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社長の鬼100則:大坂靖彦

まえがき  本書を日本全国で日々悩み苦しんでいる中小企業経営者の皆さんに。そして、今後さらなる飛躍を目指す経営者の皆さんに捧げたい。  私は、一流電機メーカーを退職して故郷に帰り、親が経営する家電販売店で経営者としての一歩を踏み出した。  それからというもの、毎年のように〝難題〟が襲いかかり、「経営とは終わりのないモグラたたきを繰り返し、悩み苦しみ続けることなのか」と、自嘲気味に観念したほどだった。はじめて出店したときは、 4日で閉店を余儀なくされた。倒産を覚悟したこともあった。社員に裏切られたこともあった。社員の期待を裏切ったこともあった。一体、いつになったら思い通りの経営ができるのだろうか?社員もお客様も、そして自分自身も満足できる幸せな日がやってくるのだろうか?そう思いながら、ストレスのない自己解放された経営を夢見ていた。  このように悩み苦しみながらも、あらゆる〝難題〟に関する情報・ノウハウを求め続け、シミュレーションを繰り返しながら社長がすべき仕事を見つけ出し、愚直に実行していったのだ。  結果、家業の家電販売店を、リタイア時には年商 339億円にまで成長させることができた。  弱者の戦略を旨とする私は、パートナー戦略をフル活用し、次々と新しいステージ(ナショナルショップ、ボランタリーチェーン四日電、マツヤデンキ、ケーズデンキ)に踏み出して、ノウハウを吸収していった。  しかし、フランチャイジーとして生きることは、チェーンとしての力こそ発揮できるが、経営者や幹部の能力の低下に直結するリスクがある。そうはなるまいと、次々と新規事業(ミニハウス、酒ディスカウンター、米事業、 100円ショップ、パソコン教室など)に乗り出すことで、社員を、そして自分の社長力を鍛えぬいた。  その結果、どんな大波にも負けず、会社を成長軌道に乗せていくことができるようになったのだ。小売店としては珍しいほど、社員の定着率の高い職場を実現したと自負している。  多くの現役中小企業経営者は、これまでに私がもがき苦しみながら乗り越えてきた壁のように立ちはだかる「難問」や「テーマ」に直面している。それらが会社はもとより、社長自身の成長をも阻んでいるのだ。これは、業界や業種が異なっても同じだ。  そこで私は、 40年の経営者人生をかけて築き上げてきたメソッドを次世代経営者に伝えたいと、 2010年に中小企業経営塾大坂塾を開講した。塾生は日本全国、海外からも参加し、現在では 900名にのぼる。  取り上げる経営メソッドは単なるお勉強用の理論などではなく、実践の中で磨かれ生き残った実用的なものばかりである。本書にはそのエッセンスを注入した。  本書を私の人生の軌跡としてだけ読んでは欲しくない。  自分の例を多く書いているが、そこから経営の本質を読み取って欲しい。一つ一つの例を自社に置き換えて考えてみて欲しい。必ず、あなたの会社にも当てはめられる解決策となる。  どうか 1人でも多くの全国の中小企業の社長が本書を手にして、いくつもの〝難題〟を乗り越えながら、会社という自分の船をうまく操舵して欲しい。そして、ストレスのない経営、自己解放の世界にたどり着き、経営者としての成功、人生の成功という栄光を掴み取ってくれることを願っている。  大坂靖彦

まえがき第 1章   Life strategy  ~鬼の人生戦略 ~ 01  「弱者の戦略」が成功への道 02  自分の死ぬ日を設定して、壮大な生涯ストーリーを描け 03   5年スパンで人生を考えろ 04   1日は時計で、年間はカレンダーで、一生涯は人生計画で 05  人生・経営をいかにデザインするか 06  大ピンチは神様のテスト  戦略パワーでリベンジせよ 07  世界の偉人が教えてくれる金言集 08  早すぎる成功は命取り 09  成功の物語を学べ 10   5、 10、 20、 30年計画の人生戦略でサクセスストーリーを 11  健康でなければ成功はできない第 2章   Knowledge  ~鬼の心得 ~ 12  新しい国作りをスタートせよ 13  蛻変せよ(脱皮・変身・成長) 14  高い志・夢の実現を血反吐を吐くくらい求めよ 15  社長の軸がぶれないようにするには 16  セレンディピティの魔力 17  成功体験はいずれ足枷になる 18  オドオド・ビクビクの経営 19  目前のテーマを極大化してシミュレーションせよ 20  決断は時折歴史に学ぶ 21  群れるな!とんがれ!  ファーストペンギンになれ! 22  ライバルは自分自身だ 23  社員に負けろ 24  社長は社員を磨く大きな砥石 25  経営は「社長と社員との格闘技」だ 26  片目をつぶって社員を見て下駄をはかせる 27  社員に与える「3つのや」 28  怒るな、興奮するな、熱く語るより熱く聞け 29  社長の思いつき発言は、社員のやる気を失わせる 30  部下に仕事を丸投げするな 31  今はいつでも途中形 32  神の領域を侵すな 33  社長の賞味期限は? 34  年初のあいさつは 1年間かけて練りあげよ 35  メモを取って戦略を練る 36  スクラップブックを作れ 37  社長はしっかり休息せよ第 3章   Management strategy  ~鬼の経営戦略 ~ 38  経営の兆しを掴め 39  ビジネスモデルの賞味期限は? 40  聖域なしの総棚卸 41  ブルーオーシャンの世界は探すな 42  社長独自の P/ Lを作れ 43  コスト削減は社長の脳内で決まる   1掛け作戦 44  予算の実績 45  マネシタデンキでいこう 46  誇るべきは売上金額、利益額でも、従業員数でもない 47  大手と互角に戦うための戦略 48  広げるな掘り下げまくって己を磨け 49  新規出店は地獄への入り口  目指すは強靭な金型作り 50  新規事業参入のヒント 51  新規事業に無駄なお金をかけない

52  売上不振の本当の原因は? 53  売上を上げるための本当の対策 54  普通の人が普通にやって成果を上げる仕組み 55  情報戦略で正しい決定を下す 56   2・ 8には売るな 57  郵便配達員の教えで売上 130%を実現 58  ミッションが浸透すれば社員の力は爆発する 59  夢の回転差資金ゲット 60  妄想の世界が実現を生み出す 61  川上で勝負してブルーオーシャンの世界で戦う 62  自宅売却で利益を出す 63  社員の想像を超える度肝を抜く福利厚生第 4章   Improvement  ~鬼の改善 ~ 64  会社のスタート時に陥りやすい罠 65  経営の大元を押さえる 66  株争奪戦 ~あなたの持ち株比率は ~ 67  レイバースケジューリングで無駄を省く 68  レイバースケジューリングで危機を脱する 69  毎日 1時間は面談禁止 70  大きなトゲを取り除け 71  現場に神宿る 72  オールリセット内観のススメ 73  お客様の生の声で経営改革を実現 74  メンターを使いたおせ 75  社員を守れ!会社を守れ! 76  立派な規定集の落とし穴 77  経営のリスクリスト第 5章   Human resources  ~鬼の人事 ~ 78  とんがりすぎた部下の専門性と社長の自信喪失 79  ナンバー2は最大のリスクと心得よ 80  なぜ人が集まらないのか?とんがっているか? 81  あなたの会社に 007は来ない 82   007はパートで雇え 83  社員・パートさんが思い通り採用できる 84  パート正社員のパワー 85  なぜ人が育たないのか 86  部下を育てる人を最大評価 87  偉大なる高卒軍団 88  戦略人事ボードで超見える化を実現 89  組織表で日々戦略を考えよ 90  肩書は変動制でいつも緊張感を 91  チャレンジポスト 92  べクトル会  鍛え抜いた社長の懐刀集団を作れ 93  社員接点表で絆を結べ 94  人が育っても辞めない会社を作れ 95  社員の心に寄り添え 96  面授口訣で社員の心を鷲掴みにせよ 97  定期的な社員のガス抜きアンケート 98  社員の辞めさせ方 99  社員の退職を社内見直しのチャンスとして捉えよ 100  辞めた社員は金あとがき

希望は人を成功に導く信仰である。希望がなければ、何事も成就するものではない。ヘレン・ケラー(教育家、社会福祉活動家)理想は我々自身の中にある。同時に、その達成に対するもろもろの障害もまた、我々自身の中にある。トーマス・カーライル(歴史家・評論家)

鬼 100則   01「弱者の戦略」が成功への道  中学生時代から今までに 6回の鼻の手術。記憶力が弱い上に、鼻呼吸がしづらいためか眠りが浅く、毎夜見る悪夢の日々。まさにストレスとの戦いの半世紀。虚弱体質で、いつも顔が青白く痩せすぎで、成績はいつも中くらいで運動とも縁のない生活。  私はいろんな面で「弱者」であった。  だが、夢だけは大きかった。小学生のときに観たアメリカ映画の中の優雅な生活に憧れ、将来は語学を勉強し、海外で社長になろうという夢が「志」となった。  しかし、大きい夢に比べ、足元の現実は余りにもみすぼらしかった。私には両者のギャップがストレスとなったが、同時に、やるべきことを浮き彫りにしてくれた。  私の英語の学力では到底合格は無理と言われた上智大学の受験の際、帰国子女向けに設けられた比較的易しい第二外国語受験に目をつけ、ドイツ語で受験すると、見事合格。この経験が私の中に戦略を駆使して正しくやり切りさえすれば、夢のゴールにたどり着けるという確信を生んだ。遠い未来を見つめながらワクワク感に包まれ高揚した。  つまり、夢見る私は「弱者」であるがゆえに、数々の戦略、そして戦術にたどり着くことができると確信したのだった。と同時に、幼少期に抱いた強い「志」が、世の変化に潜む「兆し」を捉える習慣を私の中に生み育ててくれた。  私は、 2033年4月 4日を命日と決め、半世紀以上続いたビジネス戦線の中で編み出した手法により、年商 7000万円の電器屋を 339億円企業にまで成長させることができた。今もなお、自己改革を迫るべく、あらゆるテーマにチャレンジし続けている。  健康戦略の項でも述べるが、 15年かけて肉体改造計画にもチャレンジしている。  途中で休みを入れながらも、事務所のマンション 32階までを上り切れるようになった。カルシウムを摂り、太陽の光を浴び、骨密度はついに 30代に。そして血管年齢は 20歳若い 50代に。天命を全うするまでなおチャレンジは続く。  弱かったからこそ、ここまでできた。  「強者に負けない」ではなく、「強者に競り勝つ」ための〝弱者という強み〟を生かすさまざまな考えを身につけて欲しい。それこそが、私が伝えたい弱者の戦略である。

鬼 100則   02自分の死ぬ日を設定して、壮大な生涯ストーリーを描け  「私の命日は 2033年4月 4日です」。講演会の冒頭、自己紹介でそう言うと、驚かれる。  学生時代、「あなたの人生はあなたが思い描いた通りになる」というポール・ J・マイヤーの言葉に出会ったときには心が震えた。そうか、思い描けばいいのか。  自分とは別世界のアメリカの豊かな生活を映画で見て憧れたが、自分の生活とのあまりの違いに絶望感さえあった。だが憧れを思い描くことで、その世界に行きつけるなら!  私の妄想人生はそこからはじまった。  「自分の人生をどうしたいのか」を描くには、行き着く先のゴール設定が必要となる。  自分はいつ死ぬのか。そのとき、どんな生活をしていたいのか。どうありたいかを決める。そこに行きつくためには、その 10年前にはどうなっていなければいけないか。 20年前には……、演繹法で考える。  その人生戦略のためには、会社の経営戦略をリンクさせることが不可欠で、どちらも単独では成り立たない。社長の戦略の両輪だ。  ゴールに描くものが大きく、現在との乖離が大きいほど、生涯のストーリーは壮大なものになる。  想像するのは勝手だし、金もかからない。  このストーリー、人生設計にどれほど自分が救われたか。「こんなところで躓くわけにはいかない。自分がたどり着くゴールは、遥かかなたなのだから」と、苦しいときにいつも自分を奮い立たせるエネルギーとしてきた。  強く願い、想像力をたくましくし、もがき続けると、どんな窮地にあっても、救いの手が差し伸べられたり、切り抜けられる秘策にたどり着いたりした。私の人生はそんな得難い出会いの連続だった。  正直いつまで生きるかなんて誰にもわからない。でも、死ぬ日をゴールとして決めなければ、今、どこに向かって舵を取ればいいのか迷ってしまう。だからまずは、舵を切る目的地を決めろ!  志はなんだ。社長としての夢・志は大きければ大きいほどいい。そこまでの道が、遠く果てしないほど、描くストーリーは壮大なものになる。人生をかけたストーリーを今日から描きはじめて欲しい。

