はじめに 経営書を読んだり経営セミナーに参加したりすると必ず出てくるのが、「競争条件が不利な会社は経営の大事なところを『差別化』し、自社独自の経営をしないと業績を良くすることはできない」という説明です。 差別化の必要性が、雑誌や経営書で説明されるようになったのは 1972年頃からなので、すでに 40年もたっています。今では新入社員でも知っていることでしょう。 ところが実際には、有効な差別化対策を実行し、業績が良くなっている中小企業はごくわずかで、ほとんどの会社では経営の差別化ができていません。それどころか、経営規模は小さいのに、強い会社のマネをしてひどい結果になっている会社がとても多く見られます。 従業員 100人以下の会社で、経営システムをつくる役割を担っているのは間違いなく社長です。しかも従業員 100人以下の会社では、業績の 96%が社長 1人の戦略実力で決まります。 ですから、競争条件が不利な会社が差別化した経営システムをつくって業績を上げるには、まず社長が経営戦略の研究にしっかりと取り組み、自分自身の戦略実力を同業者の中でトップクラスに高めなければなりません。 しかし社長としての「素質」が特別高いとはいえない人が、多数の競争相手がいる中で戦略実力をトップクラスに高めるには、経営戦略の学習方法そのものを差別化しなければなりません。 差別化力がある経営システムをつくれるかどうかは「結果」であって、その「結果」は、学習方法をどれくらい差別化できるかで決まるのです。 従業員教育の必要性ややり方については、あちこちでセミナーが催され、本もヤマほど出版されています。ところが中小企業の社長を対象にした、差別化力を発揮するための学習方法を説明するセミナーや本は、なかなか見当たりません。 仮にあっても、内容は大企業の事例が多く、企業数で 98%を占める従業員 100人以下の会社の社長を対象にしたものは非常に少ないのが現実です。これでは良い経営ができません。 これに疑問を感じて取り組んだのが本書です。 全体の構成は、「学習成果の公式」をもとにして、重要な項目ごとに分けています。 博多特産の辛子めんたいこ同様、かなり辛口の内容になっていますが、自分の戦略実力を高めて会社の業績を上げたいと、本気で考えている向上心の高い社長には、必ず役立つはずです。 本書を参考に、すごい戦略実力をもった社長に率いられた成長企業が 1社でも増えれば、これに勝る喜びはありません。
目次はじめに第 1章社長、業績のよしあしは差別化で決まります 1 経営のシステムをつくらなければ会社はうまくいかない会社は全て歩合給強者と弱者の力関係は経営力の 2乗に比例する差別化しなければ業績は上がらない 2 差別化すべき大事な要点をはっきりさせる会社は粗利益によって生きている会社経営の全体像から「大事な要因」をつかむお客づくりに直接関係する5つの要因会社内部に関係する2つの要因 3 経営を構成する「大事な要因」をウエイト付けする8つの要因をウエイト付けしてみると利益性の原則を押さえ直す実行の手順を改めてはっきりさせるランチェスターの法則を研究する「強者の経営戦略」を実行できる会社とはほとんど全ての会社は「弱者の経営戦略」を実行しなければならない 4 社長は何から手をつけて、どうやるか会社の規模で変わる社長の役割経営の全体をつかみ、やるべきことをウエイト付けする社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で決まる第 2章社長は業績が上がる経営システムをどうつくるか 1 経営システムのレベルは社長の実力に比例する社長が決定すべき9つの「大事な要因」業績が上がるかどうかは論理学である 2 社長は「社長実力」を高める時間を惜しんではいけない社長の実力が高まるには何年もかかる経営システムをつくり直すにも何年もかかる 3 すぐに結果が出るケースはあくまでも例外である B/ Sや P/ Lの数字は、あくまでも結果戦術の一部が明らかに間違っている場合第 3章学習成果を決定付ける学習の公式 1 社長が学習成果を上げるための「公式」時間とカネの無駄遣いに終わらせないために学習成果を決める3つの要因 2 社長自身の「素質」をはっきりさせる社長の素質は業績で判断するしかない素質にはパレートの法則が成立する 3番以下は弱者の学習戦略が必要になる 3 実践的で内容が良い教材を準備する社長にとって必要な学習テーマの教材自社の経営規模に合った実践的な良い教材を揃える教材媒体の種類にはどんなものがあるか教材の予算を準備する自分に合った学習方法を考える学業成績と「社長力」は関係ない 3種類の学習方法の、どれが自分にふさわしいか?「読む」のが苦手なら聞けばいい 4 社長はどれくらいの回数、どれくらいの時間、学習すればいいのか学習回数は人とテーマによって異なる
学習の日数を決める 10年続ければトップクラスの戦略実力が身につく第 4章社長の「役に立つ学び方・役に立たない学び方」 1 セミナーや講演会の効果と限界を知っておく商工会議所などのセミナーは社長用が少ない経済団体のプロジェクトはなぜ失敗したか「成功した社長の体験から学ぶ」ことの効果 2 仮説検証法のウソとホント実力がなければ仮説検証法は効果がない経営の「打つ手」は囲碁と同じ 3 社長が「差別化」された勉強をするにはどうするか?学習の差別化に役立つ戦略社長塾理想の自分と今の自分と対話する時間をつくるおわりに奥付
1経営のシステムをつくらなければ会社はうまくいかない会社は全て歩合給 会社には、結果を出せなくても入ってくるような、決まった収入はありません。人間でいえば、固定給なしの歩合給で働いているようなものです。 しかも、どんな業界にもたくさんの競争相手がいて、その中に大きくて強い会社が何社もあるのに、ゴルフや囲碁のようにハンディはいっさいありません。 経営規模が小さいなど競争条件が不利な会社が「特別な対策」をとらなければ、強い会社からの圧力で苦戦するに決まっています。苦戦して赤字になり、資金繰りが悪くなったとしても、政府はもちろんのこと銀行も助けてはくれません。 このように、経営は完全な実力主義の世界です。だから、もともと物事に積極的で、しかも自分の「戦略実力」を高めて立派な社長になりたいという向上心がある人以外、社長になるべきではないのです。 こうした厳しい現実の中で、社歴が浅かったり、業界でのランクが中以下にあるような競争条件が不利な会社は、まず強い会社とは違った考え方で経営システムをつくり、運営をしていかなければなりません。 不利な条件にある会社が「違った考え方」で経営を進めることで、強い会社から受ける経営上の圧迫を減らし、業績の向上をはかっていく――これが「経営の差別化」です。 競争条件が不利な会社の業績がどうなるかは、経営の大事なところがどれだけ差別化されているか、によって決まるのです。 この、「経営の差別化」の重要性を最初に指摘したのは、天才コンサルタントのドラッカーでした。 ドラッカーは 1964年、東京でオリンピックが開催された年の6月に日本で翻訳出版された、『創造する経営者』の第 7章「知識が事業である」の始めのところで、差別化について次のように述べています。「経済的な業績は差別化の結果である。差別化の源泉、および事業の存続と成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する独自の知識である」 この、「事業の存続と成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する独自の知識である」という短い文章の中には、たいへん重要な教訓が含まれています。強者と弱者の力関係は経営力の 2乗に比例する ちなみにここで説明されている「企業の中の人たち」の「人」とは、大企業の場合は社長を初めとして取締役や部長クラスのマネジャーのことですが、従業員 100人以下の会社の場合は、社長自身のことを指します。従業員のウエイトはごく低いので、誤解しないようにしてください。 今では、経営書を読むと、差別化についての文章が必ず書かれており、講演会でも差別化の話が必ず出てきます。 しかし日本のコンサルタントが経営の差別化について、ふれるようになったのは、ドラッカーの『創造する経営者』が出版されてからおよそ 10年後の、 1970年代の前半頃になってからのことなのです。 これほど重要なことが日本のコンサルタント業界に広がるのに、なぜ 10年近くもかかったのか。それは、先ほどの短い文章を正しく理解することがなかなかむずかしい上、実際の経営に応用することはもっとむずかしかったからでしょう。 今では、競争条件が不利な会社(業歴が浅い会社、業界でのランクが中以下の会社、後発業者として参入しなければならない会社など)は、経営の大事なところを高いレベルで差別化しなければ、会社を維持することそのものがむずかしくなることは、多くの人々が理解しているはずです。 そして実は、「競争の法則」と呼ばれるランチェスターの法則から考えても、差別化がきわめて重要であることは明らかなのです。 ランチェスターの法則によると、多数の競争相手がいる場合、会社と会社の本当の力関係は「ある局面」に投入される経営力の 2乗に比例するからです。 その事情を簡単に説明しましょう。 大手の A社は、ある商品市場やある地域市場に対して「 1」の経営力を投入しています。 これに対して、経営規模が小さな B社は、同じ商品市場や同じ地域市場に対して、「 0・ 5」と 2分の 1の経営力しか投入できないとします。 この場合の本当の力関係は、この 2乗になるので 1対 0・ 25になってしまいます。 不利なほうの B社は「 0・ 5」の経営力を投入していながら、アウトプットに当たる経済的成果は「 0・ 25」と半分しか出せなくなるので、経営効率は 50%も減少してしまいます。 これでは、経常利益が出たとしてもほんの少しで、たいていは赤字になってしまうでしょう。 では、大手の A社が「 1」の経営力を投入しているとき、小さい C社は「 0・ 33」と、 3分の 1の経営力しか投入できない場合はどうなるでしょうか。 この場合は C社にとってもっと厳しく、本当の力関係はこの 2乗で 1対 0・ 11になってしまいます。 C社は「 0・ 33」の経営力を投入していながら、アウトプットに当たる経済的成果は「 0・ 11」と 3分の 1しか出せなくなり、経営効率は 67%も減少してしまいます。 これではいくら経費の節約に努めても、黒字になるわけがありません。 この状態が数字によりはっきりした形で出てくるのが、デパートやスーパーの売場面積と売上高の関係です。 ある地域で、 2社のスーパーが道をはさんで向かい合って営業しているとします。 A社の売場面積は 1000坪あるのに対して、 B社の売場面積は 500坪とします。 商品の品揃えと営業時間帯はほぼ同じで、駐車場の収容台数も売場面積に比例しているとします。こういう場合の売上高は売場面積の 2乗に比例するので、 A社と B社の売上高は「 1対 0・ 25」になってしまいます。 これに対して 1坪当たりにかかる「経費」は両社ともあまり変わらないので、 B社の損益はとても厳しくなります。
これでは、「働けど働けどわが社の業績はいつまでも良くならず、ジッと資金繰り表を見る」という結果になるのが当たり前です。 つまり、競争条件が不利な会社の業績が思わしくない原因の中で、最もウエイトが高いのが、強い会社から受ける「 2乗作用」の圧迫なのです。「会社と会社の本当の力関係は、ある局面に投入される経営力の 2乗に比例する」 これがランチェスターの法則ですが、多くの中小企業の社長は、この法則をちゃんと研究していません。しかも人の目には「 1対 0・ 5」が「 1対 0・ 25」と映ることはなく、あくまでも「 1対 0・ 5は 1対 0・ 5」に見えるので、強い会社から受ける 2乗作用に、気づかないまま失敗してしまう人がたくさんいます。「競争の原則を知らずに経営すると、失敗する率が高くなる」という教訓がありますが、まさにそのとおりなのです。差別化しなければ業績は上がらない では、規模が小さな会社、業界でのランクが中以下の会社、あるいはある商品に後発として参入しようとする会社は、どうすればよいでしょうか。 その解決方法が、強い会社と違った考え方で経営をする「差別化」です。 差別化の1つ目は、これまでなかった商品をつくったり、取り扱ったりすることです。なかなかむずかしいことですが、大会社にいる人ではとても気づかない商品を開発している中小企業はたくさんあります。 差別化の2つ目は、特殊な用途の商品、何らかの専用の商品を扱うことです。 用途を限定すると、当然ながら市場の規模が小さくなります。商品の市場規模が小さければ大企業は出てきませんし、仮に出てきてもあまり力を入れないので、 2乗作用は起きなくなるのです。 差別化の3つ目は、世の中に必要だけれど大企業が手を出さない、あるいは出しにくい商品を扱うことです。例えば葬儀関連の業種などが、これに当たります。 差別化の4つ目は、大量生産がしにくかったり、配送コストが割高につくので遠くに運びにくい商品を扱うことです。 そして差別化の5つ目は、海、山、川などの自然の障害物、鉄道や高速道路などの人工の構築物によって地域が分断され、市場規模が小さくなっている地域でビジネスを行うことです。そうした地域では、経営規模が大きな会社は営業コストが割高につくのであまり力を入れません。だから経営規模が小さな会社でも、このような地域に力を入れると 1位になることができるのです。 これらが「経営の差別化」ですが、商品や営業地域以外に、客層の決め方や営業方法、組織対策や資金対策、経費対策などの面でも差別化をしなければなりません。 この差別化によって、小さくて競争条件が不利な会社も、それなりの経済的成果が出るようになります。こうなれば「働けば働くほど利益が多くなる」ので、何年かあとには、ニッコリ笑って資金繰り表と預金通帳が見られるようになるでしょう。 だから、業歴が浅かったり業界でのランクが中以下にあるなど、競争条件が不利な会社の社長が経営計画書をつくるときは、「どこを、どのように差別化するか」について、ジックリと時間をかけて考えてまとめなければならないのです。 経営計画書をつくってはみたものの、スローガンや経費の節約ばかりで、そこに差別化対策が何も書かれていないようなら、業績が良くなる見込みは全くありません。スローガン中心、会計中心の経営計画書をつくっている社長は、十分注意してください。
2差別化すべき大事な要点をはっきりさせる会社は粗利益によって生きている 実際に経営の差別化をはかるには、まず初めに、「どことどこ」を差別化するか、これをはっきりと決めておかなければなりません。 この場合、経営を構成する「大事な要因」が中心になります。「大事な要因」を見極めたら、次に、その「大事な要因」をどのような考え方で差別化するかをはっきりさせます。 この2つをきちんと整理したあとで実行に移すと、進む方向がはっきりしているので、短い期間で早く成果が出るようになります。 では、どことどこを差別化するか? 経営の「大事な要因」は何なのか? 改めてこう聞かれると、「うーん」と首をひねってしまう社長も少なくないと思います。 わかりきっているようで、意外とわかりにくいのです。 経営の中心は形がなくてつかみどころがないので、経営を構成している大事な要因はコンサルタントの間でもバラバラに説明されており、ひどくあいまいになっています。 これをはっきりさせるためには、まず次の手順によって、経営の「全体像」をつかみましょう。 人はものを食べて、カロリーや栄養を摂取することで生きています。必要なカロリーが不足すると、人の体は徐々にやせていき、やがて死んでしまいます。だから人間は、必要なカロリーを、安定して摂り続けなければなりません。 会社にとっては、この「必要なカロリー」が粗利益です。 個人企業も法人企業も、会社と呼ばれる組織体は粗利益によって生きています。人件費も、借入金の返済も、粗利益の中から支払われています。 もし必要な粗利益を安定して確保できなくなると、会社の体は徐々にやせていき、やがて死んでしまいます。倒産です。 毎年、何万社もの会社が倒産したり廃業したりしていますが、その最も大きな原因は粗利益の不足なのです。 このような事情から、決算書を見るときの第 1のポイントは、まず従業員 1人当たりの粗利益を出し、次はこれを業界の平均と比較してみることになります。 その粗利益は、お客のお金と、商品を交換したときに生まれます。
会社経営の全体像から「大事な要因」をつかむ 会社の中では伝票に記入したりパソコンに入力したり、あるいは打ち合わせをしたり会議を開いたりと、実にさまざまな仕事がされていますが、お客のお金をもらったとき以外で粗利益が生まれる仕事は1つもありません。 そして、「商品を買うかどうか」「どこの会社から買うか」の決定権は、お客が 100%もっています。このことは、大昔から今日まで全く変わらない、経営の不変の大原則です。 つまり、経営で最も重要度が高い仕事は、お客をつくり出す「お客活動」だということになります。 ですから、経営を構成する大事な要因は何かを考える場合には、お客を出発点にする「お客起点の発想」でなければならないのです。 お客を出発点にして、経営の全体像を考えたのが、左の図です。 この経営の全体像を手がかりにして、差別化すべき経営の「大事な要因」を考えると、8つあることがわかります。お客づくりに直接関係する5つの要因 ではその8つを、順に説明していきましょう。 差別化しなければならないものの 1番目は、商品や有料のサービスです(以下有料のサービスは商品に含めて説明します)。 商品は、お客のお金と交換して粗利益をつくり出すただ1つの手段です。そして、どんな商品を中心にするかによって、営業方法はもちろん、人の採用や資金の調達、競争相手など、経営の大事なところのほとんどが自動的に決まってしまいます。 だから、経営を構成する大事な要因の中では商品が 1番目にくるのです。経営では、商品が 1つ目の主役なのです。 差別化しなければならないものの 2番目は、営業地域です。 インターネットで商品を販売すると、全国区型になる場合が多くなります。しかし営業パーソンがお客のところに出かけていく「訪問型営業」の場合は、営業パーソンのコストが割高につくため、重点地域や営業する地域の最大範囲をはっきり決めておかないと、営業経費が増加しすぎて赤字になってしまいます。 小売業や飲食業などの店舗型営業で、チラシなどによってお客づくりをするときも、重点地域と最大範囲はきちんと決めなければなりません。加えて、多店舗展開をする場合は、本社から社長や幹部が何度も出先を訪問するなど管理コストが高くなるので、やはり出店する地域の決め方が大事になります。 これらのことから、経営では、営業地域が2つ目の主役になります。 差別化しなければならないものの 3番目は、業界や客層です。 機械や電気機器の部品をつくっている製造業の場合は、どの業界に製品を販売するかを決めなければなりません。小売業や飲食業は競争相手が多いので、有利な経営をするには、どの客層に力を入れるかをはっきりと決めておく必要があります。 この業界と客層が、3つ目の主役です。 商品、営業地域、業界と客層の3つは、お客づくりに直接関係することなのでとても重要です。もしこの3つに対する目標の決め方が、社長の性格や過去の経験、それに会社の経営規模に合っていなければ、いくら努力をしても業績は良くなりません。 さて、差別化しなければならないものの 4番目は、営業方法です。 完成品をつくっている製造業の場合は、どの営業ルートを中心にして最終利用者に商品を流すかを決める必要があります。 建設業、卸売業、業務用の販売業、小売業、飲食業、その外のサービス業の場合は、どんな方法で新しいお客をつくるかを決めなければなりません。
新しいお客をつくり出す方法には、訪問販売、 DM、インターネット、チラシ、広告、店舗などいくつもありますが、最低でも 3通りの方法を実行しないと、お客づくりが片寄るだけでなく、競争力も弱くなってしまいます。 この「営業方法」が、経営の4つ目の主役です。 差別化しなければならないものの 5番目は、「顧客維持の方法」です。一度取引したお客をどのような方法で維持していくか、ということです。 前にも述べたように、商品を買うかどうかの決定権はお客が 100%もっています。しかも、どんな業界にも多くの競争相手がいて、それぞれ商品を売ろうとやっきになっています。 そうした状況の中で、お客に継続して商品を買ってもらうようにするには、次のルールを守らなければなりません。 1つ目は、接客、訪問や電話、 FAXなど、お客と直接接触するところでは、できるだけお客に不便をかけないようにすることです。お客は二度手間や三度手間を特に嫌います。 2つ目は、競争相手よりもお客に好かれて気に入られるようにすることです。そのためには、各人が担当している仕事のレベルを高め、お客が予想している以上の対応や気配りをしなければなりません。 これらのことを心がければ、お客の流出率が低くなります。そのうちに、友人や知人を紹介してくれるお客も出てきます。こうなると、少ない経費で新しいお客が増えるようになるので、業績が良くなるのです。 この「顧客維持の方法」も、経営の主役の1つです。会社内部に関係する2つの要因 差別化しなければならないものの 6番目は、組織づくりです。 経営には「人」が欠かせません。人が何人かいると、仕事に対する人の配分と役割分担、教育や訓練、賃金などの処遇を決めなければなりません。これが組織づくりです。 従業員が 10人以内であれば、これらのことはおおまかでも良いでしょう。しかし 10人を超えると、これらの必要性が生じ始めます。そして 30人を超えると、これらをきちんと決めて組織づくりをしないと、社内のあちこちでムダな仕事が発生して業績が悪くなってしまいます。 しかし、組織づくりそのものから直接粗利益が生まれることはありません。だから経営ではあくまでも主役ではなく、「脇役」であることを知っておいてください。 差別化しなければならないものの 7番目は、資金配分と経費配分です。 ふつう製造業の会社は、機械や設備、土地や建物に多くの資金が必要になります。卸会社であれば、商品を保管するために倉庫が必要になるでしょう。売掛金の回収が手形になる業種もあり、この場合も多くの資金が必要になります。 これらの業種では、限りある資金を、何と何に対して、いくらずつ配分すると経営力が最も強くなって業績が良くなるかの見極めが必要になります。 この見極めが、資金の「戦略」です。この結果は、貸借対照表に表わされます。 経営には、経費も必要です。限りある経費を、何と何に対して、いくらずつ配分すると営業力が最も強くなって粗利益と経常利益が多くなるか、この見極めが必要です。 これが、経費の「戦略」です。この結果は、損益計算書に表わされます。 経費配分を効果的にして業績を良くするには、商品戦略、地域戦略、業界と客層戦略、営業戦略、顧客維持の戦略の5つを詳しく知っておくことが欠かせません。 ただし、資金戦略や経費戦略も、直接粗利益を生み出すものではありません。だから経営では、資金と経費は脇役です。 ところが「資金や経費こそ経営の主役のはずだ」と考えている人がたくさんいます。中でも、会計の専門家は、こう思っている人がとても多いようです。 確かに「金銭欲」を出発点にして考えるとそうなるでしょうが、商品を買うかどうかの決定権をもっている「お客」を出発点にして考えると、そうはならないのです。「金が、経営の主役ではないか」と考える人は、お客をつくるときの道具(手段)として必要になる「資金や経費」と、経営活動の結果として出てくる「利益のお金」との区別がつかず、2つを混同して考えているのです。 会社は粗利益で生きており、その粗利益はお客からしか出てこないという不変の経営原則を思い出せば、答えはおのずからはっきりしてくるはずです。 最後に、差別化しなければならないものの 8番目は、これらを「何時間実行するか」の仕事時間です。ここまで説明したことはすべて、仕事時間と結びついて初めて「経済的な価値」に変化するのですから、営業時間や仕事時間についてもはっきり決めておかなければなりません。 以上、商品、営業地域、業界・客層、営業方法、顧客維持、組織、資金・経費、仕事時間の8つが、経営を構成する最も中心的な要因になります。ですから経営システムは、この8つのことを柱にしてつくらなければなりません。差別化をするときも、これらが最も重要な対象になるのです。
