりしても、危機感を抱かないことがあります。過去に多くの成功体験があるなどの理由から、慢心を呼んでしまっているのです。 私自身もこの経験があります。 起業してある程度の売上を達成できた頃、「なんだ、これくらいでうまくいくんだ。そんなに頑張らなくてもいいかも」と思って、しばらく営業活動の手を抜いたとたんに、新規のお客様を集められず厳しい状況に陥りました。その後は、常に危機感を抱きながら、「できることはすべてやる」という姿勢で取り組んでいます。 つまり、会社経営に関しては、「慢心は禁物、不安は必要悪」ということがいえるのです。 不安を抱えているということは、現状に満足しない改善意欲の表れです。不安に感じることがあっても、押しつぶされることなく、乗り越えていく粘り強さがあれば強い会社をつくれる社長になれるのです。 ただし、いうまでもなく、他人に対してあまりにも「ネガティブな人」という印象を与えると、人が寄りつかなくなってしまいます。「明るく前向きな人」という雰囲気を醸し出しながらも、内心では常に内省している社長こそが会社を発展させるのです。 02/儲かる社長は、明るい雰囲気を醸しだしながらも、常に不安を感じている!
「ワンマン経営」というと、よくないイメージで語られることが多いですね。「他の社員などの意見を聞かず、独裁的な経営を行うこと」という意味で、多くの弊害があるといわれています。 しかし、「ワンマン経営」が必要な場合があります。それは、創業して会社が発展途上にあって、社員が 50名以下の小規模な状態の時期です。 この時期に社長が「チームプレー」を重んじて社員の意見をうまくまとめようとすれば、意思決定が遅くなるばかりかリーダーシップを否定されてしまいかねません。 スピードが求められる中小企業経営において、行動するまでに時間がかかるのは致命的です。 私が東京で出会ったあるメーカーの社長も、典型的な「ワンマン社長」でした。 30名ほどの社員がいるのですが、経営に関する意思決定はすべて自分の独断で行います。社員に対して、自分が掲げた経営理念を繰り返し説明して、ひたすら会社の仕事に打ち込むことを求めています。社員たちは、仕事がハードなのできつい思いをしながらも、社長の熱意と行動力に心酔して一丸となってついていくのです。 興味を持った私は、数名の社員にインタビューしてみました。 私 「あの社長についていくのはたいへんじゃないですか?」 社員 A「たしかにきついですけど、社長のためならついていきます」 社員 B「仕事が刺激的で楽しいです」 社員 C「社長はちゃんと話は聞いてくれるので不満はありません」 この会社は、今の社長が先代から引き継いで十数年です。先代の時は業績が低迷していましたが、大きく経営改革をした結果、順調に事業を拡大しています。 とくにこの社長がうまいのは、社員 Cの発言にあるように、話を聞く姿勢は持っているということです。よく社員数名と一緒に居酒屋に行って、飲みながら意見を聞いています。うまく社員の「ガス抜き」をすることで、ワンマン経営に起きがちな「飼い犬に手を噛まれる」事態を防いでいるのです。 ただし、「ワンマン経営」をうまく機能させるためには、気をつけなければならないことがいくつかあります。 ①社員への悪影響を避ける 社長のいうことが絶対になり過ぎると、社員が指示待ち人間になり提案やチャレンジをしなくなる恐れがあります。社員が社長に対して不満を強く抱くと、陰で会社の悪口をいうようになるでしょう。前述の社長のように、「意見を聞く場」を設けることが有効です。 ②社長自身が問題ある行動に出ないように自覚する「ワンマン経営」の社長は、自分が絶対だと思い込んだ結果、常軌を逸した判断や行動をとってしまうことがあります。食品メーカーの社長が、儲けを大きくする目的のために、違法な食材を使うことを指示するような行為です。 社長自身の意思決定について、次の項目に照らし合わせて妥当かどうか、自問自答することが重要です。 ・会社の理念から外れていないか ・自分の判断力が鈍らないように意識しているか ・違法な行為ではないか ・社会的に批判を浴びることではないか ・お客様や社員に対して問題のある行動ではないか ③ワンマン経営は一時的なものと考える「ワンマン経営」は、企業が発展途上で社員が比較的少ない時に限って有効なものです。企業が成熟期に入ってきたと思う場合や、社員が 50名を超えた場合は、社長の権限を譲渡する組織化を図っていく必要があります。 03/儲かる社長は、経営に関しての決断は社長の責任を背負って行う!
私は、金融機関に勤めている間、「債権管理」を担当した時期がありました。返済が遅れている社長に対して、早く払ってもらうように督促をしたり、時には「差し押さえ」など法的な手続きをしたりといった、なんとも因果な仕事です。 返済が遅れてしまっている社長の口から決まり文句のように出るのは、「景気が悪いから会社の業績が悪くなった」という言葉でした。自社の経営状態がよくないことの原因が、あたかも自分以外にあるような発言が多くありました。当時、私は内心「人のせいにしているけど、あなたに問題があるのでしょう?」と反感を覚えたものです。 ところが、私自身も起業してから、不景気を嘆いている自分に気づいてしまったことがあったのです。 それは、起業して約 1年後、お客様をなかなか確保できない事態に直面した時期のことです。売上が少なくなったことに辟易していた私は、「景気が悪いから中小企業がコンサルタントへ頼まないのだなあ」と、いつの間にか不景気のせいにしているではありませんか! その時私は、自分のふがいなさに愕然としてしまいました。それ以来、「今後、不景気や人のせいにすることはやめよう」と決意したものでした。 そもそも日本において、大多数の中小企業が「景気がいい」と感じた時代は、高度成長期とバブル期くらいで、それ以降はずっと「不景気」です。 会社の業績が悪化するのは、ほとんどの場合は社長が環境変化に対応できていないことが原因といっても過言ではありません。 一方で、むしろ「不景気はチャンスだ」と思って驚くほど稼いでいる社長がいます。 私が九州で出会った、高齢者介護施設を経営している社長がそうでした。 一般的には介護施設の多くが儲かっているように思われていますが、入居者が集まらずに苦戦している施設もたくさんあります。有望な市場ということで新規に参入する会社が多いため、競争が激しいからです。高齢者福祉の業界も、携わっている企業の社長にとっては決して「景気がいい」とはいえません。 この社長が目をつけたのが、「他の施設はお客様(入居する高齢者)を集めるマーケティングや営業の活動が手ぬるい」ということでした。社長は、地域の市場調査を徹底的に行って、人脈によるリアルの営業活動だけではなくインターネットを活用した集客活動も行って、すぐに満室にすることを実現させたのです。最初の施設が短期間で軌道に乗ったので、次々と複数の施設を展開し、今や地域内で 1、 2位を争うほどに成長しました。 また昨今、「構造不況業種」といわれている代表格が「歯科診療所」です。治療を受ける患者数が増えているわけではないのに、店舗数は「コンビニよりも多い」といわれるほど過剰な数になっています。私は一時、歯科診療所の経営に興味を持ったことがあり、 10名ほどの歯科診療所の所長、つまり歯科医師にヒアリングをしました。「厳しい環境にある歯科診療所のなかで、儲かっているところとはどういうことをしているのだろう?」 そう疑問に思ったからです。 10名中 8名の歯科医師は、「考えられる経営努力はしているが、歯科診療所の過剰が問題だ」と嘆いていました。でも、残りの 2名は、「うちは他の診療所と差をつけられるように患者へのホスピタリティを最大限に高めている」と話しており、経営の実態について聞くと驚くほど利益を出していたのです。 とりわけ、地域内で突出して利益を出している歯科診療所の所長の言葉が印象的でした。他の診療所が月商 1000万円以下であるのに対して、ここは億に迫る勢いの売上を誇っています。 私「今歯科医院は経営がたいへんといわれるなかで、先生のところはすばらしいですね」 歯科医師「ちょっとしたことの積み重ねだよ。他がやっていないことをやればいい」 業績が厳しい理由を他に求めても、残念ながら誰も救いの手は差し伸べてくれません。国の中小企業施策もさまざまなものがありますが、基本的には「頑張る中小企業」しか支援しないものがほとんどです。不景気や厳しい環境を嘆くよりも、その変化に対応できるよう自らを徹底的に研ぎ澄ましていくことが重要です。 04/儲かる社長は、厳しい環境に対応できるよう、感覚を研ぎ澄ませている!
私が債権管理の仕事をしていた頃に感じたことがあります。 借入の返済が滞ってしまう社長には、共通した特徴があるということです。その特徴の1つが、「失敗を避けよう」という姿勢が強過ぎて、時代に合わない経営をしているということです。 四国で食品製造業を営んでいた社長は、 20年以上の業歴があり百貨店やスーパーなどを取引先として確保していました。長期にわたって経営は安定していたのですが、近年競合する企業が出てきて、しだいに売上が鈍ってしまったのです。 この社長は、従来から売れていた商品をつくり続けて、新たな商品を開発するなどのチャレンジを避けているようでした。「下手に新商品などをつくると失敗する」というのが持論で、決して冒険をしようとしなかったわけです。 この会社は、赤字が続いたため、借入の返済も遅れがちになり、廃業に追い込まれてしまいました。 このような話を聞くと、「俺はそんなアホな社長じゃない」と思うかもしれませんが、実は、多くの社長が知らず知らずに陥っているワナなのです。「決して失敗してはいけない」と思い込んでいるため、「無駄なコスト」「リスクある投資」「効果があるかどうかわからない広告宣伝費」などを徹底的に避けようとして、スリムで安全な経営を目指しています。 しかし、利益率が低いビジネスで、「失敗をしない」という姿勢を続けていると、しだいに「ジリ貧」になっていつの日かパタッと会社が倒れてしまいます。 逆に、右肩上がりに儲けている社長は、「過去を振り返ると失敗の連続だった」という人がほとんどです。「新事業を始めたがうまくいかなかった」「高額の広告宣伝費をかけたが効果がなかった」「新規取引先開拓をしようとしたが断られ続けた」など、思い出したくない経験を数多く持っています。 たしかに、過大投資など「大きな失敗」は企業の命取りになりますが、儲かる社長は「小さな失敗」は当然あるものと織り込んで、次々に行動を仕掛けていきます。 ある若手経営者は、 10社の会社の経営に携わって多忙を極めていますが、それでも次々に新しいビジネスにトライします。 ところが、始めたビジネスの半分以上は失敗に終わっています。失敗しても致命傷に至らないのは、初めはテストマーケティング的に小さく始めて、予想どおりうまくいきそうと判断したら資金を追加投入して軌道に乗せるというやり方をとっているからです。それでも、うまくいかずに赤字になってしまう事業もあるのですが、なかには大きな利益をもたらすビジネスが生まれることがあるのです。 ちなみに、この社長は、たとえ利益が出るビジネスになったとしてもいつまでも続けようとはしません。参入するビジネスの市場性とライフサイクルを常に意識しており、「成熟期」から「衰退期」に入ったと見極めたら撤退するという行動を徹底しています。 また、長期にわたって儲けることができる社長は、安定に安住せず、常に「小さな変革」を行っています。 ある菓子製造業の老舗企業は、ロングセラー商品でよく売れている「饅頭」を主力にしています。実は、時代の流れに合わせてこの饅頭の味を変えているだけではなく、なんと毎日味を変えているのです。つまり、その日の気温や天候をみて、配合する材料の内容や量を微妙に変えているのです。 先代の社長が、「気温や天候によってお客様の味覚が変わる」ということを確信し、長年トライ&エラーを繰り返しました。その結果、気温や天候に合わせて毎日味を微妙に変えることによって最大の売上を上げられるということを発見したのです。 それ以来、天気予報をみてその日の配合を決め、饅頭を製造しています。よく買っている消費者すら気付かないようなちょっとした違いなのですが、それによって「また次も買おう」という気持ちになるのか、リピーターが絶えないという効果を得られているのです。 稼げる社長になるためには、「小さな失敗」を恐れずに、変革を繰り返すことが重要だといえます。 05/儲かる社長は、「小さな変革」を行い、日々前進している!
「泥臭い」というと、「洗練されていずやぼったい。スマートでない」(大辞林)という意味ですが、社長にとって悪い言葉ではありません。それは「体面を気にすることなく一心不乱に行動する」という大事な要素を指し示す言葉でもあるからです。 泥臭さは、とくに営業活動において求められます。 ある IT系のビジネスをしている社長は、社員 10名の小さな会社ですが、日本で最大手の I T企業との取引を始めて急成長しています。ベンチャーキャピタルからの出資も得ることに成功し、数年以内に IPO(株式公開)も目指せるほどになっています。 この社長が大手取引先を確保できたのは、「技術力」というよりも「営業力」が優れていたからです。普通の社長であれば、なんのつてもなく業界最大手の企業にアプローチすることは、最初からあきらめてしまうものです。 一方、この社長は、「絶対に取引する」という強い意気込みで、次々と大手企業にアプローチしたのです。次から次へと断られ、門前払いの時も多かったのですが、決してあきらめず果敢に営業を続けました。 しかも、もともと人脈が豊富なわけではありません。人が集まるところに出かけては大手企業につながる人を探し、一緒に酒を飲むなどして、徐々に近づいていくという地道なことを行っていました。 そして、ついに最大手の企業の担当者の目にとまり、継続取引をすることが実現したのです。 もし、この社長が、泥臭い行動を避けて「スマートにカッコよく」という姿勢でいたら、決して大企業との取引は実現せず、弱小企業のままだったことでしょう。 また、別の社長は、泥臭さを発揮することで資金調達を実現させています。 この社長の会社は、世界を変える可能性を持つ製品を製造できるほどの高度な技術力を備えています。 ところが、まだ実際に売れる製品をつくるためには、研究開発を続ける必要がありました。創業して以来 5年以上も売上はほぼゼロで、当然ずっと赤字です。当初の資本金が大きかったので、維持できていましたが、いよいよ資金が底をついてしまうところまで追い込まれてしまったのです。 社長は資金を調達することを決意して銀行に行きました。それまで融資を受けたことがなかったので、どうやって銀行にアプローチすればいいか全く知識がありませんでした。 銀行員からは「技術力は高いと思うが収支見込みが見えない」といわれて融資を断られました。他の金融機関へも 5カ所ほど融資を依頼に行ったのですが、同じ理由ですべて融資を断られてしまいました。銀行員のなかには、社長を見下す者もいたそうです。 普通の社長であればこのあたりであきらめてしまうでしょうが、この社長は驚異の粘り腰で、さらに 10以上の銀行や信用金庫をまわりました。 そしてようやく 20番目に行った金融機関でついに融資を受けることに成功したのです。その金融機関は、その社長の技術力と将来性を買って、 2000万円を融資してくれました。リスクある企業へ融資するわけですからたいしたものです。 もちろん、数多く断られているうちに社長のプレゼン能力と提出する事業計画書がレベルアップしたということも大きな勝因です。その後社長は、大手メーカーや大学との共同研究を実現し、出資者も現れて順調にビジネスを拡大することができています。 資金調達は中小企業にとって欠かせないものです。この社長のように、簡単にあきらめることなく泥臭い行動を続けることが資金調達するための1つのノウハウといえます。 泥臭い社長が儲かるのとは対照的に、カッコよくスマートに仕事をしようという社長はうまくいかない傾向にあります。一般的な常識と思われていることを超える発想や無駄な行動ができないからです。 成長している社長や企業は、必ず他社が真似できない強みを持っています。技術力、マーケティング力、取引基盤などです。 こうした強みの多くは、「業界の常識を覆す」「泥臭く営業する」「断られても粘り強くキーパーソンに働きかける」といった発想や行動がきっかけとなって得られるものなのです。 06/儲かる社長は、一般的な常識を超える発想や行動力を持っている!
3万人以上の社長に会ってその懐具合の実態を見てきた私が強く思うことは、儲かっている社長の多くは穏やかな人柄を感じさせるということです。 九州に高齢者介護関係の事業をして、規模を急速に拡大している社長がいました。その会社は、まだ業歴は浅く 5年程度でしたが、次々と施設を増設してそれがすべて順調にまわっていました。その社長は、私が勤めていた金融機関に、新たな施設を建築するために融資を申し込みしてきたのです。 ひょっとするとプライドの塊みたいな人で、偉ぶっていて話がしにくい人かもしれないと思っていました。 ところが、いざ会ってみると、とてもおとなしい感じの人で全く偉そうになどしていません。こちらの質問にもきわめて穏やかに紳士的に答えてくれました。 もっとも、事業内容の話になると、他社が真似できないノウハウを持っていて、「さすがに儲かっている社長は違う」と唸らせるほどの迫力がありました。 この社長のように、本当に儲かっている人ほど、一見すると「プライドを捨てたのでは」と思えるほど穏やかで気さくなのです。儲かっているという余裕があるから穏やかになれるのでしょうか、それとも逆にプライドを捨てているから儲かっているのでしょうか? 私はおそらく後者が正しいと思っています。なぜなら、プライドを捨てた時から儲かるようになった社長を見たからです。 大阪に 20代で住宅建築会社を創業した社長がいました。私が初めて会ったのは、この会社が融資を申し込みしてきた時で社長は 40歳でした。当時は赤字の連続で自転車操業の状態だったので、融資しても返済ができるかどうか疑問を感じるほどでした。 そんな状態でも、社長の印象は、自信満々でとてもプライドが高く虚勢を張っている感じだったのです。なんとか融資は OKになりましたが、私としては「もうあの人には会いたくない」と思ってしまいました。 それから 15年後、私は再びこの社長に会う羽目になりました。私が転勤で同じ大阪支店に舞い戻った時、融資の申し込みをしてきたのです。社長は 55歳になっていました。 私は社長の顔を見た瞬間、「あれ?なんだか前と雰囲気が違うな」と思いました。会って話をすると、以前とは全く異なりとても穏やかでにこやかな対応です。年齢を重ねたせいもあるかもしれませんが、それだけではないということがわかりました。経営状態が大幅に改善されており、高額の経常利益を上げていたのです。 社長の雰囲気が以前とあまりに違うので、私は思わず「社長、以前は短気な感じでしたが、ずいぶん雰囲気が変わりましたね。いったいどうしたのですか?」とかなり不躾な質問をしてしまいました。 それでも社長は怒ることなく、「下手なプライドを捨てたんですよ。若い時はプライドが高くて人に対していつもケンカ腰で話をしていたのですが、それではいい人脈ができず情報も入らないことに気がつきました」と話してくれました。 プライドを捨てた瞬間から多くの商機が舞い込んできて、会社が右肩上がりに転じたというウソのような話ですが事実なのです。 ただし、「プライド」を捨てたといっても以前より「自尊心や誇り」、つまり、自分自身と会社を誇りに思う気持ちはむしろ強まっているはずです。 自分に自信があって誇りに思っているからこそ、人から何をいわれても気にならず穏やかで余裕ある気持ちでいられるのです。「うぬぼれや高慢」という意味のプライドを捨てた瞬間から、真のプライドが保てて会社も儲かるということなのです。 プライドを捨てるといっても、いつも謙虚な態度でいればいいということではありません。ビジネスを成功させるためには、市場に存在感を示して競合に勝たなくてはいけません。そのために会社や経営者としての自尊心は高くし、商品やサービスで自己主張をしていくことが重要です。 中小企業の経営者は、たとえ小さい会社でも「一国一城の主である」という意識を持っています。そのため、つい偉ぶろうとしてしまう人が多いのですが、そのような表面的な虚栄心はむしろ会社の業績を悪化させてしまいます。 儲かる社長になりたいと思うなら下手なプライドなどはドブに捨ててしまいましょう。 07/儲かる社長は、下手なプライドではなく、真のプライドを身につけている!
中小企業の経営者、とりわけ創業社長は、「俺の会社」と思っている人が多いのが実態です。たとえ、後継者として身内がいても、いつまでも居座ってしまう社長もいます。 四国に、従業員が 30名ほどの会社を経営する社長がいました。創業して 40年を誇り、高い技術力で業績も安定していました。社長は 70歳を超えていましたが、最前線で指揮をとっていたのです。後継予定者として息子がいるものの、「見て覚えろ」的なやり方で、経営者としての教育はほとんどしていない状態でした。 ところがある日、社長が脳梗塞で倒れてしまうという重大なアクシデントが発生。幸い一命はとりとめてリハビリである程度回復はしたものの、社長の仕事に復帰するのは難しい状況でした。そのため、後継者である息子が切り盛りすることになったのですが、経営者としては未熟で従業員からもバカにされる始末です。しだいに会社の業績が落ち込み、ついには倒産したというとても残念な結末になってしまいました。 もしも、社長が自分の引き際を考えて息子以外の後継者を育てるなどの対策をとっていたら、会社として継続することができた可能性はあります。 社長が長く居座ろうとすれば、さまざまな弊害が出てきます。後継者が育たないだけではなく、社長の過去の成功体験が邪魔をしてしまうことがあります。リーマンショックの時に、多くの中小企業が痛手を被りましたが、成功体験を持つ社長は「まだまだ俺の力で挽回できるから大丈夫」と考えていました。 その結果、過去の成功体験の延長にある方策は効果を発揮できず、今も苦境にあえぐ会社が多くなっているのが実態です。 創業当初は社長の力で儲かるビジネスを構築することができても、年齢を重ねるとともに、どうしても時代の変化についていけなくなることがあります。それを防ぐために、自分の力を過信せず早めに引き際を考えつつ、新しい人や情報をとり入れることが必要です。 一方、儲かる社長は、日頃から自分の引き際を考えた行動をとっているものです。 大阪で機械製造業を営む社長は、まだ 50代で健康でしたが「自分に万一のことがあった場合のマニュアル」というものを作成していました。これは、万一社長がいなくなることがあった時に、残された社員や家族がどうしたらいいかという引き継ぎ書のことです。 それには、加入している生命保険の内容、会社の技術に関すること、取引先との関係などさまざまな対応策が書かれており、定期的に内容を更新していました。 社長は、そのマニュアルを家族だけではなく、会社の幹部にもオープンにしていたのです。 この社長は、それだけではなく、 60歳でリタイアすることを社内に公言し、実際にそのように実行しました。その後の経営は娘婿に任せて一切口出しはしませんでしたが、娘婿が社長を引き継いだ後も順調に利益を上げて成長しています。 もちろん、早く引退すればいいというわけではありませんが、たとえ自分が創業した会社であっても、バトンタッチの時期を想定してそのための準備をしておくべきです。 社長が日頃から引き際を考えることは、次のようなメリットがあります。 ①後継者や経営幹部の教育が早めにできる 会社が継続的に利益を出して維持するためには、たとえ自分がいなくなってもまわる仕組みをつくることが社長としての使命です。多くの社長は、自分がいる間(あるいは生きている間)のことしか考えようとしませんが、長年続く老舗企業の社長は 30年以上先のことを考えながら会社経営をしています。社長が引き際を考えれば、次代を担う後継者や経営幹部の教育を早く行うことができるのです。 ②高齢になって起こりがちな「老害」を防げる ほとんどの社長は年齢とともに「経営センス」が時代錯誤になりがちです。社長自身が会社継続の障害になってしまいます。社長はいくら自信があっても、一定の年齢で引退する覚悟を決めなくてはいけません。 ③会社が社長の私物ではなくなり組織として基盤が固まる 社長が「俺の会社」という意識を捨てることで、会社が組織として堅固な基盤をつくれるようになります。 08/儲かる社長は、一定の年齢で引退する覚悟を持ち、自分がいなくてもまわる仕組みをつくる!