鬼 100則   03 5年スパンで人生を考えろ  世の中の給与体系としては、時給、週給、月給、年俸制がある。それは、それぞれ採用された人への期待度の違いをそのまま表す。  「時給制」は時間単位の作業業務を要求される。  「週給制」はもう少し長いスパンで、「月給制」はさらに長期スパンで期待され、達成率も期待される。効率を上げ、業務の改善に寄与した者には高い成果が与えられるのだ。  「年俸制」ともなれば、個々の業務より、大きなプロジェクトの達成、組織全体のリーダーシップ、会社全体に貢献する力が求められる。  経営者は、年俸制どころか、「一生涯制」と言うべきだ。より長期のスパンで、より広い視野で全体を眺めることが求められ、個人のみならず、会社、社員全体に責任を負う。  サラリーマンの生涯賃金は半ば確定保証。どれだけ貯蓄できるかを想定し、その中で計画しながら、生活の向上に使っていける。  それに対し、経営者は、たとえある時期、家を新築したり、高価なものを購入したりと、順風満帆の中でいい生活をしたとしても、それらを差し押さえられ、全てを失うかもしれない。  経営者たる者、事業を起こしたはいいが、 1年という短いスパンで自分の人生を、事業を考えるようでは、到底、成功は掴み取れない。生涯にわたる長期スパンで考えなくてはいけない。つまり、「鳥の目で、俯瞰するように一生涯を眺め、事業を見つめ直していく」姿勢が求められる。  死ぬ日を決めて、そこまでの道のりの中で自分の人生のゴール、ありたい姿を定める。そうすればおのずと、現状とのギャップが明確になり、今どうすべきなのかが見えてくる。  人生を俯瞰して眺めるには、 5年スパンが必要。若い経営者でも、これからの経営人生は、わずか半世紀ほどだ。 5年で区切れば、たった 10回の繰り返しだ。  一生涯を見据えて、自分だけの人生設計を作り、そこに自社の経営戦略をリンクさせる。長期の人生設計・経営戦略ができてこそ、そこにたどり着くための道筋や工夫ができてくるのだ。

鬼 100則   04 1日は時計で、年間はカレンダーで、一生涯は人生計画で  時計を見ながら、 1日の進捗をチェック。時計のおかげで、今日も正確に毎日の行動計画が無事消化されていく。もはや私たちにとって時計のない 1日は考えられない。  また、 1年間の行動計画とその進捗は、カレンダーなくしてはほとんどなりたたない。両親、兄弟、友人の誕生日、結婚記念日、入学式や各種試験、会社における年間行事もカレンダーとにらめっこすることで、用意万端が可能になるからだ。   1日は時計の力で、 1年間はカレンダーの支えで、とりあえずつつがなく人生を、そして経営を前進させられる。  だが、人生そのものは 1日や 1年間よりもっと長期、かつ、二度と繰り返せないかけがえのないもの。だとすれば、将来こうありたいという私たちの一生涯についての尺度は、何を支えにすべきか、何を拠りどころにすればいいのか。  それがまさに、人生の夢を託す人生計画、人生戦略だ!経営戦略そのものだ!  誰もが「充実した人生を」と願いながら、節々で喜びと悲しみを受けとめ、山あり谷ありの人生の森羅万象に立ち向かい、生涯をかけて戦い抜いていかなければならない。その覚悟に立って、自分の夢は?志は?家族は?社員は?などと、今一度原点に立ち戻り、静かに思考してみよう。そして、人生計画を作りあげよう。  偉大なる成功者ポール・ J・マイヤーは、「鮮やかに想像し、熱烈に望み、心から信じ、魂を込めた熱意を持って行動すれば、何事も必ず実現する」と説いたが、人生は夢、志であり、挑戦であり、格闘技である。途中で心が折れたら負けだ。  だからこそあなたには、唯一無二のオンリーワンの自分だけの壮大なスケールの人生計画を描いて欲しい。そして、「私には人生戦略がある、経営戦略がある」とのゆるぎない決意と覚悟をもとに、壮大なドラマの主人公として活躍して欲しい。  かけがえのない家族や大切な社員たちは、ときに不安にかられながらも、目を輝かせながら進路を切り開いていくあなたの後ろ姿を、期待を込めつつ、じっと見つめている。  だからこそ、人生計画を描き、何度も練り直しながら、人生中盤もしくは後半で必ずたどり着けるであろうその日まで、ネバーギブアップ。

鬼 100則   05人生・経営をいかにデザインするか  金融資本主義から情報資本主義の時代へ。そして今や、さらにデザイン資本主義と言われる中、シリコンバレーでデザイナー出身の経営者や幹部がヘッドハンティングされている。なぜ、今デザインなのか?ことの発端はスティーブ・ジョブズらしい。  アップルはデザイン技術に莫大な投資を続けている。商品そのものはもちろん、一つ一つの部品やケース、果ては小売店での売り方まで細かく規定する。 iPhoneの化粧箱には 600円ものコストをかけており、たかだか化粧箱だがなかなか捨てがたい面構えだ。アップル商品の出現により、家電商品にまつわる種々の常識が次々とくつがえされた。  新製品販売と共に、取扱店全ての店頭に商品が展示されるのが通常だが、 iPadなどは販売許可制だったため、当初は四国最大店舗の我が社の高松本店でさえも売ることが許されなかった。ようやく、許可された岡山本店に個人的に発注しようとしたが、「購人者との面談が義務づけられているので売れません」とのこと。当時社長であった私は高松からわざわざ岡山まで出向いて、面談の末やっと念願の品を手に入れることができた。さらに店では専任の担当者をつけ、特別ブースを作るよう指示された。しかも販売価格の値崩れもしない。一商品が川上から川下まで、メーカーに完全にコントロールされたのだ。  一商品のあらゆる工程を全て包括してデザインしてしまうセンスとパワーだ。日本でも川上から川下までの全てをデザインするアイリスオーヤマ、ニトリ、ユニクロ、無印良品の躍進には目を見張るものがある。  一つ一つの個別のテーマに一喜一憂するのではなく、大きな志と覚悟で企業全体を今一度見つめ直し、包括的にデザインしてサクセスストーリーを追求する。これからの時代は、人生戦略も経営戦略も、経営者が自分自身そして企業をいかにデザインするかがテーマだ。そのデザイン力が会社や商品、さらにはその人の人生までも決定づけてしまうのかもしれない。  私にはデザインのセンスなんかないと決めつける前に、今一度心から成功を願い、自らを鼓舞しながら、自分の一生、自社の経営、商品、販売方法、社員の働き方や地域とのかかわり方に至るまでの全てを、じっくりデザインし直してみよう。何かが見えてくるかもしれない。

鬼 100則   06大ピンチは神様のテスト戦略パワーでリベンジせよ  私の六十数年間は、ピンチのオンパレードだった。夢が大きすぎる反面、現実が小さすぎたため、そのギャップを埋めようとひた走りに走った壮絶な人生だった。  健康面はどうか。 42歳で脳腫瘍の摘出手術を受ける際、『 11 − 7』の計算もできず、遺言書で子供の名前も書けなかった。遺言書は涙で濡れた。医者からはとてつもないストレスが原因だったと言われた。  せっかく弱者の戦略で合格した大学では留学試験不合格。やむを得ずとった選択肢はヒッチハイクでの無銭旅行だった。 1年間で 24カ国を回り、北極を目指した。ヨレヨレの壮絶な 1年間だったが、今は人生の基礎作りだと自分に言い聞かせ、知恵を働かせることで途中から楽しくなった。  ヒッチハイクでは、順番に並んでいても女性が先に拾われてしまう。そこで地元の新聞社へ行き、 3 ~ 4回の交渉のあげく、新聞に記事として取りあげてもらう。内容は「デンキ店の息子。留学試験に挑むも不合格。そこで、北極めざしヒッチハイク中」、たったこれだけの情報量。ところが、翌日から街の有名人になった。戦略パワーの醍醐味を痛感した。  帰国して就職活動のため履歴書提出。なんと三菱商事や松下電器などが、筆記試験免除の役員面接のみで合格。留学試験に滑って、やむを得ずとった選択肢のヒッチハイクがとんでもなく評価され、スゴイ奴が来たと勘違いされたようだ。その上おまけがついて、入社半年でドイツへ研修生として派遣された。戦略パワーの勝利。一気にブルーオーシャンの世界が広がった。  だが、(夢を見て)四国を離れて 10年、能力、体力、気力に限界をきたし挫折感のまま帰郷した。 3 ~ 4年間は成果の上がらない訪問販売。夢も希望も失くし、もはやドイツも遠くになりにけり、の心境だったが、戦略パワーを思い起こし、「人生戦略 +経営戦略」を練り直して再び壮大なスケジュールを作成した。これは自分がもっと成長できるからこそ神様から与えられたテストなのだと考え直したのだ。  神様のテストは繰り返され、どんどん難しくなっていったのだが、一つ一つ乗り越えていった。  ピンチは成長のチャンス。乗り越えるたびに一回り大きく成長できるのだ。

鬼 100則   07世界の偉人が教えてくれる金言集  小学生の頃、映画を見てアメリカの豊かな生活に衝撃を受けた。庭つきのしかもプールまでついている広い家。同じ人間なのに、なぜこんなにも住む世界が違うのか。  即座に、「海の向こうには、本当にこんな世界があるのだろうか。もしそうなら、自分も将来は海外に行って、こんな暮らしがしてみたい」と思った。  当時、自分の家と言えば、地元の香川で 1軒 1軒を御用聞きに回る電器店。繁忙期には人手が足りず、小学生の私もよくテレビのアンテナ立ての手伝いに駆り出された。  「電器屋にだけはなるまい」と心に決めた。映画の中の憧れの暮らしを胸に、「東京で語学を勉強し海外に渡って社長になるぞ」という壮大な夢が広がった。  以来、私の心を占めたのが「海外」であった。格好よく言えば、これが志だった。  そのためにはどうすればいいんだ。  上智大学で語学を学ぼう。そして留学だ。一流会社に入ってまずは海外駐在員になるぞと決めた。  前項でも述べたが、留学の夢は試験不合格で叶わなかったため、その代わりにヒッチハイクで 24カ国を無銭旅行した。その後、海外赴任のできそうな三菱商事と松下電器を受けると、超ユニークな逸材と勘違いされたのか、筆記試験は免除、役員面接のみで両社共、合格。松下電器の入社同期 1000名の内大卒 450名中の 10名に選ばれ海外特別研修生となり、入社半年目にドイツ駐在員に。  世界の偉人たちは言う。・人類を支配しているのは想像である。(ナポレオン・ボナパルト)・夢、これ以外に将来を作り出すものはない。(ヴィクトル・ユーゴー)・想像は知識よりも重要だ。(アルバート・アインシュタイン)・夢見ることができれば、それを実現することができる。(ウォルト・ディズニー)・想像力は万事を左右する。(パスカル)・君の人生は、君が思い描いた通りになる。(ポール・ J・マイヤー)  偉人たちが言うように、現状がどうであれ、そんなことはお構いなしに未来に向かって想像せよ!  いや妄想せよ。壮大な夢、大きな志が、人生の全てを決めるのだ。

鬼 100則   08早すぎる成功は命取り  誰もが成功を夢見て、人生のかけがえのない時間を懸命に走る。  ときに本人の努力やスキルだけではなく、時代の風や周囲の環境のあと押しがあり、さらに運が味方に加わって見事な成果を上げることがある。人によっては早すぎる成功を手にする。ヒーローの誕生だ。周囲はもてはやし、自分自身も特別な星の下に生まれたのかもしれないなどと独り高揚してしまう。  だが、艱難苦渋にさらされながら自らを磨きあげることもなく、あるいは山あり谷ありの人生の辛酸をなめることもなく、たまたま成功を手にしてしまうと、やがて未熟さが随所に頭をもたげる。時間と共に理想と現実のギャップが大きくなっていくのだ。  いくつもの山あり谷ありの中、人はそのときどきの試練の洗礼を浴びながら成長する。その過程で出会う一つ一つの事象から決して逃げず、またおろそかにせず、むしろ貴重な経験として脳裏に刷り込み、体に刻み込んでいく。だからこその〝人生の成功〟である。  壮大な人生の目標を前に必要なのは、どんなことにも折れず、また驕らず、〝今はいつでも途中形〟と考えることである。そう思えば、人生の成功を焦りすぎることもない。焦りは命取りだ。スピード違反はいずれ逮捕されてしまうのだ。  焦りをなくすためにいい方法がある。一生涯の夢、志を確定し、一生涯の年表をとりあえず作ってしまうのだ。まず、現在に至るまでのこれまでのいきさつを、できるだけ詳細に年表に書き込む。次に、とりあえずの自分の命日を確定し、命日までの 10、 20、 30年間の空白を未来から順に埋めていくのだ。  そして現在の地点にたどり着いたら、今度は現在から未来に向かって、自分の年表に修正を加えていく。一つの歴史絵巻のように、自分の一生涯を上空から俯瞰するのだ。  そして、映画監督か作家にでもなったつもりで、人生のどこの場面で、どんな手を打って、どううねらせるかなどと、自分の一生涯を詳細に描いていく。  すると、人生のゴールを見据えた自分の今のポジショニングがわかり、焦りが消えて、毎年やるべき手順が見えてくる。つまり、 5、 10年後のありたい姿を実現するために今何をなすべきか、どれくらいのスピードで今のテーマに立ち向かえばいいのかがわかる。  焦ってはいけない。早すぎる成功は、逆に後々命取りになるのだから。

鬼 100則   09成功の物語を学べ  世の中の流れやビジネスに新たな変化の「兆し」を捉えた際に大切なのは、捉えた「兆し」を分解したり、そこに何か他のものをつけ足したり、ひねくり回したりなどして、少しずつ「新たな種や芽」にしていくパワーだ。これをシミュレーションパワーと言う。  想像力どころか妄想力までを総動員して、「新たな種や芽」をさまざまなパターンでまとめ、それらについての可能性を探りまくるのだ。  この妄想をかきたてるのに大いに役に立つのが、数々の筋書きのあるドラマや現実のビジネスでの成功物語だ。ハリウッドのアカデミー賞にノミネートされた世界中の力作映画、歴史物語、偉人伝などでもいい。さまざまな時代のさまざまな人が、悩み、苦しみ、苦難を乗り越えて大成功にたどり着くストーリーを学ぶのだ。  現在進行形のビジネス世界でのうねりも大いに役立つ。アップルのそっくりさんを狙い、大模倣してきた中国の小米科技(シャオミ)は、今や 3兆円企業。起業の原点がアップルのパクリだから徹底している。  他方で、パクられた側のアップルのジョブズ本人の言葉が振るっている。  『「ピカソは、優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」と言った。だから僕たちは偉大なアイデアを盗むことに関して恥じることはなかった』と。  成功者のアイデアを盗み、そこに自らのアイデアを加え、さらにシミュレーションパワーを発揮させることで、将来の成功に向けた自身の壮大なストーリーができあがる。  場数を踏んで数多くの経験値を積み重ねた人や、世界中のストーリーを繰り返し学んできた人は、自身の能力の何十倍もの広くて深い、恐るべきシミュレーションパワーを発揮してきた。  自身のポジショニングを冷静に見つめ、あるべき姿を手に入れたいと心から願う人は、「兆し」に気づきやすく、シミュレーションパワーを発揮できる。即ち、自分自身の抱いている夢が大きく、志が壮大であればあるほど、シミュレーションパワーを全開にできる。  あなたも、今一度自身の志を構築し直してみてはどうか?