3経営を構成する「大事な要因」をウエイト付けする8つの要因をウエイト付けしてみると 前の項目で、経営を構成している大事な要因について説明してきましたが、ドラッカーが言うとおり、効果が高い経営をして業績を良くするには、それらの要因のウエイト付けをしておく必要があります。 ウエイト付けをしないで経営をすると、あれも重要、これも重要、みんな重要、という総花主義に陥ってしまい、業績は良くなりません。 では、前の項であげた8つの大事な要因をウエイト付けしてみましょう。 項目の数が多すぎると計算がむずかしくなるので、まず8つ目の仕事時間は、性質が違うことから除外します。 次に営業地域、業界と客層、それに営業方法と顧客維持の4つは1つにまとめて、「広い意味での営業対策」とします。これで項目は、「広い意味での営業対策」「商品対策」「組織対策」「資金と経費対策」の4つになります。 これら4つの項目を、第 2次世界大戦が始まる前、アメリカ国防省のプロジェクトチームが新しく開発したオペレーションズ・リサーチの方法と、競争の法則と呼ばれるランチェスター法則の2つを使って計算してウエイト付けすると、次のようになります。「広い意味での営業対策」―― 53%「商品対策」―― 27%「組織対策」―― 13%「資金と経費対策」―― 7% ちなみに「広い意味での営業対策」と「商品対策」の2つに限定してウエイト付けをすると、「広い意味での営業対策」が 67%で、「商品対策」は 33%になります。営業 7分に商品 3分、ということです。 次に、広い意味での営業と商品の2つを合わせて「お客づくり関連」としてくくってみると、 80%になります。一方でそれら以外、つまり組織と資金・経費の2つを「内部関連」としてくくると、 20%になります。 つまり、お客づくり関連と内部関連の比は 4対 1となり、お客づくり関連のほうが 4倍もウエイトが高くなるので、業績を良くするには、お客活動を必ず差別化し、そのレベルを高めなければならないことがはっきりします。 もちろん、だからといって、お客づくりだけに力を注げばいいというわけではありません。業績は両方の掛け算なので、双方のレベルを同業者より高めていく必要があります。 しかし従業員 30人以下の社長は、何かと雑用が多く時間に余裕がないことから、すべての要因を業界平均より高めようとしてもなかなかうまくいきません。 であれば、従業員 30人以下の社長は、お客づくり関連により大きな力を注がなければなりません。内部関連の仕事は、直接粗利益をつくらないからです。 ですから「組織、資金・経費」の内部関連は業界の「平均的なレベル」にしておいて、経営で最も重要なお客づくりに注力すべきなのです。中でも経営力が弱い従業員 20人以下の会社は、このことを肝に銘じなければなりません。利益性の原則を押さえ直す 業績を良くするには、利益性のよしあしはどのような要因で決まるか、利益性の原則もはっきり押さえ直しておく必要があります。「コストダウンをする」「固定費を少なくする」「経費を減らす」など、いろいろな考えがあります。 もちろんこれらのことは間違いではありませんが、どれも部分的な対処法で、根本的な解決方法とはいえません。 これに解答を与えたのが、ランチェスター法則の応用研究から出てきた市場占有率の法則です。 ①県単位か営業活動エリアのどちらか広いほうで 1位になり、 ②市場占有率 26%以上を押さえ、 ③ 2位との間に 10対 6以上の差をつける ――という「3つの条件」を確立すると、従業員 1人当たりの経常利益が業界平均の 2 ~ 4倍も多くなる。 これが、市場占有率の法則です。 この状態が何年か続くと自己資本比率が高くなり、従業員 1人当たりの自己資本も業界平均の 2倍以上になるので、資金繰りがとても楽になります。 全国各地に支店や営業所をいくつも出し、その結果、売上が増加しているような会社は、外見からではとても良く映ります。しかし1つひとつの支店や営業所の市場占有率が業界で中位か中以下にあるなら、粗利益に対する営業経費が割高につくので、従業員 1人当たりの経常利益は業界平均よりも少なくなります。 これでは自己資本比率が低くなり、しかも従業員 1人当たりの自己資本額も少なくなってしまいます。 この状態にありながら「売上を伸ばせば利益が多くなるはずだ」とばかりに支店や営業所を増やし続けると、どんなことになるでしょうか。 出先開設のために少なからぬ資金が出ていくばかりか、出先を出しても何年間かは赤字が続くので、ほどなく資金繰りが苦しくなって危ない会社になる
はずです。 私はかつて企業調査会社に勤め、中小企業の信用調査と倒産会社の取材をしていましたが、こういう会社が何社もありました。なぜこうなるのかといえば、それは、広い意味での営業経費が予想以上に多く出ていくからです。 例として、中小の卸会社における粗利益と、経費の関係について説明しましょう。 ある会社で、粗利益を 100万円つくったとします。この場合、経費はどのように出ていくのか? 営業パーソンの人件費、自動車の維持費や出張経費、販売促進費や交際費など「広い意味での営業経費」が 65万円 ~ 70万円も出ていきます。 この経費の中で最もウエイトが高くなるのは、営業パーソンがお客のところまで移動する移動時間のロスです。営業パーソンの移動時間が多くなると、本当の仕事といえる「お客活動時間」が少なくなります。つまり移動時間とお客活動時間の2つは「二律背反」の関係にあるのです。 このほか、内勤者の人件費や家賃、電気代、電話代や支払利息などを払うと、経常利益として残るのはわずか 7、 8万円になってしまいます。これから税金を払うと、会社に残るお金はほんのわずかです。黒字会社でも、こんなケースが多いのです。 では、どうすればよいのか? そうした場合は、特定の地域に、競争相手よりも多くのお客をつくって、市場占有率を高める努力をすることです。 1位になれば、営業パーソンの移動時間が少なくなり、その分お客活動時間が多くなるので、多くの得意先が担当できたり、密度が濃い販売活動ができるようになります。その結果、営業経費が割安になる上、お客から支持されるようになり、業績が向上してきます。 そんなふうに、特定地域にお客を多くつくったことで市場占有率が高まり、これによって粗利益が 8万円多くなるか、営業経費が 8万円少なくなれば、それまで 8万円だった経常利益は倍の 16万円になります。 こうした経常利益の増え方は、電気代や電話代を節約するなどの、会計的な考え方による増え方とは根本的に異なります。これは、集中効果によって生み出されるプラス作用なのです。 この考え方は、「商品」や「業界」・「客層」でも同じように成立します。このことから、業績向上のための「強いものづくりや、 1位づくりの経営原則」が生まれたのです。 競争力がある強い商品が1つもなく、どれも負けている。 他社よりも広い地域で営業してはいるけれど、強い地域が 1カ所もなく、どこも負けている。 業界でも客層でも同じような状態になっているとすれば、従業員 1人当たりの粗利益が業界の平均より 2割も 3割も少なくなるでしょう。それで経常利益を多くしようとしても、どう考えても無理なはずです。 経営の目的を、「強いものづくりや、 1位づくり」に定めると、目先の利益に目がくらみ、自社の業種から見て手を出すべきでない商品に多角化することが防げるので、経営の安全度が高くなる、というメリットもあります。 この点が、通常のマーケティングやマネジメントにはない、ランチェスター経営の大きな特徴になるとともに、この原則を守ることは経営の大きな差別化にもなるのです。実行の手順を改めてはっきりさせる ここまでに説明した「経営を構成する大事な要因」と「利益性の原則」の2つは、経営原則の中で最も重要度が高いものです。 ではこれらを、どのような手順と考え方で実行に移せばよいのか? 実行の手順を考えるときにとても役立つのが、軍隊の将校が作戦計画を立てるときの作業手順なので、これについて説明しましょう。 将校が作戦計画を立てる際の前提になるのが、必勝の信念と決断力です。次いで目的、目標、戦略、戦術、戦闘時間、戦闘期間、情報、革新の順で計画
を立てます。 これを、会社のリーダーである社長に置き換えると次のようになります。 前提になるのが、経営の願望、熱意、決断力、向上心です。 自分が経営している会社の業績を、何としても良くしたいという強い思いと熱意、重要なことをきちんと決める決断力、自分の戦略実力を高め、従業員や仕入先などから尊敬される、立派な社長になりたいという向上心が社長には求められます。 会社は歩合給で運営されており、しかも多くの競争相手がいる中、もしこれらが弱かったら、競争の荒波にのまれてしまうことははっきりしています。 その上で、第一に明確にしなければならないのが、経営の目的です。 人はことのほかお金にとらわれているために、ほとんどの人は、経営の目的は「利益の追求にある」と考えています。 しかしたとえ経営の目的を利益の追求に定めたとしても、ではどうすれば利益が多くなるか「その方法」ははっきりしません。そこでつい、労せずして儲かりそうに思える、土地、株式投資、商品先物投資、外国為替投資などに目が向いてしまいます。 バブル経済のとき、これらに手を出したことが原因でなんと 30万人もの社長が経営に失敗し、大事な人生を棒に振ってしまったそうです。こうした現象は過去に何度となく起きていて、そのつど多くの社長が失敗しています。こうなった大本の原因をただせば、労せずして儲けたいという人の「欲の深さ」にあるのです。 ですから社長は、経営の目的は利益の追求ではなく、競争力がある強い商品づくりや、特定の地域で 1位になる客層づくりに定めるようにすべきです。 競争力がある強い商品づくりや 1位の地域づくりは、一朝一夕にしてできるものではありません。本気で取り組んでも何年もかかるので、その期間は脇目をふらずに経営に取り組むことができるので、「欲の深さ」から逃れるためにはかえって好都合といえるでしょう。 次の手順は、目標です。 目標というと、多くの社長は売上高目標や利益目標をあげますが、ここでは、「経営の目的」に対応した目標を設定します。会社の「目的・目標」です。 競争力がある強い商品づくりや、 1位の地域づくりを目的にした場合の目標は、次の3つになります。 1つ目は、「重点商品の決定」です。社長の性格と過去の経験、自社の経営力と競争相手との力関係、業界におけるランクの3つを考えた上で、どの商品に力を入れて、将来 1位になることをめざすかを決めます。 2つ目は、「重点地域の決定」です。自社の経営力と競争相手との力関係を考えた上で、どことどこの地域に力を入れて将来 1位になることをめざすかを決めます。 3つ目は、「重点業界や重点客層の決定」です。どの業界、どの客層に力を入れて強くするかを決めます。 売上目標や利益目標は、単なる数字合わせではなく、強いものづくりや 1位づくりと連動した形で決めなければなりません。お客づくりに直接関係する「商品」、「営業地域」、「業界と客層」の3つと全く関係なく売上目標を立てた場合、仮にそれが達成されても、従業員 1人当たりの経常利益は多くならないのです。 4番目が、戦術です。本当は 3番目の戦略を先にすべきなのですが、説明の都合上、戦術を先にします。 戦術の語源は古代ギリシャのタクティコースにあり、もともとは掃除を専門にする人をこう呼んでいました。掃除を専門にする人は、まず手に掃除道具を持ち、次に手や体を繰り返し何回も動かして体に汗を流します。この様子が兵士の動きによく似ているので、いつの間にか兵士のこともタクティコースと呼ぶようになったそうです。 明治の初めヨーロッパへ兵学の研究に行った山縣有朋らは、これを「戦術」と翻訳しました。そして戦術とは「見えるもの」と解説を加えています。直訳は「兵士の術」になります。戦術は 1対 1の勝ち方の知識や技術になり、経営では「従業員の仕事術」になったのです。 経営でも道具を使い、繰り返しする作業は戦術になります。営業パーソンが定期的にお客を訪問するのは、繰り返し作業なので戦術です。新規開拓の仕事も同様です。 会計の仕事は、ボールペンやパソコンなどの道具を使い、次に手先を何回も動かすので戦術であり、資金繰りも、 10日、 15日、 20日、月末と繰り返しするので、やはり戦術になります。会計の専門家の中には「資金繰りは経営にとって大変重要だから、資金戦略だ」と言う人がいますが、そうではありません。 繰り返し作業で仕事量を多くするには、スピードを速くしたり、ミスや不良品を少なくする必要があり、これを「能率の向上」と呼んでいます。つまり能率は戦術に対応した専門の用語なのです。加えて言えば、「戦術は戦略に従う」という原則があるように、戦術上の仕事だけが「単独」に発生するものではありません。 兵士の数が多くなると、その上にリーダーが置かれます。たとえば 4、 5人の部下をもち、自分も戦術を担当する人を伍長と呼びます。その上が戦術リーダーで、戦術リーダーは、戦術行為をしないのが原則です。 経営でも、従業員が多くなるとその上にリーダーが置かれます。 4人 ~ 5人の部下をもち、自分も担当の仕事をもっている人は、伍長型のリーダーです。しかし伍長型のリーダーは、自分も戦術を担当しているため仕事時間に余裕がないので、幹部ではありません。 その上の戦術リーダーは、原則として戦術を担当しません。しかし自分の人件費とその他の経費はすべて部下の働きに依存するので、訪問型営業や建設工事業では 10人以上、小売業や飲食業では 20人以上、工場では 40人以上の部下をもたないと、自分の存在理由がなくなります。 だから、自分で戦術を担当しない会社の管理者は、戦略のプロにならなければならないのです。 さて、戻って 3番目が、その戦略です。 戦略の語源は古代ギリシャの「ストラテジア」にあります。 1864年、長州藩(山口県)出身の大村益次郎は、これを「将軍の術」と翻訳していましたが、明治の初めヨーロッパへ兵学の研究に行った山縣有朋らは、これを戦略、または軍略と改めました。それとともに、「戦略とは見えざるもの」と解説をしました。 ちなみに戦略の「略」の字は、知恵を意味しています。 このように戦略は軍事用語で、その意味は軍全体の効果的な勝ち方のルール、またはその知恵になります。これからすると経営戦略は、経営目標を効果的に達成する全社的なやり方、またはそのルールや知恵ということです。そしてこれが、「社長の経営術」です。 大村益次郎が訳した「将軍の術」ということであれば、その意味がおおよそわかりますが、戦略とか軍略と言われると、意味がはっきりしなくなります。そのため、コンサルタントの中には、戦略の意味を間違えて使っている人が少なからずいるのです。 自社の経営力や強みを考えた上で会社の将来目標を定めるには、レベルが高い戦略知識が必要になります。しかし戦略は、あくまでもその目標を達成する「
やり方」です。経営の目標とははっきりと区別して考えなければなりません。 戦略と戦術の正しい意味を理解していないと、経営をするときに、次のような誤りが発生します。・会社の規模でおのずと変わってくる、社長の役目と従業員の役目がわからなくなる。・きちんとした経営システムがつくれないばかりか、差別化力がある経営もできなくなる。・仕事の内容が見えるものだけを重視するようになるので、結局、業績は従業員の働きぶりで決まると考えてしまう。 これでは、まともな経営ができなくなるでしょう。 だから社長は、「戦略」という言葉に接したら、いったん「将軍の術」と語源にもどし、さらにそれを「社長の経営術」と置きかえて考えるようにしなければならないのです。ランチェスターの法則を研究する では、実際にはどのようなやり方をすると正しい「社長の経営術」になるのか? この難問に解答を与えたのが、ランチェスターの法則です。 ランチェスターはイギリス人で、 27歳のときにイギリスでは最初にガソリンエンジンの自動車をつくったあと、 28歳 ~ 40歳までの 12年間、自動車会社の経営をしていました。そして 40歳で会社を売却し、技術コンサルタントになりました。 1914年7月 28日、第 1次世界大戦が勃発しておよそ 2カ月後の 10月 2日、戦闘における力関係は、どのような条件で決まるかについて、自分の研究室で考えていたとき、ピタゴラスの定理にヒントを得て、次の2つの法則を発表しました(日本では「ランチェスターは第 1次世界大戦における空中戦のデータを分析しているうちに法則を考えた」と説明されていますが、ランチェスター自身が法則について書いた原書を読むと、これは間違いであることがわかります)。 第 1法則は、 攻撃力 =兵力数 ×武器性能(質) です。 もし双方の武器性能や兵士の技能に差がなければ、攻撃力は兵力数に比例することになります。この第 1法則について、ランチェスターは、質が「コンスタントの場合は」と表現しています。第 1法則は、刀や槍など戦闘範囲がごく狭い兵器を使い、敵と味方が接近し、 1対 1の戦いをしたときだけ成立するので、第 1法則のことを接近戦、一騎打戦の法則とも呼んでいます。 第 2法則は、 攻撃力 =兵力数の 2乗 ×武器性能(質) です。 もし双方( A・ B)の武器性能と兵士の技能に差がなければ、攻撃力 =兵力数の 2乗に比例するということです。 この場合の試算式は、 = A軍の残存数になるので、 A軍の損害量は初期兵力数から残存数を差し引いたものになります。 ちなみに攻撃力が兵力数の 2乗になる根拠は、確率の法則にあります。 この第 2法則は、ライフル銃や機関銃など射程距離が長い兵器を使い、双方が離れて戦ったときだけ成立するので、第 2法則のことを間隔戦、確率戦の法則とも呼んでいます。 では第 1法則と第 2法則の2つの公式を使って、簡単なシミュレーションをしてみましょう。 まず、兵士の数の比が 1対 0・ 5のケースです。劣勢側が 2分の 1の力関係にある場合に、劣勢側が第 1法則で戦いをすると本当の力関係は、やはり 1対 0・ 5になり変化はありません。つまり効率は「 1・ 0」になるので、この場合損も得もありません。 次に 1対 0・ 33と、劣勢側が 3分の 1の力関係にあるケースです。この場合、第 1法則の条件で戦いをすると、本当の力関係は、やはり 1対 0・ 33になり変化はありません。この場合の効率も「 1・ 0」になります。 では第 2法則で戦いをした場合はどうなるでしょうか。 兵士の数の比が 1対 0・ 5と、劣勢側が 2分の 1の力関係にある場合に、劣勢側が第 2法則の条件で戦いをすると本当の力関係はこの 2乗に比例するので、 1対 0・ 25になってしまいます。 この場合、劣勢側の効率は 50%も低下してしまいます。 次に 1対 0・ 33と、劣勢側が 3分の 1の力関係にある場合、第 2法則の条件で戦いをすると本当の力関係は、この 2乗に比例するので 1対 0・ 11になってしまいます。 この場合、劣勢側の効率は 67%も低下してしまいます。これでは劣勢側は、ひどい結果になってしまうのははっきりしています。 この原則を知らずに戦争をし、 210万人もの戦死者を出したのが旧日本軍です。 会社経営でも、多くの競争相手がいる場合、会社と会社の本当の力関係は「ある局面」に投入される戦術力の 2乗に比例します。そのために競争条件が不利な会社が「特別な対策」をとらないで経営をすると、強いほうから 2乗作用の圧迫を受けるのでひどい結果になってしまうのです。 以上2つのシミュレーションから、次の結論が出てきます。 1番目の結論は、競争条件が最も有利な会社が目標を定めて運営するときは、ランチェスターの第 2法則を応用すべきだということです。 そうすれば、下位の会社に 2乗作用の圧迫を与えることができるので、より有利に戦いを進めることができます。これが、「強者の経営戦略」です。 2番目の結論は、競争条件が不利な会社が目標を定めて運営するときは、ランチェスターの第 1法則を応用すべきだということです。 そうすれば、たとえ競争条件が不利であったとしても、それ以上不利にはならないので、第 2法則を応用して戦う場合よりはるかに有利になります。努力すれば努力するほど、結果を出せるのです。これが、「弱者の経営戦略」です。