ほとんどの社長は経営計画を立てていますが、当然ながら具体的な立て方は千差万別です。 とくに、どれほど先までの期間を見通した計画を立てているかで、「儲かる社長」と「ダメ社長」が明確に分かれます。 実は、長期の計画を立てている社長ほど儲かっている傾向にあります。あなたが、「儲かる社長」になりたいなら、できるだけ長期で計画を立てることをお勧めします。 極端な例になりますが、ある貿易会社を経営している社長は自分の会社の計画を 100年先まで立てていました。自分がいなくなった後の計画も見込んでいるわけです。 今は機械輸出の事業をしていますが、 100年先は世界中の資源の流通に革命を起こすビジネスを展開する計画があります。 それから逆算して 10年ごとの計画、毎年の計画に行動スケジュールを落とし込んでいるそうです。 逆にいつも困っている社長は、「ここ 1年だけ」というように短いスパンで経営計画を立てています。さらに業況がかなり厳しい資金繰りに困っている社長になると、「今月を乗り切るためにどうするか」という状態に陥っていることも珍しくありません。 とはいえ、先述の社長のように 100年先の計画は、現実的とはいえないですね。 では、どれくらい先の計画を立てるのが妥当でしょうか? 中小企業であっても、少なくとも 5年先の計画は立てておく必要があります。会社が 5年後にありたい姿を見込み、それを俯瞰して毎年・毎月の計画に落とし込んでいくのです。 5年といえばかなり先のことのように思えますが、目標を達成するためには毎日やるべきことが出てきます。 もう1つ、計画を立てる際に重要なことが、必ず数字が伴うものにすることです。経営において数字とはイコール「お金」です。数字で代表的なものが「売上」や「利益」ですが、これらを 5年後にいくらにしたいのか、つまりいくら儲けたいのかを明確にすることが欠かせません。 また、計画を立てる期間については、「社長の夢を達成したい時期」を基準にしてもいいでしょう。 ほとんどの社長は、「いつか達成したい夢」を持っているものです。その内容は、どちらかといえば儲けることではなく、人に貢献することが多いものです。 たとえば、私が最近よく聞く夢が「東南アジアの恵まれない子供たちのために学校をつくりたい」というものです。これは個人としての夢だといえますが、「事業で成功した暁にはその資金を使って実現したい」という気持ちが込められているようです。 こういう社長の夢をどうせなら、早く実現できるようにしていきましょう。 そんなに難しいことを考える必要はありません。いつまでに実現するのかを明確にして経営計画にも盛り込んでいけばいいのです。 くれぐれも「儲かったらやろう」ではなく、「 7年後に実現させる」と明確に期限を定めることが大事です。 では、夢を実現できない社長はどんなタイプでしょうか?「いつか夢を実現したい」と思いながらも結果的にできない社長を多く見かけますが、「これが原因ではないかな」と私が感じるのは、社員へ周知徹底していない点です。社員に「社長の夢は何ですか?」と聞いたところ、答えられないというケースをよく見てきました。 夢を会社としての目標として掲げ、幹部だけではなく末端の社員に対しても繰り返し伝えていくということをしていきましょう。 そのうえで、先ほど説明したとおり、数字が伴った明確な目標を掲げ、俯瞰した計画をつくります。さらに、「今年は何をどこまでやるのか」という行動計画まで落とし込み、それぞれの社員の役割分担を決めて実行させます。 ただ、これだけでは社員のモチベーションも上がらないかもしれません。したがって、社員に「目標に向かって頑張れば報われる」という期待感を持たせながら、全社で目標に向かってまい進していきましょう。 09/儲かる社長は、ただ計画を立てるのではなく、会社を活気づけるように立てている!
私は経営コンサルタントとして独立した当初、向こう 1年間の行動計画書をつくりました。「4月はサービスメニューをつくる」「5月にはホームページを公開して営業活動に力を入れる……」 こういった具合に、 1年後に達成したい目標を掲げ、月ごとにやるべきタスクを書いたのです。 実際に活動を始めると、コンサルタントとして成功している人たちがやっていることが目についてきて、「彼らのようになるためには、もっとたくさんのことをやらなければいけない」と思うようになりました。 さらに、いろんな人から「こんなビジネスがあるけど一緒にやらないか」というお誘いが持ちかけられるようになりました。そのたびに「それもよさそうだなあ」と、新しいことに手を出すといったことを繰り返していました。 そのうちに、やることが山のようにあふれ、自分の本来のスキルとは関係がないことまで手を出そうとしていました。時間が足りなくなるばかりで実行が伴わず、儲けにつながらないという事態に陥ってしまったのです。 当時の私のように「まずやることを決める」という行動をしていると、そのうちに「あれもやりたい」「これもやりたい」とたくさんの思いが出てきます。 しかし、小さな会社は経営資源が限られていますので、やれることには限界があります。しかも、多くのことを手がけすぎると、軸がぶれてしまい、外から見て何が強みの会社なのかわからなくなってしまいます。「やることを決める」ことに行き詰まってしまった私は、ある日から自社の強みである「資金繰り・資金調達コンサルティング」を軸にして、あまり関係のないことはやめることを決めたのです。 それ以降も、「こんなこと一緒にやりませんか」というお誘いがありましたが、自社の軸からかけ離れることについてはお断りするようにしました。 すると、時間や資金をうまく活用して、「自分でビジネスを仕掛けてうまくいった」という成功体験を積み重ねることができるようになったのです。 大企業であれば多くの経営資源を活用して、さまざまな事業や取り組みを行うことができますが、経営基盤が脆弱な中小企業は、あれこれとやることを増やし過ぎると命取りになりかねません。 逆に、「こういうことはやらない」と決めておけば、自社のテリトリーが明確になり、経営に関しても迷いがなくなります。 先に「やらないこと」を決めて、うまくいっている中小企業はたくさんあります。 私が出会った社長に、広告デザインを主な事業としている人がいます。同社は、次から次へと大手企業の広告を受注し、ヒット商品輩出の原動力になっているのです。 その企業には、優秀な専属デザイナーがたくさんいて、社員には WEBのエキスパートもいるので、 WEB制作などほかの事業でも十分に稼げる能力があります。 にもかかわらず、社長は「わが社は広告デザインに関係すること以外の事業はやらない」と決めています。事業の柱を明確に示すことで、周囲から「あの会社は広告デザインがめっぽう強い」と認識してもらえるので、かえって注目が集まるのです。「やらないこと」を決める方法は、事業内容だけではなく、「営業する地域を限定する」「従業員は雇わず外注を活用する」「粗利益率が 30%未満の商品は扱わない」など、自社の強みや実情に合わせて細かく決めることも有効です。 とはいっても、多くの社長はアイデアマンなので、「やりたいこと」のほうがたくさん出てくるのは仕方ないと思います。その場合でも、そのなかから、「やらないこと」を決めるという決断が重要になってきます。 「やらないこと」を選ぶ基準は、「自社にない新たなノウハウが必要となること」「競合が激しい分野」「時間がかかりすぎる」といったポイントです。 多くの「やりたいこと」から、素早く「やらないこと」を決める能力が、儲かる社長となるために求められるのです。 10/儲かる社長は、自社の強みを活かした事業のみに力を入れる!
資金が少ない中小企業の場合は判断を誤ると命取りになります。中小企業の社長は、一度決めたことであっても環境変化があれば即座に方向転換するべきです。 地方で食品スーパーを数店舗営業している A社長は、銀行から勧められて新店舗を出店する計画を立てていました。 3年以上もかけて綿密な市場調査を行い、計画を練り上げていきました。資金も地元の 2行が協調して融資をしてくれることになり、 A社長は社員や地元の住民へも自慢げに出店計画を話していたのです。 ところが、いざ新店舗を着工しようとしていた時に、近くに大手のスーパーが出店する計画を立てているという情報が入ったのです。 それでも A社長は、周囲の人へ話していた面子や、銀行から高額融資を受けていたことなどを理由に、出店を決行したのです。 出店して 1年ほどは売上・収益ともに計画以上に推移していたのですが、大手スーパーが出店した途端に売上が激減しました。その後 A社長の会社は、経営危機に陥ってしまいました。かつて強く新規出店を勧めてきた銀行も、手のひらを返したように A社長へ返済を迫ってくる始末です。 実は、多くの経営者がこの A社長のように、世間体などにとらわれるあまり、大きな環境変化を無視してしまいがちです。中小企業が倒産する原因の1つに「過大投資」というのがありますが、 A社長のような事例がかなりの割合を占めています。後から冷静に考えれば、誰が見ても無理な計画なのに、正常な判断ができなくなっていたわけです。 一方、継続的に儲かる社長は、一度いったことでも場合によっては 180度変えることができます。 東京で雑貨卸売業を営んでいる B社長は、社員に「朝令暮改をモットーにしている」と公言していました。卸売業など企業を相手にする事業は、取引先の与信管理が1つの重要な仕事です。 B社長は、地元の経営者仲間と飲みに行くのが好きで、毎日のように居酒屋に行っていました。 B社長が人と飲みに行くのは、単に楽しむだけではなく、自社の経営に影響を与えるような情報を仕入れるためです。 ある日、数人で飲んでいた時に、 1人の経営者から比較的有名な企業に関する話が飛び出してきました。「株式会社 C社は資金繰りが厳しくなっているらしい」という内容です。株式会社 C社は、 B社長の会社の取引先でシェアが 10%ほどを占めていました。 その話が信ぴょう性を帯びていると判断した B社長は、次の日の朝に担当者へ「株式会社 C社との取引を縮小せよ」と指示したのです。つい前日に「もっと株式会社 C社へたくさん商品を買ってもらえ」といったばかりです。担当者は驚きましたが、社長の指示に従い株式会社 C社に対する毎月の取引量を制限したのです。 案の定、 2カ月後に、株式会社 C社の顧問弁護士から、「倒産した」という内容の文書が届きました。 B社長の会社は、損失ゼロとはいきませんでしたが、取引額を制限していた分、被害は最小限で済んだのです。そのまま取引量を拡大していたら、 B社長の会社も連鎖倒産していたかもしれません。 A社長と B社長の事例は、かなり極端な内容ですが、中小企業の経営者は環境変化の動きをキャッチしたら、一度決めたことやいったことでもすぐに撤回して方向転換する姿勢が重要であることを教えてくれます。 環境変化を察知できれば、 B社長のようにリスクを回避したり、逆に新たなビジネスチャンスを見出したりすることが可能になります。 社長であれば、このような環境変化がないか、常にアンテナを高くしておく必要があります。 B社長のように、他の経営者たちと情報交換することはかなり有効です。そのほか、新聞、雑誌、テレビ、インターネットで情報を収集することも無駄にはなりません。週刊誌のネタのような下世話な情報でも、消費者の動向をチェックすることに有効です。 ただ、「朝令暮改」は社員にとっては、困惑する原因になりえます。今朝までの指示がガラリと変わったりするので、「よく梯子をはずす社長だ」と信頼感を失いかねません。 それを防ぐためには、「朝令暮改」になった事態の背景や理由を、しっかりと社員に説明することが欠かせません。 とにかく修正することが急がれる場合は、まず強引にでも命令して方針を変えることが先決ですが、その後でも時間をとって理解させることを欠かさないようにしてください。 11/儲かる社長は、情報の感度がよく、それによって思い切った方向転換もできる!
著名な会社の社長が書いた経営に関する書籍を読むと、必ずといっていいほど「社長はスピーディな判断と行動が重要」と書かれています。 たしかに、大きな会社の経営者は分刻みのスケジュールで、1つの案件の判断に時間をとっているようでは会社がまわらなくなります。 しかし私は、中小企業の社長の場合は、必ずしも迅速な行動をとればいいとは限らないと断言します。儲かっている社長に共通する性格が「せっかち」であるのは否定しませんが、見切り発車で行動したばかりに、大きな失敗をしてしまうケースが多いのです。 顕著な例は、中小企業ではもっとも大切なことの1つである「資金調達」の場面です。 大阪で建設業を営む D社長は、とてもせっかちで社員に対しても指示をすぐ実行しなければ怒り散らす人でした。 ある時、たくさんの受注工事を抱えたので、銀行へ融資を依頼する必要が出てきました。一般的に、建設業の場合、受注が増えれば増えるほど、お客様からの入金よりも先に支払わなくてはいけない資金が多く必要になってきます。 D社長は、「 1日も早く銀行から融資を受けなければならない」とばかりに、決算書などの資料をそろえるやいなや銀行へ融資を申し込みしました。 ところが、前期の決算書は少し赤字が出ていて借入金もやや多い状況だったので、銀行からは「事業計画書」の提出を求められました。せっかちな社長は、銀行の担当者へ「これまできちんと返済しているのだから、これで判断できるだろう。すぐに決めてくれ」と迫ったのです。 結局、銀行からは融資を断られてしまいました。銀行の立場からみると、「事業計画書」を提出しないということは、目先のことしか考えていない社長のように映ったのです。銀行の融資は、一度断られてしまうと次回はさらにハードルが高くなってしまうことがありますから要注意です。困り果てた D社長は、金利の高いノンバンクから資金を調達したものの、その後も資金繰りに苦労する日々が続いてしまいました。 この社長も少し考えれば、融資をするほうが「この会社はきちんと返済できるだろう」と思うような資料を準備して、しっかりとした説明をする必要があると気づいたでしょう。 また、資金調達の場面以外でも、中小企業の社長は内容によっては、じっくりと時間をかけて検討することが必要です。 自動車販売業を営む E社長は、ここ数年間にわたり売上が低迷していることを憂慮して、新たな事業への進出を考えていました。すると不思議と、さまざまなところから「こんないいビジネスがありますからやりませんか」というお誘いがたくさん来たのです。どれもこれも、なんとなく儲かりそうに見えるものばかりでした。 E社長は、すぐに飛びつきたくなる気持ちがあったのですが、冷静に検討してすべて断ったのです。 その後、自ら情報を集めて検討を重ね、インターネットを活用したビジネスを始めました。今やそれが順調に推移し、本業を超える利益を生み出すところまで成長しています。 ただし、考えることに時間を割くにしても、時間をかけ過ぎずに正しい判断をするために、工夫することが重要です。時間ばかりかけて行動に移さなければ、ビジネスチャンスを逸してしまいかねません。検討することにかける時間を決めて、そのなかで決定するという姿勢が大切です。 また、必ずしも社長 1人で検討するのではなく、信頼できる幹部や社員を巻き込んで、情報や意見を出してもらうことも有効です。もちろん、最終的には社長が自分の考えで決断してトップダウンで実行させる姿勢が欠かせません。 九州で飲食店を多店舗展開している F社長は、経営方針について検討する時に、幹部 5人を集めて「ブレインストーミング」をやっていました。 参加者には、1つの課題を解決するためのアイデアを、大きめの付箋紙に思いつくだけ多く書かせ、ホワイトボードに貼らせます。埋め尽くされた状態になったら、関連性のあるものを集めて行動計画を練り上げていくのです。どんなつまらない意見を出しても批判をせず、出し尽くさせるというところに意義があります。 とても単純な方法のようですが、 F社長はこの方法でさまざまな業態の店舗を出して右肩上がりに利益を増やしているとのことです。 中小企業の社長の場合は、スピーディな行動は維持しつつも、重要な判断には一定の時間を定めてじっくりと考えるということが儲かる秘訣なのです。 12/儲かる社長は、考える時間をとって、それによって思い切った方向転換もできる!
多くの会社が「経営理念」を掲げていて、ホームページや会社案内に掲載しています。会社によっては「経営理念」とは少し違う文言を使っているところもあります。 大手企業の例をあげると、トヨタはホームページに「企業理念」とともに、「創業以来受け継がれてきた豊田綱領の精神」というものを載せています。 そして、中小企業でも、多くの会社が「経営理念」を掲げています。恥ずかしながら、私の会社の場合は「ミッション」として次の文言を書いています。「起業の楽しさを伝え、起業を成功に導き、日本を元気にする」 これは私が起業支援をしたいという思いから出てきた文言です。日頃からこれを意識して活動しています。とくに「起業を成功に導き」という点については、起業しても短期間で廃業に追い込まれることがないようにと思いつつ、アドバイスを行っています。 「経営理念」「ミッション」「ビジョン」などは、どんな文言であれ「会社の存在する意義」を示すものとして、社長が常に意識しておかなければならないことです。 儲かっている経営者は、「経営理念を追求するために事業を営んでいる」という意識を強く持っているものです。正しいビジネスは、お客様のためになることをやって初めて儲かるというのが普通の姿です。通常、お客様は「この会社の商品やサービスなら問題がなくて満足できるだろう」と、思うからこそ購入するのです。 ところが、立派な経営理念を掲げていても、それを完全に忘れた経営している社長が少なくありません。わかりやすい事例をあげると、「お客様に安心安全なおいしい食材をお届けする」という経営理念を掲げていたスーパーが、コスト削減のために社長の指示で食材の産地を偽っていたということがありました。 いうまでもなく「経営理念」は、社長だけが知っていてもダメです。社員全員が理解し共感してはじめて日常の仕事に反映することができます。経営理念を社員に浸透させることは、会社の存在意義を世間やお客様に理解してもらうことにつながります。 たとえ小さな企業であっても、「あの会社はこんなことをしてくれる」「こんな特徴がある」などと認知してもらうことができれば、マーケティングにも大きな効果を発揮します。 しかし残念ながら、「あなたの会社の経営理念は何ですか?」と質問しても、答えられる社員はごくわずかでしょう。経営理念は、社員に浸透させるのがとても難しいものです。 社員が経営理念を知らない、あるいは知っていても意識しないのは、2つの理由があります。 1つは、経営理念には美しい言葉を並べていて、ありふれた文章になっていることです。これを見た社員は「外部向けに理想的な言葉を並べただけのもの」と思って、自分の仕事と関係あるという意識を持てないからです。 2つ目は、経営理念に掲げてあることと、社長が日頃いっていることにギャップがあることです。経営理念に「お客様は神様」というような内容を掲げているにもかかわらず、「あんな客には高く売りつけろ!」など、矛盾する発言をする社長は少なくありません。 儲かっている社長に共通するのは、経営理念を社員にも浸透する工夫を行っていることです。 居酒屋を経営している G社長は、開店前に社員やパートタイマー全員で経営理念を 3回唱和させています。それだけではなく、経営理念から導き出される各担当者の行動規範を紙にまとめており、その場で確認させるのです。 その内容は難しいことではなく、「お客様が来店されたら全員でいらっしゃいませをいう」「トイレを 1時間おきに清掃する」「飲み物が少なくなったお客様がいたら追加注文を尋ねる」など、ごく当たり前の些細な内容です。 でも、居酒屋の売上を左右するのは、実はこのような小さな接客サービスの積み重ねです。いくら料理がおいしくても、従業員の接客態度が気に入らなければ「二度と来るもんか」と思う人が増えて、知らず知らずのうちに売上が落ちてきます。 ただし、大手ファストフード店のように細かくマニュアル化する必要はありません。従業員の行動のなかで大切な項目だけを明文化して意識させればいいのです。 また、もしあなたの会社の経営理念が今の事業内容に合わないと思えば、躊躇することなくつくり変えるべきです。たとえ小さな企業でも、経営理念は重要な行動指針になりますから、社長のこだわりと思いを込めてつくり上げることが重要です。 13/儲かる社長は、経営理念を立て、社員に浸透させる仕組みをつくっている!
中小企業の強みの1つは、時代の流れに合わせて変わり身が早いということですが、社長のなかにはさまざまな事業分野に手を出して失敗する人もいます。 四国に、もともとは不動産業だったけど、飲食店を始めたり学習塾もしたりと、あれこれ手を出している社長がいました。創造力豊かなアイデアマンであるため、次から次へとビジネスのネタを思いつく非凡な才能がありましたが、結局どれも中途半端で業歴 10年で倒産してしまいました。この社長のような経営者は少なくありません。 よく「中小企業が生き残るためには、ニッチな市場でナンバーワンになれ」といわれます。多くの社長はそれを意識していますが、実際には「もっと儲かる商売はないか」と考えて、あれこれと新しい事業を模索してしまいがちです。 その傾向は、起業して間がない経営者よりも、むしろ 10年以上の業歴があって安定した業績を誇っている経営者のほうが陥りやすいのです。 1つの事業分野で一定の成功を収めると、「違う分野に進出すればもっと儲けられるのではないか」と思う社長の心理は当然のことと考えられます。事業を拡大させたいという欲求が働けば、新たな分野へ進出する必要性を感じるのは無理もないことです。多くの経営者は、会社を大きくしたいという気持ちを持っているからです。 しかし、中小企業が倒産する原因の1つが、新分野進出の失敗であることは事実です。資本力のある企業であれば新事業に取り組んで失敗してもカバーできますが、中小企業の場合は新たな分野への投資が原因で倒産に至るケースは珍しくありません。 そこで私が提案したいのは、「 T字型経営」です。アルファベットの「 T」の下に伸びる線のように、1つの事業分野で徹底的に深さを追及するということです。 ある金属加工業を営んでいる H社長は、特殊な加工技術が際立って優れていたので、多くの企業からの取引依頼がひっきりなしで、県内では競合に負けない競争力を誇っていました。 H社長はそれで慢心することなく、加工技術をさらに研ぎ澄ますことで県を超えて取引先を拡大していったのです。 このように、1つの分野で他の追随を許さないように深さを追及することが儲かる企業になるための有効な方法です。広域で 1になることができなくても、限定された市場のなかで競合他社に負けないように事業に深さを追及していくことが重要です。 ただし、留意しなくてはならないことは、1つの分野で 1を目指して達成できたとしても、経済環境や消費者ニーズの変化から、その事業分野が陳腐化してしまうことがあります。カメラの銀塩フィルムの分野などは最たる例です。 そこで、「 T字型経営」の横に伸びる線も意識する必要があります。これは、強みである事業分野の深さを追及するだけではなく、自社に関係する情報を幅広く収集しておくことの重要性を示している線です。 あなたの会社の事業が、もはや世の中で求められていないものとなっていないか、常に注視しておくことが欠かせません。 もし、既存事業で深さを追及しても行き詰まるという危険性が見えてきたなら、新たな分野への進出を図り、そこでの深さを追及していく必要があります。中小企業が生き残るためには、事業の幅よりも深さを追及することが重要ですが、環境変化によっては深さを追及する事業の軸を変える必要があるということです。 その時、参考になるのが、中小企業施策の「経営革新支援」というものです。これは、積極的な経営革新(新たな取り組み)で事業活動の向上を目指す中小企業に対して、融資などの支援措置を行うという趣旨です。 具体的な経営革新の内容は、「新商品の開発又は生産」「新サービスの開発又は提供」「商品の新たな生産又は販売方式の導入」などが挙げられています。「経営革新」は、環境変化に対応するために、商品やサービスの付加価値を高めて企業の収益増加を図ろうとするとても有意義なもので、中小企業にとって欠かせない取り組みだといえます。 しかし残念ながら、私が政府系金融機関に勤めている時に目にした「経営革新計画」のなかには、非現実的な内容も散見されたのが実態です。過大な投資を必要とする割に収支見込みの実現可能性が低く、もし融資を受けて実施しても事業の発展どころか経営が行き詰まる原因になるのが明らかなものさえありました。 中小企業が「経営革新」を取り入れるなら、それまで蓄積してきた技術やノウハウを生かせて、実現可能性の高い計画にすべきです。 14/儲かる社長は、環境の変化をつかみ、事業の深さで勝負する!