鬼 100則   10 5、 10、 20、 30年計画の人生戦略でサクセスストーリーを   02項でも述べたが、人生の最終ターゲットは、「自分の命日の設定」からはじまる。  命日が仮に 90歳だとして、 60 ~ 90歳の 30年間のありたい姿は何か。その間に、家族はどんな環境下にあり、誰とどこでどんな風に生活しているのか。  「人生の最終章」は静かに穏やかに、しかも健康に過ごしたい。  仲間と一緒に自分の趣味を生かしたボランティアに励みたい。  年に何回かの温泉旅行にも行きたい。  月に 1回は家族全員が集って、子や孫にお小遣いを渡し、財産分与を少しずつ進めたい。  このような、ゆとりある生活を送るためには、生活の原資はどれくらい必要だろうか。 60歳、または 70歳で果たしてどれほどの財産ができているだろうか。  現金、土地、株、金、外貨、年金、そして借金はなどと考えてみると、どう考えても十分ではないとわかる。もっとゆとりが欲しい。  次善の策として、 60 ~ 80歳の 20年間で生活費のために切り崩すはずの必要資金を稼ぐ。すなわち 80歳の時点で、または 70歳の時点でそれまでの財産をキープしている作戦だ。そのためには生活費分を稼げる自分に合った最後のビジネスが必要。  これまでの人生で培ってきた知識や技術・ノウハウなどを活かせるビジネスが望ましく、これはその後の生き甲斐にも直結する。  私にとってそれは「中小企業の業績改善」というコンサルタント業であった。これはこれまでの経験やノウハウを活かしながら企業の業績改善に取り組むことで、自らの使命感を満たすことができ、かつやり甲斐を感じられる仕事である。しかもその収人により、今まで以上の生活レベルが維持でき、財産も減らない。  あなたにとってそれは何か。 40代・ 50代で日々の経営と戦いながら、 50代のうちに、その答えにたどり着いていって欲しい。   60代になって何をしようかと考えはじめてももはや遅い。余力のある元気な内に 10年後のための基礎作りに励んでもらいたいのだ。

鬼 100則   11健康でなければ成功はできない  経営者にとって健康維持は欠かせない。成功のための必要条件だ。  かつてベルリン大学で「人生戦略」の講演を行った際、学生からは好反響を得たが、ただ 1点、健康の話がないと言われてしまった。幼少期から体の弱かった私にとって、実はこの点はウイークポイントであった。  奮起一転、それから 15年間、私は健康になるための情報を収集し、あらゆるテーマを探った。   60代で「真向法体操」(体の柔軟性を4つの動作で手に入れるもの)に取り組み、苦節 10年の末、三段の免状をもらった。  血管年齢はなんと 50代。加齢と共に弱くなるとされる骨に関しては、食事に留意したが、いくらカルシウムを摂っても太陽光を浴びなければ効果のないことを知って以降、機会あるごとに、パンツ 1枚になって、日光浴に勤しんだ。 7 ~ 8年前に、東大病院の検査で骨密度に異常値が出たと話題になった。なんと骨密度が 30代だと言うのだ。  しかし、これには欠点もあった。太陽光をダイレクトに浴びすぎ、顔がシミだらけになったのだ。塾生の紹介でシミ取り専門のクリニックで 2 ~ 3回施術を受けた結果、ほとんどシミがなくなった。自慢げに塾生に告げると、驚かれるより「その年でよくやりますね」と呆れ果てられる始末。  ことほど左様にベルリン大学での一件以来、私は「体力増強・健康戦略」を組み立てコツコツと実践してきた。  例えば、食事については糖質を減らし、納豆や黒にんにくを食べて腹七分にして、毎回 20回かむ。ちょっとした時間を使って自転車 15分、リフト 30回、腹筋 30回などと運動を行う。時間を見つけては、早朝、友人と小山登り、栗林公園の散策、東京ではマンション内のジムへ週 2 ~ 3回通う。  当然、今年も新たなテーマにチャレンジしている。

敵に勝ったからとて勇者ということはできない。己に勝ったときはじめて真の勇者と言える。トーマス・ブラウン(作家・医師)大切なことは、大志を抱き、それをなしとげる技能と忍耐を持つということである。そのほかはいずれも重要ではない。ウォルター・スコット(詩人・小説家)

鬼 100則   12新しい国作りをスタートせよ  かつて欧州ではペストが猛威をふるった。その結果、教会の絶対的権威は地に落ち、封建社会が崩壊してルネッサンス時代が花開く。  当時の日本は、黒船の襲来により幕府は大混乱し、その後、明治維新へと向かった。  今回は、世界中が大混乱に陥った何百年に一度のコロナ禍騒動により、永年積み上げてきた人類の成果が音を立てて崩れ落ちた。国も人々も戸惑い、動揺し、振り回された。  我々中小零細企業とて例外ではない。有効な手も打てないまま、公的資金に必死にすがりつくしかなかった。  こんなとき社長たる者はいかになすべきか。社員は期待と不安がない交ぜになった気持ちで、社長の背中をじっと見つめている。ここで社長の心が折れたら万事休すだ。  社長自身がカッと目を見開いて前を見つめ、自分を磨きながら 1歩 1歩前進しなければならない。その姿に社員は、その家族と共にホッと胸をなで下ろし、将来に希望をつなぐ。だから、「今の姿は単なる途中形」と割り切ろう。明けない夜はないと信じて。  どんなに厳しくとも大切な会社と社員、その家族のためにも、未来を信じて自分を鼓舞し続けるのである。会社と社員、その家族を守るリーダーとして、臆することなく社員に新たなビジョンを語り行動を開始しよう。  この際、古い過去とはスッパリ決別し、これまでの全ての棚卸しを行い浮かび上がる課題と向き合うのだ。そして、これからの 5、 10、 20年のための〝新たな価値創造〟に取り組むのだ。  具体的にはまず、自分の人生、自社、経営に対する志・夢について、今一度総棚卸しを行い、課題に関するあらゆる情報を集めて組み合わせ、分析し、シミュレーションを繰り返す。特に経営については、そうやって何度もビジネスモデルを磨き直すのだ。  どんな課題でも、それが「過去の思い出の 1ページ」になる日が必ずやってくる。コロナが開いてくれた新しい世界で、世界中が一斉に新しい国作りをスタートさせた。   100年に一度のビッグチャンスだ。さあ前に向かって足を踏み出し、覚悟して実行に移していこう。

鬼 100則   13蛻変せよ(脱皮・変身・成長)  長い人生の中で 3年 5年あるいは 10年ごとに大きく変化したり、成長するときがある。逆に、大変なピンチに見舞われることもしばしばである。多くの人がこのときに勇気を失う。  だが、会社や社長自身の成長は、実はこのピンチをいかに乗り越えるかにかかっている。  「蝉のように私たちもそして企業も、絶えず変化する社会環境のもとで、本来は意識的に脱皮・変身・成長を遂げていかなければならない」(帝人株式会社元社長  大家晋三)  そのときに蛻変しなければ、あとは死を待つのみだからだ。  しかし、「蛻変のチャンス」は神様のテストという形で訪れることが多い。私の場合、人生の最大のピンチと思われることが十数回もあった。そのうちのいくつかを紹介する。 ①出店 4日目に妨害に遭い開店記念セール中にクローズ。社名変更に伴い、看板、名刺、書類全てを作成し直し ②新店が水没し 2億円の損失 ③超大型ライバル店の怒涛の如き出店により、半年以上、毎月赤字 ④電機商業組合の反対に遭い、逆風の中で高松 1号店を出店 ⑤ 42歳で脳腫瘍手術  私はその都度、絶望のどん底に落ち込み 1人悩んで苦しみ、神様を恨むほどだった。  だが、私には、社員という仲間がいた。ベクトル会の同志たちと悩み、リベンジの策を練った。さらに店長たちを集め、密議を繰り返し、方策を決定した。最後に全社員を集め、あるいはさらに各店を回って 1人 1人の手を握りながら協力を懇願した。「 ○ ○君、頼む!  何としてもリベンジしたい。皆と一緒に立ち上がってくれないか」と。  今にして思うのは、数々のピンチがなかったら、これほどまでに社内の団結力が広がることもなく、会社も私も社員もここまで成長しなかったということだ。ピンチはやはりチャンスだったのだ。神の与えた試練を乗り越えながら、脱皮・変身・成長を繰り返す蛻変の歴史こそが人をたくましく鍛えあげる。  大きな志のない人は、大きく変わろうとする決意や覚悟に乏しい。だから成長のための節目やチャンスに巡り合うことも少ない。  ピンチが背中を押してくれた今、あなたのビッグチャンス、蛻変は今なのだ!

鬼 100則   14高い志・夢の実現を血反吐を吐くくらい求めよ  自らの置かれた環境は人によってさまざまであり、能力も考え方もしかりである。しかし、それだけで成功、不成功が決まるわけではない。環境が良く、能力に恵まれたために大成功する人がいる一方、同じ環境や能力でも失敗する人がいる。他方、環境が悪く、能力にも恵まれていなかったのに大成功する人もいる。  なぜ、これほどまでに差がつくのか。  成功している人の共通点は、まず第一に大きな志と夢をしっかりと描いていることだ。さらにその実現を、半端ではなく心の底から願っている。しかもそのときがいずれ来るのを信じ込んでいる。そのため、小さなことにも徹底して努力を積み重ねる。  「徹底こそ、全ての成功者が共通して持っている特質である。才能とは、無限の努力ができる能力のことだ。全ての偉大な業績は、微小な細部にまで至る配慮と、無限の努力のたまものである!」(エルバード・ハバード)  まさに松下幸之助さんの言う「成功するまで努力せよ」である。  成功者には長期的視野で物事を見られる人が多い。直近のささいなことも成功に至るために必要なテーマとして捉え、心を砕く。つまり、成功のためのあらゆる可能性にチャレンジし、小さなちょっとした事象も何かの兆しと捉え、極大化してシミュレーションする。それが成功のための大きなきっかけになり得る。  聖書に収められた「求めよさらば開かれん!」である。  心から強く求めよ。半端なく求めよ。そうすれば幾度となくチャンスを掴むことができる。  掴み損ねても、失敗しても、挫折しても、ネバーギブアップ。多くの失敗の積み重ねが、やがて組み合わさって実力となる。  成功したときの自らの姿を明確にイメージし、そのときを手中に納めるまで兎にも角にも前進あるのみ。いずれ勝利の神があなたに微笑みかけるときが来る。  「志と覚悟」が未来を決定するのだ。

鬼 100則   15社長の軸がぶれないようにするには  一度決めたことを続けられない社長がいる。  社長の決定に対して、誰かから反対意見やクレームが出ると覆してしまうのである。  社長が決めた方針や事柄に基づき走り出していた他の社員たちは、突然の変更により、それまで進めていた業務に大ブレーキをかけられてしまう。これでは、業績はもちろん社員のモチベーションまで大きく下がってしまい、社員の社長への信頼を失墜させる。結果、社長は求心力を失ってしまうのだ。  意外にも多くの社長がそんな決断や発言をしてしまっている。なぜ、こんなことが起きるのか。それは社長自身に〝軸〟がないからだ。仮にあったにせよ、経営を長期スパンで見ていないために、〝軸〟がブレブレになっているのだ。  では、どのようにすれば社長が社長としての軸をぶれさせずに決定し、実行・継続できるようになるのか。  まずは、生涯をかけてどんな自分でありたいか。何を手にしたいか。社会に対して何ができるようになりたいかなど、生涯の夢・志・ミッションを確定することだ。  「志」を固めたら、次に、具体的なアクションプランを作成する。人生のいつまでに、どうあらねばならないか、そのためには、いつまでに何を行うかという成功への工程表を作成するのだ。  工程表で人生のゴールまでの長い道のりを眺めながら物事を判断すれば、目標に到達すべき道筋がはっきりしているため、「今はいつでも途中形」と落ち着いていられる。  日々の目の前の仕事に忙殺される中、ゴールがなかなか見えてこない焦りから、知らぬ間に未来に向けた「志」を見失ってしまいがちだが、何があっても絶対に「志」を捨ててはならない。そういうときは一度落ち着いて工程表に目を通してはどうだろうか。  日常的な課題やテーマに関しても、経営人生の長期の計画を土台としてシミュレーションを行う。そして、社員個々の意見を聞きながら判断材料を広く集め、テーマに関連する戦略を緻密に練りあげていく。そして力強い社長の決意のもと、戦略を実行に移していく。  社長が軸をぶれさせることなく成功の道を突き進むために必要なのは、「志」とそれを具体化させた「工程表」なのである。