以下に、強者の戦略と弱者の戦略について、もう少し詳しく説明しましょう。「強者の経営戦略」を実行できる会社とは 強者の戦略が実行できるのは、自社の活動エリアが県単位で見て市場占有率 1位で、 26%以上を押さえ、かつ 2位との間に 10対 6以上の差をつけている会社に限られます。 これらの条件を確立すると経常利益の補給力が特別多くなるので、思い切った強気の経営ができるようになるのです。 では、強者の戦略の大事なところを説明しましょう。 1番目は、総合 1位主義です。 ある商品かある地域で 1位になったら、その力を有効に使い、 1位になっている商品に近い商品や、 1位になっている地域に近い地域でも 1位になるようにし、総合的に 1位になることをめざします。ちなみに「総合」という用語は強者の会社だけが使える専用語で、弱者はむやみに使うべきではありません。経営の失敗に結びつきます。 2番目は、自社の業種で市場規模が大きな商品には特別強い力を入れ、この商品市場の押さえにかかることです。 3番目は、商品の幅を広くして商品市場に盲点をつくらないようにすることです。 4番目は、営業地域は、人口が多い大都市に特に力を入れ、この地域市場の押さえにかかることです。 5番目は、営業地域は範囲を広げ、地域市場に盲点をつくらないようにすることです。 6番目は、資金力を生かして新製品の開発に力を入れ、同業者との差がより大きく開くようにすることです。 7番目は、商品の販売では、卸会社を何社も使った間接販売に力を入れることです。 8番目は、広告を積極的に活用し、最終利用者に対しては直接働きかけ、知名度を高めることです。 9番目は、 2位や 3位など下位の会社が、今までにない商品をつくったり、今までにない営業方法を実行したら、ただちに同じやり方をすることです。要はマネですが、同業者のマネができるのは 1位の会社に限られます。 10番目は、資金力を生かして重装備の経営をすることです。 11番目は、本業に近い業種には出資を行い、弱者が強くならないように包囲することです。 このような考えを、経営全体に一貫性をもって実行すると、強者の戦略になるのです。ほとんど全ての会社は「弱者の経営戦略」を実行しなければならない「弱者の戦略」の弱者とは、市場占有率が 2位、 3位以下で、強者の条件を満たしていない会社のことです。従業員数も、業歴の古さも、社長の学歴も、社長の個人資産もいっさい関係ありません。「弱者の戦略」の主な内容は、次のようになります。 1番目は、強いものづくりや 1位づくりを大目標にすることです。 経営で本当の価値があるのは、 1位の商品、 1位の地域、 1位の客層だけなので、まずそこを目標にするのです。 2番目は、攻撃目標と競争目標の分離の原則に従い、自社よりも強い競争相手とは直接戦わないことです。 3番目は、強い会社とは違った経営のやり方をすることです。つまり差別化です。 競争条件が不利な会社の業績がどうなるかは、「経営の大事なところ」がどれくらい差別化されているかで決まります。 4番目は、小規模 1位主義、部分 1位主義です。 限りある経営力で競争力がある強い商品をつくったり、 1位の地域をつくったり、 1位の客層をつくったりするには、市場規模が小さなものを重点目標にしなければなりません。 5番目は、細分化です。自社の経営力でも強いものや 1位になれるものを見つけ出すときは、商品や営業地域を細分化していくことで、自社にとって都合が良いものを見つけることができます。 6番目は、特徴があるもの、有利なものに力を入れ、弱いものは切り捨てることです。 7番目は、重点目標を絞って強いものづくりや 1位づくりに取り組むことです。 8番目は、経営力の分散を防ぐため、目標の範囲は思い切って狭くして、強いものづくりや 1位づくりに取り組むことです。 9番目は、商品の販売では卸会社や広告を使わず、可能な限り最終利用者に直接販売することを考えることです。こうすると強い会社から受ける 2乗作用の圧力が弱くなるので、競争条件が不利な会社でも十分やっていけるのです。 10番目は、競争力がある強い商品づくりや 1位の地域づくりに取り組むときは、物理的に見て 1位になれるだけの経営力を投入することです。 そのためには、もてる経営力を、目標に対して集中して投入しなければなりません。そうやっても強くなれないときは、目標の定め方が間違っているので、目標の定め方を変える必要があります。 11番目は、運営に当たっては軽装備を重視し、資金をかけずに動きを速くすることになります。 12番目は、強いものづくりや 1位づくりに取り組むとき、目標が達成されるまでは決して諦めず、忍耐強く続けることです。 13番目は、自社の経営目標や経営方針が強者に知られないよう、情報の管理には十分注意することです。 ここまで説明した「弱者の戦略」を実行し続ければ、業績が良くなります。こうなると中には社長の心に緩みが出、調子に乗って本業以外の業種に手を出したり、生活が派手になる人が出てきます。その結果、思わぬ損失が出て、会社が危なくなることがあります。 だから弱者は決して調子に乗らず、小さな成功で生活内容を変えてはいけないのです。 以上、「強者の戦略」と「弱者の戦略」の大事なところについて説明しました。 読んでわかるとおり、2つの内容は全くアベコベの正反対になっています。「強者の戦略」が実行できるのは 1000社中 5社くらいしかなく、残りの 995社は「弱者の戦略」で経営をしなければなりません。さらにこの中の 400社は競争条件が特別不利な「番外弱者」になるので、より厳密に「弱者の戦略」で経営をしなければならないのです。
ところが社長の中には「弱者というのが気に入らない」とか、「自分も一国一城の主であるから思いどおりの経営をするのだ」と言って、この原則を守らない人がいます。 本来「弱者の戦略」で経営すべき会社が間違って「強者の戦略」で経営をすると、根本的に間違った仕事を全員で実行することになるので効率が悪くなり、従業員 1人当たりの粗利益が 1年間に、「 100万円 ~ 200万円」も少なくなってしまいます。これでは経常利益が出てもほんの少しで、たいがいは赤字になるでしょう。 従業員が 20人いるなら、この損失額は 1年に 2000万円 ~ 4000万円になり、この状態が 5年間続くなら損失額は 1億円 ~ 2億円と、恐ろしいばかりの金額になってしまいます。これではほどなく危ない会社になるのは間違いないでしょう。 街かどにある自動販売機で、缶コーヒーを買うために 1000円札を取り出したところ、手元が狂って 1000円札が風に飛ばされたら、誰だってあわてて拾いに行きます。それが 1万円札なら、目の色が変わるはずです。 ところが、戦略の取り違いから出る損失は、お札のように目に見えませんし、いくら経営分析をしてもわからないので、毎月毎月多額の損失が出ていてもこれに気づかず、のん気な顔をしている社長が多いのは不思議な気がします。「働けど働けどわが社の経営は良くならず、じっと資金繰り表を見る」というときは、本来は「弱者の戦略」で経営システムをつくり、「弱者の戦略」で運営すべきなのに、間違って「強者の戦略」で経営システムをつくり、「強者の戦略」で運営していることに原因があるケースがたくさんあります。 そんなふうにならないために、社長はランチェスター法則を研究して戦略実力を高めなければならないのです。
4社長は何から手をつけて、どうやるか会社の規模で変わる社長の役割 ここまで、経営システムをつくるときの重要テーマの実行手順と、中でも特に重要な「強者の戦略」と「弱者の戦略」について説明してきました。次に必要になるのは、実行手順のウエイト付けです。 オペレーションズ・リサーチの方法とランチェスターの法則を応用して計算すると、次のようになります。 1番目は、社長の経営に対する願望や熱意、決断力と向上心で、 53%です。 2番目は、目的と目標で、 27%です。 3番目は、全社的経営のやり方の戦略で、 13%です。 ここまでの累計は 93%で、 4番目の戦術は 7%です。 では、 1番目の社長の願望や熱意などを除いて、純粋な実行手順だけで計算するとどうなるでしょうか。 1番目は目的と目標で、 57%です。 2番目は戦略で、 29%です。 3番目は戦術で、 14%です。
「目的と目標」と「戦略」は明らかに別のテーマですが、自社に合った目標を定めるには、レベルが高い戦略知識が必要になります。そこであえてこの2つを合わせ、広い意味での戦略にすると 86%になります。 戦術は 14%ですから2つのウエイトは「 6対 1」となり、広い意味での戦略がとても重要であることがわかります。このような意味からも、社長は経営戦略にはしっかりと取り組み、戦略実力を高めておくことが欠かせないのです。 次に必要になるのは社長の役割をはっきりさせておくことですが、それは経営規模の大・中・小・零で変わります。 社長の役割には、大きく分けると、願望・熱意、目的と目標、戦略、経営管理、戦術リーダー、戦術の5つがあり、これが規模によって変化していきます。 次の表を見て、確認してください。
経営の全体をつかみ、やるべきことをウエイト付けする ではここで、経営の全体をつかみ、社長がなすべきことをウエイト付けしてみましょう。 経営を構成する8つの「大事な要因」と、これを実行に移すときの作業手順の2つを組み合わせると経営全体像がはっきりします。私はこれを竹田ビジネスモデルと名づけました。 1.商品対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 2.地域対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 3.業界・客層対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 4.営業対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 5.顧客維持――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 6.組織対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 7.資金・経費対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 8.時間対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 次に、経営を構成する大事な要因のウエイトと、社長の願望や熱意を除いた実行手順のウエイトの2つをかけると、経営を構成する全体のウエイトが出ます。 営業地域、業界と客層、営業方法、顧客維持の4つをまとめた「広い意味での営業対策」では、戦略分野が 45・ 7%を占めていて最も多くなり、次いで商品戦略が 22・ 9%となります。2つを加えると 68・ 6%にもなるので、社長はこれらの戦略については、何としても実力を高めなければなりません。 これに対して組織対策の戦術に当たる賃金制度などの処遇は、 1・ 9%しかないのですから、賃金制度は簡単にして手間がかからないようにすべきです。 また、資金と経費対策の戦術に当たる簿記や会計は 1%しかないのですから、これも簡単にして手間がかからないようにすべきでしょう。 アメリカで出版されるビジネス書に、必ず出てくるのがマーケティングについてです。 マーケティングはもちろん大切なのですが、しかしマーケティングという言葉だけでは、その「構成要因と範囲」がはっきりしないばかりか、ウエイト付けもされてないので、ひどくあいまいになっています。 しかし、この表の組織対策と資金・経費対策の2つを除いたものをマーケティングの構成要因と考えれば、とてもわかりやすくなります。 ドラッカーは、「マーケティングに販売戦術は入れない」と言っていますが、コトラーなどの他の本では明示していません。このためだけではないでしょうが、日本のコンサルタントのマーケティングについての説明も、社長にとってはとてもあいまいで、応用しにくくなっています。社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で決まる ここまでに、差別化力がある経営システムのつくり方について説明してきました。ただ、これを実行に移すには、会社のリーダーである、社長自身の実行力をしっかりと高めなければなりません。 では、社長個人の実行力は、どのような要因で決まるのでしょうか? 多くの競争相手がいる環境では、ランチェスターの第 2法則が適用されるので、その公式に従って説明しましょう。 社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で表わされます。 この場合の質とは、社長が責任をもって担当すべき仕事の種類のことです。 これを微分すると2つの要因のウエイトが出ます。ウエイトは、仕事に投入する時間量が 67%を占め、質は 33%になります。 だから社長が実行力を高めて業績をよくするには、まず仕事時間量を多くし、次に質を高めればよいのです。 a.必勝と圧勝の時間戦略 社長が実行力を高めるには、まず仕事時間量を多くしなければなりません。 では、どれくらいの時間、仕事をすれば合格といえるか時間目標を決めておく必要があります。 中小企業の平均労働時間は 1850時間なので、これを基準時間とします。 では社長は、どれくらいの時間仕事をすれば同業者の中で合格といえるのでしょうか。 これにはアメリカの数学者バーナード・コープマンが、ランチェスターの法則を使って導き出した「必勝と圧勝」の数値が参考になります。 これによると必勝型は 3倍になり、圧勝型は 4倍になります。しかし仕事時間には「 2乗」がついているので、実際の仕事時間は、この平方根でよくなります。 ちなみに社長が休日に自宅で経営戦略の研究をしたり、経営計画書づくりをした作業は仕事時間に入るので、平日の仕事時間は思ったほど多くはなりません。
経営の全体をつかみ、やるべきことをウエイト付けする ではここで、経営の全体をつかみ、社長がなすべきことをウエイト付けしてみましょう。 経営を構成する8つの「大事な要因」と、これを実行に移すときの作業手順の2つを組み合わせると経営全体像がはっきりします。私はこれを竹田ビジネスモデルと名づけました。 1.商品対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 2.地域対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 3.業界・客層対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 4.営業対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 5.顧客維持――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 6.組織対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 7.資金・経費対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 8.時間対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 次に、経営を構成する大事な要因のウエイトと、社長の願望や熱意を除いた実行手順のウエイトの2つをかけると、経営を構成する全体のウエイトが出ます。 営業地域、業界と客層、営業方法、顧客維持の4つをまとめた「広い意味での営業対策」では、戦略分野が 45・ 7%を占めていて最も多くなり、次いで商品戦略が 22・ 9%となります。2つを加えると 68・ 6%にもなるので、社長はこれらの戦略については、何としても実力を高めなければなりません。 これに対して組織対策の戦術に当たる賃金制度などの処遇は、 1・ 9%しかないのですから、賃金制度は簡単にして手間がかからないようにすべきです。 また、資金と経費対策の戦術に当たる簿記や会計は 1%しかないのですから、これも簡単にして手間がかからないようにすべきでしょう。 アメリカで出版されるビジネス書に、必ず出てくるのがマーケティングについてです。 マーケティングはもちろん大切なのですが、しかしマーケティングという言葉だけでは、その「構成要因と範囲」がはっきりしないばかりか、ウエイト付けもされてないので、ひどくあいまいになっています。 しかし、この表の組織対策と資金・経費対策の2つを除いたものをマーケティングの構成要因と考えれば、とてもわかりやすくなります。 ドラッカーは、「マーケティングに販売戦術は入れない」と言っていますが、コトラーなどの他の本では明示していません。このためだけではないでしょうが、日本のコンサルタントのマーケティングについての説明も、社長にとってはとてもあいまいで、応用しにくくなっています。社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で決まる ここまでに、差別化力がある経営システムのつくり方について説明してきました。ただ、これを実行に移すには、会社のリーダーである、社長自身の実行力をしっかりと高めなければなりません。 では、社長個人の実行力は、どのような要因で決まるのでしょうか? 多くの競争相手がいる環境では、ランチェスターの第 2法則が適用されるので、その公式に従って説明しましょう。 社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で表わされます。 この場合の質とは、社長が責任をもって担当すべき仕事の種類のことです。 これを微分すると2つの要因のウエイトが出ます。ウエイトは、仕事に投入する時間量が 67%を占め、質は 33%になります。 だから社長が実行力を高めて業績をよくするには、まず仕事時間量を多くし、次に質を高めればよいのです。 a.必勝と圧勝の時間戦略 社長が実行力を高めるには、まず仕事時間量を多くしなければなりません。 では、どれくらいの時間、仕事をすれば合格といえるか時間目標を決めておく必要があります。 中小企業の平均労働時間は 1850時間なので、これを基準時間とします。 では社長は、どれくらいの時間仕事をすれば同業者の中で合格といえるのでしょうか。 これにはアメリカの数学者バーナード・コープマンが、ランチェスターの法則を使って導き出した「必勝と圧勝」の数値が参考になります。 これによると必勝型は 3倍になり、圧勝型は 4倍になります。しかし仕事時間には「 2乗」がついているので、実際の仕事時間は、この平方根でよくなります。 ちなみに社長が休日に自宅で経営戦略の研究をしたり、経営計画書づくりをした作業は仕事時間に入るので、平日の仕事時間は思ったほど多くはなりません。
b.朝の仕事始めは 7時 30分 朝何時から仕事を始めるかも、時間戦略の重要な要素です。 それは、 7時 30分です。 私がかつて企業調査会社に勤めていて、倒産会社の取材をしていたときに気づいたことがあります。それは、倒産会社の社長はほとんど、 9時 30分 ~ 10時頃の遅い時間に出勤することでした。二代目や三代目で倒産した社長で、特にこの傾向が顕著でした。 では逆に、業績が良い会社の社長は朝何時に出勤しているだろうかと考えて調べたところ、 6時半とか 7時など早い人もいたのですが、 7時 30分までがいちばん多くなっていました。しかもどの社長も、必勝以上の時間戦略を実行していました。 このことから私は、社長は 7時 30分には仕事を始めたほうが良いと結論づけました。「資金はない、人脈はない、信用もない」など、ないないづくしの中で起業し、一代で大企業に育てた社長たちはほとんど朝型で、しかも「決死型」(年間 4140時間)以上の時間戦略を実行しています。 本田技研の本田宗一郎氏、京セラの稲盛和夫氏も朝型で、毎年 5000時間以上、 35年も働き続けています。孤児という境遇に負けることなくカレー店をつくり、これを上場企業までにした壱番屋の宗次徳二氏は毎年 5500時間、 35年も働き続けました。自宅のガレージで経営を始め、世界的な企業に育てたアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏も、朝型で、 4500時間、 25年間働き続けました。 もちろんこれらの社長は素質も並はずれて高く、「われわれとは違う」と言う人がいるかもしれません。しかしだからこそ、社長としての素質がふつうのレベルの人が高い経営システムをつくり、それを力強く実行してより大きな成果を出すには、朝型で、必勝型以上の時間戦略を実行することが欠かせないのです。 社長としての素質は中以下で、働く時間も少なければ、結果がどうなるかははっきりしています。 では必勝型(年間 3200時間)以上の時間戦略は、何年間続けるとはっきりした成果が出るようになるでしょうか。 社長の場合は、 5年間です。 さらに、地元の同業者の中でトップクラスの実力を身につけたいと思うなら、 15年は続ける必要があります。 仕事時間を多くすることは、言い換えれば「仕事時間の差別化」です。だから、競争条件が不利な会社の社長は、時間戦略の実行が欠かせないのです。 中には、「自分はこの業界で首都圏で 1位になるのだ」とか「この商品で近畿圏 NO. 1になるのだ」と言っておきながら、朝は遅くに出勤し、夕方もさっさと帰って遊びに行くような社長がいます。あなたの同業者にも、そんな社長が必ず何人かいるはずです。そういう人はただの「ホラ吹き」なので、要注意です。 c.「 80対 20の法則があるではないか?」という疑問 私はこれまで、今述べたような話を、「利益時間戦略」というテーマで 500回以上も講演してきました。講演が終わって質問の時間になると、決まって次の反論が出ました。「質を高めれば、それほど働く時間を増やさなくても業績を向上させることができるのではないか」 「80対 20の法則に従い、より重要度が高い仕事に力を入れて取り組めば、働く時間を長くしなくても業績を良くすることができるはずだ」 などという質問です。 一見すると、これは正しいように思えます。 しかしそれらの質問はみんな、「質」についての話です。もし同業の社長と比べて質が変わらないのであれば、実行時間量が多い人がより多くの成果を出すに決まっているのです。 それより何より、素質が高くない人が仕事の「質」を高めるには、大量の学習時間が必要になるのです。 社長の仕事の「質を上げる」とは、ここまで述べてきた利益性の原則や戦略と戦術の違いを知り、ランチェスター法則の応用から出てきた強者の戦略と弱者の戦略に基づいた商品戦略、地域戦略、営業戦略、顧客維持の戦略、組織戦略、資金戦略と経費戦略などをしっかりマスターすることです。 これらを研究し、同業者 100人中 3番以内に入るようにするには、ふつうの人であれば 3000時間は必要になるでしょう。 これを 10年間でマスターしようとすると、 1年間では 300時間が必要です。この学習時間を平常の仕事時間に加えると、結局、長時間労働になるのです。 d.時間管理の 4大条件 時間戦略を実行してより多くの成果を出すには、そのウエイト付けもしておく必要があります。ランチェスター法則を応用して計算すると次のようになります。 1.仕事時間量を同業者よりも多くする。(戦略)………… 57% 2.自分が責任をもって担当すべき仕事を正しく理解し、重要度が高い仕事に時間を優先して配分する。(戦略知識)………… 29% 3.仕事の計画を立てるとともに、仕事時間のムダを少なくする。(戦術)………… 14% 1と 2は仕事時間における戦略分野で、合わせて 86%になります。 一方、「時間をムダなく使う」のは当然欠かせないことですが、これは戦術なので、時間管理全体では 14%になります。 もし同業の社長より仕事時間が 2割も 3割も少なければ、時間をいくらムダなく使ったとしても、同業者の社長より多くの成果を出すことはできないのです。 時間管理について書かれた本ではどれも、時間を効率的に使うことばかり説明していますが、それは、戦略と戦術の区別がついていないからでしょう。 以上、この第 1章では、差別化力のある経営システムをつくるときに欠かせない、経営を構成する大事な要因と利益性の原則について説明し、つくった経営システムを実行する際の手順について説明してきました。 これらのことは経営では基本部分になるので、何回か目を通して理解を深めるようにしてください。