儲かる経営者は、例外なくホームページを最大限に活用しています。 I T活用に熱心な経営者は、自社のホームページをよく見ており、頻繁に更新することに注力しています。 しかし、真に儲かっている経営者の大きな特徴は、自社のホームページよりも他社のホームページを見ることに時間をかけているということです。 関西で学習塾を複数店経営している I社長は、関西だけではなく全国各地の学習塾のホームページを日頃から注視していました。 I社長がチェックしていたポイントは、他の塾が何を売りとしてアピールしているか、情報の更新をしているか、集客や価格設定などに関してどのように工夫しているか、といった点でした。地方の個人経営の塾から、大手フランチャイズチェーンの塾に至るまで、さまざまな規模や業態の塾を見ていました。 I社長は、他の塾のホームページを参考にして、自社のホームページを更新してターゲットとする顧客にとって魅力のある内容にすることを推進していきました。 その結果、 I社長の塾は、各地域で独り勝ちを収めるほど順調に生徒を集めることに成功したのです。もちろん、 I社長が地域 1の塾をつくりあげたのは、他に理由がありますが、ホームページで他社に負けていないことが大きく寄与しています。 また、インターネットがあまり関係ないと思われる事業でも、ホームページを活用することで営業実績を高めている事例があります。 九州で個人タクシーを営んでいる Jさんは、全国の同業者のホームページを見たうえで、ユニークなホームページを開設して多くの個人客を集めることに成功しています。 Jさんは、個人タクシーでホームページを開設している事業所のなかでは比較的珍しい「 ○ ○県検定」の最上級資格に合格していることを記載して、「県内の観光名所をわかりやすく案内できますよ」とアピールしているのです。 Jさんは、自分のタクシーを利用して観光名所をまわりたいというお客様を次々と確保し、個人タクシーとしてはかなりの売上を上げています。 これらの事例のように、他社のホームページを観察したうえで、自社のものをブラッシュアップすると、インターネット上で強く自社をアピールすることができるのです。 他社のホームページを観察することは、自社のホームページを改善するヒントがつかめること以外に、次のような効果があります。 ①競合先企業を知ることができる 競合している企業のホームページをチェックすることにより、提供している商品やサービスの変化を知って、自社の戦略を立てる時の材料とすることができます。 ②販売先や仕入先など取引先候補を調べることができる 新たな取引先を開拓する必要がある際に、検索機能を利用して候補先企業を探すことができます。それらのホームページの内容を見たうえで、リアルにアプローチすることでうまく商談を進めることができます。 ③業界の動向をつかむことができる 意外なことですが、業界を取り巻く大きな変化を見落としてしまう経営者は少なくありません。自社が所属する業界の情報は、会合などで同業者と会うことによって入手する経営者が多いのですが、リアルタイムで動向をつかむためには、こまめに他社のホームページをチェックすることが有効です。 また、ホームページだけではなく、「フェイスブック」「リンクトイン」「グーグルプラス」などの SNS(ソーシャルネットワークサービス)や、経営者が個人で書いているブログなどを読むと、新たな取引先を確保するきっかけになったりさまざまな情報が入手できたりします。 今や、インターネット上で個人の人格、あるいは会社としての「社格」を、どのように表現するかということは非常に重要な課題となっています。 自社のホームページだけをじっと見つめていても、効果的な改善方策は浮かびません。まずは他社のホームページをよく観察することによって、自社をうまくアピールするためのノウハウが得られるのです。 15/儲かる社長は、自社のホームページをブラッシュアップするのに余念がない!
儲かっている中小企業になるためには、オリジナリティを追求することが第一と考えて、一生懸命に新商品や新サービスの開発に取り組む社長がいます。 関西で日用雑貨品の企画製造販売会社を営んでいた K社長は、「いびきを抑えてよく眠れる枕」など日常生活に役立つ面白い発明品を次々と開発して売り出していました。約 10年間にわたってユニークな商品を数多く開発して、実際によく売れていました。 しかし、それと似た商品を他社が販売するという現象が続くようになりました。もちろん、特許を申請することで真似されないように防御しようとしていたのですが、アイデアをパクられるスピードに追いつかなくなりました。 さらに、ほとんどの商品は社長自らが編み出したものでしたが、年齢とともに発想が陳腐化してヒット商品が出なくなったのです。 K社長は、商品開発のために主婦などにもモニターになってもらうなどの工夫を凝らしたものの、ヒット商品をつくり出すことが難しくなり、ついには会社が行き詰まってしまったのです。 若い時には売れる商品のアイデアが泉のように湧き出ていたのに、年齢を重ねるにしたがって枯渇してしまう K社長のような方は少なくありません。このケースは、何も商品やサービスだけではなく、マーケティングなど経営全般についていえるでしょう。 いくら優れたアイデアを捻り出す力を持った経営者や社員がいたとしても、ゼロから際立ったオリジナリティを出し続けるのは困難です。 むしろ、儲かる企業であり続けるためには、他社が実施して成功しているような取り組みをうまく取り入れることが有効です。 九州で居酒屋を多店舗展開している L社長は、社員たちに他の居酒屋へ飲食に行くことを指示して、メニューや接客サービスに関する工夫事例を集めさせました。もちろん、 L社長自身もしばしば他の居酒屋へ客として行って観察をしています。同じ店に 2回 3回と繰り返し通って徹底的に探る活動を行ったのです。 すると、繁盛している店とそうでない店には、さまざまな面でちょっとした違いがあることに気がつきました。 居酒屋においては、売上を左右する要素がいくつかありますが、そのなかで L社長が注目したのは、繁盛店の店主の動きでした。ある大手チェーン店の女性の店長がお客さんにさりげなく話しかけていました。料理の特徴を説明したり、お客さんが帰る時に出口まで行って「 ○ ○さん、ありがとうございました」とあいさつしたりするなどちょっとしたことですが、それによって顧客満足度が高まっていると感じたのです。 L社長は、さっそく自社の店舗でも、各店長に対してお客様へにこやかに声をかけることを指示しました。各店長も、その女性店長の動きを真似て接客することができました。その結果、多くの店舗の売上を少しずつ上昇させることに成功しました。 ただし、他社の取り組みを真似る時に注意すべき点があります。当然のことながら、すぐ近くの会社を真似てしまえば、「知的所有権の侵害だ!」など反発を招くリスクがあります。できるだけ他の都道府県や海外の事例を広く探して真似ることが重要です。 また、かつての「もつ鍋屋」のように、流行している業種業態に参入しようとするのは、一時的なブームで終わってしまうかもしれません。 一方、真似をするのではなく、ほとんどの同業他社が常識だと考えてやっていることに逆行するような取り組みを行うことでオリジナリティを際立たせることも可能です。 かつて、ホームページを制作する会社は、顧客となる企業との交渉によって価格を決めてできるだけ高く受注しようとするのが普通でした。そんななか、どんな企業でも同価格かつ低価格で制作するという取り組みで爆発的に顧客を増やした会社が出てきました。今ではむしろそれがスタンダードになりつつありますが、この会社が初めて業界の常識を打ち破ったことで、今でも業界トップランナーとしての地位を保っています。 中小企業が生き残るためには、自社ならではの強みや独創性を発揮することが求められますが、そのヒントは他の企業の成功事例に隠されています。儲かる企業になるためには、他県、あるいは海外の企業の取り組みを徹底的に観察して、成功している事例を取り入れることによって、自社が狙う市場で勝利を収めることが有効です。 16/儲かる社長は、他の企業の成功している取り組みを研究する!
会社の業績がいいか悪いかを外から判断する1つの基準に、その会社が社員を増やしているかどうかというのがあります。売上が伸びている会社は、ほぼ例外なく人手が必要になってくるからです。 ただ、企業のコストのなかで人件費は大きな割合を占めるため、しっかりとした分析に基づいたうえで、社員を増やすという決断をすべきです。 建築業を営む M社長は、総ヒノキ造りの家が評判になり県内で次々と受注を獲得していました。さらに売上拡大を図るために営業を強化したいと考え、社員を徐々に増やしていったのです。 M社長が優れているのは、やみくもに社員を増やすのではなく、売上、収益、資金繰りを常にチェックしながら必要な人材を慎重に選んで確保しているところです。 M社長は、「今うちの業績がいいのはたまたまだからコストが増えることは慎重に行うべき」と考えました。現場の社員が忙しさのあまりアップアップの状態になって「どうか人を増やしてください」と懇願しても、すぐに人員増を決断しません。自社の数字をしっかりと分析し、限界がきたところでようやく新しい社員を採用するという主義でした。 この会社の業績はその後もゆるやかに右肩上がりを続け、県内では 1、 2位を争うまでに成長しているのです。 多くの場合、現場の社員が「忙しいから人を増やしてください」といえば、中小企業の社長は「そうか、じゃあ採用しよう」と簡単に増やすものです。ひどい社長になると、「わが社は儲かっている」ということを対外的にアピールするために、無理して人を増やしていることさえあります。 人件費は業種にもよりますが、売上高に対して 15 ~ 40%ほどを占めるほどの大きな負担になります。採用した社員が高い生産性を発揮すれば問題はないのですが、なかなかすぐに期待通りの働きはしてくれません。仕事を教えなければならないうえにトラブルまで起こしたり、売上を減らす方向に向いてしまうことすらあります。 とはいえ、企業として売上や収益を上げて成長するためには、社員を増やして生産性を高める工夫をし続ける必要があります。今や、派遣社員やアウトソーシングなどを活用することによって、人にまつわる問題を軽減したり人件費コストを下げたりする会社も増えています。もちろん悪いことではありませんが、それでも中小企業の商品やサービスのコアを固めるスキルやノウハウは、自社の社員の働きに依存する部分が大きいものです。 儲かる社長になるためには、生産性やコストに十分配意しつつも社員を増やしていくことが求められます。 逆に、社員を減らしている社長は、売上や利益の低下で資金繰りがひっ迫し、やむを得ず人件費コストを下げる行動をしています。 このように、コスト削減を目的として社員を減らす方向に向かっていると、ますます業績が落ちてくるという現象が起こってしまいます。 サービス業の会社を経営していた N社長は、かつて売上が右肩上がりの時に大量の社員を採用しましたが、業歴が 20年を迎えた頃から売上が急低下し、人を減らすことを余儀なくされました。なんとか人件費を削減して会社を立て直そうとしていたのです。 N社長は、自分がワンマンで社員に怖がられるほどの存在でしたから、「みんな文句もいわずに去っていくだろう」と高をくくっていました。 しかし、一旦採用した社員を辞めさせるのは容易なことではありません。解雇をいい渡された社員たちのなかには、激しく反発して残業代未払いを要求するなどの行為に及ぶ者が出てきました。すでに会社が破たん寸前に追い込まれていた N社長は、「弱り目に祟り目」でたいへんな思いをする羽目になったのです。 残念ながら N社長のような事例はとても多いのです。 クビをいい渡された社員たちは、もはや社長のことを助けようという意識はなく、自分の要求を突き付けてくるばかりになります。業績が好調な状態で社員を増やそうと思ったら、こうした場面も想定しつつ慎重に採用を行うことが重要です。中小企業にとって社員を増やしている場面はとてもいいのですが、経営が厳しい状態になれば余剰人員を削減することが重要課題になってきます。 もちろん、うまく社員を減らすことができれば、儲かる社長に返り咲くことは可能だということを付け加えておきます。 17/儲かる社長は、社員を増やすことの重要性を知りながら、慎重に検討する!
会社の業績がいいか悪いかを外から判断する1つの基準に、その会社が社員を増やしているかどうかというのがあります。売上が伸びている会社は、ほぼ例外なく人手が必要になってくるからです。 ただ、企業のコストのなかで人件費は大きな割合を占めるため、しっかりとした分析に基づいたうえで、社員を増やすという決断をすべきです。 建築業を営む M社長は、総ヒノキ造りの家が評判になり県内で次々と受注を獲得していました。さらに売上拡大を図るために営業を強化したいと考え、社員を徐々に増やしていったのです。 M社長が優れているのは、やみくもに社員を増やすのではなく、売上、収益、資金繰りを常にチェックしながら必要な人材を慎重に選んで確保しているところです。 M社長は、「今うちの業績がいいのはたまたまだからコストが増えることは慎重に行うべき」と考えました。現場の社員が忙しさのあまりアップアップの状態になって「どうか人を増やしてください」と懇願しても、すぐに人員増を決断しません。自社の数字をしっかりと分析し、限界がきたところでようやく新しい社員を採用するという主義でした。 この会社の業績はその後もゆるやかに右肩上がりを続け、県内では 1、 2位を争うまでに成長しているのです。 多くの場合、現場の社員が「忙しいから人を増やしてください」といえば、中小企業の社長は「そうか、じゃあ採用しよう」と簡単に増やすものです。ひどい社長になると、「わが社は儲かっている」ということを対外的にアピールするために、無理して人を増やしていることさえあります。 人件費は業種にもよりますが、売上高に対して 15 ~ 40%ほどを占めるほどの大きな負担になります。採用した社員が高い生産性を発揮すれば問題はないのですが、なかなかすぐに期待通りの働きはしてくれません。仕事を教えなければならないうえにトラブルまで起こしたり、売上を減らす方向に向いてしまうことすらあります。 とはいえ、企業として売上や収益を上げて成長するためには、社員を増やして生産性を高める工夫をし続ける必要があります。今や、派遣社員やアウトソーシングなどを活用することによって、人にまつわる問題を軽減したり人件費コストを下げたりする会社も増えています。もちろん悪いことではありませんが、それでも中小企業の商品やサービスのコアを固めるスキルやノウハウは、自社の社員の働きに依存する部分が大きいものです。 儲かる社長になるためには、生産性やコストに十分配意しつつも社員を増やしていくことが求められます。 逆に、社員を減らしている社長は、売上や利益の低下で資金繰りがひっ迫し、やむを得ず人件費コストを下げる行動をしています。 このように、コスト削減を目的として社員を減らす方向に向かっていると、ますます業績が落ちてくるという現象が起こってしまいます。 サービス業の会社を経営していた N社長は、かつて売上が右肩上がりの時に大量の社員を採用しましたが、業歴が 20年を迎えた頃から売上が急低下し、人を減らすことを余儀なくされました。なんとか人件費を削減して会社を立て直そうとしていたのです。 N社長は、自分がワンマンで社員に怖がられるほどの存在でしたから、「みんな文句もいわずに去っていくだろう」と高をくくっていました。 しかし、一旦採用した社員を辞めさせるのは容易なことではありません。解雇をいい渡された社員たちのなかには、激しく反発して残業代未払いを要求するなどの行為に及ぶ者が出てきました。すでに会社が破たん寸前に追い込まれていた N社長は、「弱り目に祟り目」でたいへんな思いをする羽目になったのです。 残念ながら N社長のような事例はとても多いのです。 クビをいい渡された社員たちは、もはや社長のことを助けようという意識はなく、自分の要求を突き付けてくるばかりになります。業績が好調な状態で社員を増やそうと思ったら、こうした場面も想定しつつ慎重に採用を行うことが重要です。中小企業にとって社員を増やしている場面はとてもいいのですが、経営が厳しい状態になれば余剰人員を削減することが重要課題になってきます。 もちろん、うまく社員を減らすことができれば、儲かる社長に返り咲くことは可能だということを付け加えておきます。 17/儲かる社長は、社員を増やすことの重要性を知りながら、慎重に検討する!
中小企業にとっては、社員の働きによって業績が大きく左右されますから、どのような人物を採用するかということが非常に重要な課題です。 私は多くの中小企業を見てきた結果、「イエスマン」を雇うべきだと考えています。「イエスマン」というと、「何でもいうことをハイハイと聞いてしまって役に立たない人物」というイメージがありますが、私が推奨する「イエスマン」は少し意味が違います。社長が指示したことに対して、たとえかなり難易度が高い内容であっても「ハイ、わかりました。やります!」といえる人物のことです。「そんなこと無理ですよ」「そんなことやっても無駄でしょう」などといわず、まずはやってみようという行動力を持った人です。 もう 20年以上前のことですが、私が金融機関の大阪支店にいた頃、「融資を推進する」という課題を課せられていた時期がありました。その時私が所属していた課の課長は、がらっぱちなタイプの人で大きな声と勢いで部下を引っ張るタイプでした。 ある日課長が「今度、大阪中央卸売市場のローラー作戦をやるで!」といい出したのです。 8人いる部下のほとんどは「そんな無駄なことはやめましょうよ」と反発しました。「大阪中央卸売市場」とは、鮮魚、青果、精肉などの競りを行っている市場で、場内には数百社に及ぶ仲卸の会社がひしめき合っていました。 課長の指示は、 8人で市場内をまわり、仲卸企業に対して「融資はいかがですか?」と営業するというものです。仲卸企業の社長や社員には「荒くれ男」みたいな人がたくさんいます。飛び込み営業で融資の話を持って行っても、相手にもしてくれないだろうというのが普通の見方でした。もちろん、私も意味がないというのが正直な気持ちでした。 ところが部下の 1人が、「面白いですね。やってみましょうよ!」と、課長の考えを積極的に支持したのです。 結局ローラー作戦を実施することになって、他のメンバーもしぶしぶ飛び込み営業に向かったのです。いざ実施してみると、これが意外に面白い。 たしかに卸売市場には気性が激しい人が多く、話しかけるのもおっかない感じがしましたが、数社は融資の話に乗ってくれたのです。それ以降、中央卸売市場へは年に数回ローラー作戦を実施し、そのたびに支店の融資実績も上がりました。普通に考えると無茶苦茶な指示に対して、「やってみよう」という部下がいたからこそ成果を上げられたのです。 これは私が課という小さな組織で経験したことですが、まさしく中小企業経営でもいえることだと思うのです。社長が考えた「とんでもない発想」に対して、文句をいわずに実行しようという社員がいるととても頼もしいものです。 もちろん、社長の指示が根本的に間違っている場合は、社員が従ってしまうと経営が傾きかねません。社長自身も、しっかりと考えたうえで指示を出すべきです。 一方「イエスマン」ではなく、反骨精神のある人物を雇ってしまったことが原因で悲劇を招くというケースは珍しくありません。とくに、企業の強みが、少人数の社員のスキルやノウハウによって支えられている会社で起こりがちです。 新たな取り組みに挑戦しようと思い、社長が社員に仕事を指示した時、反骨精神のある社員は「そんな仕事が増えるようなことをすれば社員が疲弊する」などと、もっともらしい理由で断ります。社長はとても残念に感じても、この社員のスキルがなければ会社は持たないと思っているので、「そうか、それなら仕方がないな」とあきらめてしまいます。 すべてにおいてこのような調子で、会社の成長が図れないどころか、「反骨精神のある社員」の意のままに操られてしまうのです。常にこうした社員がブレーキとなります。 中小企業の強みを伸ばすには、少々無理や無駄がある社長の指示にもやる気を持って対応する「イエスマン」の社員を採用することがとても大切なのです。 社長にとっては、優秀でモチベーションが高く社長のいうことを素直に実行する社員が理想的ですが、中小企業が理想的な社員を採用しようと思っても、容易でないでしょう。「公募してもいい人材は大企業に取られる。うちのような零細企業へは来てくれない」 こう嘆く社長をよく見かけます。 そこで、私が仕えた課長のように、社長自らが元気に明るく率先して行動して見せて、社員を勇気づけることをお勧めします。社長が大きな声で「やる時はやる!」といって、元気よく率先すれば、社員もその勢いに圧倒されて動いてくれるものです。 成長する中小企業の大きな特徴の1つに、「ノリと勢い」で社員が活動しているというのがあります。時には、ある意味ハチャメチャな勢いを示すように心がけましょう。 18/儲かる社長は、行動力のある社員を雇い、優秀な社員に育てられる!
「お客様が第一です」という社訓を掲げている社長はとても多いですね。 ところが、真にこれが実施できている会社はごくわずかに過ぎません。なぜなら、お客様と直接対応している社員に、この考え方が浸透していないからです。 役所の窓口にいる職員がその最たる例です。 私がかつて住んでいたとある市の市役所では、ポスターに「市民のために親身な応対を心がけます」と書いて貼ってありました。ところが、窓口の職員は「おたくが書いているのは間違ってるね ~」など、間違いを指摘する時のいい方も、何かバカにしたような感じでした。いくら市役所として「親身な応対」を指導しても、現場の人が全く実践していないのです。 この役所と同じようなことが、実は中小企業でも起こりがちです。「いや、わが社では毎朝の朝礼で繰り返しいい聞かせているから浸透している」「お客様対応のマニュアルをつくって徹底しているから大丈夫」などと思っていても、なかなか思うとおりに実践してくれていないと思ったほうがいいでしょう。 社員に「お客様第一」と指導しても実践されないのは、いくつかの理由がありますが、「自分と直接関係のないことだ」と考えていることが大きいのではないでしょうか。「お客様第一」は会社のためであり、「自分の利益には関係ない」と考えているのです。 社員に「お客様第一」を徹底させるには、社員 1人ひとりが経営に参画している意識を高める工夫が必要です。そのためには、まず「従業員満足度」を高めることから始めます。社員にとって、会社や社長に不満があればあるほど、「会社のために顧客満足度を高めよう」という気持ちはなくなります。 中小企業の社員は、社長のことをよく見ています。ある社長は社員に「遅刻しないでしっかり働け」といいながら、自分は毎日のように仕事時間中にパチンコに行っていました。社長本人は知られていないつもりが、狭い街のことなので、実はすべての社員が知っていたのです。これでは、社員がいうことを聞くはずがありません。 社員にとっては、会社のなかでも外でも、自分の会社の社長の行動や言動は気になるものです。社長は自分の行動に責任を持って、社員から尊敬される存在になるよう努力することが大切です。それが「お客様第一」を実践させることにもつながります。 東京で生活雑貨卸売業を経営する O社長は、社員の満足度を高めることの重要性を常に意識している人です。社員とのコミュニケーションを非常に重視しており、月に 1度は個別の社員とじっくり話す機会を設けていました。 その場では、仕事だけではなくプライベートの悩みの話を聞きながら、「もっとよくなるためにはこうしたらいいのではないか」といった話をして社員との距離を縮める工夫をしていたのです。 また、給料袋には、「お父さんはこんなに活躍していてとても助かっています」といった文面の手紙を入れて手渡していました。さらに、社長自らが講師になって、経営計画や「論語」などを題材にして勉強会も開催しています。 もちろん、必ずしもこうしたやり方ですべての社員の満足度が上がるとは限りませんが、コミュニケーションの円滑化が図られただけでも、社員は社長を尊敬するようになる可能性があります。 実際、私がこの会社の何人かの社員にインタビューしたところ、「あの社長がいるから皆ががんばっている」という発言がありました。この会社は、業種的には経営環境がかなり厳しいですが、社員の満足度が高いことから業績は現状維持で推移しています。販売先、つまりお客様の数が多く、それぞれの担当社員には「お客様第一」の考えが浸透しています。万一、何かクレームがあれば、社長自らが飛んでいって謝るということも徹底していたので、固定的な取引先が確保できているのです。「顧客満足」を高めるには「従業員満足」が重要で、「従業員満足」を高めるためには社長や上司が尊敬されるようにならなければいけません。 社長や経営幹部が、社員と目標を共有して一枚岩となってまい進する姿勢を示すことが大切です。そのためには、社長と社員、上司と部下との接点をできるだけ増やして、社内のコミュニケーションを円滑にすることが重要なのです。 19/儲かる社長は、従業員の意識を高め、顧客満足に努める!