鬼 100則   16セレンディピティの魔力  偶然、不思議に幸運を掴み取ってしまう能力のことをセレンディピティ( Serendipity)と言う。  四十数年前、まだ私が経営していた会社が 2店舗のとき、帳票類の電子化を計画した。そこで、当時 500万円でコンピュータの導入を計画した。ソフトだけは自前で作りたかった。だが、これは難問だった。私は悩み苦しみながら、こうなって欲しいと、夢の解決策を心から渇望した。  ある雨の日、雨合羽に身を包んだ青年がオートバイに乗って注文したコンピュータ関係の本の配達に来てくれた。本を受け取ったが、彼はその場を去らずにモジモジしながら、なぜか「コンピュータ」とつぶやいた。思わず、「君、コンピュータわかるの?」と聞く。かろうじて聞き取れる声で「ハイ好きです」と小さく答える。稲妻に打たれたようなショックを受けた私は、すかさず質問を畳みかける。最低限しか答えない彼から引き出したのは、国立大学の物理学科卒業という答え。  「すぐ辞表を出して明日から来なさい」と言い、その後、彼は電算担当となった。  半年後、私がのどから手が出るほど待ちに待った帳票類と給与システムが遂に完成。自社制作だからいつでも思い通りの変更が可能。我が社が四国で本格展開する直前の電算体制の確立が叶い、その後の発展を支えてくれた。  偶然の出会いのもと、彼 1人で、我が社のあらゆる帳票類はもとより給与システムなどの全てを構築し、退職するまで電算室長を務めてくれた。驚くべき出会いに改めて感謝したい。  これまでにも私が大きな壁にぶつかる度に、白馬の騎士のように、手助けしてくれる人がスーッと現われる。私はとんでもなくついているのだろうか。それもあるが、ちょっと違う。難問を抱えたとき、あらゆる出来事や出会いにヒントを求めたのだ。すると、まるでドラえもんの秘密道具のように答えが言い寄ってきた。  あのときも、「コンピュータに囲まれた電算室」を夢見ていた。  人生の課題、夢への階段を常に目に見える形にして、絶えず問題意識が浮かび上がる状態にしておけば、節目節目で素晴らしい出会いに恵まれるということだろうか。

鬼 100則   17成功体験はいずれ足枷になる  塩野七生著『再び男たちへ』(文藝春秋)には、次のような歴史の教訓が書かれている。  「盛者必衰がなぜ歴史の理になるのか。興隆の要因であったのと同じものが、ある時期を境にして衰退の要因に変わる。競争の次元が変化したことによってそれまでの成功の要因であったもののほとんど全てが、否定的な足枷に変わってしまう」  これまでの成功要因が否定的な足枷に変わってしまった結果、盛者が衰退していった事例は枚挙に暇がない。  駅前留学で有名な NOVAは、割賦販売での前金収入により、多額の回転差資金を手にした。しかし、その魔力に魅入られて次々と投資を行い、破綻の道を進むことになった。  三陽商会は、バーバリーという超有名ブランドの力で大成功を収めた。しかし、いずれブランド契約の期限切れが来ることをわかっていながら、ブランドとの何十年間の関わりの中で構築されてしまった世界から脱却できず、窮地に陥った。  私の場合、〝兆し〟を捉えて、それまでの成功要因を次々と捨てたおかげで、〝衰退の道〟を歩まずに済んだ。  最盛期のマツヤデンキ躍進の要因は大型店舗規制法案に守られたことにあった。 500 ㎡以上の店舗が出せないときに小型店で全国展開を行い、大成功を収めたのだ。  しかし、大型店舗規制法案という岩盤規制が崩れる〝兆し〟があったのだ。それをいち早く捉えていた私は、行動を開始していた。我が社はフランチャイジーとしてマツヤデンキに参画しており、 96社の中で売上 1位であったが、その座を捨て、北関東で Y社、 K社の安売りの逆風を受けていたカトーデンキ販売株式会社と提携して大型化の道を歩んだ。  その後、アメリカからの外圧により、大型店開設が認められるという大変革が起きた。すると、数年で全国に大型店が乱立。小型店展開での大成功要因に呪縛されたままのマツヤデンキに危機感はなく、外的要因の大変革に合わせた身を切る改革に舵を切れなかった。  結果、 1000億円の売上を達成し、 400店舗を擁した一部上場企業のマツヤデンキは、市場から消えた。  成功体験に酔うことなく、常に次のステージでのチャレンジを繰り返すのだ。いつでも今は途中形なのだから。

鬼 100則   18オドオド・ビクビクの経営  千利休の「人の行く裏に道あり花の山」という言葉がある。要は、多くの人が取るのと反対のところに価値を見出すということだ。  生来、体が弱くそれでいて際立った能力もなく、どちらかと言えば弱者の側に分類される私は、人と同じ道を歩んだのでは到底勝ち目がないと思った。  これを「弱者が強い者に勝つ戦略 =弱者の戦略」と名づけ、私は「人の行かない道、それも確実に成功する道」を探し当てて、そこを歩んでいこうと努力した。自信のある人にはむしろ気づきにくい戦略かもしれない。私の多くの成功は、全てこの戦略がもとになっている。そして、この戦略を支える哲学、即ち経営信条として大切なのは「オドオド・ビクビクの経営」ということである。  なまじ能力があって特別な成功経験を一度でも味わうと、人はこれが「自分の実力だ」と錯覚し、その後とんでもない事態に陥り、没落していった例は枚挙に暇がない。最初に成功するとそのあとが怖い。強さがかえって足枷になるものだ。このことから私は、少々の成功があっても、徹底して「弱者の戦略」を貫いた。  忙しい会社社長でありながら、よく協会の名誉職的な仕事を引き受ける人がいる。「オドオド・ビクビクの経営」を信条とする私は、いつも「ただいま戦争中」として、やんわりご遠慮申し上げてきたものである。  私も何もしない訳ではなく要所要所で役割をうまくこなしてきた。しかし大きく引き受けてしまうと、自社の仕事に専念できなくなるからだ。  確かに協会の理事長ともなれば箔がつき、自分への信頼が増したように思うが、会社の利益とは何の関係もない。現に、とある組織の理事長の何人かの会社が倒産していった。  社会貢献というなら、成功の暁に一気に資金を使ってボランティアをやればいい。  失敗は成功のもとという。だが、後半の人生は速い。歳を取るほど時間の流れは速くなる。  弱者の私にはそんな余裕はなく、どこまでも「オドオド・ビクビクの経営信条」をベースに、いついかなるときにもクールさを失わず「弱者の戦略」を貫いてきたのである。

鬼 100則   18オドオド・ビクビクの経営  千利休の「人の行く裏に道あり花の山」という言葉がある。要は、多くの人が取るのと反対のところに価値を見出すということだ。  生来、体が弱くそれでいて際立った能力もなく、どちらかと言えば弱者の側に分類される私は、人と同じ道を歩んだのでは到底勝ち目がないと思った。  これを「弱者が強い者に勝つ戦略 =弱者の戦略」と名づけ、私は「人の行かない道、それも確実に成功する道」を探し当てて、そこを歩んでいこうと努力した。自信のある人にはむしろ気づきにくい戦略かもしれない。私の多くの成功は、全てこの戦略がもとになっている。そして、この戦略を支える哲学、即ち経営信条として大切なのは「オドオド・ビクビクの経営」ということである。  なまじ能力があって特別な成功経験を一度でも味わうと、人はこれが「自分の実力だ」と錯覚し、その後とんでもない事態に陥り、没落していった例は枚挙に暇がない。最初に成功するとそのあとが怖い。強さがかえって足枷になるものだ。このことから私は、少々の成功があっても、徹底して「弱者の戦略」を貫いた。  忙しい会社社長でありながら、よく協会の名誉職的な仕事を引き受ける人がいる。「オドオド・ビクビクの経営」を信条とする私は、いつも「ただいま戦争中」として、やんわりご遠慮申し上げてきたものである。  私も何もしない訳ではなく要所要所で役割をうまくこなしてきた。しかし大きく引き受けてしまうと、自社の仕事に専念できなくなるからだ。  確かに協会の理事長ともなれば箔がつき、自分への信頼が増したように思うが、会社の利益とは何の関係もない。現に、とある組織の理事長の何人かの会社が倒産していった。  社会貢献というなら、成功の暁に一気に資金を使ってボランティアをやればいい。  失敗は成功のもとという。だが、後半の人生は速い。歳を取るほど時間の流れは速くなる。  弱者の私にはそんな余裕はなく、どこまでも「オドオド・ビクビクの経営信条」をベースに、いついかなるときにもクールさを失わず「弱者の戦略」を貫いてきたのである。

鬼 100則   19目前のテーマを極大化してシミュレーションせよ  課題に直面したとき、人は右か左か大いに迷う。だが、何度も繰り返し迷いまくるより、まずはテーマを冷静に分析しよう。  すぐに答えを出さず、なぜこうなったのか?その原因は?さらにその原因の原因までじっくりたどる。すると、考える工程でいろんな可能性があぶり出される。考える過程そのものが社長の実力を磨きあげてくれるのだ。だから、決して妥協せず自分と戦って欲しい。  この課題は事故か?担当者のミスか?担当者と仕事のミスマッチなのか?はたまた上司の無関心や指導不足なのか?というように課題と真剣に向き合い深く考え抜く。  これは神様のくれたテストであり、社長の実力磨きのビッグチャンスだ。神様はこの人物を一生涯のうちにどこまで上り詰めさせるかを見定めるテストを連発してくる。ならば逃げるわけにはいかない。逃げることは人生の成功から遠ざかることになるからだ。  考えるうちにさまざまな原因に思いあたる。そして、その一つ一つについて対抗策を考えてみる。まずは、解決したときのありたい姿をイメージする。そしてその姿に結びつくさまざまな策をシミュレーションする。そのときに大切なのは、目前に見えるテーマを数倍から 10倍の姿に極大化してシミュレートしてみることだ。  今 2店舗を展開する社長がさらに 1 ~ 2年内に出店したいと考えたとする。そのとき、まずは足元を冷静に分析する。過去 10年の 1店当たりの利益を算出してみる。もしこの数字が 100万円や 200万円なら収益力は最悪。人件費や家賃が高すぎるのか、社員 1人当たりの貢献利益が限りなく低いのか、そもそもビジネスモデルに問題があるのではないかと考える。  このままでは、 3店舗目でリベンジの可能性はまずあり得ない。技術力・商品力・社員力・立地・オペレーションそして社長力も含め、全てにわたってまだ未熟だと数字は物語っている。この状態で出店するとトラブルが続出。社長や社員も耐え切れず順次閉店ということになりかねない。出店とは全ての面で現状よりさらに薄まることなのだ。安易な出店の結果、惨憺たる状況に陥ることが容易にわかるだろう。  課題に直面した場合、情報を集め、現状を分析し、深く考え抜き、さまざまな場面を想定し、極大化してシミュレーションしてみる。すると必ず何かが見えてくる。

鬼 100則   20決断は時折歴史に学ぶ  判断に迷ったとき、社長はたった 1人の小さな頭と体験で物事を判断する危うさに直面する。そんなとき参考になるのは、古今東西のしかるべき人が全身全霊を傾けていかにして判断し決断したかだ。  何かに悩んだとき、時間の余裕がある場合、私は、 20年間にわたって録画収集した『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』『プロジェクト X』『その時歴史は動いた』などの中から適当に取り出してポイントだけを早見する。  中国や日本の歴史物語をはじめ、アカデミー賞ノミネート作品なども DVDで入手した。多くのケーススタディーが、想像を絶する迫力をもってこれでもかと迫ってくる。   1人で必死につむいできた歴史は、それがたとえどんなに貴重な経験でも所詮 1人分のものでしかない。かつてドイツの名宰相ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったが、歴史から学ぶ「勝利の方程式」は私たち個人の世界を超越している。  多くの物語の中に垣間見ることができる「成功のための兆し」と「失敗の兆候」の狭間で、とてつもないスケールと奥深さを持った歴史上の達人たちが、何を考え、どう決断したのかが非常に参考になるのだ。  世界の偉大な戦略家たちが、知力の限りを尽くして編み出した戦い方、ライバルに勝利するために次々と繰り出されるさまざまな戦略・戦術は、現代にも通じる最高の教材である。私たち中小企業経営者にとって、これらは歴史から学べる経営のための「勝利の方程式」なのだ。  だが、そのようにして導き出された決断を、自分が抱える問題にそのまま当てはめることはしない。同時に、メンターにも意見を求める。そうやって、これでもかと自分の戦略・戦術について精査する。さらに社員や友人たち、家族にも相談して遠慮のない意見を求め、それらも参考にする。  このようにして、自らのポジショニングを冷静に判断しながら、あらゆる情報とリンクしつつ、〝歴史上の勝利の方程式〟を参考に戦えば、相当有利な戦いを進めていけるはずだ。  歴史上の人物や世界の知将をブレーンに抱えて戦えば、勝利の女神はきっとあなたの戦いに微笑んでくれるに違いない。