1経営システムのレベルは社長の実力に比例する社長が決定すべき9つの「大事な要因」 第 1章で説明したように、実際に経営を進めるには、社長の性格と過去の経験、自社の経営力と競争相手との力関係を考えた上で、次の「大事な要因」について、はっきりした目標を定めなければなりません。 1.どの商品を中心に経営するか――重点商品の決定。 2.どことどこの地域を中心にお客をつくるか――重点地域の決定。 3.どの業界、どの客層を中心にお客をつくるか――重点業界と重点客層の決定。 4.この3つに対してどのような方法でお客をつくり出すか――お客をつくり出す全社的な営業方法の決定。 5.一度取引したお客はどのようにして守っていくか――顧客維持方法の決定。 6.これらの仕事をするのに欠かせない人は何人採用し、どの仕事とどの仕事に対して何人ずつ配分し、役割分担はどうするか。さらに従業員教育はどのようにし、賃金などの処遇はどうするかなど――組織構成の決定。 7.これらの仕事をするときに欠かせない資金は、どのような方法でいくら調達し、これを何と何に対して、いくらずつ配分するか。さらにこれらの仕事をするときに欠かせない経費は、何と何に対して、いくらずつ配分するか――資金・経費の決定。 8.これら1つひとつの目標を実行するときに欠かせない、全社的経営のやり方の戦略の決定。 9.実際にこれらを実行するときに欠かせない戦術の決定。 これらをひっくるめたものが、経営システムづくりです。 競争条件が不利な会社は、これらの1つひとつが強い会社と差別化されていないと、業績を良くすることはできません。 では、経営システムをつくったら、何年くらい実行すると業績が良くなるのか? 第 2章ではこれについて説明します。業績が上がるかどうかは論理学である 経営システムは、社長がすべてを決めなければなりません。 逆にいえば、経営システムをつくる人が社長なのです。社長が経営システムをつくり、社長が中心になって、従業員とともに力強く実行していくことになります。 その実行の結果が業績となり、貸借対照表( B/ S)と、損益計算書( P/ L)に、数字として出てきます。こう考えれば、経営システムづくりは「論理学」そのものといっていいでしょう。 古代ギリシャのソクラテスの弟子たちによって始められた、論理学の出発点は次の説明から始まります。 Aは Bに等しい。 Bは Cに等しい。ゆえに Aは Cに等しい。 というものです。 A = B B = C ゆえに A = C これを出発点にして応用範囲を広げたり、レベルを高めていくのが論理学です。 論理学で大事なことは、個人の好き嫌いで事実を曲げたり結論を変えたりしないことです。 経営システムは社長がつくるので、どのような経営システムができるかは社長の戦略実力の範囲内でしかできません。これを式で表わすと「社長の戦略実力 =経営システム」になります。 次に業績がどうなるかは、経営システムそのものと運営方法のよしあしによって決まります。 お客も従業員も、もちろん社長の思いどおりには動きません。しかしこの条件は競争相手も同じなので、これを式で表わすと「経営システムと運営方法 ≒業績」になります。 そしてこれらを整理すると、「社長の戦略実力 ≒業績」となるのですから、業績の「第 1原因」は社長の戦略実力になるのです。 今説明したものを公式化し、さらに図で表わすと次のようになります。
社長の戦略実力 =経営システムのレベル =業績 自分 1人か、せいぜい 3 ~ 4人の従業員を使って経営をしている社長の場合、このようにはっきりした経営システムはつくらずに、経営する人が多くなるでしょう。 しかし仮にそうであっても、社長の頭の中には、経営システムに近いものがイメージされており、それに従って経営をしているはずです。 このとき社長が身につけている商品戦略や地域戦略、営業戦略や顧客維持の戦略など、経営の大事なところの戦略実力が同業者よりも高ければ、経営を構成する大事な要因1つひとつに対して一貫性がある目標が定められ、レベルの高い経営システムをつくることができます。 しかも社長が必勝型以上の時間戦略を実行し、リーダーシップ力も高ければ、従業員は効果が高い仕事を、ヤル気を出して積極的に実行することになるので、結果として業績が良くなります。 反対に、社長の戦略実力が同業者よりも低ければ、目標に一貫性がなくなり、レベルが低い経営システムしかつくれません。その上、社長の仕事時間が短く、リーダーシップ力も弱ければ、従業員は効果が低い仕事を消極的にすることになるので、当然業績が悪くなります。 つまり業績が思わしくない場合、社長がつくった経営システムが同業者よりも悪いことと、社長の運営方法が悪いことの2つに原因があるのですから、この2つを改善してレベルを高めない限り業績は良くなりません。 ところが経営システムのつくり方のよしあしは、外見からではわかりませんし、経営システムをつくるときに最も大事になる戦略もはっきりしません。そのため、どこに本当の原因があるかわからないばかりか、社長自身の戦略実力が同業者の中で「どのレベル」にあるかも、全くつかめないのです。 さらに、社長になると良いことを言ってくれる人は何人もいるのに、社長の欠点や問題点を正面から言ってくれる人もいなくなるので、社長自身、自分の戦略実力がどのレベルにあるか、いよいよわからなくなります。こうなると多くの社長は、自分の戦略実力を実際よりもはるかに高く考えてしまいます。 もうだいぶ前になりますが、ある経済団体が社長に対して「あなたの戦略実力は同業者 100人中何番目くらいにあると思いますか」というアンケートをとったところ、何と 9割もの人が「 10番以内に入っている」と答えたそうです。いかに多くの社長が、自分の戦略実力を、実際より高く考えているかを示すデータです。 その結果、業績が悪い会社の社長は、自分の戦略実力に問題はないのだから、業績が悪くなった原因は、従業員の働きが悪いからだ、と考えてしまいます。 これをよく表わしているのが、中小企業の社長に対して行う「今年の重点経営課題は何ですか」というアンケート調査の結果です。 これによると製造業の場合、 1番目は新製品の開発です。しかし景気が特別に悪くなると、コストダウンが 1番目にきます。 2番目は営業力の強化で、 3番目は従業員教育になっています。 卸売業や業務用の販売業の場合、 1番目が営業力の強化で、 2番目は従業員教育になっています。この順序は、 40年も前からほとんど変わっていません。 経営システムは社長がつくります。そして、戦術係の人事や給料はもちろん、どのように教育するかを決めるのも社長です。だから、従業員 30人までは業績の 98%が社長 1人の戦略実力で決まり、従業員 30人 ~ 100人まででも業績の 96%が社長 1人の戦略実力で決まります。 そう考えれば、「今年の重点経営課題は何ですか」というアンケート調査に対しては「社長の私が経営戦略の研究に本気で取り組み、戦略実力を上位に高める」ことが、 1番目にこなければなりません。ところが残念ながら、これまでそんな回答を見たことがありません。 ただこれは、見方を変えれば大きなチャンスといえるでしょう。経営戦略を本気で研究しようとする社長が少ないということは、あなたが身を入れて経営戦略の研究に取り組めば、逆転の可能性が十分にあるということでもあるからです。
2社長は「社長実力」を高める時間を惜しんではいけない社長の実力が高まるには何年もかかる では、経営戦略の研究に取り組んだ場合、どれくらいの期間で社長の戦略実力が高まり、その結果が経営に反映して業績が良くなってくるのでしょうか。 本気で取り組んでも 2 ~ 5年はかかります。少しペースが遅いと、 10年もかかってしまいます。 こう言うと、中には「なんだって? すぐにでも実力が高まって業績が良くなるのではないのか。話が違うではないか」と思う人もいるでしょう。しかしこれにはちゃんとした理由があるので、ここで諦めず、続けて読んでください。 2 ~ 5年以上もの長い期間がかかるのには、いくつかの理由があります。 第一の理由は、社長の仕事の範囲がとても広いことです。 社長は、利益性の原則を初めとして、商品戦略、地域戦略、客層戦略、営業戦略、顧客維持の戦略など、経営を進めるときに欠かせない「 7大戦略」を、すべて 1人で担当しなければなりません。 しかも7つの戦略はすべて掛け算になるので、どれか1つが業界の平均より低いと、総合力がガクンと低下してしまいます。ですから社長は、まず 7大戦略の「フルライン」を研究し、1つひとつの戦略実力が同業者の平均よりも上回るようにしなければならないのです。 第二の理由は、人の考え方に変化が起こるには、多くの時間がかかるからです。 ほとんどの人は、大企業の経営原則と強者の戦略が正しいやり方だと固く信じ込んでいて、その先入観からなかなか抜け出せません。 強者の戦略とは、 1.市場規模が大きな商品を取り扱うと、売上が多くなって利益も多くなる。 2.商品の種類を多くして範囲を広げると、お客の数が多くなって利益も多くなる。 3.人口が多い地域で営業をすると、人も会社も多いので、売上が上がって利益が多くなる。 4.営業地域の範囲を広くすると、市場規模が大きくなるので、売上が上がって利益が多くなる。 というものです。社長に強者の戦略が正しいやり方であるという強い思い込みがあると、これが潜在意識となって強い抵抗勢力になるのです。 そのため、たとえ自社の経営規模に合っていて、しかも弱者の戦略ルールの学習を始めても、潜在意識が強く抵抗してハネ返してしまうので、頭に入ってきません。多くの人はこの状態が 1年 ~ 1年半は続くので、この間は戦略実力の向上が全く見られないのです。 しかし、それでもなお学習を続けていると、潜在意識の抵抗力が徐々に弱くなっていき、ようやく学習効果が出始めるのですが、この段階になるまでに 2年程度はかかります。思い込みが強い人や、学習のペースが遅い人の場合は、その人の戦略実力が高まるのに 5年以上もかかってしまうのです。経営システムをつくり直すにも何年もかかる しかし、学習して 2 ~ 5年かけて戦略実力を高めても、それですぐ業績が良くなるかというと、そう思いどおりにはならないところに経営のむずかしさがあります。 業績を良くするには社長の性格、過去の経験、自社の経営規模、競争相手との力関係または業界におけるランクの4つの条件を考えた上で、経営システムのつくり直しや改善に取り組み、同業者よりもレベルを高めなければなりません。 改善する 1番目は、商品です。製造業の場合は、商品の競争力が強くならないと良い経営はできません。競争力がある強い商品をつくる手順は、次のようになります。 1.「強いものにはより力を入れよ」の原則に従い、特徴がある商品を重点目標に定めます。 2.重点商品の改善に力を入れて、さらに強みを高めます。 3.重点商品の販売に、今までよりも多くの力を入れます。 この状態を 2年ほど続けていると、競争力がある強い商品ができる可能性が高くなります。 しかし、いくつも商品をつくってはいるが、これといった特徴がある商品が1つもない場合は、この4つの条件を考えた上で、その中のどれかを重点商品に決めなければなりません。決めたら、その重点商品の改善と販売活動にも力を入れます。 しかし限りある経営力でこれを実行するには、競争に負けていて将来性がないものや、衰退期に入っている商品は、思い切ってカットしなければなりません。カットして浮いた経営力を、重点商品に再配分します。これを 5年くらい続けていると、差別化力がある強い商品ができる可能性があるのです。 ところがいくつもある商品の中で、どの商品を重点商品にするか決心がつかず長引いた上に、負けている商品や衰退期に入っている商品から撤退する決断ができず、いつまでもグズグズしていると、いつまでたっても競争力がある強い商品はできません。 もし売上の中で、最もウエイトが高い主力商品のライフサイクルが衰退期に入っているようであれば、イチから新製品の開発に取り組まざるを得ません。しかし新製品の開発はとてもむずかしいので、開発の目途がつくまでには長い期間がかかります。 このとき累積赤字がたまっているなどの理由で資金繰りが苦しければ、社長は新製品の開発に集中できないので、新製品が完成する前に経営が行きづまる可能性が高くなります。 2代目が経営を引き継いだあと、こうなるケースが少なからずあります。いわば、 2代目の悲劇です。
では、卸会社や業務用製品の販売会社の場合はどうか。 これらの会社は、商品の差別化がむずかしくなるので、その分、営業地域の差別化と販売戦術の差別化に力を入れなければなりません。 その手順は、次のようになります。 1.力がある営業パーソンが担当していたなどの理由で、自社が健闘している地域が何カ所かあったら、そこを、業界で 1位をめざす重点地域に決めます。 2.会社から近くて営業しやすかったり、強い競争相手がいないところを重点地域に決めます。 3.自社専用の販売マニュアルをつくり、営業パーソンの実力向上に取り組みます。 このときの作業手順は次のようになります。 ①どうすれば訪問面会件数を、同業者より 3割以上多くすることができるかを考えます。このとき、訪問面会件数の増加に障害となっているものがあれば、それを思い切って改善します。そのあと、訪問面会件数増加に向けて社内の仕組みをつくり直すとともに、それが増加する方法を文章にまとめます。 ②自社の営業パーソンにとっての「質」には、どんな項目があるかを考えます。 20項目 ~ 25項目が出てくるはずです。次はどうすればこの項目のレベルを高めることができるか、レベルの高め方を考えたあと、それを項目ごとに文章にまとめます。 ③訪問面会件数の高め方と質の高め方の2つをまとめます。すると、自社専用の販売マニュアルができ上がります。自社専用の販売マニュアルをつくっている会社は滅多にないので、良いものができれば販売戦術の差別化になるでしょう。 ④社長がインストラクターになり、このマニュアルを使って営業パーソンの教育と訓練に力を入れます。こうすると営業パーソンの実力が上がるばかりか、個人差も少なくなります。 ⑤重点地域内には、より多くの販売戦力を投入し、 1位の得意先づくりと新規開拓に力を入れます。すると、 2年 ~ 5年もすると 1位の地域ができてくるはずです。 ただ、あちこち広い地域で営業をしてはいるものの、自社が強い地域が 1カ所もない場合は、弱者の戦略原則に従って、思い切った手を打たなければなりません。 次のような方法です。 ①会社から近い地域か、海、山、川、それに鉄道や高速道路など、自然の障害物や人工の構築物によって地域が分断され、独立性が高くなっているところを重点地域に決め直します。その上で、会社から遠かったり強い競争相手がいるために占有率が低く、これが原因で赤字が続いている地域からは思い切って撤退します。撤退した地域の営業パーソンを、重点地域に再配分します。 ②自社専用のマニュアルをつくります。 ③社長がインストラクターになって営業パーソンを教育します。 ④重点地域内で、新規開拓に力を入れます。 この手順で進めるわけですが、継続取引型の場合、新規開拓に成功するには長い期間がかかるので、強い地域をつくるには、 5年程度は見ておかなければならないはずです。 もちろん、いくら時間がかかっても、生き残るためにはやらなければなりません。重点地域の決定に時間がかかり、重点地域を決めたあとも採算が悪い地域からの撤退に決心がつかず、いつまでも迷っているなら事態は何も変わらないので、 5年たっても 7年たっても業績が良くなる見込みはないのですから。 今説明したのは訪問型営業の場合でしたが、小売業や飲食業でも全く同じことが当てはまります。 社長が戦略実力を高め、経営システムのレベルを高め、それらを業績に結びつけるには、長い時間がかかることが理解できたでしょうか。だから社長は、
3年先や 5年先のことを考え、経営戦略の研究には早めに取り組む必要があるのです。
3すぐに結果が出るケースはあくまでも例外である B/ Sや P/ Lの数字は、あくまでも結果 会計の専門家が書いた本の中には「貸借対照表や損益計算書の数字を改善すれば良い会社になれる」と書いてあります。 自己資本比率を上げる。 売掛金回収を早くする。 在庫を減らす。 利益を上げる。 売上を上げる。 どれも簡単にできそうに書いてありますが、社長にとって重要なのは、どうやればそれができるか、です。 当たり前の話ですが、 B/ Sや P/ Lの数字は、経営活動をしたあと結果として出てくるもので、業績の原因ではありません。業績を上げるには、業績の「第 1原因」となる社長自身の戦略実力と、業績の第 2原因となる経営システムのレベルを、同業者よりも高めなければならないのです。 さらに経営システムのレベルを高めて実行したとしても、商品を買うかどうかの決定権はお客が 100%もっていて、売る側には 1%もないので、思いどおりにはいきません。ですから、お客の数を多くして売上を上げるには思った以上に長い期間がかかるのです。 もちろんこれらのむずかしい作業をしないで、 B/ Sと P/ Lの数字だけを変える方法もありますが、これは「粉飾決算」になるので、やらないほうが身のためでしょう。戦術の一部が明らかに間違っている場合 3、 4カ月の短期間で売上が大きく伸びるケースもあります。 確かにそういう場合もありますが、これは特別な条件があるときだけしか起こりません。 ではその事例を、3つ紹介しましょう。【例 1】 Z社では、差別化力のある新商品を開発しました。「これならいける」と考えて、この新商品の販売をスタートしました。営業地域の決め方も、客層の決め方にも全く問題はなかったのですが、なぜか全く売れませんでした。 そこで実績がある販売コンサルタントに頼んで、原因を調べてもらったところ、新規開拓をするときに欠かせない、営業パーソンのアプローチ技術がひどく低く、訪問した先でことごとく断られ、見込客に商品説明を聞いてもらえる状態になっていなかったことがわかったのです。 そこで社長は、まず営業パーソンを集め、弱者の販売戦術によるアプローチの教育ができる講師に依頼し、営業パーソンの教育と訓練に力を入れました。 こうしたあとで新規開拓を再開すると、見込客と面会できる率が高まり、商品説明も聞いてもらえるようになって、 3、 4カ月で売上が上がり始めました。【例 2】 Y社は新商品を開発し、ダイレクトメールで販売を始めました。差別化力がある商品で、客層の決め方と名簿の選択にも問題はなかったのですが、なぜか売れませんでした。 そこで社長は、 DMに詳しいコンサルタントに頼んで原因を調べてもらったところ、商品説明の文章がひどくわかりづらい上、字が小さくて読みにくいことを指摘されました。 そこで、このコンサルタントに頼み、商品の特徴や用途をわかりやすく説明する文章に変え、読みやすいように文字を大きくしてレイアウトも変えると、 DMの反応が格段に向上したのでした。【例 3】 X社の商品には差別化力があり、客層の決め方も良く、営業のやり方にも問題はなかったので、新規のお客は順調にできていました。ところが一度商品を注文した人のリピート率が悪く、そのために売上が伸び悩んでいました。 そこで実績のある販売コンサルタントに頼んで調査をしてもらったところ、お客からの電話を受ける女性社員の応対が悪く、商品を買ってくれたお客にお礼のはがきも出していないなど、顧客対応がほとんどできていないことがわかりました。 そこでその販売コンサルタントに、電話応対の教育と訓練をしてもらいました。 次に親しみを感じるお礼のはがきのモデル文章をいくつかつくり、商品を買ってくださったお客にはがきを出すことを徹底しました。 その結果、 X社のファンになってくれるお客が増えて、リピート率が上がり、月を追って売上が上がるようになりました。 この 3社の例のように、商品、営業地域・客層の決め方などのレベルには問題はなかったものの、販売戦術の一部に大きな欠点があり、これが原因となって売上が上がらない、というケースがあります。その場合は、戦術の一部を直せば短い期間に売上が上がる可能性があります。 しかし経営システムのそのものが根本的に間違っていたら、短い期間に売上を上向かせることはできないのです。
もちろん、とても短い期間に業績が良くなった事例もないわけではありません。それは予想外に強い競争相手が出てきたときと、大きな経済環境の変化があった場合です。 そうしたときは、せっぱ詰まっているので、それまでのこだわりやとらわれが一気になくなります。生き残るために本気で経営戦略の研究に取り組むので、戦略実力の向上が予想外に進み、決断のスピードも速くなります。その結果、予想以上に速く業績が上向くケースがあるのです。 しかし、これはあくまでも例外です。 ですから社長は、まず自分自身の戦略実力を高め、経営システムをつくり直してそのレベルを高め、強く実行しなければなりません。「簡単に、しかも劇的に業績が良くなる」などという、一部のコンサルタントの言葉に耳を傾けてはいけないのです。