多くの中小企業では、社員の給料を社長の「胸先三寸」で決められているのが実態です。 しかも、社員に給料の金額を決めた理由をしっかりと説明せずに、「金額を見て自分の胸に手を当てて考えろ」という雰囲気で社員をねじ伏せている社長も少なくありません。 そのため、社員たちは「なぜ俺の給料はこんなに少ないのだろう?」「他の人はどれくらいもらっているのだろう?」「もしかして俺だけが少ないのか?」など、疑心暗鬼に陥っていることがとても多いのです。社員が「頑張っても頑張らなくても給料は変わらないから適当に過ごせばいいや」と思ってしまえば、生産性が上がるはずがありません。 東京で機械部品製造業を経営する O社長は、年度当初の4月に社員の給料改定を行っていました。一応、社長のなかで各社員の働きぶりを思い出して、「 A君は昨年頑張ったからこれくらいにしよう」など、考えながら決めていました。 いざ社員たちが新年度の給料をもらうと、悲喜こもごもといった感じになるのが毎年の恒例でした。社員たちは互いの給料の額をこっそり聞き合って、「どうして私は下がってあの人は上がったの?」と理由がわからず、結果的に暗い気持ちになる社員のほうが多かったのです。 しかも社長は、会社の業績が悪かった翌年には、理由をよく説明することもなく「今年は給料を一律 10%カットさせてもらう」と発表している始末です。私が社員たちの話を聞くと、「一方的で納得いかない」「まず社長の給料を下げるべきだ」と不平不満が爆発しそうな雰囲気でした。事実、社長の役員報酬は全く下げていなかったのです。 私は O社長に社員たちの不平不満が溜まっていることを伝え、給与体系をオープンにすることは無理でも、それぞれの社員に給料の額を決めた理由を説明するよう助言しました。 社員たちの不満が起きた原因は、給料が安いこともありますが、それよりも金額を決められた根拠が全くわからないところにあります。 O社長は、私のアドバイスを受け入れ、社員を個別に呼んで、今年の給料の金額を決めた理由を説明したのです。 その内容は「あなたは遅刻が ○ ○回ありました」「あなたは営業成績がよかった」「あなたはもっと仕事のスピードを上げる必要がある」など、具体的な話でした。 すると、一部の社員は、金額や決められた理由に納得せず、辞めてしまいましたが、ほとんどの社員たちは気持ちが晴れたようでした。「どのように頑張れば給料が上がるのか」「どんなところに気をつければいいか」といったことが理解でき、自分の仕事に注力するようになりました。 もちろん、社員のモチベーションは、給料の金額だけで決まるものではありませんが、少なくとも「仕事を頑張れば給料がよくなる」ということを認識させることが重要です。 次に、給与体系をオープンにして成功している社長の事例をご紹介します。 特殊機械を製造販売している P社長は、 50名ほどの社員を雇用しています。 P社長が特徴的なのは、中小企業には珍しく、会社の経営に関する数字を社内にオープンにしているところでした。会社の売上から利益、資産と負債の金額、社長の役員報酬の金額に至るまで、生々しく全社員に説明していたのです。 給与体系や人事評価のシステムも構築し、社員にオープンにしました。その背景には、 IPO(株式公開)を目指しているということがありましたが、「ガラス張りの経営」をするようになってから社員の生産性が向上したといいます。その後も P社長の会社は、順調に利益を伸ばしています。 給与体系をオープンにしても、評価するのは社長であるため、いくら客観的に評価しても、すべての社員の不平不満を消すことはできません。しかし、オープンにしていない企業と比べると、はるかに合理的で多くの社員のモチベーションを高めることができます。 半面、社長自身の報酬金額も社員にさらされることになるため、それに見合う動きをしなければ、社員たちに糾弾されることもあり得ます。社長としては自分を厳しい場面に追い込むことになるともいえますが、会社を組織として拡大させようと思えば、給与体系をオープンにすることなど「経営のガラス張り化」は必要不可欠のことです。 中小企業の社員は常に不安と不満を抱えているので、自分の仕事に心底打ち込めない人が多いのです。社員たちの不安を改善して仕事に対するモチベーションを高めるように、まずは給与体系についてしっかりと構築してオープンにすることをお勧めします。 20/儲かる社長は、給与体系をオープンにし、社員が仕事に打ち込めるよう工夫している!
中小企業の社長の多くは、社員の評価をする際に「その社員のことが好きかどうか」という基準になりがちです。しかも、評価する直前の印象で決めてしまう「ハロー考課」など、その時の気分で左右されることもあります。 とはいえ、中小企業の場合は社長が、社員を「好きかどうか」で評価することは、必ずしも間違いではありません。社長にとって「好きかどうか」という判断は、感情的な気持ちというよりも、「社長の指示命令を素直に実行し実績を上げているかどうか」という観点で考えた結果であることが多いからです。項目 18で述べたとおり、イエスマンを育てることは大事なことです。 しかし問題は、「社長の好みだけで評価されている」という不満を持たれて、社員たちのモチベーションが下がってしまうことにあります。 どんなに社長が正しいと思って評価しても、基準を明確にせずに「ブラックボックス」で評価してしまうと、社員は「彼は社長にゴマすりしたから」などと疑ってしまいます。 大切なのは、社長の「好きかどうか」という基準を、客観的に見ても公正に見えるように明文化して、「ガラス張りの評価」をすることです。社長が好きになる社員を高い評価にできる仕組みをつくると同時に、社員から不平不満が出ないようにするのです。 医薬品製造業を経営している Q社長は、この点をよく理解して、うまく人事評価を行っている人です。 この会社では、「目標管理による評価」と「行動面の評価」を組み合わせて、会社として求める人材を明確にし、給料と昇進を決める基準としています。「目標管理」では、年度当初に社員 1人ひとりに仕事の数値目標を掲げさせ、年に 2回仕事の実績を評価していました。それとは別に、「遅刻など秩序を乱す行為はなかったか」「行動力を発揮したか」「困難な仕事に積極的に取り組んだか」など、行動面の評価項目を決めて「 A、 B、 C」をつけていました。目標管理は数字で表す「絶対評価」で、行動面の評価項目は社員同士を比較する「相対評価」で実施します。 最終的にこれらの評価をどう判断するかについては、結局のところ社長の独断です。それでも社員にとっては、評価の基準が明確になっているため、仕事を頑張ろうとします。とりわけ、向上心が強く能力が高い社員が生き生きとした表情で貢献してくれるようになり、会社の業績も順調に推移しています。 Q社長の会社のもう1つの特徴は、たとえ幹部に昇進してもその地位を安泰にさせないところです。営業成績がよかったために部門の責任者である部長にしてみた結果、マネジメント能力が発揮されなかったのを理由に降格させることもあるのです。 野球の名プレーヤーが必ずしも名監督として活躍できるわけではないのと同様です。そのような人物にとっては、昇進が必ずしもベストな選択ではないため、一般社員に戻すという判断をしています。 また、 Q社長は、問題社員を排除する基準として、社員に対する懲罰規程もつくっていたのです。その基準は「遅刻や無断欠勤が多い」「お客様からのクレームが多い」「仕事上のミスが多い」など、ややあいまいな内容でしたが、これらを決めておくことで、あまりにも問題が多い社員を排除することも可能になります。 「中小企業は人がすべて」といえるほど、社員をどのように動かすかが重要課題です。 社員が増えれば秩序を乱すなど足を引っ張る社員が必ず出てきます。中小企業の社員の多くは、大企業の社員と比べると能力や意識の面で劣っているのは仕方ありませんから、なんとかうまく使うという姿勢は持つべきです。 しかし、会社に大きな悪影響を及ぼす社員に対しては、腫れ物に触るような対応は禁物です。ひたむきに頑張る社員は高く評価して、このような問題ある社員は辞めてもらうという姿勢も一方で持つべきです。 また、自分の息子など身内を会社に入れていることはよくあります。社長にとって息子は大切なので、優先していい待遇をしたくなります。 それでも、社員が 30名を超えるような規模になってきたら、たとえ後継者である息子であっても、しっかりと人事評価の基準に照らし合わせて評価することが重要です。「あのボンクラ息子を優遇する代わりに、俺たちをこき使っている」という社員の不満を防ぐためだけではなく、息子がしっかりとした後継者となるように育てるためでもあります。 21/儲かる社長は、頑張って成果を上げた社員が正当に評価されるよう、評価基準をつくる!
「何やってんだアホ!」 とくに飲食店の現場に行くと、オーナーシェフは社員やアルバイトに対して、よく怒鳴っています。時間に追われているなかでのんびり働いているようでは商売にならず、怒鳴りたい気持ちになるのは無理もないことです。 社長が社員を叱ることは、教育のために必要だということに疑う余地はありません。 しかし、叱る頻度や場面を決めておくことが重要です。たとえば何回も同じミスを繰り返し注意しているのに、いっこうに改善しない場合などです。いつまでも厳しく叱らなければ、社員が「ミスしてもあの程度の注意なら大丈夫だ」という軽い気持ちのままになってしまいます。そんな時は、烈火のごとく怒鳴って叱りつける必要があります。 ただ、ちょっとしたことがあっただけでのべつ幕なし叱り続けることは、社員がやる気を失う原因になります。 建築業を営む R社長は、ちょっとしたことで社員を叱ることで有名でした。 たとえば、作成した書類が少しでも間違っていたら、「何だ、このいい加減な書類は!出直してこい」と書類を社員に投げつけます。 社員たちは理不尽と思いながらも、なんとかこの会社で頑張っていたのですが、しだいに辞める社員が増えてきてしまいました。とりわけ優秀な社員ほど早く辞めてしまうようになり、会社の業績も悪化し R社長は窮地に立たされたのです。 困り果てた R社長は、考え方を改め「社員や関係者に寛容に接しよう」と決意したのです。私がその会社を訪れた時に、社是に「仏の顔を三度まで」と掲げてありました。これは、「人は誰でも間違いを犯してしまうから、三度までは許すほどの寛容さを持とう」という意味で、むしろ自分自身にいい聞かせているように感じました。 ある時から R社長は急に寛容になり、社員たちを叱ることも少なくなったそうです。それ以降、社員も定着するようになり、売上も回復してきました。普通、人の性格はなかなか変わらないので、 R社長は意識して寛容になったのでしょう。 そこで、私が中小企業の社長にお勧めしたいのは、できるだけ社員を褒めるということです。最近は、叱るよりも褒めることでやる気が出る人が圧倒的に多いからです。 とはいえ、社長が社員を褒めるということは、結構難しいものです。私も金融機関で管理職の立場だった時に、部下を褒めるのには抵抗がありました。なんとなく照れくさい気持ちがあったり、「褒めたら部下にナメられるのではないか」などと変な考えが浮かんだりしたからです。 おそらく、社長がなかなか社員を褒めないのは、当時の私のような気持ちがあるからではないでしょうか。 美容院を多店舗展開している S社長は、この業界では珍しく社員を褒めまくる人です。 美容院に勤めている美容師は、美容学校を出て就職しても技術力が伴わず、なかなか実践で活躍できない人が多いそうです。店長が叱りながら技術指導するのが普通です。 S社長も創業当初は社員を叱りまくっていたのですが、社員の定着率が低くなってしまったことから教育方針を大きく転換したのです。 決して、 S社長の店に就職した美容師が突出して腕がいいわけではありません。なかなか成長しない社員に対してもできるだけいい部分をみつけて、そこを褒めながらうまく指導しているのです。 S社長に褒められることで、社員たちはいつも明るい表情で仕事に取り組んでいるだけではなく、技術の向上も早くなったようです。 さらに、褒めることがもたらした効用はまだあります。社員たちの人間関係が円満になり、チームワークを重視して仕事をするようになったそうです。社員がお客さんに対して、「髪の質がいいですね」などと、さりげなく褒めるといった変化も生み出しました。 S社長も、時には叱りつけることがあります。接客態度に問題があったり技術を向上させるための努力を怠っていたりする場合などです。叱る時はかなり大きな声で怒鳴ります。日頃から褒められることのほうが多いので、怒鳴られた社員はショックを受けますが、「二度と叱られないようにしよう」と前向きに考えるそうです。 あなたも、今日から 1日 1回でいいので、社員のいいところを見つけて褒めるようにしてみてはいかがでしょうか。 22/儲かる社長は、基本的に褒め上手で、時に効果的に叱ることもできる!
「信用していた社員に裏切られた」という社長は少なくありません。 とくに多いのは、社員による会社の金の使い込みや持ち逃げという事件です。社長が最も信頼している人物を経理担当者にして、通帳も印鑑も預けたところ、いつの間にか会社の金を私費に使ってしまうというもので、こういう事例は枚挙にいとまがありません。 ほとんどの場合、社長は信頼しきっているので、なかなか気がつきません。判明した時には、会社の存続に影響を及ぼすほどの高額になっていることが多いのです。 私が大阪で出会った建設会社の社長がそうでした。会社の経理は、昔からいる 50歳代の女性に完全に任せていました。金融機関との交渉においても、社長自身はお金のことはサッパリわからないので、何でもこの経理担当者がやっていました。 会社としては特殊な工事方法の技術を持っていたので、業績は安定して見えました。ところが、私が初めて社長に会った時は、悲壮感が漂っていたのです。「この前、経理担当者が 1000万円使い込んでいたのがわかったんや」 ガテン系のいかつい社長が泣きそうです。どうやら 1年くらい前から、経理担当者が自分の兄弟を助けるために、会社の金を引き出していたらしいのです。 私 「なぜ気づかなかったのですか?」 社長「信頼して全部任せとったんや。もう 20年もウチにいたからなあ」 1000万円を取り返そうとしたらしいですが、後の祭りで、その経理担当者は行方がわからなくなっていました。 この社長の痛手はお金の問題だけではありません。 20年間信頼し続けていた社員に裏切られてしまったのですから、心の傷も負ったのです。 この社長のように、優秀だと思った社員をつい信用し過ぎてしまうと、痛い思いどころか存亡の危機に直面するリスクがあります。 一方、儲かる社長は、表面的には社員を信頼しているような素振りを見せますが、心底信用することはありません。「社員の人間性」を信用していないというわけではなく、「社員がする仕事」を信用していないのです。「金の使い込み」といったひどい裏切りをしないまでも、仕事上でミスをしてしまう社員は多いからです。 東京でインターネット通販をしている会社の社長は、多くの社員を雇っていますが、社員と一緒に飲みに行くなど、社員とのコミュニケーションに力を入れています。 しかし、仕事に関しては、社員を信用し過ぎることはなく、とくに個人情報の取り扱いやコンピューターシステムを担当する社員については、ミスや情報漏洩がないか、定期的にチェックしていました。 大手企業では、コンピューターなどから企業秘密といえる情報を持ち出そうする社員がいないか、目を光らせる体制を整えています。中小企業ではどうしても手薄になりがちですが、この社長はしっかりと監視していました。そのほかにも、商品の発送ミスが起こらないように、発送担当者が相互に仕事をチェックすることも取り決めていました。 社員が犯してしまうミスや、悪意に基づく情報漏洩を防ぐ取り組みをしていたのです。そのおかげで、大きなミスや情報が漏れてしまうという事故は起きておらず、会社の業績も安定しています。 中小企業の場合は、社員数が少ないので、アットホームな雰囲気になりがちです。それはいいことだと思いますが、社員を信用して仕事を任せ切ってしまうと、思ってもいないようなミスや不祥事が起こる懸念があります。 儲かる社長になるためには、「社員の人間性」は信用しても、「社員がする仕事」は信用し過ぎないようにすることが大切です。 ただし、社長自身がすべての社員を監視しようとすると、社内がギスギスの雰囲気になってしまいます。 ある社長は、過去に社員が会社の金を使い込みしたことがきっかけで、すべての社員が全く信用できなくなってしまいました。その社長は常に会社の事務所にいて、 1日中、社員全員に監視の眼差しを向け続けていたそうです。当然、この会社の社員の定着率はとても低く、かえって儲からなくなってしまったのです。 極端に社員に対して不信感を持ってしまうと、社員のモチベーションが極小化します。社長自らが監視するのではなく、社員相互でチェックし合う体制を整えればいいのです。 23/儲かる社長は、社員の仕事は疑えど、人間性は信用する!
社長のなかには「うちは中小企業だから社員を教育する余裕がない」と平気でいってのける人がいますが、どういう思いでそういうのでしょうか? 残念ながら、中小企業には際立って優れた人材は集まりません。むしろ「普通の人材」をいかに戦力化して生かすかが重要課題となります。そのためには、社員教育にお金と時間をかける必要があります。 もちろん、それほど大きなお金はかけられないでしょう。「お金をかける」とは、必ずしも資金を出して社外の研修に行かせるという意味だけではなく、社内で教育する手間と時間をかけるということです。 東京で食品製造業を経営している T社長は、若い人を中心に採用し、徹底的に教育して戦力化することに成功しています。 OJT(実際の仕事を通じての教育)の徹底を軸に社員教育の仕組みをつくっています。 少しその仕組みを紹介しましょう。 同社の社員の多くは、飲食店をまわる営業活動が主な仕事です。先輩社員は後輩を 1年間指導することが義務と課せられています。後輩を営業に同行させ、あいさつの仕方から商談まで営業のイロハを教えるもので、この仕組みは先輩にとっても気が抜けないのです。 1つは、人事評価の項目に「後輩をしっかりと指導したかどうか」という項目があるからです。それに、いくら先輩社員といえども、いつも営業が成功するとは限りません。取引先を怒らせてしまうといった失敗を後輩に見られてしまう可能性もあるのです。 一方、後輩社員は、毎日「研修日誌」にその日の研修で気づいたことや今後の目標などを記載し、先輩に提出しなければなりません。これに先輩が指導コメントを記入し、社長に提出します。毎日のことなので、しだいに書くことがなくなってしまうのですが、必ずびっしりと書くことを要求されています。 また、時には社長や役員が講師となって、営業ノウハウや商品知識に関する研修も行っていますし、外部の講師も招聘して、営業や自己啓発の研修を実施することもあります。 このように、社員の教育のために多大な手間とコストをかけているのです。同社の社員は、新入社員の時から OJTによって、短期間で戦力に育っています。教える立場の先輩社員たちも、しっかり後輩を指導することで、自らのスキルを高めることにつながっています。 たしかに資金も時間も余裕がない中小企業が、社員教育をするのはたいへんです。すべての社員は「日常の業務をこなすことで手一杯」という意識が強く、「とても後輩の教育などできない」と思い込んでいるものです。 しかし、活躍できない社員を抱えて商品やサービスを売っていくよりも、社員教育に注力して早期戦力化を図るほうが、中長期的に儲かる会社になれるのです。貢献できる社員や組織を育てるために時間と手間をかけることは、将来の利益が期待できる投資でもあるのです。 社員教育を効果的に実施するには、まずは社長自身が社員教育の重要性を強く認識することが第一です。そのうえで、全社員に後輩の社員を指導することや研修に積極的に取り組む意識を繰り返し伝えていきます。とくに、社長が率先して教育係を務めることが有効です。社長が実務面のノウハウやスキル、あるいは経営上の目標などについて自分の言葉で情熱的に教えると、未熟な社員たちも何かを感じるものです。 また、いくら社員教育を行ったつもりでも、社員は簡単には育たないのが普通です。でも、あきらめてはいけません。毎日継続的に繰り返し、しつこいほどに教え込んでいって、数カ月から数年経ってようやく効果が表れると思ってください。 前述の T社長は、営業のノウハウをまとめた小冊子をつくり、それを使って週に 3回、勉強会を実施しています。勉強会の内容は 2カ月で 1周してしまうのですが、同じ内容を繰り返すごとに新しい情報を取り入れながら勉強することにより、社員たちが徐々にノウハウを蓄積できるという効果があります。 あなたの会社でも、将来の利益増加を目標とするなら、ぜひ直ちに OJTをはじめとした社員教育に真剣に取り組んでください。 24/儲かる社長は、将来のための投資と考え、社員教育に手間とコストをかけている!
社長のなかには「うちは中小企業だから社員を教育する余裕がない」と平気でいってのける人がいますが、どういう思いでそういうのでしょうか? 残念ながら、中小企業には際立って優れた人材は集まりません。むしろ「普通の人材」をいかに戦力化して生かすかが重要課題となります。そのためには、社員教育にお金と時間をかける必要があります。 もちろん、それほど大きなお金はかけられないでしょう。「お金をかける」とは、必ずしも資金を出して社外の研修に行かせるという意味だけではなく、社内で教育する手間と時間をかけるということです。 東京で食品製造業を経営している T社長は、若い人を中心に採用し、徹底的に教育して戦力化することに成功しています。 OJT(実際の仕事を通じての教育)の徹底を軸に社員教育の仕組みをつくっています。 少しその仕組みを紹介しましょう。 同社の社員の多くは、飲食店をまわる営業活動が主な仕事です。先輩社員は後輩を 1年間指導することが義務と課せられています。後輩を営業に同行させ、あいさつの仕方から商談まで営業のイロハを教えるもので、この仕組みは先輩にとっても気が抜けないのです。 1つは、人事評価の項目に「後輩をしっかりと指導したかどうか」という項目があるからです。それに、いくら先輩社員といえども、いつも営業が成功するとは限りません。取引先を怒らせてしまうといった失敗を後輩に見られてしまう可能性もあるのです。 一方、後輩社員は、毎日「研修日誌」にその日の研修で気づいたことや今後の目標などを記載し、先輩に提出しなければなりません。これに先輩が指導コメントを記入し、社長に提出します。毎日のことなので、しだいに書くことがなくなってしまうのですが、必ずびっしりと書くことを要求されています。 また、時には社長や役員が講師となって、営業ノウハウや商品知識に関する研修も行っていますし、外部の講師も招聘して、営業や自己啓発の研修を実施することもあります。 このように、社員の教育のために多大な手間とコストをかけているのです。同社の社員は、新入社員の時から OJTによって、短期間で戦力に育っています。教える立場の先輩社員たちも、しっかり後輩を指導することで、自らのスキルを高めることにつながっています。 たしかに資金も時間も余裕がない中小企業が、社員教育をするのはたいへんです。すべての社員は「日常の業務をこなすことで手一杯」という意識が強く、「とても後輩の教育などできない」と思い込んでいるものです。 しかし、活躍できない社員を抱えて商品やサービスを売っていくよりも、社員教育に注力して早期戦力化を図るほうが、中長期的に儲かる会社になれるのです。貢献できる社員や組織を育てるために時間と手間をかけることは、将来の利益が期待できる投資でもあるのです。 社員教育を効果的に実施するには、まずは社長自身が社員教育の重要性を強く認識することが第一です。そのうえで、全社員に後輩の社員を指導することや研修に積極的に取り組む意識を繰り返し伝えていきます。とくに、社長が率先して教育係を務めることが有効です。社長が実務面のノウハウやスキル、あるいは経営上の目標などについて自分の言葉で情熱的に教えると、未熟な社員たちも何かを感じるものです。 また、いくら社員教育を行ったつもりでも、社員は簡単には育たないのが普通です。でも、あきらめてはいけません。毎日継続的に繰り返し、しつこいほどに教え込んでいって、数カ月から数年経ってようやく効果が表れると思ってください。 前述の T社長は、営業のノウハウをまとめた小冊子をつくり、それを使って週に 3回、勉強会を実施しています。勉強会の内容は 2カ月で 1周してしまうのですが、同じ内容を繰り返すごとに新しい情報を取り入れながら勉強することにより、社員たちが徐々にノウハウを蓄積できるという効果があります。 あなたの会社でも、将来の利益増加を目標とするなら、ぜひ直ちに OJTをはじめとした社員教育に真剣に取り組んでください。 24/儲かる社長は、将来のための投資と考え、社員教育に手間とコストをかけている!
最近は、他人のプライベートに踏む込むことはタブーという意識が強くなっています。 入社前の採用面接でも、「お父さんは何の職業ですか?」といった家族の情報や「どんな本が好きですか?」など、プライベートなことを根掘り葉掘り質問するのはご法度とされています。 そういう背景もあり、社員のプライベート情報をよく知っているという社長はめっきり少なくなりました。世の中の風潮から、「あまり聞いてはいけない」と自粛しているというのが主な理由だと推測されますが、多くの社長があまり社員に関心を持っていないからということかもしれません。 しかし、個人の情報を重視するあまりに、他人とのコミュニケーションが不足している人が増えています。それが原因でメンタルヘルスを損ない、会社を長期に休む社員が多いのが大きな社会問題の1つになっています。 今のような時代のなかでも、儲かる社長の特徴の1つは、社員のプライベートをよく知っているというのが挙げられます。プライベートな情報を知っていれば、ある社員がやる気を失っている原因をつかめることもあるのです。 さらに、社長が社員の個人的な趣味や嗜好を知っていれば、それを意識した会話をすることで、意思疎通が円滑になるという効果もあります。 ただ、いくら社長がプライベートを知ろうと思っても、社長室に呼びつけてあれこれ質問してしまえば、「セクハラだ」とか「人権侵害だ」というような問題にされてしまいかねません。 社員とのコミュニケーションを円滑にして、社員が「社長とは気心が知れた仲だ」と思うようになってはじめて知ることができるのです。社長と社員が、プライベートをさらけ出してつき合える間柄になれば、少人数でやりくりしている中小企業の事業活動が格段にスムーズになります。 前項目で紹介した T社長は、しばしば社員との「飲みニュケーション」を行い、それぞれのプライベート情報を把握しています。 T社長は、 5 ~ 6名ほどの社員を引き連れて焼き鳥屋に入り、酒を酌み交わしながら、「君は最近嬉しそうな顔をしているけど、何かいいことあったんだろう?」などと冗談交じりに質問します。するとその社員は「ハイ、おかげさまで彼女ができました」とポロリとカミングアウトします。当然、その場にいる他の社員も聞いていますから、ヤジをとばすなどしてとても盛り上がります。 なぜ、社員が躊躇なくプライベートの情報をさらけ出すかというと、会社を創業した頃は貧乏暮らしを余儀なくされていたとか、実はオタク系の趣味を持っているなど、率先して社長自身がさらけ出しているからです。参加している社員たちもつい気を許してしまうのです。 また T社長は、社員の誕生日には、必ずメッセージカードと小さな花束をプレゼントしています。これは、とても古臭い方法のようにもみえますが、贈られた社員はとても喜んでいます。 T社長は、このように社員と密接にコミュニケーションを図って、社員の心をがっちりとつかんでます。この会社の業績は、社員たちの力によって支えられ、順調に伸びていることはいうまでもありません。 残念ながら多くの中小企業では、社長と社員、あるいは社員同士の関係が、仕事を通じてだけのものになっています。 中小企業が強みを発揮して生き残るためには、社員同士が親近感を覚えて協力する姿勢を持つことが有効です。そのためにお互いのプライベートをさらけ出していくのです。 今や「愛社精神」とか「会社への忠誠心」というのは死語のようになっている時代ですが、まだまだ中小企業ではそれらが大切だといえます。 社員のプライベートな情報や趣味嗜好を把握することで、本音の会話ができるようになり、社長に対する尊敬や会社に対する忠誠心を醸成することが可能になるのです。 25/儲かる社長は、潤滑なコミュニケーションを図り、社員と協力して会社を強くする!