鬼 100則   21群れるな!とんがれ!ファーストペンギンになれ!   LINEでつながる小中学生。特に親しい人 5 ~ 6人のサークルは結束も固い。親に話せないことも話題にのぼる。そこで重要なのは誰がリーダーかということだ。チームはリーダーのカラーに染められていく。そして何事も「皆と一緒にそこそこに」が是であり、自分 1人だけの突出は許されない。  経営者も似たり寄ったりだ。長いつき合いの中でお互いの長所短所も知り尽くし、関心事も同じで、悩みも似ている。いわゆる気心の知れた経営者仲間に囲まれると、なぜかホッとする。  各種経営者団体では、一つの旗印の下、月に 1回または週に 1 ~ 2回集まって各種会合を開いて会員増強月間などを設け、仲間作りに力を入れる。一つの団体ならまだしも3つも4つもかけ持ちで参加する社長もいる。  頑張りの甲斐もあって、下積みも早々に卒業してグループ内で出世。各グループ会や分科会の運営から資料作り、講師の手配。参加者が少なければはっぱをかけ合い、社長自ら毎日何十件もテレホンコール。会勢が拡大し、社長の会におけるポジショニングが上がっていく。  だが、その度に、社長の外部滞在時間が増えて行き、必然的に社内での実労働時間が極小化して行く。個々の社員や取引先との話し合い、会社の各種戦略・戦術など一番大切なことに割くべき時間はどんどん削られてしまう。  結局、仲間意識や強い絆が仇となり、仲間の利害に反する単独行動が取りにくくなる。そればかりか、狭い地域での同質経営者の集まりのために、独自性の発揮やとんがりといったファーストペンギンになるためのチャンスが限りなく奪われていく。  グループ活動を通して自らを磨き、会に貢献するという大義と、社内での社長磨き、社員磨きをたくみに融合させて、あるべき姿を追い求めよう。ブルーオーシャンの世界の構築のために。  群れすぎるな。とんがれ。ファーストペンギンになれ。

鬼 100則   22ライバルは自分自身だ  「男子家を出ずれば 7人の敵あり」のたとえにあるように、人生はなかなか思うに任せないものだ。ひどいときには、これでもかとばかりに人生の行く手にブレーキがかかってくる。  一体、誰がこんなにもブレーキをかけてくるのか?ライバルなのか?社員レベルの低さなのか?はたまた異常気象のせいなのか?そもそもお客様の質が悪いせいか。  だが、うらみ節はもういい。もっと冷静になろう。現在の自分の周りを囲む事象の全ては、今日まで、何年もかけて自分がまいてきた種の結果なのだ。  自分自身が考え、悩み、喜びの中で発してきた数々の言葉や行動という種。  あらゆる場所で共に過ごした人々とのやりとりという種。  ビジネスモデルの構築プロセスという種。  これらの中で、その人独自の価値観や世界観が徐々に形成されていく。そして、種まきの過程で少しずつこり固まっていくものがある。社長の「自我」だ。  その「自我」に潜む構成要素のいくつかが、相手の「考え方や価値観」と合わなかったりして、相手との間にズレを生じさせるのだ。まさに、この「自我」こそが物事を思ったように前進させてくれない壁になってしまう。  社員が思ったように動いてくれないと嘆く社長は多いが、社員に八つ当たりしても仕方がない。それは、社長自身の社員に与える影響力の小ささに対する、社長自身に向けた失望の表れなのだ。  社長が自分に合わせさせようと周囲の社員を説得し続けても、効果は少ない。  各々のテーマの中で、人との誠実なやり取りを通して物事を進められるように、自分自身を変えるしかない。気づかないうちに何年もかけて作りあげてしまった自分の「自我」に潜むものを変えるしかないのだ。  これは、長い時間をかけて岩のようにしっかり作りあげてしまった自分との戦いである。本当のライバルは内なる自分自身なの

鬼 100則   23社員に負けろ  社長と呼ばれることにも、そろそろ慣れてきた。お客様が増え、社員が増え、年商もそこそこになった。創業時の大きな志と、燃えるような思い、はやる気持ちも落ち着いてきた。   3 ~ 4年経つと、何かが不足していると思いはじめる。社員と一緒に必死で頑張ってきたけど、少し何かが違うように思える。そうだ、社長としての勉強が足りない。経営計画書も作ってみたい。社員教育はどうすればいいんだろうか……。  そこで社外の勉強会に参加し、初心に返って勉強の成果を少しずつ社内に取り入れる。だが、 5年 ~ 10年のときを経て、再び壁にぶつかる。実はこの壁が、 10年後を占う神様のテストなのだ。  多くの経営者は、ある時点で勢いが止まりはじめたとき、また、どうしても 1、 3、 5、 10億という壁を突き破れないとき、自分にはこのレベルが限界かもしれないと思い、これまで持っていた自信を徐々に失っていく。と同時に、いやこれでいいのだ、この状態を守り抜くのだと、現状維持を肯定してしまう。そう思いはじめたら次第に社内改革から遠ざかり、社員たちとの真剣なやりとりが減る一方で、社外活動の心地よさにドップリ浸かりはじめる。ふと気がつけば、日々の活動の半分しか社内に貢献していない。  さらに、社内で少々頑張っても、壁は 1ミリも動きそうにない。即ち、無駄な抵抗のように思えてくる。経営者がそう思っている限り、社内には何年も停滞が続く。  社員とのやりとりでも、経営者の性が頭をもたげる。特に 1対 1の討論になったとき、社長の立場、常に正しい経営者でなくてはならないと思うあまり、社員に常に勝とうとする。しかし、現場のことは社員の方が詳しかったり、社長が忘れたり、気がつかないこともいっぱいある。何が正しいのか、どうあるべきかに集中して話を進めるべきなのに、社長という肩書が悪い影響を与える。  お互いに喋る時間は、公平に 5: 5にする。部下の目を見つめ、ときにうなずき、ときにメモをとるのだ。社長に聞いてもらえたという手応えによって社員のモチベーションは、アップする。経営者は、ときに社員に負けることのできるパワーを身につけて欲しい。

鬼 100則   24社長は社員を磨く大きな砥石  世の中に何百万とある会社の中で、縁あって入社してきて、あなたと結ばれたかけがえのない社員たち。あなたと出会って何年間か、人によってはほぼ生涯をあなたと共に歩む。社長がそうであるように各々の社員にも夢があり、家族があり、思いがある。  社長のあなたは考えたことがあるだろうか。彼、彼女にとってこの会社は?彼らの上司は?仲間は?仕事は?そして、 3年、 5年、 10年経ち、彼らはどれほど成長し、手応えを感じているだろうか?と。  社員が将来の選択を間違ったのではないかという疑問を抱えながら、仕事を続けているようでは悲劇である。年を追うごとに、この会社に来て良かった、選択は正しかったという確信を深めながら、日々の仕事に邁進できてこその仕事の効率化・生産性の向上なのである。  そのためには、年々少しずつでも職場環境が改善され、社員が自身のスキルアップと仕事に手応えを得られなければならない。さらに、人間関係もまずまずで待遇も良くなったと感じられる会社でなければならない。  そして、社長は社員を磨き続ける砥石役であるべきだ。  社員は、朝礼で、研修会で、会議の席や通達で、社長の発する熱い思いに触発されて、仲間と共に課題に挑み次々とクリアしていく。社長の熱い思いとパワーで社員は切っ先が鋭利に研がれ光り輝いていけるのだ。  そんな社長から時折、直接声をかけられ、たまに 2人だけでメシを食う。社長との長い時間のやりとりの中で気づきを得て、エネルギーをもらう。そんなときの社長は輝いている。この会社に来たことに心から満足し、社長についていこうと思う。ときに苦しんでいる社長の姿や言葉を見聞きした際、何とか社長の力になりたいと思う。  会社にとっての唯一無二の資産は〝人〟。ビジネスの成否は〝人〟で決まる。この〝人〟、即ち、社員を磨きあげてこそ会社の発展はある。  社員を磨くためにも、社長は砥石役として自己改革のための教育に自己投資し、ひたすら自らを磨き続けなければならない。逃げずに自らの成長を強く決意しなければならない。そんな社長の生き様、働き方に社員が触発され、磨かれる。これが真の社員教育なのだ。

鬼 100則   25経営は「社長と社員との格闘技」だ  『ドイツには、パートナーシャフトという考え方がある。  一言で言えば、「個人や人間を中心としたよりよい社会、よりよい人類社会を作りあげよう」という一つの目的のために、労使が共同し、研鑽していこうとするグループ(企業体)のこと。  労使は対等のパートナーであり、企業の中に共感と信頼を基礎にした新しい人間関係を作りあげ、真の共同体(ゲマインシャフト)を築いてゆく』  篠田雄次郎先生(上智大学・故人)の言葉である。  現実には、両者間にはいろいろな溝がある。  特に企業の初期の段階では、社長も社員も経験不足で、軸が定まっていない。  そんなとき、トラブルをきっかけに互いに不信感を抱いたりして、溝が深まる。未熟な社長が、未熟な社員とやり合うのでなかなか噛み合わない。  いつも対等にやり合っていたら、両者間で不毛な戦いが永遠と続く。  社長という立場、肩書きで相手を負かしたのでは社員に不満が残る。社員と、人格は対等、大切なパートナーというスタンスで、社員と正しくやり合うのだ。  話し合いのとき、多くの社長は会話の 7割以上を独占してしまう。ここでも社員の不満が残る。  社長が社員を言い負かして、常に勝ち誇るといった古い体質からはもう抜け出したい。  経営は人次第。この大切な人材にいかにストレスが少なく手応えを感じながら、働いてもらうか。いや、共に働くのか。  経営とは、社長と社員との格闘技だ。この戦いに勝つとはどういうことなのか。それは、社長の思いが社員に伝わり、社員の思いが社長に伝わり、価値観を共有しながら、両者が互いに手を携え前進している、ということだ。  そういう意味で、非常に奥の深い難しい格闘技だ。

鬼 100則   26片目をつぶって社員を見て下駄をはかせる  兄弟、親子、夫婦、どこでもケンカは絶えない。互いに距離が近すぎると、相手の悪いところが見え過ぎるからだろう。もっとも肉親だから、仲はすぐに戻るが……。  中小企業の場合、他人同士でも、社長と社員の距離は限りなく近いため、相手の粗もよく見えてしまう。百戦錬磨の社長からすれば、多くの社員はまだまだ未熟に見える。  だが、社員は社内の事象全てを把握する立場にはなく、ましてや社長のように、外でいろいろな勉強をするチャンスがあるわけでもない。おのずと社長よりも視野が狭くなり、情報量も限られてしまう。  置かれた立場の差から、お互い見える景色も当然違ってくる。だから、社員が社長の期待通りの行動や発言を行うというのはむしろ奇跡に近い。だとすれば、社員を評価するにしても、いくらか下駄をはかせて評価すべし。  松下幸之助は、「人はいいところだけを見て育て、悪いところには片目をつぶって経営する」という趣旨のことを言ったが、社員の弱点や足らないところはときどき片目をつぶってそ ーっとしておく。ときを待ち、時間をかけながら、次の機会に少しずつ注意・アドバイスをしていくのである。  社長が思うに任せて「何度言ったらわかるんだ!もう、そろそろわかってくれ!」と一気に社員を激しく責め立てても、何の効果もない。社員の心の中には、むしろ意味のないことをほじくり返されてひたすら責め立てられても自分にはできない、という劣等感が増すだけだ。  そして、親にも言われたことのない口調で怒鳴りまくる社長を憎悪しはじめ、嫌悪感を抱くや、両者の溝はますます深まり、社員に残された選択肢は退社。社長の考え方や態度が会社の離職率を高くしてしまうだけである。  我慢することも社長磨きの一つと心得、ときには我慢し片目をつぶって、社員とじっくり対峙する。  そんな社長の様子を見て多くの社員は、もっと成長しよう、もっと努力しよう、社長の期待に応えたいと考える。社員にはいつもハンディを与え、ちょっと下駄をはかせて少しばかり大らかにつき合おう。あなたの夢を実現してくれる大切なパートナーなのだから。

鬼 100則   27社員に与える「3つのや」  「我が社は今年こそ、正念場。いよいよ変革のとき。もっと頑張って欲しい」  多くの社長が、新年に、「今年こそ」と檄を飛ばし、社員の危機意識を高め、決起を求める。  社員にすれば、「いつも同じ話を聞くだけ。どうすれば、どんな正念場をどう乗り切れるのか、自分には意味不明。変革を担う場も見つからないし、権限も与えられていない」と思うだろう。  そもそもどう大変なのか。「大変さ」だけを旗印のように訴えられても、社員には手の出しようがない。  社員を戦力化し、変革を迫られる正念場を社員と共に乗り切るには、毛利元就の 3本の矢にならい、社長は「3つのや」を提供することである。  「3つのや」とは、やる気/やり場/やり方のことである。【やる気】を引き出す。これは、多くの社長の得意技。朝礼、総会、部門別会、あらゆる場面で変革への「やる気」の高揚を醸し出す。しかし毎週、毎月、年に何十回頑張れと言われても、社員はどう頑張ればいいかがよくわからない【やり場】の提供。どの場で、どんなポジションで、どんな権限で変革に立ち向かうのかを示す。組織上の活躍の場、人により実際の職場の場所を明確に示す【やり方】を教える。やればより成果が生じ、確信を持てる具体的な手順や考え方、ひいては技術力にさえつながるレベルのことを教える  【やる気】を引き出し、【やり場】を与えられ、【やり方】を知ることで、社員ははじめて納得し心も体も喜びいっぱい、充実感を持って業務に取り組む。  結果、成果が上がり生産性が高まる。  変革の 2文字を何百回も声高に叫ぶのを 10分の 1に押さえ、各部門でのオペレーションをどう良くしていくか、細部にわたり一つ一つ分析してまとめ、考え方や作業工程として実行していくことである。  3つが揃った上で方向が明確になったら、あとは社員のパワーに期待しよう。  社長が思っている以上に社員のパワーはすごい。