1社長が学習成果を上げるための「公式」時間とカネの無駄遣いに終わらせないために 差別化力がある経営システムをつくるには、社長の戦略実力を、同業の社長より高めておかなければなりません。 社長の戦略実力を高める方法については、ビジネス書やセミナーなどで、いろいろと説明されています。しかしよく検討してみると、どれも部分的で一貫性がなく、しかも社長の戦略実力を効果的に高めるときに欠かせない、「差別化力がある学習方法」も説明されていません。 これでは、時間と経費のムダ遣いに終わってしまいます。 そうならないためには、まず、どんな要因で学習の成果が決定づけられるのか、成果を決める「大事な要因」は何かを、はっきりさせておかなければなりません。「大事な要因」の押さえ方が間違っていると、ピント外れに終わってしまいます。「大事な要因」を押さえたら、学習手順全体の「公式」を知っておきます。 この学習の「公式」に従って学習を進めるわけですが、その際に重要なのは、1つひとつのやり方を必ず「差別化」しておくことです。 この手順を踏めば、学習の全体像がつかめるので計画が立てやすくなるばかりか、学習成果も早く出るので業績の向上に役立つのです。 では最初に、学習の成果を決定付ける「大事な要因」から考えていくことにしましょう。学習成果を決める3つの要因「大事な要因」の 1番目は、社長の「素質」です。まず、自分の社長としてのレベルがどれくらいかを知っておかなければなりません。 もし経営者としての素質が高ければ、そのこと自体が大きなプラス要因になる一方、経営者としての素質が低ければ当然マイナス要因になるので、これをカバーする何らかの方法が必要になります。「大事な要因」の 2番目は、必要な学習テーマを改めてはっきりさせることです。「大事な要因」の 3番目は、その必要な学習テーマに合った教材を準備することです。 教材とは、本や CD、 DVD、セミナー、研修コース、勉強会その他を含めた広範囲のもので、自社の経営規模と業種に合った良い教材が手に入れば、これは大きな差別化要因になります。「大事な要因」の 4番目は、どんな方法で学習すると最も高い学習成果が出るか、自分の素質に合った学習方法を考え出すことです。これがわかれば、大きな差別化要因になります。「大事な要因」の 5番目は、学習回数、あるいは学習時間量です。学習回数を多くすることについて、多くの人は否定的に考えていますが、素質が高くない人が戦略実力を同業者より高める場合、学習回数を多くすることが大きな差別化力を発揮するのです。 社長の素質、学習テーマ、学習教材、学習方法、学習回数――この5つが、学習の成果を決定づける最も「大事な要因」です。 ではこれらの「大事な要因」を公式にするとどうなるか。 2番目の学習テーマと 3番目の教材は1つにまとめると、次のような公式が成り立ちます。社長の学習成果 =社長の素質 ×教材の質 ×学習方法 ×学習回数または学習時間 ちなみに従業員教育を公式で表わすと次のようになります。従業員教育の成果 =従業員の素質 ×教材の質 ×教え方の質 ×教育回数または教育時間 この公式が示すとおり、これらは「あれかこれか」の択一型ではなくすべてが掛け算になります。ですから、学習成果を高めるにはすべての項目について検討し、差別化しなければなりません。 では、それぞれの項目について、もっと詳しく説明していくことにしましょう。
2社長自身の「素質」をはっきりさせる社長の素質は業績で判断するしかない 社長としての素質には、先見性、他人が考えつかないものを考え出す創造性、決断力、実行力、大事なものは最後までやり遂げる断行能力や忍耐力、従業員を指導する教育能力、従業員を上手に動かすリーダーシップ力、性格や道徳観など、数えればきりがないほどあります。 しかしこれらはどれも形がないため、数値化ができません。数値化ができなければチェックもできません。 では、どうすればいいのでしょうか。 答えは簡単です。 社長のこれらの能力が高ければ、会社の業績が良くなります。 そして低ければ、業績が悪くなります。 だから社長の素質のレベルは、業績という結果をとおして間接的に測定するしか他に方法がないのです。「社長の素質」のモノサシ ① 従業員 1人当たりの「年間純利益額」 業績を通して社長の素質をチェックするモノサシの1つ目は、従業員 1人当たりの「年間純利益」です。このデータも 1年だけでは誤差が出るので、過去 3年分の平均値を出します。 従業員数は、フルタイムのパートは 1人として計算し、勤務時間が短い人や勤務日数が少ない人は、切りよく 0・ 5人で計算します。 過去 3年分の平均値を出したら、その数字を、業界の平均と比較します。業界平均のデータは、税理士の団体や企業調査会社が出しているものを使います。 TKCのデータはサンプル数がとても多いので、信頼度が高くなっています。 従業員 1人当たりの純利益が業界平均の 3倍以上あれば、社長の実力は同業者 100人中 1位にあると見ていいでしょう。 1人当たりの純利益が 2倍あれば同業者 100人中 2位 ~ 4位にあり、 1・ 5倍あれば 5位 ~ 7位というところです。 1人当たりの純利益が業界平均の半分しかなければ 15番目あたりになり、実質上トントンであれば 30番目くらいになります。もし少額ながら赤字になっていれば 40番目になり、 2期連続して赤字になっていれば、 50番目か、それ以下になります。 ちなみに全業種平均の 1人当たり純利益は、およそ 30万円になっています。【参考資料・中小企業の従業員 1人当たりの年間純利益額( TKCより)】 1.建設業の元請―― 35万円 ~ 60万円 2.建設業の職種別―― 15万円 ~ 25万円 3.製造業―― 30万円 ~ 50万円 4.卸売業―― 35万円 ~ 60万円 5.業務用の販売業―― 20万円 ~ 35万円 6.小売業―― 15万円 ~ 35万円 7.飲食業―― 8万円 ~ 15万円 8.サービス業―― 7万円 ~ 20万円 9.経営コンサルタント業―― 25万円 ~ 40万円「社長の素質」のモノサシ ② 法人化後の業歴計算による 1人当たりの自己資本額 業績を通して社長の素質をチェックするモノサシの2つ目は、法人化後の業歴によって計算した従業員 1人当たりの自己資本額です。 会社を法人化して以来、社長が経営戦略の研究にどれくらい熱心に取り組み、どれくらい本気で本業の仕事に打ち込んできたかを示す、何よりの証拠です。 法人化後の業歴計算による 1人当たりの自己資本額は、次の計算式で算出します。法人化後の業歴計算による 1人当たりの自己資本額 =業界平均の 1人当たり純利益 × 0・ 6 ×法人化後の年数 これが業界平均の 3倍以上あれば、同業者 100人中 1位と見てよく、 2倍あれば 2位 ~ 4位になり、 1・ 5倍あれば 5位 ~ 7位と見ていいでしょう。 ほぼ平均であれば 8位 ~ 15位にあり、平均の 7割であれば 15位 ~ 20位、半分であれば 21位 ~ 30位、 3分の 1以下であれば 30位 ~ 40位になります。もし資本欠損となっているなら、その社長は 40番以下です。 例えば業界平均の 1人当たりの純利益は 30万円で、法人化後の業歴が 25年だとすると、 < 30万円 × 0・ 6 × 25年 >で、法人化後の業歴計算による 1人当たりの自己資本額は 450万円になります。 つまり 1人当たりの自己資本が 450万円あれば、創業以来社長が経営に取り組んだ状態は平均的ということです(ちなみに「 0・ 6」は、筆者の経験によるものです)。 さて、従業員 1人当たりの「年間純利益額」のランクと、 1人当たりの自己資本によるランクを出したら、その2つを「算術平均」して社長の素質のレベルを計算します。
素質にはパレートの法則が成立する 次に必要になるのは、社長としての素質は同業者 100人中何番目が「中位」になり、何番目になると「上位」に入るのかを、はっきりさせておくことです。 同業者が多い場合は確率的な競争になるので、パレートの法則が成立します。 経済的成果の 80%は 20%の要因から生まれているというもので、商品管理や得意先管理、それに時間管理などによく利用されています。 パレートの法則によると、同業者 100人中「 10番目」が実質上「中位の人」になります。 これからすると 1番 ~ 3番は上の部になり、 4番 ~ 7番は中の上になります。 8番 ~ 19番は中位になり、 20番 ~ 39番は中の下になります。 40番以下は下になり、 60番以下は番外になってしまいます。 これがパレートの法則による、社長の実質上の実力評価です。 こうなる根拠は、各人の経営実力がその 2乗に比例するからです。学校のテストの成績などの順位評価だと、中位は 50番目になるので、 30番あたりにいれば問題はないように思えます。しかし、互いに激しく競争し合っているビジネスの世界では、不利な立場に立っており、中の下になってしまうのです。 学校のテストだと、 100人中 10番目なら、上位の一角にいると感じるかもしれません。しかしビジネスの現場では中位になってしまうので、安心しているわけにはいきません。順位評価と競争社会における評価との間には、ツーランクのズレがあるのです。 ところがほとんどの人は、自分の実力を順位評価で考えます。そのため、社長はしばしば、自己を過信したり、努力を怠ったりしてしまうのです。 ふつう、人並みと思ったら、すでにあなたはかなり不利な立場にいるのだと考えてください。 あなたの社長としての素質は、 1人当たりの純利益データや法人化後の業歴による 1人当たりの自己資本データから、 100人中実質上何番目あたりにあるでしょうか。 手元にデータがないのでこれらの計算ができないという人、業績が思わしくないので計算結果に自信がないという人は、自分の素質を「中の下か下のクラス」にあると考えておけば、自己過信による失敗は防げるでしょう。 経営戦略を本格的に研究するには、このチェックが欠かせません。もちろん誤差があってあいまいさは残りますが、1つの目安として、あなた自身の社長の素質が、同業者 100人中何番目に入るかをチェックしてください。 3番以下は弱者の学習戦略が必要になる ではあなたの社長の素質の順位から見て、あなたはどんな学習戦略を実行すべきなのでしょうか。 ランチェスターの法則の応用研究から、経営の戦略には2つの方法があることがわかっています。強者の戦略と、弱者の戦略です。 強者の戦略は、市場占有率 1位で、一定の条件を満たした会社だけが実行できるものです。そして弱者の戦略は、強者の条件を満たしていないすべての会社が実行すべきものです。その内容は、全く逆さまのアベコベになっています。 社長が経営戦略の学習をするときにも、全く同じことが当てはまります。 強者の学習戦略が実行できる人は、 100人中 1位と 2位の人だけと考えていいでしょう。 その強者の学習戦略は、次のようになります。 ①学習するテーマの範囲を広くして、弱点をつくらないこと。 ②新しい経営のやり方が開発されたときは、他社に先がけてこれを研究すること。 ③同業者がめずらしい学習方法を実行しているときは、同じ方法をすぐ試してみること。 ④重装備の原則に従い、学習資金の予算を多くすること。 一方、弱者の学習戦略を実行しなければならないのは、 1、 2位を除いたほとんどすべての社長です。 弱者の学習戦略は、次のようになります。 ①「何としても自分の戦略実力を高め、同業者 100人中 1位になるのだ」という強い向上心をもつこと。もともと経営者としての素質は高くない上に、個人資産もわずかしかないなど、人生の条件が不利な人が向上心を失ってしまったのでは、人生の流れを変えることはできません。自分の戦略実力を同業者の中でトップクラスに高めるのだという強い向上心をもつことが、何よりも大事です。 ②何を学習するか、学習すべきテーマの目標をはっきりと決めること。従業員 100人以下の社長は経営のフルラインが必要になるので、これに合わせて自分が学習すべきテーマの目標を、はっきりと決めなければなりません。 ③学習の差別化を行うこと。素質が低い人は、素質が高い人とは違った方法で学習することが必要です。学習方法を差別化すると学習成果が速く上がります。 ④学習すべきテーマは経営に直接関係するものに絞り、経営と直接関係ないものは当分の間保留すること。ちなみに従業員の教育は、社長の学習がひととおり終わったあとで、実行するのが正しい手順になります。 ⑤教材を準備したりセミナーに参加するときは、テレビなどに出ている著名人は避け、自社の経営規模と業種に合ったものを選ぶこと。 ⑥学習に必要な予算は、一定期間確実に投入すること。 ⑦学習回数または学習時間を、同業の平均より 3倍から 10倍多くすること。特別大事なテーマは、一定の間隔を置いて継続して学習しなければなりません。
⑧経営規模の大・中・小・零で変わる社長の役割、戦略と戦術の違い、強者の戦略と弱者の戦略の違いなど、経営の基本原則に当たる特別大事なテーマはより力を入れて学習すること。 ⑨自分にとって必要な研究テーマがどれも 70点以上取れるようになるまでは、諦めることなく、忍耐強く学習を続けること。 ⑩小さな成功で気を緩めることなく、長期計画で学習を続けること。 以上が、弱者の学習戦略の基本的な考え方です。 繰り返しますが、ほとんどの社長(同業者 100人中 3位の社長も!)は、この弱者の学習戦略を実行する必要があります。 中でも素質が 20番以下の人は競争条件がかなり不利になり、 40番以下の人は競争条件が特別不利になるので、弱者の学習戦略をより厳密に守らなければなりません。「弱者」という言い方が気に入らない人もいるでしょう。講演会でこの話をすると、このようなクレームをつける人が必ず何人か出てきます。 しかし経営はあくまでも、感情ではなく、論理で動くのです。冒頭述べたように、「会社自体は固定給なしの歩合給で運営されており、実力主義の世界になっている」のですから。
3実践的で内容が良い教材を準備する社長にとって必要な学習テーマの教材 社長の学習成果は、次の公式で決まりました。社長の学習成果 =社長の素質 ×教材の質 ×学習方法 ×学習回数または学習時間 では、成果を決定づける 2番目の項目、「教材の質」について説明しましょう。 教材を揃える前に、従業員 100人以下の会社の社長はどんなテーマの教材を揃える必要があるか、これをはっきりさせておく必要があります。 従業員 100人以下の社長は、次のようなテーマの教材を準備しなければなりません。 ①経営の全体像と経営を構成する大事な要因について説明した教材。「着眼大局、着手小局」という教訓があるとおり、何かを研究したり実行したりするときは、まずその全体像をきちんとつかみ、全体をイメージしながら先に進むと、見当違いの方向に進む心配がなくなります。 ②経営規模の大・中・小・零で変わる、社長の役目について説明した教材。社長が責任をもって担当すべき役目の誤解が、業績不振の大きな原因になることが多いのでこのテーマも欠かせません。 ③利益性のよしあしが根本的に決まる「利益性の原則」について説明した教材。 ④戦略と戦術の違いを詳しく説明した教材。戦略と戦術の区別がつかないと、経営規模の大・中・小・零で変わる社長の役目もわからなくなります。しかも、ほとんどの人は仕事の内容が見える「戦術」だけが経営の大事な仕事と思い込んでしまうので、まともな経営システムはつくれません。 ⑤強者の戦略と弱者の戦略の違いを詳しく説明した教材。ほとんどの人は、強者の戦略が正しい経営のやり方であると強く思い込んでいます。倒産原因の 7割 ~ 8割はこの思い込みにあるので、社長の立場にある人は必ず、この2つの戦略についてマスターしておかなければなりません。 この ①~⑤までが、基本のテーマです。これらのテーマは理屈っぽいところが多くなるので面白くはないのですが、これらを学習しておかないと良い経営システムをつくることはできません。 では、 ⑥以降を説明します。 ⑥弱者の商品戦略を中心に、商品対策の基本的なルールを説明した教材。 ⑦製造業や建設業では製品を加工したり工事をするときに欠かせない、作業の工程づくりと作業技術について説明した教材。 ⑧弱者の地域戦略を中心に、地域対策について説明した教材。訪問型の営業では営業パーソンの経費が割高につくので、地域戦略を研究しておかないと業績を良くすることはできません。 ⑨弱者の業界戦略と弱者の客層戦略を中心に、業界と客層対策について説明した教材。小売業と飲食業では、客層対策の研究が重要になります。 ⑩弱者の営業戦略を中心にした、新しいお客をつくり出すための全社的な営業対策の教材。 ⑪訪問型営業では欠かせない、販売戦術力の高め方について説明した教材。 ⑫一度取引したお客を維持する、顧客維持対策について説明した教材。 ⑬弱者の組織戦略を中心にした、組織対策について説明した教材。 ⑭従業員 100人以下の会社を対象に、弱者の従業員教育戦略について説明した教材。「従業員教育が何よりも大事」と考えている社長は、弱者の教育戦略の学習が欠かせません。ところが実際を見ると、これを研究しないまま従業員をいろいろなセミナーに参加させている社長がたくさんいます。これでは経費と時間を使った割に、業績向上にはほとんど役立ちません。 ⑮弱者の資金戦略と経費戦略を中心に、資金配分と経費配分対策について説明した教材。特に、製造業のように機械や設備など製品をつくるための「生産手段」に多くの資金が固定化する業種では、資金配分の教材が欠かせません。また、訪問型営業を主とした業種なども、営業経費が割高につくので、経費の配分について説明した教材が欠かせません。 ⑯ 3級程度の簿記や会計について説明した教材。経営活動をした結果は B/ Sや P/ Lに表わされます。自分が行った経営活動のよしあしをチェックするには簿記知識が欠かせません。 ⑰弱者の時間戦略を中心に、時間管理について説明した教材。社長の素質が高くない上に業歴が 10年未満の社長にとっては、この教材が特別大事になります。 ⑱社長の経営に対する願望や熱意、向上心を高めるための教材。 ⑲社長のリーダーシップを高める教材。従業員にヤル気を出して仕事をしてもらうためには、必須の教材です。 ⑳人格を形成するとともに、奉仕の心を高めるための教材になります。 ㉑健康管理の教材。栄養管理、睡眠管理、ストレス管理、家庭の維持管理が必要です。これらは経営と直接関係ありませんが、長期的に熱意をもって経営を実行するには、健康こそが重要なのです。
以上の 21項目が、従業員 100人以下の会社の社長が学習すべきテーマであり、準備すべき教材の種類です。「エッ。学習すべきテーマはこんなにいっぱいあるのか!」と、早くも腰が引けてしまう人もいるかもしれません。しかし、従業員 100人以下の会社の、それも弱者の社長にとっては、これらのテーマぜんぶが「重要な経営課題」になるので、省略はできません。 ⑥以降については、お客づくりの仕事と直接関係がなかったり、業種から見て重要度が低いものは、もちろん後回しにしてかまいません。お客づくりに直接関係があるもの、重要度が高いものから順々に学習していけばよいのです。 そうはいっても、多くの会社にとって外せないのは、やはり商品戦略です。 商品戦略をきちんと学習してない社長は、一見儲かりそうな商品が出てくると、本業と全く関係がなかったとしても、欲につられて簡単に手を出してしまいます。 しかし本業と全く関係がないものは、運営のやり方も管理の仕方もわからないので、たいがい大赤字を出した挙げ句に撤退、ということになります。 ⑧の地域戦略も重要です。 特に訪問型営業の会社で、社長が地域戦略を学習してないと、「営業地域を広くすると地域の市場規模が大きくなるので、売上も利益も増えるはずだ」と錯覚し、営業地域を経営能力の 3倍も 4倍も広げてしまうケースがあります。 ところがそんなことをしても、営業パーソンの移動時間が増えるだけです。移動時間は、お金がかかるだけで、 1円の粗利益もつくりません。 その結果、残るのはやたら道路に詳しい営業パーソンと赤字の地域ばかりということになり、社長は自滅する形で経営に失敗します。これは訪問型営業に限らず、小売業や居酒屋など店舗型の業種で「多店舗展開」をするときも同じです。 ⑬の組織戦略や、 ⑮の資金・経費戦略も欠かせません。 4 ~ 5人の部下をもってはいるものの、自分も得意先を何件も抱えてあちこち忙しく走り回っている「伍長」にすぎない人を勝手に「幹部」と考え、チームの売上責任や利益責任を押しつけてしまっている社長がたくさんいます。 そして目標が達成されないと、伍長にすぎない人を集めて「君たちのヤル気がないからこうなった」と、厳しく説教をするのです。その結果、社長と従業員の人間関係が悪くなり、やがて仕事ができる人がお客をもって独立します。こうなれば売上が減少するので業績が悪くなり、そのうち危ない会社になってしまいます。 私はこのような事例を、いくつも見てきました。 資金・経費戦略でいえば、製造業で機械や設備などに多くの資金を必要とする業種の社長が陥りがちな落とし穴があります。 社長の経営の拡大意欲は非常に強いけれど、会計や財務戦略がニガ手、というケースでは、「コストダウン競争に勝つには性能が良い機械が必要だ」と考え、自己資本比率を無視して高額な機械を増設しがちなのです。 そしてその結果、固定比率が高くなりすぎて資金繰りが狂い、やがて危ない会社になってしまいます。 そんなふうにならないためにも、従業員 100人以下、特に 50人以下の会社の社長は、フルラインの教材をひと通り揃えておく必要があるのです。自社の経営規模に合った実践的な良い教材を揃える 教育の世界には、「良い教材を使って学習すると、経験だけに頼っていたときに比べて 3倍以上の学習成果が出る」という教訓があります。 では、良い教材とはどのようなものをいうのでしょうか。 社長にとっての良い教材の第 1の条件は、自社の経営規模にふさわしい内容のものであることです。完全に一致する教材を手に入れるのは、むずかしいかもしれませんが、 5倍以内であれば、まだ応用がききます。 しかし 10倍以上になると、社長の役割も従業員の役割もまるで違ってくるので、参考になりません。逆に、経営のやり方を誤解する可能性が高くなるので、害になることのほうが多くなります。 しばらく前に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という本が大変なベストセラーになり、降って湧いたようにドラッカーブームが起きました。 このとき従業員 120人のある会社の二代目社長はこのブームにあおられ、ドラッカーに詳しいコンサルタントに頼んで、毎月 1回 6カ月間にわたり、新入社員まで含めた全社員にドラッカー経営学の話を聞かせました。 そのために 200万円のお金を使いました。 しかしドラッカーの本で紹介されているのは、従業員が 1万人とか 10万人の大会社が中心で、内容の対象は主に社長などの経営トップ層です。中小企業の従業員は対象になっていません。 戦術の改善対策などについての説明はほとんど入っていませんから、従業員の仕事には全く役立たなかったはずです。結局、この教育に使った 200万円の経費は、単なるムダ遣いに終わってしまいました。 このようなケースは、あちこちの会社で見られました。教育を引き受けたコンサルタントの業績は良くなったかもしれませんが、会社としては、何の意味もなかったのです。 有名大学を卒業したあと大会社に就職し、何年か勤めたあとでコンサルタントになった人がつくった CDや DVDでは、仮に教材のタイトルが「中小企業向け」となっていても、どうしても大会社の事例が多くなります。 それに、そうした教材で学習しても「学習の差別化」はできないので、社長の戦略実力が高まる見込みはありません。だから、自社の経営規模に合った内容の教材を選ぶことが大変重要なのです。 では、そのような教材を選ぶときは、どんな点に注意すればいいでしょうか。 1つ目のポイントは、教材制作者の経歴です。 超一流大学を卒業して、数万人も社員がいる大企業で偉くなった人が、いくら「中小企業にぴったりの教材です」と言っても、それはまず無理な相談です。 ほとんどのコンサルタントはホームページをつくっているので、これを確かめると学歴や職歴がわかるでしょう。ホームページに書いていない場合は、そのコンサルタントの著書や、 1万円以下の CD、 DVDなどを購入してチェックすれば、その人が対象にしている大体の経営規模がつかめるはずです。 2つ目のポイントは、自社の業種と同じか、全く同じではないけれど近い業種か、です。まるで別の業種だと応用しづらくなります。 3つ目のポイントは、お客づくりの重要性についての内容に力を入れているかどうか、です。