あなたは何のために事業をしていますか?「わが社の商品を通じて社会に貢献する」「社員とその家族の生活を守る」など、立派な答えを考えていらっしゃるかもしれませんが、事業活動の最大の目的は、儲けることです。 どんな事業でも、儲けがなければ長く続けることはできません。したがって、社長のもっとも重要な仕事の1つは、「どのようにしてお金をまわしていくか」を考えることです。 しかも、社長にとって、お金の悩みは尽きることはありません。 私は 3万人以上の社長と接してきましたが、どんなに儲かっている社長でも、お金の心配が全くないということはありません。社長が抱える悩みはいろいろありますが、おそらく 6 ~ 7割はお金に関することでしょう。 ビジネスでお金を儲けるためのノウハウとしてよくいわれているのが「無駄なコストは削減せよ」ということです。かつての日産など、大胆にコストを削減する方法で再生した会社がメディアで紹介されるので、多くの人はそれが正しい経営だと認識しています。 しかし私は、社長がコスト削減を過剰に意識してしまうと、事業活動の本来の目的を見失い、業績が尻すぼみになって、いつかはパタッと倒れてしまう可能性が大きいと考えています。実際、徹底的にコストを削減したつもりが必要な投資まで控えてしまい、事業を畳む羽目になった社長を数多く見てきました。 多くの人は、お金はたくさんあれば幸せで乏しくなれば不幸になると考えています。そのため、お金の多寡によって精神状態が振りまわされているのです。「世の中お金がすべて」と考えるあまりに、お金に翻弄される人生を送っている人も少なくありません。 しかし、儲かる社長は、お金に対する考え方が一味違います。 「お金は経済活動のツールに過ぎない」ととらえていて、お金が少なくなっても慌てることなく、腰を据えて増やす方法を考えて行動するのが特徴です。もちろん、利益を上げることで、そのメリットを享受するという意識は人一倍強いということもいえます。 ハイテク製品製造業を経営している U社長は、高い技術力を背景に高付加価値の製品を次々と販売することで、とても大きな利益を上げていました。 U社長は、日頃から社員に対して「会社にいる時は金銭感覚を 2桁上げて考えろ」といっていました。普通のサラリーマンの感覚では 100万円は大きな金額ですが、会社にいる時はそれは 1万円ぐらいの価値となります。その 100万円を使って儲けることを考えよ、というのがその趣旨です。 U社長のビジネスは、薄利多売ではなく、原価率が低く高付加価値の製品を販売するモデルで、次々と新製品を開発していました。問題は開発に莫大な資金が必要ということで、以前はいつも資金繰りには頭を悩ませていたのです。 それでも、将来のリターンを得るために、必要な投資は借金をしてでも行っていくという姿勢を崩さず、技術者の社員に対しても「投資とリターンを考えて仕事をせよ」とビジネス感覚を植え付けていたのです。時には大きな資金をかけて開発した商品が販売先に受け入れられず、結局は資金をドブに捨てたのと同じ結果になることもありました。 ところが、 U社長は「この失敗で新たな製品の方向性が見えたから投資は成功だ」と、前向きな考え方で別の製品を開発することで、損失を埋めて余りあるほどの大きな利益を得ることができたのです。 もっともほとんどの商売は、 U社長の事業とは異なり、とても利益率が低いのが事実です。ですから、 U社長ほどの大胆な判断は難しいと思いますが、経営者は「投資とリターン」の関係を考えたお金の使い方をすることが重要です。 目先の 1万円のコストを削っても 1万円以上の利益が生まれることはありません。ビジネスの醍醐味は、リスクをとって投資を行い、リターンを上げるということです。お金がなくなることを怖れてリスクをとれない経営者は、儲かることはないと断言します。 とはいえ、投資とリターンはとても読みにくく、企業が倒産する原因の1つが「過大投資による失敗」であることも事実です。リスクは十分に織り込んで投資を行うべきです。 新聞などで、過大投資で行き詰まった企業の記事が出ていることがあります。読むと、需要が見込めない製品をつくるプラントや畑違いでノウハウを持たない分野への進出など、「こんな投資は失敗するのが当然だろう」と思えるものがほとんどです。 実は、過大投資の多くは「経営者の大きな勘違い」が原因で起きているのです。ぜひ、このような、大きな勘違いだけはないように投資判断をしてください。 26/儲かる社長は、リスクを怖れずに投資をし、儲けの構造をつくる!
「今期の決算の着地はどうしようか?」 中小企業経営者の多くが、税務申告時期が近づくと、こんな発言をするようになります。 本来、決算や税務申告で、「着地をどうしようか」というのはおかしな話です。 しかし実態は、決算書は「調整」して作成するのが経営者の常識のように考えられているのです。 多くの社長は、「税金はあまり払いたくない」と思っています。 先日も、決算書で高額の当期利益を計上している社長が、「儲かっても大半を税金でとられてしまうから結局手元に金が残らない」と嘆いていました。 税金を支払いたくないために、ある程度儲かっている社長でも、決算書の利益を抑えるべきという発想を持ちます。 そして一方では、資金を調達するために銀行へ提出する場面などを想定すると、「赤字が大きいと融資してくれない」という懸念があると考えます。「税金は払いたくないけど融資は受けやすくしておきたい」という理由から、多くの社長が考えるのは、「決算は収支トントンが理想」ということです。 もちろん、そんなにうまくいくものではありません。実際に儲かっている会社が利益を抑えようとしたり、赤字の会社が収支トントンの決算書を作成しようとしたりすれば、どこかでひずみが露呈してしまいます。 真に儲かっている社長は、「税金を支払うのも企業の社会的責任の1つ」ということをよく理解しています。もちろん、適正な節税策は最大限に活用しますが、基本的には「税金は後で指摘されないようにきちんと払う」という姿勢を持っています。 アパレル事業を経営している V社長は、業界が厳しいなかでも儲かっている人です。 V社長がよくいっているのは、「決算書は会社の通信簿だ」ということでした。 この社長は、毎年決算が終わると、幹部社員と取引金融機関の担当者たちを集めて、決算書の内容をこと細かに説明する会を開催していました。その場で、今期行った事業の内容、売上推移の要因、コストの内訳、そして資本負債の状況などを説明するとともに、来期の営業方針を発表して理解を求めていました。 税務申告に関しても、後で問題を指摘されないように、 1人の税理士だけではなくセカンドオピニオンの役割を果たす税理士にも依頼していました。 2年に 1度のペースで税務調査を受けていましたが、ほとんど問題を指摘されることもない状態が続いています。 ところで、会社の税務申告の作業をサポートしているのは税理士です。おそらく税理士の人たちは、日常的に社長から「今期は収支トントンで頼みますよ」という困った要求を受けていることと思われます。 税務申告は、「当社はこれだけ儲かったから税金はこれだけ払います」という内容を表すものですが、企業によって事業内容やお金の流れなどが千差万別で、各種税法も複雑なので一筋縄ではいきません。有名な大企業ですら、税務申告に関して一部を否認され当局から追徴を求められることがあります。 中小企業においても、悪意はないのに、税務調査で申告漏れを指摘されて痛い思いをすることは珍しくありません。極端な例では、高額の追徴課税が原因で会社を継続できなかった社長もいるほどです。ですから、税務申告において無理な「調整」をすることは禁物です。 一方、金融機関の眼を意識して、決算書の見栄えをよくすることに躍起になる社長もいます。 私は金融機関で長年にわたって融資審査の仕事をしていましたから、実にさまざまな決算書を見てきました。提出された決算書が経営実態をありのままに映し出しているなら、審査の仕事は簡単ですが、そのうちいくつかは金融機関用に調整された「努力の跡」が見られる内容でした。審査の担当者はそれを見破ったうえで実態を探り、企業の維持力や返済能力を判断しなければいけません。そのため、私は「粉飾決算書の見破り方」という書籍を購入して読んで傾向を研究していました。 社長にとって決算書の作成や税務申告は、1つの悩ましい作業であることには間違いありません。しかし、長期的な視点に立てば、くれぐれも無理な「調整」をしないようにしていただきたいものです。 27/儲かる社長は、長期的な視点で決算を考え、しっかりと税金を払っている!
会社の規模が大きくなればなるほど、社長が自分の会社の経営状況を正確に把握することが重要になってきます。社長にとって大切なことは、お金の流れを示す数字を直視して、経営判断を行うということです。 ところが意外にも、自社の数字をあまり把握できていない社長が多いのが実態です。現場の最前線で指揮をとって社員にハッパをかけることに夢中になり、肝心の数字のことは経理担当者や税理士に任せっ放しという社長などはその典型的なタイプです。 会社の業績がいい時はそれでもいいでしょうが、経営状態が厳しくなればなるほど、数字を無視することはできなくなります。 数字を把握しようとする時に、多くの社長は、まず「売上が昨年と比べてどうか」というところを気にして、次に「いくら儲かったか」と利益に着眼します。 利益が出ていることがわかれば、「儲かってよかった」と安堵しますが、「勘定合って銭足らず」といわれるように、利益に対して現預金の残高が乏しいという状態に陥っている時があります。利益が出たからといって安心してしまうと、「黒字倒産」に至る懸念があることを忘れないでください。 基本的なことですが、利益が上がっても現預金が残らないのは主に次のような理由があります。 ・売掛金の回収条件が遅いのに対して仕入や経費の支払日が早く来る ・売掛金が期日通りに入金されない ・商品在庫が過剰に膨らんでいる ・無駄な経費がかさんでいる ・事業以外に資金が流出している ・現預金を誰かが使い込んでいる 以上のような事態になっていないか、社長としては最低限チェックすべきです。 真に儲かっている社長は、売上や利益だけではなく、現預金の残高を注視しており、当面の「資金繰り」を把握しています。 6カ月後に資金不足が見込まれると、融資などで資金を調達する必要がありますから、早めに準備することができます。 機械輸出業を経営している W社長は、今期で創業 20周年を迎えますが、自社の数字を把握するのに苦手意識がありました。それでもかなりの利益が出ていて資金繰りにも大きな問題はなかったので、深刻な状態にはなりませんでした。 しかし、リーマンショックでかつてないほど業況が悪化し、気付いた時には来月の資金繰りが危ういという事態になっていました。その後、危機は乗り越えたのですが、「こんなことではいけない」と思った社長は、中小企業診断士の勉強をしてとくに財務に関する部分のスキルを高める努力をしたのです。それまで苦手にしていた経営分析にも目を背けずに自分で取り組むようになり、毎月、向こう 1年の「資金繰り表」も作成するようになりました。 運転資金が不足し始めると、早めに銀行へ提出する資料を作成し、融資の申請ができる体制を整えていました。また、財務に関する知識に詳しくなったことから、銀行員から質問があった時に、数字について的確な回答ができるようになりました。 これらが功を奏して、以降は資金繰りで頭を悩ませるということがなくなったのです。 私が多くの社長から聞いたことがあるのは、ひとたび資金繰りの悩みが発生すると、四六時中それで頭が一杯になり、本来の営業活動に身が入らなくなるということです。 W社長のように、自社の数字や資金繰りを自ら把握しておけば、早め早めの資金手当てができるので、社長本来の仕事に打ち込める余裕も出てきます。 ところで、「資金繰り表」というと、「とても自分でつくれるものではない」という社長がいますが、一度覚えてしまえば、それほど難しいものではありません。 もちろん、経理担当者に作成させてもいいのですが、その時は預金通帳や帳簿などをつき合せて、その内容が正しいかどうか、しっかりと自分の眼で確認することが重要です。 極端なことをいうと、どんなに赤字が出ていても資金繰りさえできていれば会社は継続することができます。つまり、現預金の残高を注視するということです。ぜひ資金繰りをしっかりと見定められる社長になってください。 28/儲かる社長は、現在のお金の状況をおさえ、的確な経営判断ができる!
普通は、「どんぶり勘定」といえばダメ社長を象徴するような表現です。 しかし、あえてこの表現を使ったのには理由があります。「どんぶり勘定」には、「数字を見る際に枝葉末節にとらわれない」というニュアンスもあるからです。 前項目で「社長は数字を直視しなければいけない」と述べましたが、なかには度を過ぎて数字にこだわる方も少なからずいます。 社長が考えるべき、優先順位の 1位は、儲けを出すことではないでしょうか。 まれですが、経理に妙に細かい社長がいます。 九州で婦人服小売店を経営していた X社長は、お金に関することはすべて自分でチェックしなければ気が済まない性格でした。そんな社長が着目するのは、「無駄な経費を使っていないか」「計算間違いはないか」「仕入先からの請求書の金額は合っているか」といったことです。 帳簿や資料についても、とてもきっちりとファイリングしており、経理処理に関しては非の打ちどころがありません。どうやら 1日のうちの大半は経理資料を整理整頓する時間に費やしているのでしょう。コスト削減にもうるさく、たとえばインターネット回線などで安いところがあればすぐに乗り換えて節約します。 ところが、肝心の事業経営に関する売上や利益、今後の事業計画などについてはほとんど考えていないのです。 X社長のような事例は極端ですが、社長が経理の細かい部分を気にし過ぎて、事業活動で大切な事業計画を考える仕事やマネジメントがそっちのけになっている場合があります。コスト削減に力を入れているだけではビジネスは拡大しないのは当然ですが、それに気付いていないのです。 社長が数字を把握するときに大切なことは、事業に大きく関係する部分に絞ってポイントをおさえてチェックするということです。社長の仕事は多岐にわたりますから、時間を有効に活用しなければなりません。 事業経営はスピードが大切です。細かいところに時間を使う暇はありません。 それでは、社長が数字をチェックする際に、どんなポイントをおさえるべきかご説明します。業種によって多少異なりますが、おおむね「損益」「資産負債」「資金繰り」の3つの観点で検証することが重要です。 ①損益の状況「利益は出ているか」「前年同期と比べてどうか」「店舗別(事業部門別)でみてどうか」「原価率はどうか」「過大な経費はないか」 ②資産負債の状況「現預金の残高」「在庫の有高」「売掛金の金額と回収状況」「借入金の残高」「各勘定は前期と比べてどう変化しているか」 ③資金繰り( 6カ月 ~ 1年間)「現金売上、売掛金の回収見込」「仕入・諸経費の支払予定」「借入の返済予定」「その他の入出金予定」 それぞれについて、最低でも月 1回はチェックする習慣をつけましょう。とりわけ、現預金の残高や売掛金の回収状況など、資金繰りに関係する項目は頻繁なチェックを要します。数字をチェックしただけでは意味がありません。 大切なことは、こうした数字を把握したうえで事業活動の今後の方向性を判断するということです。店舗別や部門別の収益を見て足を引っ張っているところがあれば、何らかのテコ入れして改善するのか、あるいは撤退を考えるのか、そこで社長の経営判断が求められます。 会社にとって、数字はイコールお金です。規模が大きくなればなるほど、数字の変化を素早く読み取って経営の舵取りを行うことが重要です。 29/儲かる社長は、数字を把握する時はポイントをおさえ、利益を生み出す事業に力を入れる!
「無借金経営が理想」と考えている社長が多いようです。「借金」というと、なんとなく後ろめたい印象があるかもしれません。 しかし、実際は、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることは、会社の信用を高めることにつながります。事業拡大のために設備投資をするというような名目がしっかりとしていれば、金融機関は成長する見込みのある会社のように認識します。 一方、無借金経営を続けていた会社が、資金が足りなくなって銀行へ融資を依頼しても、断られてしまうことも多々あります。金融機関からすると、融資実績がないために、返済能力がわからず信用ができないというふうに思えてしまうのです。 よく銀行は「晴れた日に傘を貸そうとするが雨の日には傘を取り上げる」といわれます。これは、会社の業績がいいときには「融資はいかがですか」と積極的に営業に来るのに、悪化すると融資を頼んでも断わるという銀行員の態度を揶揄したものです。 儲かる社長は、できるだけ多く借金をしてそれをうまく活用できる人です。 項目 27でご紹介した V社長は、「銀行から借りられるだけ借りる」という主義で、いつも目一杯の融資を受けていました。融資を受けた資金を活用して、会社を徐々に成長させており、規模が大きくなればさらに追加で融資を受けてさらに利益を拡大します。基本的に銀行は、融資した実績のある企業へは繰り返し融資をしてくれます。 V社長が優れているのは、銀行から多くの融資を受けるノウハウを身につけているだけではなく、融資によって調達した資金をうまく活用しているという点です。 銀行の融資は、通常「資金使途」つまりお金の使いみちを決めてから実行されます。たとえば「新店舗を出店するための資金」「売掛金回収までの諸経費支払いのための資金」などといった具合です。「お金に色はない」とばかりに、お金の使いみちを決めてもその通りにしない中小企業の社長が多いだけに、 V社長のこの姿勢は際立ちます。 そして次期の決算発表会で、「 ○ ○銀行さんの資金を活用して新事業を始めたところ、これだけの利益を出すことができました」と説明するのです。これで V社長と銀行との信頼関係は厚くなり、さらに融資を受けやすくなります。 ただ一方で、企業の倒産原因の1つに「借入過多」というのがあります。 たしかに「借金を増やすことは危険」という側面もありますが、「借入過多」に陥るのは融資金をうまく活用できなかったことが原因です。 実際に私が見た事例を3つほどご紹介します。 ①投資判断の誤りによる失敗 借入金を利用して投資したけれど、思うような利益が得られず赤字がかさんで資金がショートしたというものです。これは、本業以外の事業を始めようとして、高額の融資を受けて設備投資を実施したというようなケースによく見られます。 ②借金を返すための借金が膨らんだ 実はこれは、多くの中小企業が陥っていることです。借金を返済するための資金として、銀行以外のところからも借金をして雪だるま式に増えてしまった状態です。収益が伴わっていないので、いつか限界が訪れます。 ③借金を自分の金だと勘違いする「そんなことはないだろう」と思うかもしれませんが、結構こういう社長も多いのが実態です。 借金で資金に余裕ができると、リスクの高い投資に手を出したり無駄なコストを増やしたりと、正常な経営判断ができなくなります。ひどい場合は、社長個人の高級車を買う資金に流用しているようなケースもあります。すると、収益が乏しくなり資金も尽きてしまい、借金の返済負担だけが残ったという事態です。 この3つの事例を反面教師としていただき、同じ轍を踏まないように留意してください。こうした事態に陥らない限り、借金はできるだけ多くしてうまく活用することが事業を拡大するために有効です。 30/儲かる社長は、金融機関から効果的に融資を受け、会社を成長させている!
「メインバンク」に依存し過ぎるのは危険です。 私は中小企業の社長に、少なくとも 3行以上の銀行と取引し、できるだけ分散して融資を受けることをお勧めしています。 たしかに、複数の銀行と付き合うのはいろいろと手間や時間がかかるのは事実です。 しかし、 1行のみだと銀行内での事情により、資金繰りが厳しい時や設備投資を行いたい時に、資金調達できないかもしれません。 3行以上の銀行と取引しておけば、1つの銀行がなんらかの事情で融資を渋った時でも、別の銀行が支援してくれる可能性があり、資金の調達手段の幅が広がるというメリットがあるのです。 ところで、「銀行」といってもさまざまな業態に分かれています。メガバンク、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合のほか、政府系金融機関(日本政策金融公庫や商工組合中央金庫)もあります。 一般にメガバンクはドライだと認識してください。 むしろ、地域に根差した地方銀行、信金、信組のほうが「地元の企業を支援する」という意識が強いので、何かと無理を聞いてくれる可能性が高いのです。政府系金融機関は、「民間金融機関から融資を受けにくい中小企業を支援する」という目的の下に存在しているため、少々赤字でも踏み込んで融資してくれます。 これらの金融機関を上手に組み合わせて預金や融資の取引をすることで、まとまった資金が必要になったときも首尾よく融資を受けることができるようになります。 また、銀行の担当者の能力は個人差が大きいものです。担当者が、どれだけ会社のことを理解してくれて積極的に動いてくれるかで、資金調達の可否が左右されるといっても過言ではありません。 ここでは、複数の銀行と取引することによって、優秀な担当者と巡り会えた社長をご紹介します。 九州で高齢者介護のビジネスをしている Y社長は、 5年前に異業種から参入したばかりですが、地元の金融機関 5行から少しずつ融資を受けていました。わずか 5年で地域では 1、 2位を争うほどの売上を達成するようになり、新しい施設をつくることを計画していました。 そこで、取引銀行である第二地方銀行へ融資を相談したのです。 今回は 1億円という高額融資の申し込みだったため、銀行の担当者(支店の次長)も二つ返事というわけにはいきませんでした。 ただ、 Y社長は普段からこの担当者と密に情報交換をしていたので、担当者も「なんとかできないものか」と真剣に考えてくれたのです。 数日後、担当者が持ってきてくれたのは、「うちの銀行と日本政策金融公庫が協調して融資を検討することにします」という話でした。 Y社長は、まだ日本政策金融公庫から融資を受けたことがなかったので、「そんなことができるのか?」と半信半疑でした。 その後、 Y社長は、事業計画書を作成して担当者と一緒に日本政策金融公庫へ行ったのです。 実は、この時日本政策金融公庫にいて、 2人と応対したのが私でした。 第二地銀の支店の次長は、 Y社長のことをよく理解している様子で、「うちの銀行としてもできるだけ融資を実行したいのですが 8000万円までが限界なので、公庫さんで残りの 2000万円を支援してくれないか」という趣旨の話を持ちかけてきました。 Y社長の会社の業績と今回の計画を見たところ、高額投資なのでやや背伸びしている感がありました。 ただ私は、普段からこの会社を見ている地元の銀行が大半を融資するとなれば、政府系金融機関としても支援するべきだと思い、 2000万円を融資する方向で検討しました。稟議を経て最終的に融資が決定し、 Y社長の新しい施設がオープンしたのです。 普通は、これほど企業のことを思って熱心に動いてくれる銀行員はなかなかいません。 ところが、この担当者は、熱心なだけではなく企業の実態をしっかりと見極める眼を持っていました。 Y社長が複数の金融機関とつき合っていたので、この優秀な担当者と巡り会えたのです。あなたの会社でも、ぜひ積極的に複数の銀行との取引を行うことをお勧めします。 31/儲かる社長は、多くの銀行と取引をし、良好な関係を築いている!