鬼 100則   28怒るな、興奮するな、熱く語るより熱く聞け  社長の多くはよく怒る。それに比べて社員は、立場上、よほどのことでもない限り怒ることなどできない。ほとんどの社長には、社内に自分以上の権力者がまずいない。だからこそ誰に気兼ねすることもなく、思うに任せて感情を爆発させる。ときに怒りが納まらず延々と 1時間に及ぶことも。だが、良くないことだなどと、それを叱責する人もいない。  もちろん怒られる理由が明確なときは社員も納得しやすい。だが、社員とて自分のレベル以上のことはできないし、できない要因が他にあるかもしれないのだ。また、社長の誤解や早とちりという場合もある。  社長という強い立場が、必要な情報から自らを遠ざけ、冷静に判断するチャンスを奪ってしまうこともある。だが現在は、社員も PCやスマホや他の媒体、友人たちなどから昔とは比較にならないほど多くの情報を入手し、テーマによっては社長以上に冷静に物事を見聞きしていることが多い。  では、社長は何ゆえそれほどまでに語りまくり、ときに怒ったりするのか。トップである社長には社内の全体像も見えやすく、かつ外部活動も多いため、社内で一番情報が集まる。このような社員との立場の優劣が社長をより雄弁にさせ、熱く語り続けさせてしまう。  こんなとき、社員は皆しらけ、彼らはひたすらときの過ぎゆくのを待つ。しかし、社長が社員に語る目的は一つだ。社員が自分の思いや考えを理解し、共感し、さらにお客様や取引先または部下などにまでそれが伝わり、何らかのいい効果をもたらすことだ。  だから、本当に大切なのは、社長から社員への一方通行ではなく、お互いが言葉のキャッチボールを通して納得ずくで話し合い、理解し合い、社員から次の人にそのことが伝わることだ。そして、社長の志や理念や姿勢などが感動をもって社内はおろか社外の方々にまで伝えられたときにはじめて、社長の語りが意味を持つ。  気づくべきは、一方的な喋りっぱなしは時間の無駄ということ。社長が喋れば喋るほど社員は言いたいことを言わずに終わってしまう。  社長の語りが効果を上げるには、社員の声に耳を傾け、ときに「そうか、そうか」と頷きながら熱く聞くことなのだ。

鬼 100則   29社長の思いつき発言は、社員のやる気を失わせる  時間があるとふと思いついたように社内を、店内を、倉庫を回る社長。何を言われるのだろうかと社員の間に緊張が走る。  「何でここに置いてるの?これをすぐ片づけなさい」「床が汚れてる。すぐきれいにして」「昨日までの達成率は?」「こんな売上では駄目だ。週末にチラシを入れなさい」など。  たまに現場に来た社長から、次々と矢継ぎ早に指示が飛ぶ。  すると今日中にやり切りたい仕事を山ほど抱えている社員は、作業を一時ストップするしかない。社長の指示は全てに優先されるため、社員は不満を内に秘め、指示された仕事を黙々とこなすのだ。  社長の飛び入り発言による作業の大幅な遅れは、社員たちの不満を社内に充満させ、挙げ句に、「遅れは社長の急な指示が優先されたためだから仕方がない」と弁明されてしまう。  社長の思いつき発言のために、「仕事で大切なのは期限遵守、約束までに仕事を仕上げること」と、これまで社員教育で教えてきたことが徐々にないがしろにされてしまうのだ。  これでは、社内の仕組みを磨きあげ、効率のいいハイレベルな会社を目指していたはずなのに、肝心の社長自らが会社のルールを壊し、どんどんレベルを下げてしまう。社長の思いつき発言により、会社を壊してしまっているのだ。  社長は神様ではない。自分の知らないこともいっぱいある。  「現場に神宿る」という言葉があるが、だからこそ現場から離れている社長が、その権威権限をバックに軽々に「こうした方がいい」などと言ってはならない。  とにかく社長は今、自分が気づいて社員にやらせようとすることが果たして正しいかどうかを必ず現場の担当者やその上司に尋ね、自分の考えの根拠・合理性を調べるようにして欲しい。  そして、これを機会に、関係者の皆にしっかり考えさせ、話し合いで決まったことをルール化していくのである。そうしないと、社員が考えない会社になってしまう。  これが会社を筋肉質にしていく手法なのだ。

鬼 100則   30部下に仕事を丸投げするな  社長の権限は絶大だ。何か難題にぶつかっても、部下に全て丸投げできる立ち位置にあるからだ。  一方、苦労に苦労を重ねて、何とか難題を解決した幹部や部下は相応の力をつける。社長と現場、実務との距離は広がるばかりだ。結果、社長は 1人浮いてしまう。  だが、社長がいくらかでも関与してたら話は別だ。そのテーマ解決のための対策を決めるときや解決に向かう途中で、折々にチームに加わったり、または報告を受けたりする。これらによって社長は全体に関与したことになる。  さらにはリーダーと共に最後の総括に関与する。各々のテーマの核心を掴み、解決への工程表の節々に加われば、事件の全容を掴める。現場との一体感。これが理想の形だ。   100人ほどの社員のいる会社で起きている出来事で考えてみよう。  役員が 4 ~ 5人、部課長が 6 ~ 7人、店長が 8 ~ 9人、社員が約 80人、毎年 10人の新入社員。  役員会で社長がスピーチを行い、さまざまな事柄が決定され、役員間で共有される。  次にそのことが部課長に伝えられ、そのまま自動的に店長へ下ろされる。  店長は朝礼などを利用して一般社員に決定事項を伝える。または、紙ベースやメールで上から順に下ろしていく、毎回決まり切った流れ。  これでは、社長の顔の表情や熱い思いは上で止まったままである。内容だけが淡々と下へ流されていく。  新人にすれば上司は店長。店長にすれば上司は部課長。部課長には役員、役員には社長が上司である。各々が次の下に丸投げすればその度ごとに社長の熱い思いは薄まっていく。  全員が自分の直属の長からの熱量を受けていくので、トップの当初の熱い思いは末端までは伝わらない。これでは会社や社長の求心力は心許ない。  大会社ならともかく、我ら中小企業は社長の志を軸に全員で団結し、同じ目標に向かって突き進まねばならない。そうやってはじめてパワーを発揮できる。  時折身近で仕事に取り組む社長の熱気に触れ、社長の思いを理解する。これが中小企業の最大のメリットだ。これを薄めてしまうのが丸投げ方式だ。

鬼 100則   31今はいつでも途中形  経営人生は浮き沈みの連続だ。  思い通りにいかなかったり、ときには想定以上の成果が舞い込み絶頂の一時。だが、これも長くは続かない。次第に、次のどん底期に向かう〝芽〟がではじめるのだ。  大きな夢、志、長く続いた苦しかった日々の結果、やっと手にした成果。  東京進出、 ○番目の子会社、支店数 2桁、ついに社員数 3桁、社長年収 1000万円実現、経常利益も 1000万円の大台に、さらに 5000万円台を目指すなどなど、格好いい言葉や数字が目の前で躍る。  頭の中をこれらが巡るうちに、多くの経営者は久方ぶりに手にした勝利の美酒に酔い、経営者としての、本来のスタンスに狂いがではじめる。  複数の外部団体への入会。皆の前でのスピーチの回数が増え、もっとリーダーとしての箔をつけたいとの思いから社員にハッパをかける。  そこそこやった安堵感と共に多くを手に入れた達成感から、自分をほめてやりたいという欲求に駆られ、気づかぬうちに経営者の目線がこれまでの地道なものから、外部から見た華やかなものへとシフトしていく。これも経営者の〝性〟の一つである。  次第に内部に抱えていたさまざまな問題が噴出してくる。そこに輪をかけるように外的要因に潜むリスクが顕在化しはじめ、業績悪化の兆しが出てくる。  そんなときにも社長が心すべきは、業績がどんなに良くても悪くても、「今はいつでも途中形」ということだ。  大切なのは今に一喜一憂しないこと。 1カ月 ~ 1年経てば、どんな出来事も所詮、過去の歴史の 1ページにすぎない。だから、「今はいつでも途中形」なのだ。  社長は、業績の良し悪しにかかわらず、折々に、自分の現状から抜け出し、鳥瞰図を見るように、天空から自らのポジショニングをクールに見下ろしてみることだ。  そして、当初の志を忘れずに、熱い思いで社員と共に、ただただヒタヒタと前進あるのみなの

鬼 100則   32神の領域を侵すな  人は成功すると有頂天になる。  「俺は何でこんなについてるんだろう。俺は運が良すぎる。いや、こんなにも頑張ったんだからこれは当然かもしれない」  社員や家族の幸せを夢見ていた頃は、あんなにも真摯に、謙虚にただひたすら感謝の思いで働いていたのに……。ライバルを研究し、他社にはない当社だけのとんがりを模索しながら、社員と共にもがき苦しむ中で、一条の光を見つけたときの感動はどこかへ。  気がつけばいつの間にか「自分だけは特別だ、自分をほめてあげたい、こんな自分にはそれ相当のご褒美があってしかるべき」と成果が自信を生み、自信がその人を尊大にしてしまう。  そして、「もしかしたら自分は神様の親戚ではないか。万能の神は何でもできる。よって私にも少々のことは許されるだろう」という具合に、とんでもない勘違いがひどくなる。  かくしていつの間にか他の人が馬鹿に見え、コツコツと働くことに興味を失って、周囲の人への感謝の心さえも薄くなっていく。結果、金遣いが荒くなり、豪快に遊び、欲しいものは何でも手に入れる。成功により何かが少しずつ変わりはじめるのだ。  周囲は、成功して彼は人が変わってしまったと驚き、嘆き、そして少しずつ距離を置きはじめる。気がつけばその人を大成功にまで押し上げてくれた数々の要因、即ち、彼を支えた誠実、謙虚、努力、感謝そして運という、成功のキーワードたちが少しずつ逆回転しはじめる。そしてそれらが彼の下から離れ去っていくのである。  いつの日か、自分は神様かと勘違いしてしまった慢心が、経営環境の変化や、社内の数々の問題にも気づかないほどに目を曇らせ、気づいたときにはもはや取り返しのつかないまでに会社の経営を悪くし、あっという間に倒産の危機。こういう例をいくつも見てきた。これは、 1億円の宝くじに当たった人の大半が、後々悲劇の主人公になったという例と相似する。  こんなことになるくらいなら、むしろ大成功しなければ良かった、という後悔の日が来ないことを祈る。  警告する。神様の領域にだけは手を突っ込むなと。

鬼 100則   33社長の賞味期限は?  大きな志・夢を抱いて起業する。あるいは両親の仕事を引き継ぐ。だが、当初思い描いた姿と大きく乖離してしまった現実を前に愕然とする。ことあるごとに勇気を振り絞ってチャレンジを試みるが一向に光が見えない。  気づけば、社員との会話は途絶え、朝礼参加の回数が減り、現場への足も遠のく。社内業務の改善意欲が次第に衰える一方で、社外活動が増える。  社外活動が活発になると、新しいコミュニティが広がる。出会った同類たちと決めた役割やテーマに汗をかくことで得られる連帯感、仲間意識、そして安堵感。そこには、死守しなければならない利益額というノルマもない。だから、だんだん居心地が良くなる。  他方、自社では打破すべきテーマがなかなか見つからず、見つかっても実行できない、成果も上がらない。だが、社外活動の場合はテーマがシンプルであり、短期勝負のものが多い。仲間と力を合わせれば結果も早い。  この頃になると、社員も気落ちした社長の様子に気づきはじめ、社内での社長の影響力もじわりと低下しはじめる。そんな時期が 2 ~ 3年あるいは 5 ~ 6年も続くと、さすがに会社の業績も下降線の一途をたどり、社長の意欲はさらに低下する。  そうなる前に手を打つべきだ。社長が自らの賞味期限に少しでも早く気づき、会社の存続のためにどう区切りをつけるかの決断が大切。ずるずるとドツボにはまってから退くのか、早目に弟に譲るのか、妻と交代するのか、はたまた息子または信頼できる右腕に託すのかを決断する。  手を打つ時期如何では、会社の価値や存続に天と地ほどの差が生じる。そのときを迎えてからあたふたとしないためにも、今の内にオペレーションシステムをはじめ、社内の見える化、組織のシンプル化を進めたり、さらに関係先との契約書の整理や見直しなど、あらゆる環境整備をしておくべきだ。社長としての賞味期限が迫っていても、下を向いてただ過ごすわけにはいかない。周囲の人は、そのあとも生きていかねばならないからだ。  自らの賞味期限に早く気づいて早目の準備に入ることは、自分なりの新たな世界を作り出していけるまたとないチャンスでもある。これは、あなた自身に残された「かけがえのない人生の後半戦」を、新しいステージと捉える第二創業でもあるのだ。