たびたび説明するとおり、経営で最も大事なのは、お客をつくり出す仕事です。ですから従業員 100人以下の会社では、社長が使う教材も従業員が使う教材も、すべてお客づくりに焦点を当てたものである必要があります。 その意味で、 7年間以上は営業の仕事を経験した人が作成した教材のほうが望ましいでしょう。営業経験が少ない人の教材は、お客づくりの内容がどうしても底の浅いものになりがちで、実際の経営には役立たないのです。 4つ目のポイントは、弱者の戦略を中心にしてまとめているかどうか、です。 1000社中 995社は弱者で、さらにその中の 400社は競争条件が特別不利な番外弱者ですから、ほとんどの会社に必要なのは、弱者の戦略なのです。 どんなに知名度がある人がつくった教材でも、強者の戦略が中心になっている教材は、弱者にとってはむしろ害になってしまいます。 5つ目のポイントは、実践的でレベルが高いものであることです。抽象的な内容ではなく、実際に使われて高い実績を出した、具体性が高いやり方を説明した教材を選ばなければなりません。 例えばある人が、「販売実績の高め方」についての本やマニュアル、 DVDを売っているとします。この場合、その人自身が、何かの商品の販売で 300人中 1位になり、しかも 5年間連続してその結果を出し続けた、ということであればベストです。 ちなみに、営業パーソンが商品の販売で 5年連続 300人中 1位になるには、次の条件が必要になります。 ①その人独自の販売方法をいくつか開発していること。自分独自の販売方法を開発している人は、それまで「無理だ、できない」と言われていたことにあえて挑戦し、試行錯誤を何回も繰り返しながら自分独自のやり方を考え出しているものです。 ②自分が開発した販売方法を、何度も改善していく努力を重ねていること。 1位を連続して 5年以上守るには、改善に次ぐ改善が必要で、その経験もとても役立ちます。 1位になったのは 1回だけという人はマグレが多く、他の人の参考になりません。 ③自己管理能力が高いこと。 1位を連続して守り続けるには、自分の行動と生活内容を一定して守り続ける自己管理が必要です。このような経験があるとたいていは、応用性の高いルールができています。そのルールが、これから販売の仕事をしようとする人にはとても役立つのです。 以上の5つが、良い教材かどうかの主な条件です。 もちろん、この5つの条件に合致しているのにダメな教材もあります。 例えば、最初は役に立つと思ってその教材で学習したけれど、 3カ月、 6カ月たつうちにつまらなくなってきた、という場合などは、その教材はやはり質が悪いのです。 メロンやスイカに当たり外れがあるように、注意をしていても教材には当たり外れが出ます。それを計算に入れて、同じテーマであっても、いくつかの教材を準備することは欠かせません。教材媒体の種類にはどんなものがあるか では、教材の種類について説明しましょう。 いちばん一般的なのは本です。 本は、最も安く手に入る教材で、多くの人が利用しています。 しかし最近は、非常に多くの、いろいろな人が本を出版しているので、期待外れの率がとても高くなっています。 私の見るところ、自社の経営規模と業種に合っていて、しかもレベルが高い本は 100冊に 1冊くらいしかないので、本当に役立つ良い本を手に入れるには、保険と考えて、最初から何冊も購入する必要があります。 ちなみに、知り合いの社長から「この本は役立ちますよ」と紹介されたとき、その人が経営書を 2000冊も 3000冊も読んでいる人なら、内容が良い本である確率はうんと高くなります。しかし 300冊も読んでない人に薦められた本は、たいていが役に立たない本といっていいでしょう。 2番目は、セミナーです。 中小企業の社長には、セミナーに参加して経営戦略などの学習をしようとする人がたくさんいます。しかしセミナーにも当たり外れがあり、参加費も割高で、時間の制約もあります。ですからセミナーの参加だけで戦略実力をトップクラスに高めるのは、なかなかむずかしいことです。 3番目は、 CDなどの録音教材です。 CDは、電車や車での移動中も、何回も繰り返し聞いて学習できるので、何かと雑用が多くてセミナーに参加できない社長にとっては、とても便利な教材といえます。しかし1つのテーマで 5万円以上する CD教材をいくつも揃えている人は、 300人中2、 3人しかいないのが実情です。 4番目は、 DVDです。 図や表を使って説明されないとわかりにくい内容の場合は、 DVDがとても有効です。戦術リーダーなどが何人か一緒に DVDを観て学習し、学習したあとミーティングをして実力を高める方法もあります。教材の予算を準備する 社長が自社の規模に合った良い教材を揃えて経営戦略の研究に取り組むには、学習予算を準備しておかなければなりません。 学習予算に決まった金額があるわけではありませんが、おおよその目安は次のようになります。 1人 ~ 10人規模の会社――年間 20万円 ~ 25万円 10人 ~ 30人規模の会社――年間 25万円 ~ 50万円 30人 ~ 100人規模の会社――年間 50万円 ~ 100万円 これだけの予算を 5 ~ 7年間、継続して使い続けると、社長にとって必要なフルラインの教材はほぼ揃います。このあとは必要に応じて、別の人がつくった同じテーマの教材か、別のテーマの教材を用意すればいいのです。
何度も言いますが、会社は固定給なしの歩合給で運営されており、しかも強い競争相手が何社もいる中、ゴルフや囲碁のようにハンディはいっさいありません。しかも経営のやり方が悪いために資金繰りが悪くなったとしても、政府はもちろんのこと誰も助けてはくれません。経営は完全な実力主義になっているのです。 しかも従業員 100人以下の会社では、業績の 96%以上が社長 1人の経営実力で決まります。だから、会社で使う教育費の 90%は社長自身が自分のために使うのが、効果的な経費の使い方になるのです。 もちろん、従業員教育も欠かせません。しかし従業員 100人以下の会社の場合は、社長がインストラクターになり、社長自身が従業員を直接教育することが「組織戦略」の原則です。 社長がインストラクターになって直接教育すると、それぞれの従業員の素質も、自分の会社ではどのような教育が欠けているかもよくわかります。そして、社長が従業員を直接教育する力をつけるためにも、社長は自分の教育にお金をかけなければなりません。 もちろん社長が担当できない特別なテーマの場合は、外部の講師に頼んでもかまいません。しかしこの場合でも、社長は必ず一緒に参加するようにしてください。自分に合った学習方法を考える 学習成果を決定付ける 3番目は、「学習方法」です。社長の学習成果 =社長の素質 ×教材の質 ×学習方法 ×学習回数または学習時間 能力は「脳力」であるといわれます。 学習成果がどうなるかは大脳の働きによって大きく変わるので、ここではまず、学習に関連する、大脳の働きや役目を改めて押さえておきましょう。 学習に関連する第一の能力は、「見る」能力です。「見る」能力を担当する脳の場所は、視覚野と呼ばれます。見る能力は進化の早い段階で身につけたものなので、この役割を担当している脳の部位の面積は広くなっています。 第 2の能力は、「聞く」能力です。「聞く」能力を担当する脳の場所は、聴覚野と呼ばれます。これも、「見る」能力と同様に進化の早い段階で身につけており、脳の部位の面積が広くなっています。 第 3の能力は、「話す」能力です。これを担当する脳の場所はブローカ野と呼ばれます。 動物の中で、言葉によって意思を伝える能力をいちばん発達させているのは人類です。いつ頃から話す能力を身につけたかははっきりしませんが、化石の研究により 250万年くらい前だと考えられています。 話す能力の発達により、動物を狩るときに各人の役割分担がしやすくなったばかりか、各人が経験したことを仲間に伝えたり、子孫に伝承できるようになったことで、人類の進化が一段と速くなったと考えられています。 第 4の能力は、「文字を読む」能力です。 文字が発明されたのは、 3000年くらい前のことだそうです。しかも一般大衆が生活の中で、日常的に文字を読むようになったのはせいぜい「 150年ほど前」のことなので、文字を読むための専用の脳の部位はまだできていません。そこで「文字を読む」能力は、脳の上部にある 39野と 40野が兼任で担当しています。 39野と 40野は、熱い、寒い、痛いなどの感覚情報を初め、見たり聞いたりした情報を調整しながら総合的な判断を下す作業を担当しています。大変に多くの情報が集まるところですが、そこが文字を読む作業も兼任しているので、処理能力にあまり余裕がありません。 その結果、文字を読むスピードや、文章の大事なところを要約する能力は、見たり聞いたり話したりする能力と比べると著しい個人差が生じます。この個人差が、学習するときに大きな問題を発生させているのです。 39野と 40野の、兼任能力が高い人には、次のような特徴があります。 ①文章を読むスピードがとても速くなります。読むスピードが速い人は情報量が多くなるので、仕事をする上で有利になります。 ②文章内容の理解能力が高くなります。社長にとって、これはとても大事な能力です。 ③文章内容をわかりやすく要約する能力が高くなります。 ④文章内容の重要な部分を記憶する能力も高くなります。 この4つの能力が高い人は学習の成果が出やすいので、人生にとって大きな強みになります。 これに対して 39野と 40野の兼任能力が低い人には、次のようなマイナスがあります。 ①文章を読むスピードが遅くなります。情報量が少なくなるので、仕事の面でも不利になります。 ②文章内容の理解力が低くなります。 ③文章内容を要約する能力が低くなります。要約能力が低いと、説明する能力も低くなるので、仕事面でとても不利になります。 ④文章内容の重要な部分を記憶する能力が低くなります。 これらが低ければ、社長にとってはとても不利だということです。 ちなみに文章を読むことがほとんどできない人は難読症、かなり劣る人は準・難読症と呼ばれ、これらのタイプの人は意外に多くなっています。学業成績と「社長力」は関係ない
学校のテストはたいていがペーパーで、文字で出題され文字で解答します。しかも時間が制限されているので、解答欄に要点をまとめて記入しなければならないので、 39野と 40野の兼任能力が高い人と低い人とでは、見る能力や聞く能力と比べると、はるかに大きな差が出てしまいます。 この差がよりはっきりと出てくるのが、国語の成績です。中学生と高校生のときに国語の成績が良かった人は、 39野と 40野の兼任能力が高く、悪かった人はその兼任能力が低いのです。誤字や脱字が多く、文章を書くのが下手な人も同様です。 国語は最も重要な科目で、国語の成績が悪くなると、多くの場合それが影響して社会や歴史の成績も落ちてしまいます。そのために学習意欲が低下して、学校嫌いになる人が少なくありません。 私は、物理は好きで成績も良かったのですが、本を読む速度がとても遅い上に要約能力も文章能力も低く、誤字や脱字も多かったので、国語の成績はクラスでずっと最低をキープしていました。今にして思えば、私は「準・難読症」だったのです。 これは生まれつきの素質なので、簡単には直りません。 文章を書くときも間違いがとても多く、何回も書き直さないと他人が読める文章にはなりません。本を書く際も、人の 3倍以上も時間がかかってしまうので、とても苦労します。 だから私は、「いつものように間違って、いつものようにやり直し、いつものようにでき上がる」「焦らずに続けよう。イライラせずに続けよう」という標語を、紙にマジックで大きく書いて机の前の壁に貼っています。 社会人になってしばらくしてから、高校時代の国語の先生と道でバッタリ出会ったことがあります。私の名前を覚えていた先生は、挨拶もそこそこに「あなたの試験答案は、字が下手な上に何を書いているかさっぱりわからなかった」と言いました。 大学のゼミの先生も同じことを言っていたので、私の文章の下手さと誤字脱字が多いのは、折り紙つきだったのです。 そのダメ人間が 20冊もの本を出版できたのですから、人生はどうなるかわかりません。大事なのは、決してさじを投げないことです。 中小企業の社長の中には、私と同じように学生時代の成績が悪かった人が多いと思いますが、安心してください。 学校時代の成績のよしあしと、これまで同業者の誰もが気づかなかったものを見つけ出し、これを経営に取り入れる「創造性能力」や、仕事のやり方を良くする「改善能力」との間には、相関関係がないからです。 どんな方法で学習するとより成果が出るかは、人によって異なるので、社長は、自分の素質に合った学習方法を考える必要があります。この点は、従業員教育の場合も同様です。 3種類の学習方法の、どれが自分にふさわしいか? 39野と 40野の兼任能力が高い人は、本を読んで学習するのが合っています。学校時代の成績が良かった人です。 このタイプの人は経営書を読むスピードが速く、本の内容の中で特に重要なのはどの部分か、要点をつかみ取る能力にも優れています。記憶力も良いので、内容が良い本を 3、 4回も読むとそれが身につきます。 このタイプは CDや DVDはテンポが遅くてまどろっこしく感じるので、こういう教材で学習することは滅多にありません。 39野と 40野の兼任能力が低い人は、 CDなどの録音教材で学習するのが合っています。 本を読むスピードが遅い上に、要点をつかむ能力も低く、しかも記憶力も弱いので、内容が良い本でも、 3、 4回読んだくらいでは身につきません。 しかし「聞く能力」は他の人と同じように備わっているので、 CDを何回も何回も聞いていると、あるとき大事な要因が一気にわかってきます。何回も聞いていると記憶力も高まってくるので、仕事に応用できるようになります。 そのあとで、改めて本やテキストを読み直せば理解がより深まるでしょう。つまり、文字に関する能力が低い人にとっては、録音教材で学習することが学習の差別化になるのです。【私、竹田陽一の体験談】 ではここで、私の体験を紹介しましょう。 私は 28歳のとき、それまで勤めていた会社を辞め、企業調査会社に転職しました。仕事は中小企業の信用調査です。 調査した結果を、所定の用紙にまとめてレポートをつくるのですが、私は文章を書くのがひどく下手で、誤字や脱字が多いため、上司からはいつも注意されていました。だんだんとその仕事にも慣れてはきたのですが、 1年くらいたった頃、信用調査の傍ら、飛び込み訪問による新規開拓も担当することにしました。 そうしたのには理由がありました。私には、企業調査会社に転職する時点ですでに 2人の子供がいましたが、転職前は 3カ月くらい失業し、米を買うお金はもちろん、靴の底に穴があいていても新しい靴が買えないほどお金に困っていました。調査だけの仕事の給料では、その貧乏暮らしから抜け出せないと思ったのです。 新規開拓であれば、売上高に対して 5% ~ 15%の営業手当が出ていたので、これで収入を増やそうとしたのでした。 私は調査会社に転職する前、 3年ほど建築材料の営業パーソンをしていました。山陰に出張し、益田駅で帰りの急行を待っていたとき待ち時間があったので、駅前にある本屋に立ち寄りました。そのとき何気なく手にしたのが、フランク・ベドガーの『私はどうして販売外交に成功したか』という本でした。 帰りの急行列車の中で読み始めると、その内容にグングン引き込まれていき、すっかりベドガーのファンになったのです。 ベドガーはプロ野球の選手をしていましたが、試合中に右腕を骨折して野球を続けられなくなりました。その後、彼は、職を転々とします。中学しか出ていなかったので良い仕事につけず、給料も安くてひどくお金に困っていました。そして最後に出会ったのが、生命保険の販売でした。 生命保険の勧誘はたいていの人が嫌がるので、離職率が高く、ベドガーも 3年くらいは実績が上がらずとても苦しい生活をしていました。しかし苦労の末に高い販売技術を体得し、全米でトップの成績を上げ、 41歳の頃には破格の別荘が買えるまでになっていました。 ベドガーはこの本以外に『優秀者への道――セールスマンの秘訣』という本も出していたので、私はその本もすぐ買いました。セースルトークについての専門書で、あとでわかったのですが、プロセールスをめざすほとんどの人が、この本を応用してセールストークを組み立てていました。 そして私もまた、これらの本を研究して建築材料店の新規開拓を始めた結果、新しいお客が順調につくれるようになったのです。ですから、転職した調査会社で新規開拓を始めたときも、参考にしたのはフランク・ベドガーの本でした。 始めてみて、わかったことがありました。当時、福岡で信用調査会社の営業をやっていた人は、私が勤めていた会社の 30人を含めて 200人くらいいましたが、その中で飛び込みで新規開拓をしているのは私だけだったのです。 これはチャンスということで、信用調査の仕事の合間を利用しては、飛び込みで新規開拓を続けました。その結果成績はグングン上がり、社内で 1番に、
3年後には九州で 1番に、 5年後には全国で 1番になれたのです。 私はさらに販売技術を高めるため、販売関連の本を買ったりセミナーに参加したりしましたが、フランク・ベドガーの本よりも優れたものはありませんでした。だから思うようにいかなくなると、彼の本を読み直しては、販売のやり方に修正を加えようと考えました。 しかし信用調査の仕事を当たり前にやりながら、その合間を見ては飛び込みで新規開拓の仕事もしているので、身体的にはとても疲れます。本を読もうとしても、寝る前にせいぜい数ページしか読めません。 何か良い方法はないか、あれこれと考えたとき、ある方法を思いつきました。それはフランク・ベドガーの『私はどうして販売外交に成功したか』を 1冊丸ごと、アナウンサーに録音してもらうということでした。カセットテープを聞くのなら、疲れていても学習できると思ったのです。 早速、知り合いのアナウンサーに頼んでみましたが、「忙しくて、とてもムリです」と断られました。それでも諦めず、「何とかお願いします。助けてください」と何度も懇願したところ、シブシブ引き受けてくれたのでした。 今からおよそ 40年ほど前のことで、お礼は当時で 10万円を払いました。今なら 20万円 ~ 25万円になるでしょうか。 片面 45分のテープに録音してもらったものを 30分のテープに編集、終わりには 2分 ~ 3分の音楽を入れて聞きやすくしました。 そうしたあとでテープを聴いてみると、とても都合が良いのです。テープなので、朝、顔を洗ったり髭を剃ったりするときでも聴けるので、学習がはかどります。そこで、『セールスに成功する秘訣』も、 1冊丸ごと読んでもらいました。 ベドガーの本には、「講演活動をすると、飛び込み訪問ではとても会えないスジの良い会社の社長と出会える」 とありました。「なるほど、すぐにやってみよう」と思った私は、お客サービスの一環として、得意先の販売担当者を対象に「危ない会社の見分け方」というテーマで講演を始めようと考えました。 しかし講演といっても、どう話せばよいか全くわかりません。このときはダイヤモンド社から出版されていた、デール・カーネギーの『カーネギー話し方教室』という本が参考になりました。 ところがいざ講演となると、ひどく上がってしまってうまくいきません。そこでまた、デール・カーネギーの本をアナウンサーに録音してもらい何回も聞くようにしたのです。 この結果、何年か後には、平均社員の 7・ 7倍の売上を上げることができるようになりました。 それからあとは、 1年間に 2冊のペースで、これは、と思った本を録音してもらいました。 44歳で独立してからはもっとペースが速くなったので、結局、これまでに 50冊くらいの本を録音してもらったと思います。 ちなみに、この 50冊の中には、ドラッカーの本が 12冊入っています。ドラッカーの本はページ数が多いので、『創造する経営者』や『経営者の条件』は、 1冊当たり 30万円をアナウンサーに支払いました。 私はコンサルタントなので、学習量を特別多くする必要があり、参考にはならないと思う社長もいるかもしれません。 しかし、本を読むのがとても遅い上に、その本に書かれている大事な要点をまとめる能力も劣る「準・難読症」の私が、テープを何十回も聞くという学習の「量稽古」によって、いつの間にか実力が高まってきたように思います。少なくともこの点は、本による学習が苦手だったり、時間がない社長にとっては、参考になるのではないでしょうか。 私はこれまで 4300回の講演を行い、 20冊の本を出版してきました。これは間違いなく、「聞く」学習を積極的に活用するという「差別化力」がある方法を実行したからだと思います。 後に私は、フランク・ベドガーがその後どのような人生を送り、何歳で亡くなったかを知りたくなりました。 アメリカに人脈があるらしい人に、ベドガーのその後について調査を依頼しましたがうまくいきません。そこで、これが最後と思って 50万円の調査費を払って専門の会社に頼んだところ、ベドガーのその後の人生と、彼の子供がハワイの病院で療養中ということがわかったのです。 私がベドガーの子供に手紙を出すと、まもなく、ていねいな返事が来たのでした。「読む」のが苦手なら聞けばいい 私の体験談が長くなりましたが、ここで言いたかったのは、「読む」能力が弱い人でも諦めてはいけない、ということです。「聞く」能力を活かせばいいのです。要は、やる気と工夫次第です。私のケースのように、少なからぬ経費がかかることもありますが、自分に合った教材であれば成果が高まるので、長い目で見れば採算がとれるはずです。 ちなみに、 DVDなどの映像教材は、左側の論理脳はあまり強くないが右脳の図形能力が強い人に向いています。まず映像で説明されている図や表で全体像をつかみます。そのあと、その教材のテキストを読んだり録音教材を聞いたりすると、理解がより深まります。 本と、 CDと、 DVD。この3つが、大脳の働きに合わせた学習方法です。 レベルが高い学習方法を実行して戦略実力を上位に高めるには、まず学生時代の国語の成績を思い出し、自分はどんなタイプかをはっきりさせた上で、自分に合った教材を準備してください。 これは、従業員教育についても全く同じことが当てはまります。 本を読むスピードが遅く、文章の要点をつかむ能力も低い従業員が多い場合は、本やマニュアルを渡して「これで勉強しなさい」と言っても、実力はいつまでも高まりません。まず実践的でレベルが高いマニュアルをつくり、それをナレーターに読んでもらって CDにして、何回も何回も聞いてもらうのです。 これらの学習がひととおりすんだ後に、社長がインストラクターになり、自社専用のマニュアルを使って従業員教育をやり直せば、社長の考えが全員に伝わるばかりか、従業員教育の差別化にもなるので業績の向上に役立ちます。 しかしこれまでたくさんの会社を見てきましたが、そうしたやり方を採用している社長を見たことがありません。 従業員教育といえば、 1年に 1回程度、外部のセミナーに参加させるだけ、という会社が 9割以上を占めているでしょう。それでは教育回数が少なすぎるし、第一いろいろな業種の人が参加しているので、一般的な内容でしかありません。これでは従業員教育の差別化はできないので、従業員の実力が高まる見込みは全くないのです。