社長が資金調達のノウハウを持っているかどうかで、企業の維持力が決まるといっても過言ではありません。 ここでは、資金調達手段としてもっとも一般的である、融資をうまく受けるためのコツをお伝えします。 どの銀行も、融資の業務は欠かせないもので、積極的に融資をしたいと考えていますが、不良債権を出すわけにはいきませんので、「業績のいい企業にたくさん融資する」というのが基本的な姿勢です。 銀行のいう「不良債権」とは、返済が遅れている融資先だけではありません。たとえ返済をきちんとしていても「不良債権」と見なされてしまうことがあります。あなたの会社が「不良債権」だと認定されてしまうと、融資を受けるのがとても難しくなります。 どういうことかご説明しましょう。銀行は「自己査定」という作業を行っています。 これは、すべての融資先企業について営業実態を調べて、「正常先」「要注意先」「破たん懸念先」など、 5段階(「要管理先」を入れると 6段階)の「債務者区分」をつけるというものです。「債務者区分」を決める基準は、金融庁が発行している「金融検査マニュアル」に記載されています。これは誰でもインターネットで見ることができます。 この「債務者区分」で「要注意先」以下になると「不良債権」のような扱いになります。「要注意先」以下の企業へ融資すればするほど、銀行の決算に損失を計上する必要が出てくるからです。 また、銀行が融資をするかどうかを決めるのは、「債務者区分」だけではなく、「信用格付」と呼ばれる各銀行が独自に定めた基準によるランク付けも大きく関係します。「債務者区分」も「信用格付」を決める大きな要因は会社の財務諸表の内容ですが、必ずしもそれだけではありません。企業の技術力や経営者の能力など「定性面」の評価や、今後の見通しなども大きなファクターになります。中小企業には財務諸表に表れない強みがあるという考え方があるからです。 そのため、金融庁の「金融検査マニュアル」には「別冊(中小企業編)」というものが準備されており、財務面に問題があっても上位の「債務者区分」に引き上げるための内容や事例が紹介されています。たとえば、「経営者と企業を一体として判断する」「技術力や販売力を評価する」「経営改善に向けた取り組みを評価する」などです。 したがって、財務内容に難がある中小企業が、銀行から融資を受けやすくしようと思えば、これらを意識してカバーできる材料を銀行へ提供する必要があります。 社長のなかには、銀行員が自己査定をするためにヒアリングしようとすると、面倒がって非協力的な対応をする人がいます。しかしそれだと、財務内容だけで債務者区分を判断されて、「要注意先」以下に区分されかねません。 ですから、銀行員とは円満な対応を心がけるとともに、自社の強みや将来性をしっかりと説明しておくことが重要です。 このように、財務内容に問題があっても、融資を受けるコツを把握しておけば、円滑に資金を調達できる可能性が高まります。 項目 27でご紹介したアパレル会社を経営する V社長は、毎年決算書ができ上がると銀行の担当者への説明会を開催しています。 決算書はいつも黒字というわけではなく、大きな赤字を計上することもありました。決算書が赤字だと、それだけで「債務者区分」が「要注意先」以下になる可能性があります。 V社長は「金融検査マニュアル別冊(中小企業編)」をよく読んでいたので、それを知っていました。そこで、決算説明会において、次のようなことを説明し、暗に「うちは正常先である」ということをアピールしていたのです ・赤字は一時的な要因であり、来期は黒字に戻る ・当社のブランド力が高いことから優良な新規取引先を確保している ・在庫ロスを少なくする策を実施してキャッシュフローを増加させる V社長は、こうした内容について、単に口頭で説明しただけではなく、「経営向上計画書」といった冊子にまとめて、銀行員に手渡していました。銀行員にとっても、当社の「自己査定」を行う際に、稟議書に資料を添付できるので、とてもありがたいことなのです。 なかなか V社長の真似をするのは容易ではないと思いますが、銀行員に対してできるだけいい材料を提供するように心がけることが、円滑な資金調達のコツなのです。 32/儲かる社長は、円滑な資金調達のコツを体得している!
「銀行員なんて堅物で融通がきかないイヤな連中だ」 社長のなかには、こう思っている人もいるでしょう。 たしかに、融資の話をするときなどの銀行員は、上から目線の対応で会社の営業実績にケチをつけるため、イヤみな印象を与えることがあります。 ただ、銀行員も同じ人間です。親密につき合えば面白いところもあるものです。とくに勉強家で賢い人物が多く、職業柄、地域や経済情勢にも詳しかったりします。 そこで、私がお勧めしたいのは、銀行員と飲食を共にする機会を増やしてみては、ということです。「銀行員と仲良くなって融資を受けやすくする」という目的だけではなく、経営者として知っておくべき金融機関の動向や、地域の情報を得るためでもあります。 仕事上のつき合いだけでは、お互い遠慮して話せないことでも、酒を酌み交わすことで本音をいえるに違いありません。 ただ、最近では銀行には倫理規程があって、個別の取引先企業の社長と気軽に飲みに行くということがやりにくい時代になりました。銀行員と社長が癒着して、「情実融資」などの不正につながる可能性があるという考えがあるからです。 とくに、私が勤めていた政府系金融機関は厳しいオキテ(?)があり、社長たちと飲める機会はほとんどありませんでした。民間金融機関の場合は、そこまでガチガチに禁じられてはいないと思いますから、誘ってみると応じてくれる可能性は十分にあります。 経営者と銀行員が一緒に飲食できる地元の商工会議所の行事などに参加すれば、誘う機会も出てくるでしょう。 九州で工務店を経営していた Z社長は、地元の商工会の副会長であったことから、銀行や信用金庫の支店長たちとよく一緒に飲んでいました。支店長たちのなかには、とても酒好きな人物もいて、 Z社長と一緒になって陽気に飲んでいる姿を見たことがありました。 私が観察した印象では、 Z社長は、ただ楽しく酒を飲んでいるだけのようにも見えましたが、転勤で新しく赴任してきたばかりの支店長ともすっかり意気投合していました。 Z社長は、銀行員たちと仲良くなるために積極的に一緒に飲んでいたのです。飲食を共にすることは、互いの距離を縮める効果があるとつくづく感じます。 その結果、 Z社長の会社は融資を受けることにあまり苦労せず、事業を順調に運営することができています。それだけではなく、商工会に所属する他の社長たちの会社についても、支店長たちに新規融資先として紹介していました。 これは、紹介された社長たちにとっても、融資を伸ばしたい支店長たちにとってもありがたいことなのです。 逆に支店長たちも、地域で建物を建築する予定の人がいる時には、 Z社長の会社を紹介することもありました。 もっとも、銀行員と飲みに行きさえすればこうしたメリットが享受できる、というわけではありません。普段から銀行員と積極的に接触して、情報交換を行う必要があります。 そのためには、銀行員がやって来るのを待っているだけではなく、定期的に社長自らが銀行へ出向く姿勢も必要です。前述の Z社長は、毎月 1回月次の試算表が出たら、取引している銀行 5行へ出向き、状況を説明したり世間話をしたりしていました。 試算表や決算書は赤字の時もありましたが、「 Z社長ならすぐに業績を挽回できるだろう」と銀行は Z社長の経営者としての能力をよく理解していました。 また、 Z社長のほうも、一緒に飲んで本音で語っているので、銀行員に対していいたいことを平気でいえる関係を構築しています。 とくに地方の会社の社長は、「銀行からにらまれるとまずい」という意識が強く、銀行員に自己主張できない人が多いのが普通です。 しかし、銀行員側からみると、銀行のいうことをなんでもハイハイと聞く社長だと、「融資判断がグレーの場合は断ってしまうほうが楽だ」と安易に考えるものです。 逆に、自己主張をしてくるうるさい社長であれば、「簡単に融資を断ることはできない」と思うのが人情なのです。 銀行に対して、クレーマーのように理不尽な要求をするのは逆効果ですが、 Z社長のように本音をいえる関係をつくって、いうべきことはいうという姿勢を持つことが大切です。 33/儲かる社長は、銀行員に対して、本音がいえる関係づくりができている!
以前テレビで、倒産寸前の会社の在庫を二束三文で買い叩き、自分の店で低価格で売りさばくことで、とても儲かっているという社長が紹介されていました。 私の印象ですが、出てくる社長たちはみな人相が悪い感じがしました。 たしかに、会社の粗利益を上げるために、仕入価格などの原価を抑えるのは正しいやり方です。かなり以前から、大企業が外注先である中小企業の町工場に対して、一方的に単価の切り下げをするという現象が見られます。 しかし、中小企業の場合は、過度に仕入れ値や外注費用を値切ることばかりしていると、「あの社長はケチだ」という評判が立つばかりではなく、仕入先や外注先を失う結果になりかねません。 したがって、仕入先や外注先は、会社を外部から支えてくれるよきパートナーですから、自社だけではなく、彼らも儲けることができるように配慮することが大切です。 それは、たとえ「値切るのが当たり前」という風潮がある大阪でも、しっかり根付いています。売るほうも買うほうも負けずに交渉していますが、「落としどころ」をわきまえており、お互いが儲けられるところに落ち着いています。 外注費を値切るどころか、外注先に高い費用を支払って成功している社長がいます。 あるサービス業を営んでいる a社長は、受注は好調なものの、それを処理するのに人手が足りず、せっかく発注してくれたお客様へのサービス提供が遅くなっているのが悩みの種でした。 そこで、当社のサービスを代行して実施してくれるような企業を外注先として確保しようとしました。しかし、最初はかなり安い金額で募集したためか、スキルの面から安心して依頼できる企業は手を挙げてくれませんでした。 困り果てた a社長は、思い切って外注費として支払う単価を、当初の 3倍の額に上げて募集したのです。同じようなサービスを提供し、やはり外注を活用している同業者と比べても、倍以上の好条件です。 ただ、それでは外注費の支払で資金が嵩むため、外注先への支払をもう 1カ月ずらし、お客様から入金があった後に支払うという条件をつけました。外注費が嵩むことによる利益の圧迫については、今までより多くのお客様を集め、優秀な外注先に迅速に対応してもらい、売上に変えることでカバーしようと考えたのです。 こうして単価を上げて外注先を募集したところ、優秀な外注先企業を 10社以上確保することができました。外注費の支払が 1カ月ずれた分、資金繰りの面でも問題ありません。 そして、 a社長のもくろみどおり、うまく事は進んでいきます。 当社は受注活動に専念できるようになり、たくさんのお客様を集めて売上・収益を拡大させることができたのです。外注先にとっても他社の仕事を請けるよりも大きな収入が得られるという、お互いハッピーなビジネスモデルになり順調に推移しています。 昔の近江商人の心得として有名なものに「三方よし」という考え方があります。これは、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」というもので、「売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならない」という意味です。仕入先や外注先の儲けも意識して商売することは、間接的に地域に貢献することになり、「世間よし」の1つだと思います。 この「三方よし」の心得は、現代でも変わらず企業経営で忘れてはならないものです。 また、とくに取引先が「親しい間柄」の場合こそ、しっかりと相手を儲けさせる意識を持つ必要があります。社長のなかには、仕入先や外注先が親しい間柄の場合に、「特別に安くしてよ」と気安く値切る人がいます。 いくら親しくても、それをいいことに安くしてもらおうとすれば、相手は断ることなく応じてくれたとしても、心のなかでは「この人はいいお客様ではない」と思うに違いありません。「親しき仲にも礼儀あり」を忘れず、正規の料金を支払ってこそ、お互いの取引が継続するのです。 34/儲かる社長は、自社だけではなく、仕入先の儲けについても考えている!
日本の町工場などでは、頑固一徹の職人のような社長が、品質の高いモノをつくり出すことに一生懸命に取り組んでいます。それ自体は、日本の製造業の強みであり、今後も大いに品質を追求してほしいところです。 しかし、それだけでは、苦労するばかりで売れないという厳しい現実に直面してしまいます。 儲かる社長の特徴は、商品をつくること以上にマーケティングに工夫を凝らしているということです。「マーケティング」とは、いろいろな解釈がありますが、ごく簡単にいうと「お客様を集めて売るための活動」ということです。 具体的には、「マーケティングの 4 P」といわれます。製品( Product)、価格( Price)、流通( Place)、プロモーション( Promotion)の4つのツールを活用し、標的顧客(市場)に受け入れられる組み合わせを検討し、戦略的に販売強化を図ろうとする考え方です。 買ってくださるお客様を想定したいい商品をつくることは、マーケティング活動の1つですが、ごく一部に過ぎません。実際に売るためには、その他の3つのツールもうまく活用する必要があります。 とりわけ中小企業の場合は、業種によって多少の差異はありますが、プロモーション( Promotion)、つまり「販売促進」の活動が重要な意味を持ちます。広告宣伝、人的販売、インターネットマーケティング、ダイレクトメール、チラシなどの「販売促進」をうまく行っているかどうかは、商品やサービスの売れ行きに大きく影響していきます。 ここで、士業事務所の例をあげて説明します。 東京で税理士事務所を営んでいる b税理士は、創業以来顧問先を順調に増やしており、職員を 50名ほど抱える会社に育てています。 税理士事務所は、顧客となる企業が選ぶ時の選択基準が「サービス料金」になりがちです。 ところが、この事務所のサービス料金は、平均的な金額よりもかなり高いのが特徴にもかかわらず、順調にお客様である顧問先を増やしているのです。 では、この事務所が取り組んでいる販促活動を具体的に紹介しましょう。 まず、ホームページ上に、事務所の職員たちの顔写真と自己紹介文を掲載し、所長である b税理士も「代表者あいさつ」のページでにこやかな笑顔で、事務所の経営理念を説いてます。 ここまでは、他の税理士事務所でもやっていることですが、 PPC広告(クリック課金型広告)など、インターネット上の広告を徹底的に活用しているところが特徴です。 PPC広告とは、たとえば検索エンジンで「税理士 東京」と検索すると、結果ページの上部や右に「税理士なら ○ ○事務所」というように表示される、アレです。つまり、クリックすると、事務所のホームページに飛ぶ仕組みを導入したのです。 そして、ホームページから問い合わせや面談の申し込みがあれば、基本的には所長である b税理士自ら対応することで、かなりの確率で顧問先になってくれるそうです。 最終的には、所長の力量が決め手となりますが、その存在を知ってもらえないと意味がありません。知ってもらうための仕組みをうまくつくっているというわけです。 もちろん、企業の事業内容によっては、新聞折り込みチラシなどアナログの広告宣伝ツールのほうが適している場合もあります。 マーケティング活動は、業績を上げるためにとても重要な取り組みですが、その反面、期待通りの効果がない場合も多く、資金だけがなくなることもあり得ることです。 また、繰り返し行うことによって、ようやく効果が表れることもあります。一度実行しただけで「効果がない」と判断すると、その後に得られるかもしれない利益を逃す可能性もあるのです。「どうせ効果がないからやらない」と考えて全く実行しない社長もいますが、何もしなくても売れる商品など滅多にありません。 したがって、マーケティング活動は、結果を見て簡単にあきらめるのではなく、トライ&エラーを繰り返しながら、粘り強く取り組むことが大切です。 35/儲かる社長は、自社に合った販売促進の方法を試行錯誤のなかで生み出している!
営業を苦手としている社長は多くいますが、はっきりいってそれだけで損しています。 本来、社長が一番、会社のなかでもっとも商品やサービスの知識に詳しく、営業能力に長けているはずです。 社長が営業に出れば、営業先も役職者が応対してくれる可能性が高くなり、決裁権を持つ人に会える確率が上がりますから、取引が決まるまでのスピードが速くなります。 項目 24で紹介した食品製造業の T社長は、自ら積極的に営業活動をしています。 かつては営業に苦手意識があり、いつも社内にいましたが、セミナーに出たことがきっかけで、いてもたってもいられなくなり、しばしば営業に出かけるようになりました。 終日、飲食店を中心にまわって、自社の製品を説明したり情報交換をしたりするという活動を繰り返しています。社内にいる時間よりも外に出て営業をしている時間のほうが、はるかに長いのです。既存の取引先だけではなく、まだ取引がないところも飛び込みで営業を仕掛けています。 こうして T社長は次々と新規の取引先の開拓に成功して、トップセールスとなりました。それだけではなく、社内の若手営業マンたちが、社長の姿に刺激され生き生きと営業をするようにもなったのです。 また、東京で不動産業を経営している c社長は、都内で遊休不動産を持っている地主などに対して、繰り返し営業をかけることで業績を上げている人です。 c社長の営業は次のスタイルです。 都内で活用されていない土地の情報を入手したら、その土地が分譲住宅で販売したりなどで十分に収益が得られるか検討します。そしてその土地には価値があると判断できれば、そのオーナーに会いに行って、「売ってくれませんか」などと説得するのです。 ただ、すでにそのような土地は、他の不動産会社も目をつけて営業しているにもかかわらず、オーナーが「うん」といわず、そのままになっているケースが多いようです。 ある時、 c社長は住宅建築地として最適な 60坪ほどの土地を発見し、 70歳くらいのオーナーに売ってくれるように営業に行きましたが、「先祖代々の土地を売るものか」とテコでも動かない態度でした。それでも、 c社長はあきらめず、何回も何回もアプローチしました。 そして、ついに通い続けて 13回目のことです。そのオーナーの家のドアが壊れていたため、修理をしてあげて、ようやく「土地を売ってやるよ」という返事をもらうことに成功したのです。 たとえ社長が自ら実施しても、営業はうまくいかないことがありますが、あきらめずに何回もアプローチすることで目的を達成することがあるということを c社長の事例が教えてくれます。「しつこく営業しても、相手は余計に買いたくなくなるから無駄なことだ」 よく営業が苦手な社長はこういいますが、 1回ダメだったからとあきらめていませんか。何回も顔を合わせて c社長のように成約につながることもあるのです。 もう 1人、営業で大きな売上を勝ち取った社長をご紹介しましょう。 インターネット関連の企業を経営している若手経営者の d社長は、ある時「 ○ ○社長に会いにいって取引してもらう」と決意して実行しました。相手の社長の名前を聞けば、誰もが「あの社長に会えるわけがないから無茶なことするな」というような著名人です。 ところが、 d社長は、いろんな人との人脈を辿って、ついにその人に会うことを実現しました。それどころか、年間数億円の受注を獲得するのに成功したのです。 その後、 d社長の会社は順調に業績を拡大しており、数年後の IPOを目指して取り組んでいます。 私は、 d社長からこの話を聞いた時に、「やはり成功する社長は抜群の行動力と営業力を持っているなあ」と感銘を受けたものです。 業種によっては、「うちは営業などする必要がない会社だ」と思う社長がいるかもしれませんが、営業しなくてもいい会社など存在しないでしょう。 3つの事例が指し示すとおり、社長自らが積極的に営業に出て得た成果というものは、本当に大きく売上に貢献します。苦手な人も少しずつ営業活動をしていきましょう。 36/儲かる社長は、自ら営業活動に出ることの意義を知っている!
江戸時代の商人のエピソードで、火事が起きたとき真っ先に持ち出そうとしたのは、お金でも商品でもなく、「顧客リスト」だったというのがあります。 お金や商品がなくても、「お客様のリストがあればまた商売を立て直せる」と考えていたからです。 これは現代のビジネスでも全く同じことがいえます。儲かっている社長は、顧客リストを大切にしているものです。 間違いなく、儲かっている社長の顧客リストの数は莫大です。当社の商品やサービスを買ってくれた実績がある人や企業だけではなく、少なくとも資料を請求した人や問い合わせをした人なども取り入れています。 当然、ダイレクトメールやニュースレターなどでの販促活動ができますので、マーケティング上、顧客リストの数が競合と戦うための大きな武器となるのです。 もちろん、「顧客リストを金庫に入れる」というのはお金よりも大事であるという比喩表現であり、実際は金庫には入れませんが、万が一なくなったときのためのバックアップも用意したりして、とにかく厳重に保管しています。 それに対してダメ社長は、目先の売上やお金に目が向いてしまい、顧客リストの整理までは手がまわっていないものです。顧客リストがなければ、その都度大きな金と労力がかかることに気がつきません。 また、最近は「リストマーケティング」といわれるマーケティング手法が利用されるようになりました。それは、次のようなものです。 私は半年ほど前に、あるプロゴルファーが出したインターネット広告をクリックしたところ、「ゴルフに悩む人が劇的にうまくなる動画を無料で配信します」というページに飛ばされ、「無料」に引かれて思わず申し込みをしてしまったことがあります。かつてゴルフを熱心に練習したにもかかわらず、なかなかうまくなれなかったという苦い思い出があったからです。 登録後、メールで毎日 1回ずつ計 10回ゴルフレッスンの動画の URLが届きました。この動画はとても珍しく興味深いレッスンで、私は食い入るように観てしまいました。 10回の動画配信が終わったら、今度は毎日メールマガジンが届くようになりました。「ダフリやトップを簡単に治す方法とは?」「ドライバーの飛距離が 10ヤード伸びた人の共通点」など、ゴルフ下手にとっては興味を引くタイトルで、つい読んでしまいました。 その後、 1週間に 1回ほどの頻度で、メールマガジンに「究極のぶっ飛びドライバー」「 1カ月でスコアが 10縮まるレッスン DVD」など、商品の宣伝記事も記載されるようになったのです。 私は、「なるほど、結局これらを売って儲けようとしているのだな」とようやく気付いたのですが、売っている商品もとても魅力的でほしくなっている始末です。 このように、インターネットを活用して、無料の「オファー」といわれる動画や資料などが得られることを餌にして、メールアドレスを集めて、顧客リスト化する手法が広く活用されています。 とくに、 B to Cのビジネスにはとても有効ですので、検討してみてはいかがでしょう。 まずは、ターゲットとなるお客様候補の人たちがほしがるようなものや情報を考え、それを無料あるいは割引価格で提供することで、メールアドレスや住所を取得する仕組みをつくります。この段階では、あくまでもリストを集めることに目的を集中するのです。 その後も、お客様候補先へのアプローチを続けて、忘れた頃に売りたいものの宣伝をするという段階を踏んで実施するようにします。 もちろん、 B to Bのビジネスにおいても、顧客リストを整理して活用することがとても重要です。「固定的な取引先」「たまに発注がある先」「以前取引していたけれど最近はない先」「営業して感触が良かった先」「新規開拓をすべき先」などにリストを分けて、パンフレットを送ったり営業をかけたりすれば、売上の拡大につながります。また、営業先企業の役職者や担当者の名前や性格、趣味嗜好などもリストに記録しておけば、会った時に気の利いた話題を持ちかけることもできます。 どんなビジネスでも、顧客リストは重要なものです。日頃から顧客リストをしっかりと整理して、それをマーケティングに活用していきましょう。 37/儲かる社長は、顧客リストを活用し、それをもとに売上をつくっている!
「新規客を追いかけるよりも既存客を大切にして繰り返し売るべき」「いや、既存客へ売るよりも新規客を開拓すべき」 自社の営業の強化を考えるとき、どちらにより力を入れるべきか悩んでいませんか? 数多くの会社と社長を見てきた経験から判断するに、既存客に対するよりも、新規客の開拓に時間とコストをかけるべきと私は見ております。 たしかに、既存客とは固定的な馴染みのお客様であり、ある意味当社のファンですから、「今度 ○ ○という商品が出ましたからいかがでしょうか?」とアプローチすることで、比較的簡単に購入してくれます。それに、ある程度放置しても繰り返し利用してくれますので、それほど手厚くアプローチしなくてもいいでしょう。 しかし、いくら馴染みのお客様といっても、「お客様は浮気者」と考えておくほうが現実的なのです。 たとえば、美容院を想像してください。 1年以上通ってくれたお客様でも、近くに安くて技術力が高い店ができたらそちらへ浮気してしまうということがよくあります。 私の知っているオーナー店長も、ずっと来てほしいと思ったお客様に化粧品をプレゼントするなどサービスをしていたのに、あっさりと逃げられてしまったと話していました。 こういう時は「あんなにサービスしたのに……」と悔しがっても仕方ありません。おそらくこのお客様は、この美容院が気に入らなくなったというのではなく、新しい美容院の魅力に惹かれたということなのでしょう。 そういうこともあるため、固定的なお客様に手間やお金をつぎ込むよりも、新規のお客様の開拓に力を注ぐことをお勧めします。 とはいえ、どんなビジネスでも、新規のお客様を開拓することは容易ではありません。新規客を開拓するコストは、既存客を維持するコストの 5倍かかるともいわれています。 しかし、消費者ニーズや環境変化が激しい時代ですから、それだけ既存客の心をつかみ続けるのは難しいのです。 年々、流行のスパンが短くなっているように思いませんか? 自社の商品やサービスを魅力あるものになるよう研ぎ澄まし、マーケティングの手法を勉強して、自社のビジネスに合った方法で地道に取り組む必要があります。新規開拓の営業も同時に行っていきましょう。 機械部品加工業を経営していた e社長は、高い加工技術を背景に大手企業 1社の専属として仕事をしていました。取引先は安定した大企業ですから、 e社長の会社は長年にわたって業績が順調に推移していました。 ところが、 10年ほど前から、取引先企業がコストカットを求めるようになり、しだいに発注する加工単価を切り下げていったのです。 そのため、安定して収益を上げていた e社長の会社も、年々利益が低下してしまいました。毎年のように一方的に単価が切り下げられましたが、仕事をくれる大切な取引先で立場が弱く、とても文句などいえませんでした。 単価の切り下げはその後も続き、ついに e社長の会社が赤字に転落してしまったのです。「これはたまったものではない」 そう思った e社長は、それまでは当然のように 1社専属で受注していましたが、裏で新規取引先の開拓のための営業活動を始めました。それまで新規開拓はおろか、営業など経験していなかったので、どこに行ってもオドオドしてしまい、かなり難航しました。 それでも、繰り返し候補先企業へアプローチを継続した結果、 6社の新規取引先を確保することに成功したのです。いずれも中小企業ですが、加工単価も十分な水準で了解してくれました。 この社長は、人と会話することに苦手意識があり話下手でしたが、誠実に自社の加工技術の特徴を説明していたので、相手先企業の信頼を得ることができたのです。 そしてある日、現取引先の企業から、また単価切り下げの通知が舞い込んできました。 それに対し、 e社長は「もうお宅とは取引しません」といい放ったのです。その後は、新規取引先から順調に受注があり、業績も回復することができました。 かつての e社長のように、取引先が少なければ、いいように振りまわされてしまうことがあります。そうならないように、できれば取引先は 5社以上確保できるよう新規開拓をするよう努めていただきたいものです。 38/儲かる社長は、新規開拓に力を入れ、将来に備えている!