鬼 100則   34年初のあいさつは 1年間かけて練りあげよ  社長たる者、スピーチの機会は多い。  社員の前での社長スピーチは、年間どころか毎月何度もあるため、十分な準備をしなくてもそこそこ話せる。そして慣れが高じると、自分の思いばかりを発信してしまう。さらに肝心なことを言い忘れても、そこそこ何とかなるので、いつの間にか惰性に陥る。結果、社員には社長の話は大した重みもなく、軽いレベルと受け取られてしまうのだ。  特に世間の一般情報は社長以上に社員の方が知っていることが多いので、貴重な時間を使い長々と話したりすれば、社員へのインパクトが少ない分、スピーチの効果はさらに期待できなくなる。  年間何十回ものスピーチの機会を前に、社長は社員に何を話すべきかを、スピーチの何カ月も前から少しずつ準備をはじめ、その期間中に構想を練りながら筆を進めていくのだ。  倉庫や店内や事務所をチェックしながら、久しぶりに何人かと会話した際に、何がしかの兆しを発見できる。気になることを部下に確認すれば、次の会議やスピーチの種となる。社内のさまざまなテーマについてより具体的な中身のある話をすることで、次第に社員間に緊張が走り、スピーチによる成果もさらに期待できる。  兎にも角にも社長のスピーチの会社全体に与える影響力はゆるがせにはできない。中でも集大成となる総会のスピーチや、新年のあいさつは特に大切だ。  まず、年間の行事計画の、社長のスピーチ予定日に印をつける。そして、年間計画の中で気になるテーマの資料を毎月少しずつ集めていき、いくらか集まったところで、 2 ~ 3カ月前にスピーチのあらすじを作ってみる。さらに週に 10分ずつでもあらすじに肉づけしながら、 1 ~ 2週間前までには原稿を完成させ、当日までに 2、 3回の練習を行って本番に臨む。  そして各々のスピーチの最終版をストックしておき、翌年のスピーチのためのヒント集の一つにする。  社長が一つ一つのスピーチについてここまで心を入れ込めば、思いは伝わり、社員の心を打つことができ、成果も期待できる。ひいては、これが社長の求心力にもつながるのだ。  こんな地道な積み重ねが、社長力を鍛えあげていくのだ。

鬼 100則   35メモを取って戦略を練る  私はよくメモを取って戦略を練る。間違いなくメモ魔だ。これは、若い頃からの〝人並はずれた弱い記憶力〟に由来する。のちに、記憶力の弱さは肥厚性鼻炎に原因することが判明。さらに、若い頃からの脳腫瘍もその一因だとして、自分を納得させてきた。その欠点を補うかのように防衛本能が働き、自分はとんでもないメモ魔となった。  カバン、机上、胸ポケット、さらにはトイレ、寝室、車の中など、至るところにメモ用紙とペンが用意されている。ベランダでボーッと景色を見ているとき、大好きな温泉にゆったりつかって体を伸ばしているときなどに次々とアイデアがわいてくる。それを溜めておくのにメモは欠かせない。  いい考えというものは突然ひらめくが、他のことにちょっと注意を奪われた隙にサーッと忘却の彼方へと追いやられてしまう。だから、ひらめいた途端、何はさておき単語だけでもメモをすることにしている。  メモの題材でアイデアの次に多いのが、忘れていた事柄。これは歩いていたり、電車やトイレの中で突然思い出す。すぐさま、メモに書く。  メモの材料は至るところにある。電車の中吊り広告などにはヒントがあふれている。いじっているスマホにもメモの情報が豊富だ。メモがどんどん溜まれば、これをどんどんまとめ、どんどん捨てる。この繰り返しの中から、アイデアが次々と浮かんでくるのだ。  アイデアはとんでもない夢実現のヒントになる。経営の将来構想というグランドデザインを描く上で、経営者には妄想力が欠かせない。将来のありたい姿を、風呂に入る前や就寝前、飛行機に搭乗する際などに妄想する。脳内スイッチが入り、メモに書いたさまざまなアイデアが、脳の回路を突き合いながら構想となって膨らむ。  私のメモは、事実を記したものから、次第に考え方のヒントを中心としたものに変わった。常に問題意識を持ち縦横無尽にシミュレーションした結果をメモしたからである。絶えざる未解決テーマとの戦いにおいては、解決法や必要とされるものの探索が課題だが、それには日頃の問題意識が要となる。  今やメモは、備忘録から思考のための戦略ツールに進化した。

鬼 100則   36スクラップブックを作れ  中学時代から、なぜ自分はこんなに記憶力が劣るのか不思議なほどだった。  高校時代には、受験で地理と歴史だけは絶対に選択しないと決心した。なぜなら、地名と年代を覚えられないから。  ある意味そんなハンディを背負った私が決断したのは、あらゆる資料を残しておくこと、決して捨てないことだった。優秀な人は、一度聞いたら覚えられるから資料を捨てる。しかしそれができない私は、手元に置いておくことにより、何度も見返し、記憶をよみがえらせた。  ハンディを背負った弱者ならではの決断が、記憶力のいい優秀な人よりもより多くのデータや資料を保有し、活用できるという勝者に変身させてしまったのだ。  シンクタンクで仕事をしていた娘の言葉。  「期待していたけれど、毎日つまらない。来る日も来る日も新聞、雑誌を読まされ、テーマ別にスクラップブックを作らされる」  また、私の尊敬する A先輩の職場は大使館。私にとっては夢のような職場。その彼が言う。  「毎日、政治・経済などテーマ別に、何カ月間もスクラップの作成。嫌になってくる」  この 2人の言葉に、私は大きな感動と手応えを覚えた。  何十年も前、ドイツから夢破れて帰国。あとを継ぎたくなくて、海外に夢をはせたのに、その電器店に舞い戻った。  期待されても何をどうしていいかもわからず、家電業界や流通関連の本や新聞、雑誌をひたすら読み、気になる記事のスクラップブックを作成した。  後日、 KGBや CIAの情報収集の 90%は公開情報との記事を見つけ、やったという思いだった。自分のやり方は間違っていないと確信した。  当時そんなことも知らずにスクラップブックの作成に愚直に取り組んだ結果、 50年間に渡って集めた大量の情報が、今の私を育ててくれたのである。

鬼 100則   37社長はしっかり休息せよ  さまざまな業種の塾生と話をしていると、中には休息を取らない社長がいる。社長が息をつく暇もなく仕事に没頭することは、それはそれで尊いことではある。だが、いい仕事をするためにも、オフタイムとして休息を上手に取り入れることをお勧めしたい。  私の場合、昔から趣味と実益を兼ね、成功企業のビジネスモデルを探索する目的で、全国の話題の店を巡り、その地域のチラシを集めた。店が気に入った場合、自分が探偵にでもなった気分でワクワクしながら店内の隠し撮りをし、成功につながりそうな情報をあらゆる角度から徹底的に収集した。そして一日の疲れを癒すために、ゆっくりと温泉に浸かって体を癒したものである。  さらに、歴史上の人物を取り上げた映画・書籍の大好きな私は、彼らの足跡を訪ね、苦闘の中で人生を切り開いて行った偉人たちの生き様に思いを馳せ、新たなエネルギーを吸収した。  また、故郷の香川に帰れば栗林公園を友人と散策。また、東京にいるときはオフィス近くの有明テニスの森を散策する。森林浴はアドレナリンの生成を活発にし、仕事で疲れた脳をリラックスさせ、頭の中が自然と整理される。  ドイツでワインのバイイングやスピーチコンテストの開催、香川・東京で主催するドイツワインの会や音楽会も、日常から解き放たれる時間だ。年数回開催する若者に人生戦略を伝える「若者未来塾」、小中学生向けの「ドリームシッププログラム」は、私にとっては大きな生きがいであり、ストレス発散の貴重な時間だ。また日本、アメリカの 6人の孫とのひとときは、何物にも代えがたい至福の癒しだ。  生き馬の目を抜くような激しい競争社会の中で、自身の人生戦略・経営戦略の成功のために、 1日 24時間、ずっと仕事のことから離れられないというのは、成功への情熱の証かもしれない。だが、緊張しっぱなしでは、いつの日か糸が切れてしまう。  社長たる者、過度な無理をしないで適度に休息を入れ、自分の健康状態やバイオリズムを整えるよう留意すべきである。そして休息の際は、できるだけ日常業務と離れた世界に身を置いてストレスを解消すると共に、日常業務を別の角度から見つめ直すキッカケにして欲しい。

重役の 7割の賛成するプランはときすでに遅く、 7割が反対するプランくらいでやっと先手がとれる。松下幸之助(実業家)「徹底」こそ、全ての成功者が共通して持っている特質である。才能とは、無限の努力ができる能力のことだ。全ての偉大な業績は、微小な細部にまで至る配慮と、無限の努力のたまものである。エルバート・ハバード(思想家)

鬼 100則   38経営の兆しを掴め  ゴルフの上手な人は「芝目」を、釣りの上手な人は「潮目」を読む。そして経営者は「変化の兆し」を読まなければならない。  社長は、世の中の事象から、人より少しだけ先を読んで、「誰も知らない未開拓市場 =ブルーオーシャンの世界」を作り出す。それが仕事である。  かつて一部上場企業のフランチャイジーだった我が社は、全国 96社の頂点にまでのぼり詰めた。  その間、小売業の最先端を行くアメリカに赴き、定点観測を実行。  目を見張ったのは、当時世界最大の家電量販店サーキットシティ(中型店)を猛追するベストバイ(大型店)の姿。前者の粗利は 25%、追いかけるベストバイは 15%。とどまるところを知らないベストバイはついにトップへ。その後、王者サーキットシティは連邦破産法を申請した。海の向こうのアメリカで起きていることから、いずれ日本にも大規模店舗の時代がやってくるという「兆し」を捉えた。  さらに、アメリカから日本の岩盤規制を緩和するようにと強力な圧力がかけられていた。もはや規制緩和の流れは止まらないと見た。  この2つの兆しから、これまでマツヤデンキの戦略だった「店舗の売り場面積 50 ~ 70坪」では戦えない時代がやってくると考えたのだ。  私は決断した。マツヤデンキの FCからの脱退。そして、 Y社・ K社の安売り攻勢にさらされていた全国区ではまだ無名のカトーデンキ販売と提携することを。  未知なる世界に最初に飛び込むいわゆるファーストペンギンにはリスクはつきものだが、成果は大きい。四国での大型店舗時代の口火を切り、一気に年間 2億円の利益を叩き出した。一方で 1000億円企業、全国ランキング 5位までのぼり詰めたマツヤデンキはその後倒産した。  そして、カトーデンキはケーズ H Dとなり、 7000億円企業にまで成長した。  喉から血反吐が出るほどに成功を渇望した者にだけ神は微笑む。傍観者、評論家になるな。本当に必要とする者だけに、情報は生きた宝となるのだ。経営の兆しを掴め。

鬼 100則   39ビジネスモデルの賞味期限は?  縁あってはじめたビジネスモデル。初心の志と熱い思いで 5 ~ 10年とつつがなく発展させてきた。売上高も安定し、社員も順調に増えてきた。  そこへ、突然のコロナの攻勢。果たして、これからも数年間、今のビジネスモデルを続けられるのか。  かつて中世のヨーロッパではペストの猛威で 1億人もの人が死亡し、新しくルネッサンスの時代が花開いた。今まさに、コロナによって新しい時代がスタートしたのだ。  コロナの攻勢によって一気に時計の針が振り切れるまで回ってしまい、人々の考え方や価値観が一変してしまった。ビジネスモデルの賞味期限は一気に早まった。  だが、たとえコロナがなくとも、世の中の変化と共に人々の考え方、価値観や生活様式は絶えず移り変わる。次の時代でもあなたの商品は今まで同様に存在価値を維持できるのか。そして、あなたの会社は存続を許されるのか。  今回はコロナをキッカケに、「ご破算で願いましては」の如く、全てがシャッフル、リセットされてしまった。私たちは今、新しいスタートライン上に立っている。  世界中で、ニュービジネスが続々と立ち上がっている。新しい時代のキーワードを書き出してみよう。「自社の既存資源を活用して、どこかでキーワードとリンクできないか?」「世界中のニュービジネスを参考に我が社で取り組める考え方や新商材はないか?」。社員と共にこれらを深く検討する。すると、新しい発想がわいてくる。  何かを一味加えたり、他社とのコラボにより新しい価値を創造したりすれば、ビジネスモデルの賞味期限も大幅に延長可能だ。  まだ賞味期限切れとなる前の M& Aにより、部門や子会社の売却、あるいは全社売却も一つの方法だ。  あるいは、こちらから M& Aを仕掛けて、次の 3年、 5年、 10年後もユーザーに受け入れられる存在感のある会社に生まれ変わろう。  そのために必要なのは、既存の古いビジネスモデルとの決別である。そのときを待たずに早目に検討して傷口が広がるのを防ぐことだ。

鬼 100則   40聖域なしの総棚卸  自社内でもそうだったが、私の経営塾の塾生にもよく「棚卸をしよう」と言っている。だがこれは、単なる在庫の管理のことではない。日々の経営に追われ、なかなか見直すことができずにいるルーティンのように当たり前に回っている全てについて、一旦、ゼロベースで考え直してみることを言う。  ものに経年劣化があるのと同様に、経営にも当然、経年劣化がある。人生をかけた夢の実現に向かって、社長はときに経年劣化した部分を発見して補正をすべく、経営そのものを棚卸しして総点検をしなければならない。  起業したときから時間が経ち、社会情勢が変わり、業界の事業環境も変わってきているのである。果たして今の自社の立ち位置はこれでいいのだろうか。そもそも、ドメイン〝即ち、自社が戦うビジネスの土俵〟は正しいのか。もしかすると、それを支えてきた経営理念でさえ、すでに風化してさびれているかもしれない。  自社内にあってはまず組織。もう少し組織は強靭に鍛えられないか。社員は適材適所に配置され、それぞれが成長し、会社に貢献できているか。そもそも社員を支えるマニュアルは現状に合っているのか。社内の誰もが使いこなせる、シンプルかつ、実情に合ったものなのか。  次に商品。商品は陳腐化していないか。在庫状況は不自然ではないか。不良在庫は一定の基準内か。トータルの不良品率で納得せず、この際一品一品について検証する。  ついでに商品の販売先、仕入先も総棚卸の必要がある。どこかに偏った取引をしていないか。長いつき合いで、不自然な癒着や忖度は生まれていないか、などである。  さらに、我が社の立地や建物はどうか。新しい道路や商業施設ができたことで、顧客の動線が変わってきていないか。そもそも、これまでのようなオフィス、店舖が必要なのだろうか。建築にも、問題が発生していないか。地震や洪水に耐えられるだろうか。  このように社長が目を配るべき項目は果てしなく多い。「自社の経営に関する全て」を棚から卸してまな板の上に乗せ、再度見つめ直し設計し直すのである。だが一番重要なのは、社長の頭の中の棚卸だ。