4社長はどれくらいの回数、どれくらいの時間、学習すればいいのか学習回数は人とテーマによって異なる社長の学習成果 =社長の素質 ×教材の質 ×学習方法 ×学習回数または学習時間 この公式のとおり、学習成果を決定づける 4番目の項目は「学習回数または学習時間」です。これは、次のような要因に左右されます。 1.自分の戦略実力をどのレベルまで高めたいと考えているか。その目標のレベルは、社長の経営に対する願望や向上心によって決まります。 2.学習しようとしているテーマの難易度はどれくらいか。 3.自分の素質がどのレベルにあるか。 4.自分にとって必要な学習テーマは何か。 5.学習に使う教材の質はどうか。 6.学習方法、学習の密度はどうか。 7.同業者の平均学習回数・時間はどれくらいか。 数値化ができない項目もあるし、同業の社長のこともわからないので、どれくらい学習すればよいかを決めるのは、やはりむずかしくなります。 それでも私のこれまでの経験からすると、通常のテーマでは 20 ~ 30回、特にむずかしいテーマの場合は 40 ~ 50回学習すれば、仮に素質に自信がなくても業界でトップクラスに高まるはずです。 では、実際にはどんなふうに学習すればよいのか。 まず、 10回くらい集中して学習し、そのテーマの全体像をつかむとともに、そのテーマの大事な要因は何と何であるかをつかみます。 そのあと 4カ月 ~ 6カ月経過したあたりで、再度 2 ~ 3回学習するという反復学習を続けます。こうすると、その間に仕事を通じて体験した知識も加わるので、効果が高まります。 これを 5年間続けると、社長の戦略実力はかなり高まります。 ただし、そこで気を緩めることなくさらに学習を続け、さらに実際の経営に応用していくと経験知識の量ももっと多くなるので、 10年もすれば、実力はおそらく業界でトップクラスに高まるはずです。 学習テーマが特にむずかしいときは、その途中に踊り場――成長の停滞現象が何回も発生します。 しかし、何回目かの踊り場にきたとき、「ここが最もレベルが高い頂上だ」と考えてその後学習をしなくなると、実際は中の上程度のレベルで成長が止まってしまう恐れがあります。これでは同業者の中でレベルが高い経営システムはつくれないので、当然業績は良くなりません。 だから、特にむずかしいテーマのときは、気を緩めることなく長期計画で学習を続けるとともに、実際の経営で試しながら改善を続ける必要があるのです。 こう説明すると、読者の中には「こんなにまでして学習するのはゴメンだ」と言う人もいるでしょう。 しかし経営は歩合給で運営されており、しかも業績の 96%は社長 1人の戦略実力で決まることを考えれば、戦略の学習がすべての業務に優先することがわかるはずです。
この事情をよく言い表わしているのが「百尺の竿頭さらに一歩を進む」という、道元の教訓です。ちなみにここでいう一歩とは 80 cmくらいと考えてください。 百尺の竿頭とは、長さが 30 mもある竹ざおです。そんな長い竹ざおを登るのは、とても苦しいことです。 ところがいちばん上まで登ったとしても、いちばん上にあるのは手だけで、頭はまだ 50 cmくらい下にあるので、登り切ったことにはなりません。頭が竹ざおの最上部に達するには、たとえその上に竹ざおがなくても、あと 80 cmくらい上に登らなければなりません。 しかしこのときは、つかむべき竹ざおはありません。竹ざおがないのに「あと一歩」登るためには、強い向上心と、並々ならぬ努力が必要になります。 経営の学習も同様で、そこまでやってこそ初めて、学習テーマは、本当に自分独自のものになるのです。 ここでいう特に大事なテーマ、むずかしいテーマとは、「経営規模で変わる社長の役目の違い」「利益性の根本原則」「強者の戦略と弱者の戦略」「本当の意味でのお客中心の経営」「従業員教育」「経営理念の本当の意味」などのことですが、これらについては、量稽古をして完全にマスターできたと思ったとしても、そこで立ち止まることなく、さらにもう一段レベルを高める努力が必要になります。学習の日数を決める 学習する場合は、学習する日数と時間も決めておかなければなりません。 これも、私の経験によると次のようになります( 1日当たりの学習時間は 6時間とします)。 ① 1人 ~ 10人規模の会社――年間 24日 × 6時間 = 144時間 ② 10人 ~ 30人規模の会社――年間 36日 × 6時間 = 216時間 ③ 30人 ~ 100人規模の会社――年間 48日 × 6時間 = 288時間 ①の従業員 10人以下の会社では、ほとんどの場合、社長自身が繰り返し作業である「戦術」も担当しながら、従業員に対する仕事の指示と指示した仕事
のチェック、売掛金の回収状況のチェックや資金繰りもします。さらに社長としてしなければならないその他の雑用もあるので、時間的に余裕がつくれません。 つまり社長の中でいちばん忙しいのは、従業員 10人以下の会社の社長なのです。これでは平日に経営戦略の学習ができないので、休日を使わざるを得なくなります。「休日は趣味や付き合いもあるから」と言って、戦略の学習を怠ると、戦略と戦術の区別がつかなくなり、目で見える戦術だけが経営の大事な仕事だと思い込んでしまいます。それでは「戦略なき経営」となってしまい、なかなかそこから伸びていくことができなくなるのです。 こういう社長はたいがい「忙しくてバタバタしている」と口ぐせのように言いながら、気ぜわしく走り回っているので、外からは仕事熱心で立派な社長に見えます。 しかし「戦略なき経営はムダが多い」と言われるとおり、会社のあちこちからムダが出るので赤字になり、結局、会社も社長個人もお金に困り始めます。 こういう現象を「バタバタ貧乏」を略してバタビンと言いますが、従業員 10人までの会社の社長には、こういう人が非常に多いのが現実です。 こうならないためには、 1カ月のうち、休日の 2日間を戦略の研究日に充てて、その日の 6時間は身を入れて経営戦略を学習する必要があります。 ②の従業員 10人 ~ 30人までの会社の場合は、社長が戦術上の仕事に追われることは少なくなりますが、その代わりに戦術リーダーの仕事量が多くなります。 従業員に対する仕事の指示やチェック業務も、 10人以下のときより、人数が多い分時間をとられます。覚えが悪い人には、教育もしなければなりません。 売掛金の回収状況のチェックや資金繰り、社長としてやるべきその他の雑用もたくさんあるので、経営の学習は、やはり休日にせざるを得ませんが、経営規模は 10人時代より大きいので、戦略も複雑になるため、 3日は学習の時間に充てなければなりません。 もしこれを怠ると、やはり社長がバタビンになる恐れは十分にあります。 ③の、従業員 30人 ~ 100人の規模の会社になると、社長と一般従業員の間に戦術リーダーが何人か置かれるので、社長は日々の繰り返し作業である戦術から解放されるばかりか、社長としてやるべき雑用もグンと少なくなります。 しかし従業員が 30人を超すと、商品の幅、営業地域が広くなり、競争相手の数が増えて、手強い競争相手が何社も出てきます。 さらに従業員が多くなると、経営計画書づくりや従業員教育の仕事のウエイトがグンと高まってきます。 この状態で勝ち残るためには、よりレベルが高い経営戦略知識が欠かせなくなります。そこで経営戦略の学習にはもっと力を入れ、戦略実力を同業の社長よりも高めておかなければなりません。 そのためには、平日も含めて、 1カ月当たり 4日間の学習日が欠かせなくなります。もしこれを怠ると、強力な競争相手に敗れ去り、業績低迷にあえぐばかりか、倒産の危険さえ出てくるでしょう。 10年続ければトップクラスの戦略実力が身につく 今述べたような学習を、社長が確実に実行するには、「余裕ができたら……」などというあいまいな考えではなく、事前に学習日を決める「学習時間先決め方式」で取り組まなければなりません。それも、大学受験を控えた高校生に負けないくらい身を入れて、真剣に取り組む必要があります。 しかしそれをやっても、 1年 ~ 1年半は目立った学習成果が出ないので、ほとんどの人はこの段階で学習をやめてしまいます。しかし、それでも諦めることなく続けていると、 2年を過ぎる頃から戦略実力が高まり始め、 5年を過ぎると目に見えて業績が上がってきます。 ではこれを、 10年間続けたらどうなるか。その時間を計算してみましょう。 1. 1人 ~ 10人規模の会社―― 1440時間 2. 10人 ~ 30人規模の会社―― 2160時間 3. 30人 ~ 100人規模の会社―― 2880時間 自社の経営規模と業種に合い、しかも実践的でレベルが高い教材を揃え、これだけの時間学習を続ければ、社長の戦略実力は間違いなく県内でトップクラスに高まります。そうなると、強い商品が、 1位の地域ができるので、業績がとても良くなります。 同業者の経営のやり方がよくつかめるようになり、異業種の社長と話していても、その人の戦略実力がどのレベルにあるかも、だいたいつかめるようになります。 経営そのものに生きがいを感じるようになるので、経営に対する取り組み方も全く変わってくるでしょう。
1セミナーや講演会の効果と限界を知っておく商工会議所などのセミナーは社長用が少ない この章では、社長が経営戦略を高めるときに欠かせない方法をいくつか説明します。 中小企業の社長がよく利用しているのが、商工会議所などが主催するセミナーです。あなたの会社も商工会議所の会員になっていて、さらに参加料金も安いなどの理由で、 1年に何回かはこうしたセミナーに参加していることでしょう。 しかしこれには、いくつかの問題点があります。 問題点の 1番目は、経営戦略で最も大事なテーマに関するセミナーが少ないことです。 私もあちこちの商工会議所からセミナーの講師を依頼されますが、何カ所かで過去 2年分のプログラムをコピーしてもらって調べたところ、最も多いのは従業員を対象にしたテーマで、 65%以上を占めていました。 一方、社長のための、経営戦略など経営の大事なところについてのセミナーは、 8%くらいしかなかったのです。これだと、 1年間に開かれるセミナーが 30回だとすれば、社長のためのテーマは年間にわずか 2、 3回ということになります。これでは、中程度の実力を身につけることもできません。 従業員 100人以下の場合、業績の 96%以上が社長 1人の戦略実力で決まるのに、なぜこうなっているのでしょうか。 その原因はいくつもあるでしょうが、最も大きいのは、中小企業の社長が商工会議所に、「従業員教育のセミナーを多くしてくれ」という要望を多く出すからです。そうした要望が多ければ、担当者は当然、そのニーズに応えようとします。 ですから中小企業の社長は、まず社長の戦略実力を高めるセミナーを増やすよう、商工会議所に要望すべきなのです。社長が実力を高めて、自分自身で従業員教育に取り組もうというふうに、発想を変えなければなりません。 問題点の 2番目は講師が説明する経営規模と、セミナーに参加している社長の会社の経営規模との間に、ミスマッチが発生していることです。 セミナーを担当する講師の多くは、アメリカ人が書いたマネジメントやマーケティングの本を参考にして話します。しかしそれらの本が扱う会社の規模は、たいてい従業員が 3000人以上の大企業が中心です。中でもドラッカーの本にいたっては 1万人 ~ 10万人規模の企業の話がよく出てきます。日本で従業員が 1万人以上いる会社は、わずか 100社くらいしかありません。 こういう本で学んだコンサルタントは、「管理職はこうあるべきである」云々の話をしますが、不思議なことに「社長はこうすべきだ」という説明はほとんど出てきません。そのため日本の社長たちはみんな、勘違いしてしまうのです。「管理職」とは戦術リーダーを部下にもち、自分自身は戦術リーダーの仕事をしない人で、大企業ではだいたい部長職に当たります。 管理職は、自分の人件費を初めとして、自分がいるために発生する経費はすべて部下の働きに依存するので、一定数以上の部下をもたないと、自分がいること自体が業績を悪くする原因になってしまいます。 卸売業や業務用の販売業など、訪問型の業種で考えてみましょう。 1人の部長(管理職)が、 5人の戦術リーダーを部下にもつとします。 5人の戦術リーダーは、それぞれ 10人の営業パーソンを部下にもっているとすれば、その管理職の部下の総数は 55人になります。 このような部長が 2人いれば部下の総数は 110人、 3人いれば 165人です。実際の経営では、他に経理部や倉庫係、配送係なども必要になるので、従業員の総数はこの 3割増しになるはずです。もう、中小企業とはいえません。 ここで何が言いたいのかといえば、企業数の 98%を占める従業員 100人以下、特に 70人以下の会社では、本当の意味で管理職といえる人は社長だけだということです。 そういう会社では、後継者はともかくとして、「本部長」などは必要ないのです。 それなのに、コンサルタントの多くは、「社長以外の」管理職のあり方について話すため、実態とずれた内容になってしまいます。 もちろん部下が 10人くらいの戦術リーダーを管理職と呼んだり、 4 ~ 5人の部下をもち、自分も戦術を担当している伍長型のリーダーを幹部と呼ぶことはできます。しかしそれらは、あくまでも名前だけの管理職や幹部です。 名ばかりの管理職をたくさんつくって、残業代を節約している社長もいるようですが、これは論外です。 こういう初歩的な誤りが生じる大きな原因は、セミナーを担当するコンサルタントが、日本の会社の従業員数別の統計をきちんと理解していないからでしょう。 個人企業まで含めた日本の会社の従業員数別の比率は、次のようになっています(小数点以下の数字は四捨五入しています)。 1人 ~ 9人…… 80% 1人 ~ 19人…… 90% 1人 ~ 29人…… 94% 1人 ~ 49人…… 97% 1人 ~ 99人…… 98% ちなみに個人企業まで含めた平均従業員は約 8人で、個人企業を除いた法人企業だけの平均従業員は約 16人です。 経営書の中には、「小さな会社の ○ ○」などのタイトルの本がたくさんあります。あるときふと、小さな会社とはいったい何人規模の会社を指しているのだろうか、と疑問に思いました。そこでさっそく知り合いの社長 300人にアンケート調査をしてみたところ、平均は 27人でした。 つまり小さな会社とは、 25人 ~ 30人規模以下の会社を指しているのです。
東京や大阪では上場企業の子会社が多いので、従業員が 200人 ~ 300人いる会社が何社もあります。しかし地方に行くと 100人以上いる会社はとても少なく、 30人以下の会社がとても多くなっています。 だからセミナーを担当する講師は、人口 50万人以上の都市では従業員 30人 ~ 50人規模の会社を中心に、人口 50万人以下の都市で話をするときは 20人 ~ 30人規模の会社を中心に、人口 10万人以下の都市では 5人 ~ 20人規模の会社を中心に話をすべきなのです。そうすれば、講師が説明する経営規模と参加者の経営規模が一致するので、説明を聞く人の誤解が少なくなるはずです。 問題点の 3番目は、業種の違いによるミスマッチです。 業種の数は年々多くなり、現在では 1万を超えているため、セミナーの講師が説明する業種と、セミナーに参加した社長の業種が一致する率はとても低くなります。 もちろん、経営の大事なところはどんな業種でも共通します。 しかし、経営の大事なところはつかみどころがなく、やや抽象的になるので、これをわかりやすく伝えるには具体例が必要になります。その具体例が、参加している社長の業種と同じか近い業種であれば、参加者も理解しやすくなります。 だから商工会議所が中小企業の社長を対象にして経営戦略のセミナーを開くときは、製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など、最低でも 5業種から 6業種に分け、場合によってはもっと多く分けるべきでしょう。こうすれば業種の違いによるミスマッチがかなり防げます。 他にも、セミナーには「差別化について詳しい説明をする講師が少ないこと」「セミナー時間が短いので本当に役立つ話は少ししかできないこと」など、いくつかの問題があります。 そのため、従業員 50人以下、特に 30人以下の規模の会社の社長が、経営を進める上で欠かせない大事なテーマの戦略実力を、商工会議所が行う 1時間 30分 ~ 2時間 30分のセミナーだけで上位に高めることは期待できないのです。経済団体のプロジェクトはなぜ失敗したか かつて、いくつかの経済団体がプロジェクトチームをつくり、ある計画に取り組みました。 その計画とは、すばらしく高い業績を上げている会社の社長に成功体験を話してもらい、普遍性がある経営原則としてまとめようというものでした。 このやり方は帰納法と呼ばれ、物理学や生物学などのいろいろな学問で使われています。 しかし、どこのプロジェクトチームも成功しませんでした。 その原因はいくつもあるでしょうが、主なものは次のとおりです。 まず 1番目は、業績が良い経営ができたかどうかと、自分が実践した経営方法をわかりやすく、しかも普遍性がある形で説明ができるかどうかは、全く別の問題だからです。 成功した社長の体験談に良く出てくるのが、「私は運が良かったから」とか、「私は良い従業員に恵まれたから」という話です。2つともすばらしいことですが、これらは、一般化し、誰でも応用できるような経営原則にまとめるのは不可能です。 それどころか、業績が悪い会社の社長がこの話を聞いて、自分の努力不足は棚に上げ、「私の運が悪いからだ」と、自己中心に考えてしまいかねません。 安い給料しか出してない上、従業員教育もまともにしないで、「業績が悪いのは、良い従業員に恵まれないからだ」と、まるで自分が被害者であるかのように考える社長も出てきます。 これでは経営戦略の研究に本気で取り組もうとしないので、こういう話を聞いたら逆に業績が悪くなってしまうでしょう。 成功した社長の中には「私たちは生きているのではなく、生かされているのです」と言う人もいます。すばらしい人生観だとは思いますが、こうなると何が経営原則になるか、いよいよわからなくなってしまいます。 2番目は、業績が良い会社の社長の話で、経営を構成する大事な要因がきちんと説明されるとは限らないからです。経営を構成する大事な要因がはっきりしないで経営の説明をすると、話を聞く人は、何を、どうしたらよいかわからず、結局役に立ちません。 3番目は、成功体験を説明する社長の業種がバラバラのため、どれも特殊な話に見えてしまうからです。こうなると「あれは例外だ、これも例外だ」となるので、話の中から普遍性がある経営原則を導き出すのがむずかしくなります。 4番目は、成功した社長の多くは、競争相手に勝つために行った肝心な戦略や戦術を説明したがらないからです。 どんな業界にも多数の競争相手がいて、お互いにお客を取り合っています。その中でお客を多くするには、競争相手の弱点や痛いところを突くような営業を実行しなければなりません。時には、「そこまでやるのか」と思うようなきつい営業方法も必要になるでしょう。 しかし現実には、競争相手に対してとった「特別な方法」はなかなか言えないものです。結局、表面的な話になるので、これをまとめても役に立ちません。 5番目は、「戦略とは見えざるもの」といわれるとおり、もともと戦略そのものが説明しづらいものなのです。そのため成功した社長の話の中から、効果性が高い商品戦略や営業戦略の原則を導き出すこともむずかしくなります。 6番目は、成功した社長たちの話を聞き、その中から普遍性がある経営原則をまとめようとするプロジェクトチームの中に、経営原則を深く研究して高い実力を身につけている人、いくつもの業種に精通し、高度な創造性能力をもっている人がいなかったためでしょう。こういう人は、そんなにたくさんいるものではありません。 結局多くの人の期待を受けてスタートした、プロジェクトチームがまとめたものは、一般的なビジネス書で見られるような、ありきたりの内容になってしまったため、注目されることなくすぐ忘れられてしまいました。「成功した社長の体験から学ぶ」ことの効果 これと同じようなやり方は、現在でも続けられています。 その1つ目は、成功した社長や有名企業の社長に講演してもらったものを DVDに収録し、それを教材に使って何回も学習する、という方法です。 これも悪くはありませんが、戦略は形がなくてつかみどころがないので、 DVDを見た人がこれによって差別化力がある、独自の経営方法を導き出すこと
はできないでしょう。 2つ目は、中小企業の社長が集まってつくっている団体や異業種交流会などがよく実行しているやり方です。 まず業績が良い会社の社長に、 70分 ~ 80分ほど講演をしてもらいます。 そのあと参加者がいくつかのグループに分かれて討議し、この中から経営原則を導き出そうというものです。 一見すると、これはとても良い方法のように思えます。しかしこの方法で学習してきちんとした成果を出すには、大きな前提条件が必要になります。 前提条件の 1番目は、話を聞く参加者全員が、経営のフルラインを学習しておくことです。 経営のフルラインについては、 135ページを参照してください。 前提条件の 2番目は、参加者全員が、経営のフルラインの「大事な要因」のどれもが 70点以上とれるように、戦略実力を高めておくことです。この条件も絶対に欠かせません。 経営の大事なところの実力が 70点以上の社長が、業績が良い会社の社長や異色と呼ばれる会社の社長の講演を聞けば、この社長が経営に成功した大事なポイントは「これとこれだ」と、つかみ取ることができるでしょう。 仮に説明される内容がきちんと整理されておらず、話があちこちに飛んで一貫性がなかったとしても、話の核心を理解することができるのです。「大事な要因」のどれもが 70点以上の社長であれば、業種が全く違っていても「こことここは自分の会社に応用できる」と結論が出せます。しかもそうして導き出した結論は、差別化力がある特別なものになるのです。 しかし、大事なところの実力が 50点以下などの低い社長には、成功した社長の話の整理が悪くて一貫性がないようだと、その中から経営に役立つ何かをつかみ取ることはできません。仮に何かをつかんだつもりになっても、たいていは的外れになってしまいます。 結局、成功した社長の話を聞いてディスカッションしても、それを自分の経営に応用して業績向上に役立てられる社長は、おそらく 100人中2、 3人しかいず、残りの人には思ったほど役には立っていないのです。