「お客様はすべて平等に対応しなければいけない」 こんなことを考えていると、なかなか儲かる会社をつくることはできません。 私の事例で恐縮ですが、独立した当初は「小さな仕事も大きな仕事も同じように 120%の力を出そう」と考えていました。 最初は仕事がほとんどないため、やっと受注した 2名ほどのお客様からのコンサル依頼に対して、目一杯の時間と労力をかけて対応していました。そのため、 2名のお客様からはたいへん喜んでいただき、「すべてのお客様に全力を尽くす」ことが正しいと信じたものでした。 ところが、しだいに仕事が増えてきたため、すべてに関して同じように力を注ぐことを続けていたところ、処理の速度が遅くなり、結果的にお客様へ迷惑がかかるという事態を発生させてしまいました。「私の依頼はどうなりましたでしょうか?」と催促を受けるという、とても恥ずかしい状態に陥っていたのです。 そこで、それ以降は、受けた仕事を「利益金額はどうか」「自分の経験になるか」といった観点でランク付けして区別することに決め、下位ランクのものは、できるだけ効率的に進めるか他の人に振るようにしました。 その後は、仕事を区別することが定着して、それぞれのお客様への対応を早くすることが可能になったのです。 中小企業のなかには、独立当初の私と同じように、忙しい割に儲からないという状態に陥っているところが少なくありません。 たしかに「どんなお客様の仕事でも同じように対応する」という姿勢を貫こうとする会社は、一見、筋の通った誠実な会社のように見えます。 しかし、時間もマンパワーにも限りがあります。気付かないうちに、自社にほとんど利益をもたらしてくれないお客様に、多大な労力をかけていたというケースもあります。 では、「お客様を区別する」ための基準は何で計ればいいのでしょうか? もっとも重要なポイントは「利益」の観点です。単純にいうと「当社に利益をもたらしてくれる取引先へは手厚い対応をする」ということになります。 ただし、くれぐれも忘れてはならない大切なことは、短期的な視点ではなく、中長期的な広い視野に立って判断すべきであるということです。 新規取引先の開拓のための営業を行っていると、最初にかなり低い価格を提示してくるなど、やや無理な注文が入ってくる場合があります。経費を考えると赤字になるような条件だとしても、ただ断るのではなく、まずは引き受けることを前提に考えるべきです。せっかく新規に注文してくれたのにそれを断ったら、二度と注文してくれないからです。 もちろん、次回以降は適正価格を提示して、採算を確保する必要があります。 いつまでも無理をいうようであれば、その後の取引を消極的に考えなくてはいけません。ただ、まともなお客様であれば、最初は無理な条件を提示しても、当社の商品やサービスを気に入ってくれると、その後はきちんと適正な価格で払ってくれるはずです。 単に 1回の取引だけが採算が合わないと思って断ると、その後に得られる利益を逃してしまうこともあるのです。 また、お客様のなかには、取引額は小さくても当社を宣伝してくれたり積極的に他のお客様を紹介してくれたりなど、いい影響を与えてくれる先もあります。そのようなお客様にも、さらに積極的に時間をかけて対応するほうがいいでしょう。 このように、中長期的視点に立って、自社のお客様をランク付けし、それぞれに応じた対応を検討することが重要です。 たとえば、上位ランク 3割のお客様に対しては社長が定期的に訪問して感謝を伝える、逆に下位ランクに関してはニュースレターを送るだけにとどめるなどです。 数多くのお客様がいるビジネスモデルならば、月の購買価格に応じて割引をしたり何かプレゼントをしたりする方法が有効です。航空会社のマイレージカードのように、「ブロンズ」「プラチナ」「ダイヤモンド」のそれぞれのランク付けに伴ったサービスが提供できると、上位ランクのお客様が増えやすくなるでしょう。 中小企業は限られた時間とマンパワーのなかで、既存顧客を逃がさないようにして利益も向上させるためには、お客様を区別していくという姿勢が大切なのです。 39/儲かる社長は、お客様をランク付けで区別し、それぞれに合った対応を心がけている!
中小企業を経営する上で、「広告宣伝費」を必要な「投資」ととらえているか、社長によってずいぶん違います。あなたはどのように考えていますか? ちなみに、企業活動のなかでのお金の使いみちは、「投資」「消費」「浪費」の 3種類に分けられます。「浪費」とは、いわゆる無駄使いのことで、不必要な支出のことです。「消費」とは、企業活動を行うために最低限必要になるものへの支出です。「投資」とは、売上や収益を生むことを見込んで使うものです。 事業活動は、「リターン」を予測しながらリスクをとって「投資」を行っていくことによって継続されるものです。問題は、「広告宣伝費」を必要な「投資」として認識しているかということです。 業績が悪化すると、真っ先に「広告宣伝費」を削減しようとする社長がいますが、それでは残念ながら儲けを出すのは難しいでしょう。 つまり、儲かる社長は「広告宣伝費」を必要な「投資」ととらえて、しっかりお金をかけているのです。 ただ、「広告宣伝費」を削減したくなる気持ちもわからないでもありません。 おそらく中小企業が、「広告宣伝費」を削ってしまうのは、「その効果がなかなか見えない」という理由が背景にあります。過去に広告宣伝費をかけた結果、「新聞にチラシを入れても反応がない」「雑誌に広告を出しても問い合わせがない」「効果がない」と思い込んでいる社長も多いでしょう。 今やダイレクトメールを送っても、反応率は 1000人に 3人、 0・ 3%(センミツ)だといわれるほど低いものです。 広告宣伝の活動は、 1、 2回だけでは効果が表れず、繰り返し実施することで徐々に効果が表れてくるものが多いため、費用対効果の面で果たしてやるべきなのかと疑問に思えてくるということでしょう。 しかし逆にいえば、たとえ広告の反応率がセンミツでも、しっかり利益が得られるように工夫すればいいのです。 商品やサービス自体は非常にしっかりしているのに売れ行きがよくないのは、お客様が知らないのが原因であることも多いのです。多くのお客様に存在を知ってもらえれば、それだけ買ってくれる数は増えますし、さらに口コミで拡げてくれるかもしれません。 ところで、最近「無料で集客する方法」といったノウハウを提唱する人が多いですが、無料で集客するのには限度があり、広告宣伝費をかけて実施するのと比べるとはるかに時間がかかると認識しておきましょう。 ここで、私が見た事例をご紹介します。 同じ商店街のなかに、一見似たような婦人服小売店(ブティック)がありました。片方の店の社長は、「うちはお客様がお客様を呼んでくださる」といって、広告宣伝費をほとんどかけずに経営していました。 もう一方の店舗のほうの社長は、それと対照的で、定期的に折込チラシや地域情報誌への広告掲載などを実施しており、広告宣伝費もそれなりにかけている人でした。 いうまでもなく、2つの店舗の売上を比べると、大きく差がついて後者のほうが圧倒的に順調に推移していたのです。 もちろん、その差が発生したのは、品揃えや店頭での接客などによるところもありますが、明らかにそれだけではないといえるほど、圧倒的な差となったのです。 今や一口に「広告宣伝」といっても、その種類はさまざまです。昔ながらの「チラシ」や「ダイレクトメール」だけではなく、「 FAXDM」「 PPC広告」「バナー広告」など新たな方法もたくさんあります。 また、お金がかからない方法として、新商品や新サービスを始めるときなどにメディアに「プレスリリース」をすると、記事として紹介してくれる可能性もあります。 中小企業が維持発展するためには、業績が厳しい時こそ、広告宣伝活動を行っていくことがとても重要なのです。 40/儲かる社長は、苦しい時でも広告宣伝費にお金をかけることの重要さを知っている!
「うちの商品は高齢者向けだけど、高齢者はパソコンを見ないから、ネット販売をしても売れない」 このようなことをいう社長がいますが、今や高齢者の多くがインターネットを活用して情報を得たりショッピングを楽しんでいます。 それほど I Tは私たちの生活に浸透していますが、一方で苦手意識のある社長も少なくありません。 「ITの導入・活用における課題」という調査で、「経営者の IT活用能力が不足している」を上げた小規模企業が、 28・ 6%あるところが注目に値します。社長は忙しいので、なかなか苦手な ITを勉強する時間がないということでしょうか。 しかし、苦手といって逃げていると、いざ I Tを活用しようとした時に、とんでもない失敗をする可能性があります。 全国一円に個人のお客様を数万人抱えているサービス業を経営している f社長は、 ITに苦手意識がありました。 数年前から、顧客管理のために ITを導入していたのですが、使い勝手がよくないということで、ゼロから構築し直すことを決めました。 システム会社から「必要金額が 4000万円を超える」といわれ、「そんなにかかるのか」とびっくりしながらも、仕方ないと思い開発を依頼しました。 f社長はシステムの内容については、最初から関与するつもりはなく、 IT担当の社員に任せっきりでした。 いざ、システムができ上がったとのことで走らせてみると、立て続けに不具合が発生し、 10日以上業務がまともにできないという状態に陥ってしまったのです。 その後ようやく復旧し、なんとか正常に動くようになったのですが、ひどい出来栄えで、以前よりもスピードが遅いなど、使い勝手が悪いことが判明しました。「高額を投じたシステムなのになぜ、こんなことになるんだ!」 f社長は怒りまくったのですが、後の祭りでした。開発している期間中、 IT担当の社員が持ってきた契約書などに、なんの疑問も抱くことなく印鑑を捺していたのです。 数カ月間はこのシステムをだましだまし使用していたのですが、「これでは業務が進まない」と判断して、別のシステム会社に再構築を依頼しました。さすがに、今回は f社長も打ち合わせの段階から内容を自分なりにチェックし、疑問点があればしつこく質問をしたのです。 携わってみると、思っていたほど難しい内容ではなく、きちんと理屈を押さえて確認すればわかることだと認識することができたのです。 2回目に構築したシステムは、現場の社員と f社長の意見も取り入れた使いやすいものができ上がったのです。それまで I Tに苦手意識があった f社長ですが、「食わず嫌いだった」としきりに反省していました。 それ以降、 f社長はインターネットの SNSを活用するだけではなく、自分のブログを始めて毎日のように記事をアップするようになりました。 f社長のブログは、古典と経営を結びつけた示唆に富む文章で、多くの読者を集めています。 また、一口に I Tといっても、さまざまな活用方法があります。 とくに、「販売」や「社内の情報共有」にもっと活用すべきです。項目 35でご説明したように、インターネットを活用したマーケティング手法はさまざまな種類があります。 業種によって有効なものは異なりますが、他社の導入事例などをチェックして、自社の商品やサービスに見合う手法を取り入れることで、大きな効果を上げられる可能性があります。 とはいっても、「今さら I Tなんて。ろくにパソコンも触っていないのに……」などと ITに対して強烈な苦手意識を持っている社長もいることでしょう。 そんな人には、まずフェイスブックなどの SNSから始めてみてはいかがでしょうか。フェイスブックの場合、驚くほど簡単に自分のページがつくれ、今まで培ってきた人脈も生きてくることに気がつくはずです。 儲かる社長は、 ITを楽しめる人でもありますので、どんどん慣れていきましょう。 41/儲かる社長は、 ITを積極的に活用し、経営に役立てている!
どんな会社でも「あなたの会社の商品を買ったら壊れていた」「店員の対応が悪い」「納品が遅い」など、クレームが入ることがあるでしょう。 社長とはいえ、お客様からのクレームについて「面倒」「嫌だ」「怖い」という感覚を持っている人は少なくありません。 ただ社長の場合、クレーム対応に苦手意識があるのは、クレームをいってきた人に対して、「当社は悪くない」ということをいい返して、ねじ伏せようとするタイプに多いように感じます。 もちろんそれではいい解決になりません。収拾がつかないどころか、火に油をそそいでしまいかねません。 私は、金融機関で融資課長を務めていましたが、しばしばクレームへの対応をしなければなりませんでした。「どうして融資してくれないんだ。おかしい」「担当者の態度がなっていない」「融資が決まるのが遅い」などが多く、その都度矢面に立って対応していました。正直いってとても辛い思いをしました。 しかし、相当な数を経験したおかげで、次第にうまく対応するノウハウを身につけることができました。ある時からは、クレームを受けたとき冷静に「あ、これは Aパターンでいこう」というように、対応方法がすぐに思いつくようにまでなったのです。 もっとも、中小企業においては、クレームはありがたいものという側面もあります。 クレームをいってくれるのはまだいいほうで、クレームをいわない代わりに二度とその会社の商品を買ってくれなくなることもあります。 ですから、中小企業こそ、クレームをいってくれたお客様を大切にして、その内容を業務に生かすことが重要なのです。儲かる社長はそれを理解しており、お客様のクレームがあれば、率先して対応しようとします。 私がある建築業の会社を訪問し社長と話をしていた時に、 1人の男性が、突然入ってきて、血相を変えながら「この会社に家づくりを頼んだが、不具合があって困る」という趣旨のクレームをいってきたのです。 社長は、私に「ちょっとすいません」といって席を立ち、その人の話を聞きに行きました。男性はかなり興奮していましたが、社長は冷静に対応し、クレームの内容をじっくりと聞いたのです。すると、どうやら「キッチンの水まわりに不具合があり、水が漏れている」という趣旨でした。 そこで社長自ら、現場に赴き詳しく調べたところ、わずかですが水漏れが発生していました。キッチン部分の工事を外注で依頼した企業がいい加減な処理をしていることが判明したのです。 他の家についても調査をしたところ、同じような不具合が発見されました。社長は、外注の企業を変えることによって、その後のトラブルを防ぐことができたのです。 社長は、「わずかではあったけどあの人がいってくれなければ気付かなかった」と思い、クレームをいってきた男性に感謝したのです。 クレームがあると、短絡的に「あんな人はお客さんではない」などと考え、猛然と反発する社長もいますが、そんなことをしてもいいことはありません。 もちろん、理不尽な要求をいってくる「クレーマー」の標的になることも少なくありません。もしも、理不尽な「クレーマー」が来たら、毅然とした対応をして排除する必要があります。 しかし、クレームのほとんどをよくよく聞いてみると、原因が会社側の不手際にあることも多いのです。自社のミスだということがわかれば、社長自ら対応して心から謝ることが大切です。 中小企業こそ、お客様からのクレームや声に敏感になっておくことが大切です。クレームのなかに経営を改善するヒントが隠されていると思って、チャンスだととらえてください。クレームをつけてきたお客様は、当社の大ファンだからこそいいにくいことをいっている可能性もあります。 クレームに対しては、全社でしっかりとした対応ができる体制を整えて、必ず社長に情報が上がるようにしておくことが重要です。 42/儲かる社長は、クレームのなかにも経営のヒントが隠されていると知っている!
インターネットの情報は、ほとんどが誰でも知ることができる情報であり、競合先の企業との差別化を図るための情報にはなり得ません。 儲かる社長は、もちろんネットで情報収集をしますが、それだけではなく積極的に人が集まる場所に出向いて、人との会話から生の情報を集めようとします。 建築材料卸売業を経営する g社長は、週に 1回は経営者が集まる交流会やセミナーに参加して、できるだけ自分よりも規模の大きい会社を経営している社長のところへ行って話をしていました。その時は、世間話的なものから始まり相手の業界の話など、その場の成り行きで話題を変えています。 g社長は、必ずメモを取りながら聞くのが習慣で、いつも「この人から何か得よう」という意気込みで会話しているそうです。 興味を持った相手に対しては、後日メールを送って「もっとお話がお聞きしたいので、一度一杯いかがですか?」という趣旨の打診をします。ほとんどの場合快諾が得られ、再度会って情報交換すると、必ずといっていいほど事業に関係するいい話が出てくるそうです。 具体的には、風雨を受けても汚れにくい外壁材をつくっているメーカーの情報や、当社と新規取引をしてくれそうな企業の情報など、事業の飛躍になるようなことです。これは、 g社長が日頃から求め続けていた情報であり、経営者が集まる場所に出向いたからこそ得られたのです。 よく「異業種交流会に参加しても意味がない」という人がいますが、「人から何かをつかもう」という強い目的意識を持って臨めば、 g社長のようにネットでは到底得られない情報をつかむことができるのです。 また、九州で美容院を多店舗展開している h社長は、年齢が 30代前半で自分が経営者として未熟だという意識を強く持っている人でした。 そのため、「著名な経営者に会って、指導を受けたい」と思い、毎月県内外の中堅企業の社長へアポをとって会いに行くことを実行したのです。 なかには、門前払いで会えない経営者もいましたが、大半の経営者は「勉強させていただきたい」という申し出を意気に感じて、会ってくれるのです。 h社長も、すでに 5店舗を経営するそれなりに立派な経営者ですが、地域で著名な中堅企業の経営者の話はとても参考になる内容に富んでいるといいます。とりわけ、経営者たちの話のなかで、これまで失敗したことや苦労したことをどのように乗り越えたか、という内容がもっとも h社長の刺激になりました。 また、 h社長が悩んでいた、社員をどのようにマネジメントすればいいかという問題についても、多くの社員を抱える経営者として、経験に基づきアドバイスしてくれたのです。 面会を持ちかけられた中堅企業の社長のなかには、その後も h社長のことをかわいがってくれて、継続的に指導をしてくれる人もいました。 多くの社長を見てきた私は、経営者が大きな失敗を犯してしまうのは、自分の経営能力を過信して、身の丈を越えた投資に走った時だと感じています。 h社長は、一見するとチャラチャラした若者で、「自信の塊」といった風貌です。 ところが、見かけによらず自分の未熟さを自覚しており、先輩経営者の指導を受けたいという強い向上心があります。それが、若くして事業経営を軌道に乗せる原動力になっていると思います。 多くの社長は、何かと忙しいので、直接事業に関係のない人に会いに行くのは無駄なことだと思うかもしれませんが、日頃から欲する情報を明確にして、どんな人からでも「何かいいネタを持って帰ろう」と思っていると、意外な人から求めていた情報が得られることがあります。 これは、多くの社長が同じようなことを経験談として語っています。 これを称して、「人と会って話をしていると、とても大きなものが天から舞い降りてくる」という表現をする人がいます。 あなたも、たとえ忙しくても、ぜひ時間を見つけて積極的に人に会うことを心がけてください。もしかすると、天から、思いもよらなかったすばらしいものが下りてきて、事業拡大のきっかけとなるかもしれませんよ。 43/儲かる社長は、経営に役立つ情報を自分の足で見つける!
商売は、きれいごとだけでは済まない部分があり、いつも正直者でいてはうまくいきません。かといって、「真っ赤なウソ」をつくことは、誰からも信用されなくなるので禁物です。 儲かっている社長に共通するのは、相手や場面に合わせていい方を変える上手な「二枚舌」や自分を大きく見せる「ハッタリ」などを駆使して、うまく人からの信用を得ているところです。 正直すぎるとよくない例をあげると、金融機関から融資を受けようとする時がその最たるものです。金融機関は、「この会社はきちんと返済ができるだろうか」という観点で、社長を判断します。 そんな時に、次のようなことを社長がいったとしたら、金融機関の担当者はどのように思うでしょうか?「うちはいつも資金繰りに困っていて、自転車操業で火の車です。どうか助けてください」 おそらく、金融機関の担当者は「自転車操業というほど窮しているなら返済ができないのではないか」と考え、とても融資しようという気にはなれなくなるはずです。 一方、本当は自転車操業の状態であったとしても、上手な社長はこのようにいうでしょう。「今は資金繰りが少しタイトになっていますが、今後このように業績が回復する見込みがありますので、融資を受けても返済は問題がありません」 うまく「ハッタリ」をきかせるのです。もちろん、口でいうだけではなく、それを裏付けるもっともらしい「事業計画書」をつくっています。 両者の実態は同じような状況だとしても、後者の社長のほうが融資を受けられる可能性が高くなることはいうまでもありません。 商売を円滑に行うためには、相手や場面に応じてうまく立ち振る舞うようにしましょう。 では、ここで、私がこれまで見てきた、儲かっている社長が実行している「真っ赤なウソ」とはいえないまでも「二枚舌」や「ハッタリ」と思える例をご紹介しましょう。 ①大げさなお世辞で相手を気持ちよくさせる 人間関係を円滑にするために、上手に相手を褒めます。 たとえば、「お客様はとてもこの服がお似合いでいらっしゃいますね。私がこれまで見たなかで一番です」と、大げさなお世辞をさらっといって気持ちよくします。 ②商品の希少価値をアピールして購買意欲をかき立てる 多くの消費者は希少価値のある商品に魅力を感じるので、それをうまく表現します。「この商品は普段はなかなか入らないのですが今回特別に仕入れることができました」と、お客様が買いたくなるように、いかにも希少価値がある商品のように思わせます。 ③サービスを利用して得られるメリットを想像させる お客様に、商品やサービスを購入した先にあるメリットを上手にアピールします。「このサービスを利用していただくと安心して ○ ○ができますよ」と、自社のサービスを利用することによってお客様が購入後の自分を想像するように仕向けます。 ④相手の依頼を角が立たないように断る 角が立たないように上手に断ります。たとえば、取引先から「もう少し値段を下げられないですか」と値切られた時、「いやあ、うちも不景気でしてこれがギリギリの線なんですよ」とうまく断ります。 いずれも、ちょっとしたいいまわしや振る舞いの工夫によって、相手との関係をよくしつつも自分の利益を得るという姿勢です。くれぐれも相手をだまして貶める方法ではなく、根底には相手にもよくなってもらいたいという気持ちがあります。 人との関係を意識して、自社のビジネスを有利に展開させるには、いつも真正直を貫くのではなく、相手の心理を読みながらうまく対応することが重要です。 44/儲かる社長は、ハッタリをうまく使い、人間関係やビジネスに役立てている!
先日、元航空会社で C A(客室乗務員)をしていたという方にお会いして、話を聞く機会がありました。その方は、主に国際線の旅客機に乗務された経験が長いそうですが、とても興味深いお話をしてくださいました。 それは、「ファーストクラス」に乗るお客様の特徴についてです。 いつもファーストクラスを利用しているのは、ほとんどがビジネスで成功して高収入を得ている人たちです。ハイレベルの人たちですから、いかにもプライドが高くて偉そうにしているのではないかと想像しがちですね。 ところが、その人たちのほとんどは、決して偉そうにすることはなく、とても物腰が柔らかいそうです。 C Aに対してもとても優しく、何かを頼むときも「今忙しいだろうから後で構わないよ」と配慮してくれるとのことでした。 いつもファーストクラスを利用する人と同様に、真に儲かっている社長に共通する特徴は、とても謙虚で誰にでも懐深く接するというところです。人の話に対して素直に耳を傾けてくれます。穏やかで余裕を感じさせる雰囲気で、いかにも「懐が深い」という雰囲気を醸し出しています。 私が出会った歯科医院を経営する社長、つまり歯科医師の i氏もそうでした。 それまでの私の印象では、医師や歯科医師はプライドが高く、人のいうことをあまり聞かないという特徴があると感じていました。ところが、この歯科医師はとても気さくで、にこやかな表情でゆったりとした雰囲気でこちらの話を聞いてくれます。 今や歯科医院は「コンビニよりも多い」といわれており、競合が激しいために経営が厳しいところも少なくないのが実態です。 そんななか、 i氏の歯科医院は、インプラント治療を初めとする保険適用外の「自由診療」を受ける患者が多く来院しており、売上は驚くほどの高額を計上していたのです。 なぜ厳しい業界で儲けられているかというと、1つは i氏が世界で最先端のインプラント治療の技術を習得し、日本でも珍しい施術ができる腕を持っていることが挙げられます。 そして、もう1つは、「歯科医院もサービス業である」と認識して、来院する患者に対する接客サービスのレベルを徹底的に向上させたところにあります。 一般的に多くの歯科医院は、サービス業という認識がなく「治療してやる」という姿勢が強いものです。昔ならそれでもよかったかもしれませんが、軒並みに歯科医院の件数が増えた今、患者が少しでも快適に治療を受けられるところを選ぼうとするのは、自然な流れです。 i氏は、飲食店で接客が重要であるのと同様に、どんなビジネスでも接客サービスを向上させることは重要であるということを知り、それを実践したといいます。 その結果、高い技術力と接客ぶりが口コミで拡がり、県外からもインプラント治療を受ける患者が押し寄せ、 i氏の歯科医院の業績は右肩上がりに上昇しているのです。 私の経験では、儲かっている社長の多くは、 i氏のように「懐が深い」印象がある人たちです。「儲かっているから懐が深い」というよりも、「懐が深いから儲かる人になれた」と認識しています。 謙虚に人の話に耳を傾ける姿勢があるからこそ、さまざまな情報や人が集まってきたり、評判を呼んだりして、ビジネスも成功しているのだと思うのです。 ただし、気をつけなければならないのは、「懐が深い」ことから転じて「脇が甘い」という状態にならないようにするということです。 どんな人の話も素直に聞くという姿勢は人との距離を縮めるために大切ですが、安易に人の誘いに乗ってしまうと墓穴を掘ってしまうことがあるので要注意です。社長のなかには、脇が甘いために、「 ○ ○万円を投資すれば、 1年後には 1・ 5倍になりますよ」などといった怪しげな投資話に乗って、大金を失ったという人も少なくありません。 儲かる経営者になるためには、懐を深くして、何があってもどっしりと構える余裕をもち、人の話に素直に耳を傾ける謙虚な姿勢を持つことが大切です。 しかし、「脇が甘い」、つまり守りが弱い状態になって人のいうことを受け入れ過ぎて失敗しないように留意してください。 45/儲かる社長は、懐深く人の話を聞くため、どんどん人や情報が集まってくる!
中小企業は、「企業の社会的責任」を強く意識した経営が求められます。「企業の社会的責任」とは、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることです。 中小企業は大企業と比べて存立基盤が弱いので、何らかの理由でステークホルダーから見放されると、致命的な痛手を被ってしまいます。「企業の社会的責任」を忘れずに事業活動を行う必要があります。 とくに、地域社会との関わりは無視してはならない大切なことだと理解してください。 地域社会への影響を無視して利益だけを追求しようとすれば、周囲の支援が得られなくどころか疎まれる存在になってしまう可能性があります。 長年、好業績を続けている企業の社長は、地域社会に溶け込むことを強く意識しています。 金属製品製造業を経営している j社長は、本社は県庁所在地なのですが、工場がある街の地域社会との関わりをとても重要視しています。とくに製造業の場合は、地域住民が騒音や水質汚濁など、環境汚染問題に目を光らせていますから、地域社会にうまく溶け込むことが重要な経営課題となるのです。 j社長は次のようなことに取り組んでいます。 ①地域の雇用促進 街の雇用促進を図ることを目的として、社員やパートタイマーはすべて近くに住んでいる人を採用している。年に 1回は、社員やパートタイマーとその家族で、バーベキューなどを実施して親睦を深めている。 ②住民に対する工場見学会の開催 産業廃棄物を排出することもあり、地域住民に対して土壌や水質を検査した結果を公開している。また、定期的に工場見学会を実施して、工場がしっかりとした管理の下で稼働していることをアピールしている。 ③夏祭り等の行事への参加 地元で開催される祭りなどには、必ず社長と社員たちが参加して、地域住民との交流を図っている。 ④商工会活動への参画 地元の商工会に加入し、役員として年間の活動予定の計画と実施について積極的に参画している。 ⑤地元役所との定期的情報交換 地元の役所を定期的に訪問し、工場の稼働状況を報告する一方で地域情報を教えてもらっている。 こうした活動をしていると、時間と労力がかかるため、たいへんですが、地域社会と積極的に関わって溶け込むことで、尊敬と信頼を集めるとともに、目に見えないバックアップを得ることができているのです。 こうした地域社会との関わりは、とくに地方の中小企業が意識する必要があります。 ただし、地方の中小企業の社長には、地域社会の活動に注力するあまりに、本業がおろそかになりがちな人も散見されます。あくまでも自分の会社が成長するための、地域社会との関係ですから、事業活動への取り組みが第一と考える必要があります。 ところで、話は横道に逸れますが、地方の中小企業が発展していくためには、日本あるいは海外の中小企業や中小企業の集積を視察して情報を得ることも有効です。 九州のある商工会では、会員企業の社長 10名が、中部地方の工業集積を視察してそのいいところを持ち帰り、地元の企業へ情報を還元するという活動を行っています。 地方の企業も、井の中の蛙で止まらずに、外部の情報を活用することが発展するきっかけになりますので、こうした活動はとても有意義です。 46/儲かる社長は、地域社会に溶け込み、周囲の協力を受けている!
社長のなかには、政治家や芸能人など著名人と親密であることをアピールしようとする人がいます。 社長室に、著名人とのツーショット写真を飾っていたり、大物芸能人の名前をあげて「俳優の ○ ○とはよく一緒に飲んでいる仲でね」という話を自慢げにしたりします。 そんな話を聞いた側は、「へえ、あの ○ ○さんとお友達ですか。それはすごいですね!」と、一応、驚いて称賛の声をあげますが、内心はそれほど面白い話ではなく、単なる自慢話にしか聞こえなかったりするものです。 ところが、当の社長のほうは、著名人の話を夢中になって続けています。よくよく聞いてみると、それほど仲がいいというわけではなくて、数回会って自分がファンになっているだけということも多々あります。 このような社長の会社の経営状態をみると、多くの場合あまり儲かっていないものです。 一方、真に儲かっている社長は、著名人の名前を出して自慢するということはまずありませんが、親しい友人のなかに著名人がいるということが珍しくないのです。仲良くしている著名人がいても、あくまでも友人の 1人に過ぎないので、ことさらに他の人にいうこともありません。 飲食店を経営している k社長は、東京都内に次々と業態の異なる店舗を出しており、いずれも軌道に乗せている人です。 k社長は人柄もいいので、いつも友人たちに囲まれていました。 k社長は自分の店を利用して、経営者が集う会を開催しており、それがしだいに活況を呈するようになりました。いつしか、上場企業の役員や、誰もが知っているような芸能人も集まるようになり、 k社長は彼らと普通に友人として一緒に飲む仲になったのです。 k社長は、他の友人たちのビジネスに役立てるなどの目的があれば、著名人を紹介することはありますが、自分のために著名人の名前を利用することはありません。いくら著名人でも、あくまでも友人の 1人という扱いで淡々としていたのです。 また、学習塾を経営している l社長も、順調に塾の店舗を増やしています。 学習塾はどこも競合が激しいので、地域に合わせて特徴を持たせるとともに、子供の親に信頼されるような講師や社員を集めることも重要です。 l社長は、人脈を生かして優秀な講師を集めています。 l社長も、自分が経営者を集めた飲み会を主催しており、しだいに仲間が増えていきました。 その会では、各経営者たちの業界の話や地域情報などが話題になり、お互いの知り合いやお客さんを紹介し合うこともありました。 その過程で、参加していた経営者の紹介で、プロスポーツ選手たち数人と友人になったのです。ビジネスとは全く関係がないのですが、塾に通う子供たちの親たちが「選手に会いたい」といえば、一緒に食事をする場を設けるようにしています。 k社長と l社長の事例で理解していただきたいのは、著名人と知り合う方法のことではなく、絶えず人脈構築していくことが事業拡大のカギを握っているということです。 2人の社長に共通するのは、人が好きで意識することなく自然と人脈を構築する行動をしているところです。その人脈のなかに、たまたま著名人が入ってきたということですが、両社長が事業を発展させることに成功しているのは、著名人の有無は関係なく、うまく人脈を拡げているからです。 項目 43で述べたとおり、真に役立つ情報は人を介してしか入ってきません。 儲かる社長はそれをよくわきまえていて、初対面の人に会うとその人の話をじっくり聞こうとします。「何か参考になるような情報はないか」と思いながら真剣に聞くので、相手も喜んで知っていることをオープンに話そうします。 事業を拡大して儲っている社長の多くは、既存の人脈で満足することなく、次々と新しい人脈を構築する活動に積極的に取り組んでいるということです。 また、自らがコミュニティを形成していくことで、人脈の層が厚くなり、ビジネスチャンスが広がることにもつながります。 あなたが、会社の事業の拡大を願うなら、ぜひ新たな人脈を構築することに挑戦していただきたいと思います。 47/儲かる社長は、事業を成功に導くために、人脈を大切に構築している!
人と人との距離を縮めて親密になりたいのなら、その人と飲食を共にするのが一番です。 ハイテク素材の製造業を経営している m社長は、ビジネスで関係する人を呼んで、徹底的におもてなしをする人です。 当社は、これまでにない新しい素材を世界に先駆けて開発することに成功し、国内だけではなく海外の企業や大学と共同で研究開発をしています。そのため m社長の会社には、日本だけではなくヨーロッパ諸国からのお客様がひっきりなしに来るのです。 本社は長野県の山間部にあり、海外からのお客様のアクセスは決してよくありません。それだけに、わざわざ来てくれたお客様を、地元のおいしい飲食店に案内して、たくさんの酒や料理をご馳走しているのです。 ある時、ドイツのメーカーの社長が来社したので、お昼は信州そばをご馳走して、夜は和食料理店で手厚くもてなしました。国によって「飲み会」の慣習は異なるようですが、そんなことはお構いなしに焼酎や日本酒を酌み交わしながら開発中の製品について熱く語り合うのです。 私もその席に同席していたのですが、さすがにドイツ人は飲む量も食べる量も多く、ほとんど酔った素振りを見せない感じでした。話している内容は、技術的なことが中心で私にはあまり理解できないことが多かったですが、お互いの夢を語るなどしてとても盛り上がった飲み会になりました。 その後、宿泊した旅館でも、お酒を飲みながら明け方まで楽しい時間を過ごしました。 ドイツ人の社長はとても喜んでいて、その後の商談も順調に進んでいるとのことでした。 m社長は、いつもこのようにおもてなしを徹底する人です。あれだけのご馳走や酒を提供すると、出費も大きいのですが、それ以上に人脈構築や取引先開拓の効果があるということで、「大切な投資」ととらえているようです。 もっとも、「ビジネスで取引してほしい」というのを前面に出すようなおもてなしは、相手に見透かされてしまい逆効果のときがあります。 直接的な効果や見返りは期待せず、心底から「この人と楽しもう」と思ってもてなすほうが、親密になれてビジネス上の効果も出てくるものです。「飲んで仲良くなろうなんて昔の方法のようで古臭い」 そう思うかもしれませんが、日本だけではなく海外でも、今もなお非常に有効な方法だといえます。人との関係を積極的に構築するためには、自分から積極的におもてなしをするように働きかけることをお勧めします。 また、いつも自分が一方的にもてなされることに慣れてしまい、何もお返しをしようとしない社長もいますが、それでは相手との関係性の発展が望めません。 たとえ相手よりも自分が強い立場にあったとしても、よりいい関係を構築するために「おもてなしをされたら何かでお返しをしよう」と考えるべきでしょう。たとえば、仕事や人を紹介したり情報を提供したりと、相手が喜ぶようなものでいいでしょう。 次に、別の側面でのおもてなしについてご説明します。 私が多くの中小企業をみて、ときどき残念に思うことがあります。それは、商売の原点である「接客サービス」つまり、商品やサービスを買ってくれたお客様へのおもてなしが、とてもぞんざいなものになっている企業が少なくないということです。 たとえば、大手のチェーン店における店員の接客サービスは、マニュアルに基づいて、一定のレベルはクリアしていますが、地場の居酒屋に入ると、接客サービスの質がとても低いということがありますね。なかには、社長である店主自らが感じが悪かった、ということすらあります。飲食店では、いくら料理がおいしくても、接客に問題があればお客様が逃げるという基本的なことを忘れているのです。 こうした例は、飲食店だけではありません。「小売店で友人へのプレゼントを購入してラッピングを頼んだらとても雑だった」「工務店にリフォームを頼んだら、スピーディに対応してくれなかった」など、せっかくお客様が買ってくれたのに、対応が悪いことが原因で、その後のリピートを逸してしまうのです。 こうした場合、クレームとして顕在化しなければ、残念ながら社長が問題に気付くことはありません。中小企業の「売上が低迷している」と悩む原因が、「おもてなし」不足にあるケースも多いでしょう。 ぜひ御社のおもてなしのレベルを点検してみてください。 48/儲かる社長は、取引先やお客様に対して、おもてなしが行き届いているかを気にする!
人前で話すことを苦手としており、プレゼンの場というと逃げてしまいがちな社長は多いですが、実に損しています。プレゼンはある程度量を積んでいけば、慣れて力がついてくるものです。儲かる社長になるために、少しずつプレゼンの訓練をしていきましょう。 機械製造業を経営している n社長は、新製品を開発するために、しばしば国や地方自治体の補助金を申請することにチャレンジしていました。自ら事業計画書や申請書をつくり上げて、補助金の審査員の前でプレゼンを行います。 もともとは、決して話が上手なタイプではありませんでしたが、たびたび審査の場でプレゼンを経験して、しだいにプレゼンスキルが向上しました。補助金の審査では、申請書類に記入する内容が重要ですが、面接審査があるものに関しては、その時のプレゼンにおける説明の良し悪しも、審査結果を大きく左右します。 審査のプレゼンの場では、審査員に対して新製品のポイントを説明し、多くの補助金を獲得することに成功したのです。 n社長は、補助金が採択されると、チラシやホームページに記載し、「補助金採択事業による製品」であることをアピールして、新たな取引先を開拓することにも成功しています。補助金を得るためのプレゼンが、間接的にお客様への訴求効果を高めているのです。 n社長は、公的な施策を活用して新製品を開発するという、先進的な取り組みをしている社長ということで全国の企業からも注目され、当社へしばしば視察団が訪れるようになりました。それも、製品を周知することに役立っています。 項目 27で紹介したように、アパレル企業の V社長は、毎期決算書ができると銀行や取引先などを集めて営業実績説明会を開催しています。 そこでは、前年度の事業活動の内容と、売上や利益の前年比較に関する要因などを説明し、来年度以降に計画している行動計画について、プレゼンしていました。 参加している金融機関の担当者からは、「社長の説明はとてもわかりやすい」という声が上がってきました。 こうして、社長のプレゼンによって、利害関係者から見て経営がガラス張りになり、金融機関からの資金調達の円滑化や取引先との信頼関係の強化が図られたのです。 また、個人向けサービス業を F C展開している会社を経営している o社長は、フランチャイジ─となっている事業者たちを集めて、「インターネットマーケティングを活用して売上を上げる方法」などのセミナーを開き、自ら講師を務めています。 さらに、サービスを利用している消費者に対しても、インターネット上でコミュニティの場をつくり、定期的に東京のほか、大阪など大都市で会議室を借りて、当社のサービスを活用する方法などの説明会を行っています。 そこで、社長自らが、会員に直接語りかけることによって、当社のビジョンへの理解を求め、より強固な会員組織を構築することが実現しているのです。 中小企業の社長は、自分自身が会社の広告塔となって、お客様に自社の商品やサービスを知ってもらう工夫が必要です。プレゼンというと、アップルのスティーブジョブズのような派手な演出を想像するかもしれませんが、そこまで徹底する必要はありません。 むしろ、社長は、ありのままのパーソナリティを前面に出しながら、たどたどしく語りかけるほうが、聞いている人が親しみを感じることがあります。お客様が商品やサービスをどこで買うかを選ぶとき、親しみやすい売り手を選ぶ傾向にあるからです。 なお、プレゼンのスキルを向上させるためには、自分がプレゼンしている様子をビデオで撮影して、どんな話し方をしているかチェックすることをお勧めします。 自分の話し方をビデオで観るのは、顔から火が出るほど恥ずかしく耐えがたいものですが、客観的にチェックするにはこれほどいい方法はありません。 いざやってみると、「こんなひどい話し方をしていたのか」と愕然とすると思いますが、繰り返し撮っては話す作業を行うことで少しずつ改善できるようになるものです。 また、プレゼンテーションを行うような場がないというなら、自社のホームページ上に社長が語りかける動画を貼りつけるという方法があります。 あなたも、ぜひプレゼンが得意な社長になって、会社の情報を積極的に発信してください。 49/儲かる社長は、話し下手であっても、プレゼンを利用し、自らを会社の広告塔にしている!
普通「筆まめ」というと、手紙やはがきをまめに書くことを意味しますが、ここでの意味はそういうことではありません。 文字を書くことによって情報を発信する、アナログやデジタルのさまざまなツールをこまめに駆使するということです。 具体的には、次のようなツールがあります。 ①アナログツール チラシ、ダイレクトメール、ニュースレター、 FAXDM、雑誌広告など。 ②デジタルツール ホームページ、メールマガジン、ブログ、 SNSなど。 このようなツールや媒体は、その記事の内容やコピーライティングをうまく工夫することができるかどうかで、集客効果に大きな差ができます。 中小企業においては、こうした媒体を活用してお客様へ上手にアプローチすることで、商品やサービスの売れ行きを加速することができるのです。 社長のなかには、自分自身で文字をまめに書いて、情報発信している人がいます。 イタリアンレストランなどの飲食店を多店舗展開している p社長は、毎日ブログとメールマガジンを書いています。 ブログには、社長が各店舗のメニューや材料の産地の写真と解説など、飲食店で提供する料理や飲み物に関する記事をアップしています。また、休日にはプライベートで訪れた観光地やゴルフなど、遊びの要素を入れた内容になっています。 メールマガジンには、各店舗の今日のおすすめメニューやワインの入荷状況、飲食店経営に関する考え方などが書いてあります。メールマガジンの読者は、ホームページで登録した人のほか、社長が交流会などで名刺交換した人たちで、 3, 000人ほどいるそうです。 すでに 8店舗を経営しているので、マネジメントの仕事だけでも多忙でしょうが、「いずれも毎日時間を見つけて自分で書いている」と p社長はいっていました。 今は、 p社長のように、自分でこまめに文字を書いて情報を発信している人が増えており、うまく集客に活用しています。 ホームページでも、「代表者あいさつ」の文を社員に任せるのではなく、自分で自分の言葉で表現しているほうが、注目度は高いといわれています。 もちろん、いかにお客様にとって魅力のある書き方(ライティング)をするかも大事ですが、とりわけ社長自らが書くと集客効果がガラリと変わってきます。 このようなツールは、社長自らが筆まめになってコツコツと書くことで、お客様へ思いを伝えることができるのです。 しかし、「文章を書くのが苦手」「パソコンも苦手」という社長は多く、とても毎日こんなものを書いていられないと避けるでしょう。それなら、頻度を下げてアナログツールでお客様に送るという方法もあります。 昨今、アナログのツールで有効といわれているのが、「ニュースレター」と呼ばれている手書き中心の新聞です。「ニュースレター」はダイレクトメールとは異なり、記事に次のような特徴があります。 ・基本的に売り込み記事を載せない ・お客様に役立つ情報 ・社長や従業員の人柄がにじみ出るような写真や記事 ・親しみを感じさせる内容 こうした「ニュースレター」を定期的にお客様へ送ることによって、接触頻度が高まり忘れられることが少なくなります。すると、顧客の流出が防げて、自社の商品やサービスを購入してくれる確率も高まるというわけです。「ニュースレター」についても、社長自身が内容を考えて文字を書くと、親近感を感じさせるものができるのです。 このように、社長自身が、こうした文字を介した情報発信ツールに関して、「筆まめ」になることが、利益拡大のきっかけとなる可能性があるのです。 50/儲かる社長は、こまめに文章を書き、従業員にお客様にメッセージを発している!
おわりに 自分の会社の経営に役立てるために、経営書コーナーに足を運んで気付いたことがあります。それは、実に 95%以上の会社が中小企業にも関わらず、身の丈に合った企業の社長のための本が少ないということです。 巷には、経営に関する書籍が数多く出版されていますが、それらに記載されている事例は、どちらかというと超有名な経営者のエピソードがほとんどなのです。 そこで、私が声を大にしていいたいことがあります。それは、「儲かる社長」は、決して有名な経営者だけではなく、規模が小さくて目立たない会社を経営している社長のなかにもたくさんいるということです。 本書でご紹介している「儲かる社長」の事例は、そんなごく普通の中小企業経営者です。超有名な経営者のようになるのは難しいでしょうが、本書の事例のような社長の真似は比較的簡単にできるはずです。 また、本書に掲げた 50項目の習慣は、あくまでも多くの業種に一般的に共通することだけを選んでいます。中小企業が存立基盤を強固にして利益を増やしていくためには、独自の強みを発揮して競合相手に勝つことが重要です。 そのためには、事業の内容やターゲットとしている市場の特性に応じて必要となる、追加すべきノウハウや行動があると思いますので、ぜひご自身で模索して加えていただければと思います。 本書は、あなたの会社を強くするための、はじめの一歩的なものです。 まずは、実際に「儲かる社長」になるためには、「なるほどそういうものか」と感心されましたら、実行することが不可欠です。長期的な目標を掲げて、今日から1つでも実行に移すことで一歩前進してください。 この本を活用していただくことで、日本に 1人でも多くの「儲かる社長」が増えることを祈念しています。経営コンサルタント・資金調達コーディネーター 上野 光夫
■著者略歴上野 光夫(うえの みつお)(株) MMコンサルティング代表取締役中小企業診断士・資金調達コーディネーター起業家支援プラットフォーム「 DREAM GATE」認定アドバイザー 1962年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、政府系金融機関である日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に 26年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。出会った経営者は 3万人を超え、担当した融資の総額は約 2, 000億円にのぼる。とりわけ「創業融資」に注力し、約 5千名の起業家に対する融資を担当した。 2011年4月にコンサルタントとして独立。同年9月に(株) MMコンサルティングを設立、代表取締役に就任。起業支援コンサルティング、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。リクルート社の独立開業雑誌『アントレ』ほかメディア登場実績多数。著書に『 3万人の社長に学んだ「しぶとい人」の行動法則』(日本実業出版社)、『起業は 1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)がある。日本最大の起業家支援プラットフォーム「 DREAM GATE」において、アドバイザーランキング「資金調達部門」で 2年連続第 1位に輝く。
「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣発行日: 2014年 9月 9日( Ver. 1. 0)著者名:上野光夫発行者:石野栄一発行所:明日香出版社 〒 112-0005東京都文京区水道 2-11-5 Website: http:// www. asuka-g. co. jp・本書は『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』( 2013年発行)の電子書籍版です。・本書の全部または一部の無断転載を禁じます。
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