2仮説検証法のウソとホント実力がなければ仮説検証法は効果がない ビジネスマン向けの本や自己啓発に関する本を読むと、必ず出てくるのが「仮説検証法」と呼ばれる問題解決の手法です。 仮説検証法とは、仕事がうまくいかず、良い方法を考え出さなければならなくなったとき、まずある解決方法を「仮説」として考えます。このあとこれを実行して有効かどうか「検証」すれば、問題が解決されて業績向上に役立つというものです。 確かに良い解決策が見つかる場合もありますが、しかしこの手法には、大きな制約条件があることはあまり知られていません。 仮説が、その人の「戦略実力の範囲内」でしか出てこないという制約です。 A社長の戦略実力が、 100点中 50点しかなかったとしましょう。この社長が経営をしていて解決すべき問題が発生したとき、仮説検証法によって仮説を出しても、その仮説のレベルはやはり 50点以下なのです。 B社長の戦略実力が 40点しかなければ、当然、 40点以上の仮説は出てきません。それだと、仮説そのものに大きな意味はなくなってしまいます。 競争条件が特に不利な「番外弱者」は、本来は、弱者の戦略ルールを厳密に守って経営をしなければなりません。それがわからず、有名企業が実行しているカッコのいい強者の戦略を実行すれば、当然、業績が悪くなります。 業績を改善しようと考えて仮説を立てても、その仮説もやはり強者の戦略であれば、業績はさらに悪化するのです。 C社のケースで見てみましょう。 C社は、人口 30万人の地方都市の飲食店で、近くに強い競争相手がないこともあって業績が良くなりました。しかし従業員 1人当たりの自己資本はまだ業界平均の 1・ 5倍ほどしかなく、まだ弱者の戦略ルールを実行しなければならない状態でした。 ところが社長は業績が良くなったことに気を良くし、「人口の多い東京に出店すれば、売上も上がって儲けも多くなる」と考え、東京に出店することにしました。「人口の多い東京に出店すれば、売上も上がって儲けも多くなる」というのは、いわば仮説です。 社長は何回も東京に行って出店場所を探し、設備や店員、開店のチラシなど準備万端調えて営業を始めました。 ところが予想に反して売上は計画どおりに上がらず、赤字続きになったのです。その結果、手元資金が底をついてしまい、 1年後にはやむなく撤退しました。幸い倒産はまぬがれましたが、これによって自己資本のほとんどを失ってしまいました。経営の「打つ手」は囲碁と同じ こうなった本当の原因は、社長の戦略実力の低さにあるのです。 経営における仮説検証法は、囲碁のゲームに似ています。 囲碁は 19 × 19の 361カ所のマス目に碁石を並べ、陣地の広さを競うゲームです。「布石」と呼ばれるところが終わり、さらにゲームが進行すると中盤に入っていきます。中盤にさしかかると両方の石が接近してきて、戦いが始まります。 ゲームをするからには誰だって勝ちたいと思っているので、自分に順番が回ってきたら、どこに石を打つと最も良い手になるかを考えます。つまり仮説を立てるのです。 しかし中盤における「最善の手」はたいがい 1カ所で、あったとしても 2カ所しかありません。これに対して価値が低い手や打つべきでない悪い手は数多くあります。 この中盤で、囲碁の高段者は多くの場合「最善の手」を打つため、ゲームに勝つことができます。一方、素人は、たまに最善の手を打つこともありますが、たいていは数多くある悪い手を打ってしまうので、結局ゲームに負けてしまうのです。 囲碁では、その人の実力以上の手は打てません。打てた場合は、まぐれです。 経営も全く同じで、「会社の業績を悪くして倒産し、ホームレスになろう」と考えて経営をしている社長は 1人もいません。誰だって業績を良くして立派な会社にしたいと考えているはずです。 ところが戦略実力の低い社長は、「最善の手」と考えて悪い手を打ち、墓穴を掘るのです。勝とう、勝とうとして、結局、会社を潰してしまうのです。 ここまで説明したことでわかるように、仮説検証法が業績向上に役立つのは、同業者 100人中 3番以内に入れるような、高い戦略実力を身につけている人に限られます。点数でいえば 80点以上になるでしょう。 では戦略実力が低い人は、どうすればよいのか。 それは 1章の学習成果の公式で説明したように、まず自社の経営規模と業種に合った良い戦略教材を準備し、次はこの教材を使って学習回数を特別多くします。こうして経営を進める上で欠かせない大事なところが、 70点以上取れるよう戦略実力を高めることが先決なのです。こうしたあとで実際の経営に応用してみるなど、体験知識を蓄積していくと、やがて 80点のラインに到達できるのです。 もしあなたが、自分の戦略実力に自信がないようなら、まず、戦略実力そのものを高めることを最優先に取り組んでください。そうしなければ、仮説検証法は意味がありません。
3社長が「差別化」された勉強をするにはどうするか?学習の差別化に役立つ戦略社長塾 もうおわかりと思いますが、従業員 100人以下の会社の業績が上がらない理由で大きなものは、次の3つです。 1.経営規模の大・中・小・零で変わる社長の役目がわかっていない。従業員 50人以下の社長なのに大企業の社長のような錯覚をして、自分の役割を誤解している。 2.戦略と戦術の区別がつかず、繰り返し作業の戦術だけが経営の大事な仕事と強く思い込んでいる。 3.強者の戦略と弱者の戦略の区別がつかず、カッコが良い強者の戦略が正しい経営のやり方であると信じ込んでいる。 この中でも、特にウエイトが高いのが 3番目です。 こんな間違いを犯さないためには、どうすればよいかについて考えていたとき、 1995年頃、ふと考えついたのが戦略社長塾です。以来戦略社長塾は 20年近く開いていて、これまで 8000人以上の社長が参加しています。 参加した社長からは、「役に立った」とか「社長の役目がようやくわかった」など、とても喜ばれています。では戦略社長塾の内容について説明しましょう。 まず最初に、中小企業の社長を 3 ~ 5人募集します。 2番目に、ランチェスター経営で制作した DVDを教材として使います。 3番目は、 DVDを 15分くらい見たあと、いったん止めます。そしてインストラクターが必要に応じて解説をしたあと、参加者 1人ひとりから意見を聞いていきます。各人の意見発表が終わったら、再び DVDを 15分くらい見ます。またいったん止めて、各人の意見を聞きます。これを何回も繰り返します。 このように進めると、 DVDの録画時間が 1時間だとすれば、この 2倍の 2時間はかかります。 ちなみに社長塾を始める時間は、朝 7時、 10時、 15時、あるいは土曜日の 8時からなど、塾を開くインストラクターの都合で決めています。 戦略社長塾の基本コースは、次のようになっています。 第 1コース――テーマは「社長の差別化学習法」で、 DVDは 2巻構成になっています。内容はこの本で説明しているものとほぼ同じです。 第 2コース――テーマは「戦略社長」で、 DVDは 4巻構成になっています。内容は経営を構成する大事な要因とそのウエイト付け。利益性のよしあしが根本的に決まる利益性の原則。戦略と戦術の違い。実行手順とそのウエイト付け。経営規模の大・中・小・零で変わる社長の役目など、経営の基本部分が中心になっています。 第 3コース――テーマは「社長の実行力の高め方」で、 DVDは 2巻になっています。内容は仕事に投入する時間量を多くして、社長の実行力を思い切り高めるための「時間戦略」が中心になっています。 第 4コース――テーマは「早わかりランチェスター法則」で、 DVDは 2巻構成になっています。内容はランチェスター法則のハードの部分と、これを経営に応用するソフトの部分など、最も大事なところを説明しています。 以上の4つが経営の基本原則コースになっています。合計すると基本コースだけで 10回開き、学習時間は約 20時間になります。 戦略社長塾は 3 ~ 5人とごく少人数で開くのですが、お互いに知らない人ばかりになるので、 1回目と 2回目は固い雰囲気になります。 しかし 3回目になるとお互いの業種と人柄もだいたいわかってくるので、打ち解けて気楽な雰囲気で学習できるようになります。 戦略社長塾の特徴は次のようになっています。 特徴の 1番目は、教材として使う DVDは従業員 10人 ~ 30人の会社に焦点を当ててつくっているので、従業員 5人 ~ 50人の会社の規模の社長に合うようになっていることです。前にも説明したように教材で説明している経営規模と、学習する人の経営規模のミスマッチが誤解を生む大きな原因になるのですから、これはとても大事になります。 特徴の 2番目は、 3 ~ 5人と少人数で学習するので、わからないところがあったら、いつでもインストラクターに聞けることです。誰でも、何らかの理由で、間違って強く思い込んでいることがいくつかあるものですが、社長塾で学習するとこれが解消します。 特徴の 3番目は、 3 ~ 5人で学習すると仲間意識が生まれ、出席率がとても高くなることです。 特徴の 4番目は、参加料金が安いことです。料金はインストラクターの都合によって変わりますが、 1回当たり 3000円が基本になっています。 経営活動の結果の記録を残す簿記学校は全国にいくらでもあります。しかし、従業員 50人以下の社長を対象にして、経営の大事なところを、しかも 99・ 5%の会社が実行すべき弱者の戦略ルールをもとにして、一貫性をもって教えているところはありません。戦略社長塾は、この解決にとても役立っています。 全コースを学習した社長の中には自ら塾長になり、知り合いの社長を集めて社長塾を開いている人もいます。 ここで断っておくことがあります。それは、社長塾で使用する DVDは、参加者の規模に一致していて内容のよいものであれば、私の会社の教材に限らず、どこの会社のものでもかまわないということです。 要はこのやり方が、差別化力のある学習を進める上でとても役に立つことを知ってもらいたいのです。理想の自分と今の自分と対話する時間をつくる 漢字の中に座るという字があります。この字の大本は、「坐」といわれています。 この坐という字は、神様がいる神殿の正面の地面に罪を犯した人と、この人を取り調べたり裁きをしたりする人が、向き合って地面に座っている様子を
表わしているそうです。 やがてこれが変化し、理想的な自分と現在の自分とが向き合って座り、人生設計など自分にとって本当に大事なことを考えるときに使うという、特別な意味をもつようになったそうです。 ではこのやり方を応用して、理想の自分と現在の自分とで、経営問答をしてみましょう。この経営問答は、神様の前に座って行われているということを忘れないでください。理想の自分 君は現在社長をしているが、社長としての素質はどのレベルにあると思いますか。現在の自分 ハイ、法人設立年数による従業員 1人当たりの自己資本額やここ数年間の従業員 1人当たりの純利益から見て、社長としての素質は中の下か下のクラスにあると思います。理想の自分 君は 1年間に何千時間仕事をしていますか。現在の自分 1年の仕事時間は 2600時間程度になっていると思います。理想の自分 中小企業の社長は 3200 ~ 3700時間仕事をすべきですが、それだと 1年間に 600時間 ~ 1100時間不足しています。それでは実行力が弱くなるので、業績を良くすることはできないはずです。現在の自分 ハイ。仕事時間が少ないことはよくわかりましたので、さっそく 3200時間以上働くように計画を立てます。理想の自分 業績を良くするには、粗利益をつくるときに直接関係する、商品、営業地域、業界・客層のどれかで強くなったり、 1位になることが欠かせません。今経営している会社に、強いものか 1位になっているものは何がありますか。現在の自分 残念ながら1つもありません。理想の自分 国語の成績のよしあしによって経営戦略の学習方法が変わりますが、君の中学時代と高校生時代の国語の成績はどのレベルにありましたか。現在の自分 ハイ。中か中の下にありました。理想の自分 多くの競争相手がいる中では、社長の戦略実力を同業者 100人中 5番以内に高める必要があります。君の場合は、経営規模と業種に合った、レベルが高い CDや DVDなどを教材に使って学習することが欠かせません。君は今、どんな教材を揃えていますか。現在の自分 経営戦略に関する教材は本を何冊か持っているだけで、 CDや DVDの教材は特に持っていません。理想の自分 君は、今経営している会社を、どのようにしたいと考えているのですか。現在の自分 ハイ。従業員 1人当たりの純利益を業界平均の 2倍以上出して、仕入先や同業者から注目される良い会社にしたいと考えています。理想の自分 君は社長としての素質が中の下にあり、会社にも強いものが1つもありません。無から有が生じることは決してないように、今考えていることを実現するには、本気で学習するしかないのです。その覚悟はありますか。現在の自分 ハイ。あります。必ずこれを実行して今の会社を良い会社にします。 このような問答ができれば、あなたの会社は必ず変わってくるでしょう。 社長になると、自分の問題点を正面から直言してくれる人がいなくなるので、油断すると自分の戦略実力を 10倍以上高く考えてしまいます。これが社長の向上心を失わせ、マンネリ経営に陥る大きな原因になっています。そんな状態が何年か続けば、いずれ業績が悪くなり、資金繰りが回らなくなってくるはずです。 厳しい経済環境が続く中、そうなってしまってから「何とかしよう」としても、たいていは間に合いません。 こうなることを防ぐためには、 1年に何回か自宅と会社から少し離れた静かなところで、理想の自分と今の自分が向き合い、時間をかけて経営の大事なところについて話し合う必要があるのです。 もちろん初めの 3 ~ 4回は良い結果は出ないでしょうが、続けていると徐々に集中力が高まって、はっきりした成果が出てくるでしょう。 これに似たことを、毎週日曜日に数時間をかけて行っているのがユダヤ人です。 ユダヤ教では日曜日は汗を流すような労働をしてはならないのはもちろん、旅行もしてはならないと定めています。そしてまず自分自身と向き合い、自分にとって最も大事な物事を決めたり、前に決めていた物事を再確認したりするのです。 世界の中で、商売が最も上手な民族はユダヤ人といわれる最も大きな理由は、毎週 1回、自分と向き合って対話をするルールをかたくなに守っているからかもしれません。 これに対して日本人のほとんどは、日曜日をバカンスの日にしています。月曜からは仕事をするのですが、これでは社長自身の戦略実力を高めるための計画時間も、会社の長期計画や短期計画を立てる時間もつくれません。 結局目先の利益を追い求めたり、日々発生する突発的な雑用に追われて走り回ったりすることになるので経営効率が悪くなり、ほどなくバタビン(バタバタ貧乏)経営に陥ってしまうのです。 そんなふうにならないために、「坐」の字源とユダヤ人のやり方に習い、毎週とまではいかなくても、毎月第 1日曜日と第 3日曜日の 2日間を、自分自身と向き合い経営について計画を立てる日に決めましょう。 そしてその日に、まず社長自身の人生計画や学習計画を立て、次に会社の経営計画を検討して経営の実行状況をチェックし、場合によって修正を加えたりするのです。 そうしていると、自分を客観的に見ることができるようになるばかりか、進む方向も正しくなるので、必ず業績は向上してくることでしょう。
おわりに ここまで、社長の差別化学習法というテーマについて説明してきました。 この本の目的は、差別化力がある学習法によって社長の潜在能力を開発し、従業員や仕入先から尊敬される立派な社長になることと、会社の業績を良くして安全度が高い会社にすることの2つにあります。 会社の業績を良くするとき、多くの社長が実行するのが経営計画書の作成です。経営計画書をつくるときは、社長の性格、過去の経験、競争相手との力関係、または業界における自社のランクの4つを考えた上で、次の項目についてまとめていきます。 まず必要な売上高、必要な粗利益、必要な経常利益を決めます。 このあとこれを実現するときに大本となる、商品、営業地域、業界と客層の、「どこに力を入れて強くするか」「どこに力を入れて将来 1位になることをめざすか」の重点目標と最大範囲を決めます。 その上で、全社的な営業方法、販売戦術、顧客維持の方法など、経営を構成する大事な要因1つひとつに対して、強者の戦略か弱者の戦略ルールをもとにして計画を立てたあと、これをまとめていきます。 競争条件が不利な会社が業績を良くするには、これらの大事なところを、強い会社と思い切った差別化をするとともに、革新も加えなければなりません。不利な会社の業績は、経営を構成する大事な要因がどれくらい差別化されていて、どれくらい革新が加えられているかによって決まるのですから、これらの作業には時間をかけてしっかりと取り組まなければなりません。 しかし、経営を構成する大事な要因の差別化や革新は、しょせん、社長の戦略実力の範囲内でしかできません。だからまず必要なのは、社長自身の戦略実力を高めるための「学習計画」なのです。 しかも従業員 100人以下の場合は、業績の 96%以上が社長の戦略実力で決まるのですから、社長の学習計画には、ページ数をたっぷりとっておかなければなりません。 もっとも、これをやろうとするとどうしても、改めて社長自身の素質のなさや欠点に面と向き合う必要が出てきます。社長にとっては決して楽しいことではないので、できればやりたくないはずです。 しかし、「むずかしいことには、それと同等かそれ以上の良いことが隠されている」という教訓もあります。あえてこの作業を行うことで、やがて事態が大きく変わってくるはずです。 この教訓を信じて、戦略の学習計画を立てられることを願っています。 2013年9月吉日竹田陽一
竹田陽一の戦略教材紹介コーナー ランチェスター経営株式会社では従業員 100人以下の会社の社長を対象にして、実戦的な戦略教材をつくっています。関心がある方は FAXかメールで問い合わせてください。カタログを送ります。 1.実践・社長の経営戦略 CD ランチェスター法則によって社長の戦略実力を高め、従業員 1人当たりの経常利益を業界平均の 2倍に高める方法を紹介しています。 CD 1巻。 72分。テキスト付。 2.経営計画入門――経営計画それ自体の計画 CD 経営計画のほとんどは「会計中心」になっています。経営計画は本来どのような考え方で立てるべきか、前例にとらわれない革新的な説明をしています。 CD 1巻。 72分。テキスト付。 3.従業員 20人まで用の経営計画の立て方 CD 従業員 20人以下の社長は何かと雑用が多いので、 1年間の計画では途中で実行が止まってしまいます。これを改善したのが、 3カ月ごとに計画を立てる「超・短期の計画」です。これを採用すると実行力がグンと高まります。 CD 3巻。 3時間 32分。テキスト付。 4.ランチェスター法則による新規開拓の進め方 DVD 営業経験が浅い人でも、厳しい断りを受けずに新規開拓が実行できるめずらしい営業方法を紹介。社内研修用に最適な教材です。 DVD 2巻。 1時間 37分。テキスト付。 TEL 092― 535― 3311 FAX 092― 535― 3200 H P http:// www. lanchest. com/※カタログの請求者に対しては、中小企業 188業種の従業員 1人当たりの純利益データをプレゼントします。
著者紹介竹田陽一(たけだ・よういち)ランチェスター経営(株)代表で、従業員 100人以下の会社を専門にする経営コンサルタント。久留米市出身。福岡大学経済学部卒業。建材メーカーで経理と営業を担当したあと、 28歳のときに企業調査会社に転職し、中小企業の信用調査と倒産会社取材を担当。 34歳のとき講演を始め、 35歳のときにランチェスター法則と出会う。同法則が趣味にしていたラジオ組立の電気の法則と同じだったので、一気に傾倒して研究を始める。 44歳のときランチェスター経営を創業。その後経営戦略の CDを 200巻、 DVDを 130巻フルラインで制作。講演回数は 4, 300回になる。これまでランチェスター氏の墓参りのため 5回訪英し、ランチェスター法則の原書を手に入れて翻訳。主な著書に、『 1枚のはがきで売上げを伸ばす法』『プロ ☆社長』(いずれも中経出版)、『小さな会社 ☆社長のルール』『なぜ、「会社の数字」は達成されないのか?』(いずれもフォレスト出版)などがある。 ●事務所 〒 810-0012 福岡市中央区白金 1丁目 1-8の 301 TEL: 092-535-3311 FAX : 092-535-3200 HPは、 http:// www. lanchest. com/オビイラスト/ © Visty-Fotolia. comカバーデザイン/冨澤崇( EBranch)
社長のためのランチェスター式学習法発行日 2022年 3月 31日著 者 竹田 陽一(たけだ・よういち)発行者 佐藤 和夫発行所 株式会社あさ出版 〒 171-0022東京都豊島区 南池袋 2-9-9 第一池袋ホワイトビル 6 F電 話 03( 3983) 3225(販売) 03( 3983) 3227(編集) FAX 03( 3983) 3226 URL http:// www. asa 21. com/ E-mail info@ asa 21. com note http:// note. com/ asapublishing/ facebook http:// www. facebook. com/ asapublishing twitter http:// twitter. com/ asapublishing © Yoichi Takeda 2022 本電子書籍は下記にもとづいて制作いたしました株式会社あさ出版『社長のためのランチェスター式学習法』 2013年 10月 13日第 1刷発行本書を無断で複写複製(電子化を含む)することは、著作権法上の例外を除き、禁じられています。また、本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内の利用であっても一切認められていません。
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