鬼 100則   41ブルーオーシャンの世界は探すな  誰もが夢見るブルーオーシャンの世界。ライバルもなく無人の野を行くが如く、破竹の勢い。顧客は喜び、社員も満足。そんな世界を社長は探し求める。  しかし、いくら探し求めても青い鳥はなかなか見つからない。もし見つけたとしても、そのときには何千人もの人が同時に見つけていて、あっという間にレッドオーシャンの世界に様変わりしてしまう。  自分勝手に、「ブルーオーシャンの世界を見つけた!」と勘違いをしてはいけない。その世界を見つけたときの状況を冷静に分析するのだ。  たまたま手にした資料で見つけたのなら、その資料は信用できるのか。又非常に希少価値があり、本当に多くの人の目にはまだ触れていない資料なのか。  久しぶりに会った人からの情報なら、その人は信頼に足るのか。情報提供者としての力は充分か。情報そのものに価値はあるのか。資料と同じく、すでに多くの人に伝わってしまっていないか。  一生懸命ブルーオーシャンを探し、やっとの思いで出会っても、その情報が多くの人にすぐ出回ってしまうものなら、すでにレッドオーシャンの手前だ。  さらに、もっと大切なことがある。そのビジネスがブルーオーシャンだと仮定しよう。しかし、そもそもそのビジネスはあなたの志と、夢と、合致するのか。それは少なくとも 5年 10年続くのか、続けられるのか。それを推進する社員はいるのか。育っているのか?その人たちが別動隊として抜けても既存のビジネスはちゃんと前進するのか。  資料や人との出会いで手に入った情報に、さらにその関連でかき集めたヒントを足し合わせ、かけ合わせ、余分を削り落とす。さらに、自らの志、夢、社員や資金にも頭をめぐらせながら、自らの独自のブルーオーシャンの世界を構築する。  このオリジナリティーは、他の人にはなかなかマネができない。または追従者にマネできないよう、常にブラッシュアップし、変化させ、さらなる競争力を身につけるのだ。  これこそが、真のブルーオーシャンの世界をながく堪能できる秘訣だ。

鬼 100則   42社長独自の P/ Lを作れ  多くの会社が、売上は 103%、粗利率はプラス 1%、経費はマイナス 5%、人件費はトータルで 101%などと、ほぼ一律に前年対比で予算を組む。結果 1年後、「予算 =実績」とはならず、その乖離は大きい。  冷徹な現状分析と熱い思いがバランスよく注入されてないから、これは当然の結果だ。  各項目に思いを込め、データとそのデータを作り出した、あるいは新しく作り出そうとしている社員 1人 1人と顔をつき合わせ、万感の思いで数字をはじき出して欲しい。  また、予算計画とは別に、社長独自の P/ Lも作って欲しい。  ライバル店進出、競合になる新商材や新サービスの誕生、業界にあるいは世界的にアゲインストの風が吹いたら……など、心配の種は尽きない。しかし、たとえ自然災害であっても仕方がないと片づけるわけにはいかない。  私の哲学、「オドオド・ビクビクの経営」では、「売上対前年比で 5%、 10%落ちたら」「粗利率が 1%、 2%、 3%落ちたら」と数種類のシミュレーションをしてみる。  当然であるが驚くべき悲惨な数字となる。この数字でもさらに生き残るには、どうすべきかを考えるのだ。  コストを 1掛けベースで見直し、コスト構造が激変するまでトコトン切り詰めて考えることで、はじめて今までとは違う世界にまで切り込むことが可能となるのだ。  社員教育、社長教育には投資する。組織をクールに見つめ直し、オペレーションにまで切り込んで無駄をそぐ。そうすることで、何とか利益を + − 0にまで持っていくことを考える。なぜなら、もしもの心配事は来年度発生しない可能性は大なのだから。  そうすることで、今まで見たことのない過去最高益を手にすることができる。そして、利益の一部は社員に還元するのだ。  社長独自の P/ Lとシミュレーションで自分を追い込み、革命的改革に乗り出す。そこで一気に損益分岐点を下げる。これが狙いだ。

鬼 100則   43コスト削減は社長の脳内で決まる 1掛け作戦   P/ L上のコスト構造は多くの企業で年々ほぼ固定化してくる。なぜなら、経営者、幹部の脳の中には、昨年も精査し、十分コストは削減してきたという思いがあるからだ。  そこで一度、従来の考え方をぶち壊し、コストに関する考え方を白紙に戻して、こんなコスト構造だったら理想的だという金額を決めてしまう。それが「全てのコストを 1掛けにせよ」の 1掛け作戦だ。 5%や 10%のコストダウンを考えると、とりあえずの表面的なコストダウンしかできない。 90%のコストダウンを考えることによって、はじめて革命的な発想が期待できるのだ。  私は、チラシ配布を、詳細なエリア分析により、費用対効果で最大値を精査し、何十%ものコストカットに成功した。  酒事業に進出した折、什器、冷蔵庫、冷凍庫、事務机、フォークリフトに至るまで、ほとんど 1掛けで手に入れた。長期計画の中で、スーパーや酒店の事業閉鎖を調べることで、これを可能にした。  人件費も社員は本体で年収を取っているので、新規事業に派遣されても 1円も増えない。人件費が発生するのはレジや商品補充要員のアルバイトだけだ。それによって総人件費は通常の 10〜 20%となり、最初から儲かる仕組みになっている。  この方法を念頭に各店の文具、備品についても徹底的なコストカットに成功した。  ダイソーの四国 1号店が高松市内にオープンした際、我々も四国初のダイソーに負けじと、オリジナルの 100円ショップをオープンした。商材はアメリカからも直輸入。  シナジー効果があり、家電の客数が 2桁台の大幅アップを達成した上、備品の大半が 100円グッズに置き換えられたのだ。結果、経費を圧縮して利益を最大化させ、社員の待遇改善につなげることができた。  どんな企業も、好調が 2 ~ 3年続くと、ハイコスト体制ができてしまう。不況になったとき、ハイコストをいきなり吸収するのは難しい。危機感を持ち、いいときにこそ明日から氷河期が来ると仮定して、頭の構造を「 1掛け作戦」にしておくことだ。

鬼 100則   44予算の実績  中小企業の中には、いとも簡易に予算組みをする会社がある。  売上は前年の + ○%、粗利率は + ○%、人件費は横ばいとして、経費は一律 ○%ダウン、その結果、利益は + ○%。  こうあって欲しいと願うのだが、なかなかそうはいかない。これでは 1年間の予算と実績が乖離してしまうことは明白だ。  売上一つとっても、前年対比で、ある商材は大幅成長が見込め、ある商材は横ばい、またある商材はしっかりとした理由で 2分の 1しか売れないかもしれない。粗利も然り。優秀な部門長をつけると 2桁アップも見込まれるだろうし、人材不足でやむを得ずの人を配置したところは、前年割れが必定だ。  毎年「予算 ≠実績」を繰り返していくと、社員どころか社長までもが期首の時点で、今年もどうせダメだろうと思ってしまう。そして、その通りの皮肉な結果を待つ 1年が空しく経過していくのだ。  負け犬根性を排し、「予算 =実績」にするためには、あらゆるファクターを分析して数字を積み上げていくことだ。新規事業の検討や工場や店の増改築や拡張、社内人事の効果など、あらゆるテーマについて「【プラン →ドゥー →チェック】の輪」を回す。一連のこれらの分析の精度が高ければ高いほど、予算は限りなく実績に近づく。  そして、誤差があった部分はその原因を、さらにその原因の原因も分析する。最後に分析結果を踏まえて修正を加えながら、再び予算を組むのである。   2 ~ 3年繰り返すと、限りなく「予算 =実績」に近づく。このようにして作り込んだ予算を、堂々と消化して粛々と実績を積み上げていくのである。この過程で、社長も社員も多くを学び、予算組みのレベルが格段にアップする。  これを毎年地道に行うことで、考え方を含む作業の全てにおいて「成功するためのキーワードの抽出力」や「失敗するかもしれない、もしくは大きくブレるかもしれないリスクについての徹底した分析力とその対応力」が身につく。  そして 10年もすれば、何かことを成そうとした際、成功確率の高い計画実現能力を発揮して、自分たちだけのブルーオーシャンの世界を十分に堪能できるようになるのである。

鬼 100則   45マネシタデンキでいこう  かつて松下電器(現 Panasonic)は、マネシタデンキと揶揄された時期があった。他社の商品をヒントに新製品を作り出し、一気に増産。他社の何十倍もの商品を全国のネットワークに乗せて市場に送り出す。他社より一歩先んじて流通網を構築したことが、新製品を一気にヒット商品に押し上げた。また、欧米の週休 2日制に驚き、即導入を決めている。このように、あの松下電器でさえ他社に学ぶのだ。その柔軟性、先見性は驚愕だ。  中小企業はもっと素直に、堂々と他社や他商品に大いに学び、自分流にアレンジしてもいいのではないか。他社を参考にして成功した例は枚挙に暇がない。  通販の王者千趣会に遅れること 10年で創業したベルーナ。しかし、 2年連続赤字の千趣会に対し、経常利益 100億円。  徳島の葉っぱビジネスをさらに進化させた秋田の山菜ビジネス。  とかくアップルのパクリとされる小米科技(シャオミ)だが、年商 10兆円のアップルに対し、今や年商 3兆円にまでなった。グーグルやマイクロソフトから人材を招聘し、徹底した模倣戦略で、今や世界 6位のスマートフォンメーカーに急成長した。  いつの世にもすぐれた先駆者、ファーストペンギンがいる。私たちは彼らから素直に学び取らなくてはならない。学ぶ対象は日本だけではない。世界中からノウハウを集める。しかも同業種だけでなく他業種からも学ぶのだ。  まずは、会社目線のみならず、ユーザー目線からも見てスゴイと思われることを一つずつカードに書き出す。集めた情報の中から似通ったものをいくつかのグループにまとめ、各グループから共通項を選び出す。さらに何種類かのカードのピースを組み合わせたり、はしょったり、極大化したり、極小化したりして、どう自社に取り込んでいくかを考える。  この方法で私は、社員十数名の頃、郵便配達員の配達ルートをマネて訪問販売の仕組みを作りあげ、売上を 130%にした。また、人手不足の折、来たいときに来て仕事をするというパプアニューギニア海産方式をマネて、思い通りに優秀なパートさんも獲得できたのだ。  どんなときにも素直な心であらゆる人や事業から何かを学び、自分流に取り込んでいこう。

鬼 100則   46誇るべきは売上金額、利益額でも、従業員数でもない  塾生に入塾にあたっての思いを聞くと、「売上目標 ○億円、社員 ○人の会社の社長になりたい」「全国に支社を出してできれば海外にも!」といった回答がくる。  大きな夢は社長のモチベーションアップにもつながり大変いいことではある。だが、「規模の拡大」を事業の最大目標に据えてしまうと、逆に達成そのものが非常に危うくなる。  まずは人生、経営戦略を長期スパンでしっかりと捉えることが必要だ。志、夢の再確認を行い、生涯をかけてビジネスをどううねらせていくか、その中で何が成功でどんな姿が理想かを定義しておくのだ。  そして次に、ビジネスの最小単位となるスタート時に、ビジネスモデルの金型をじっくりと作り込むことである。この金型のできあがり次第で、今後 10年間のビジネスの成否が左右される。  金型が不完全なビジネスの末路は悲惨だ。売上やシェアの拡大が経営の成功と考えて経営規模の拡大を急ぐ社長が少なくない。ビジネスを回す金型が不十分なのに、 1号店が儲かりはじめるやチャンスを逃すなと 2号店・ 3号店と事業展開を急ぐ。ビジネスの金型という帆が十分に張れていないのに、荒波の航海へ無理に船を出してしまう。その結果、激しい大波に飲まれて難破し、命からがらどこかに流れ着くか、ひどい場合には財産生命を失うという顛末をたどる。  だからこそ、社員数がまだ数名、十数名の内に、「 10年後のありたい姿に行き着くための今」を考えて欲しい。会社の目的、目的達成のための組織のあり方、取引先・売り先の選定、商材や売り方の絞り込みなど、あらゆる可能性についての吟味と選択を行う。極力小さな単位で、シンプルに、とぎすまされたビジネスモデルの金型を作りあげる。  大切なのは、社員 1人当たりの利益の最大化を計ることだ。社員数の増大、年商のアップに伴って、 1人当たりの利益が増大していく最強軍団を目指すのだ。業界で 1位を目指すにしても、規模やシェアではなく、社員 1人当たりの生産性での業界 1位を目指す。  要はビジネスが最小単位のときほど経営改善はやりやすく、社員教育も行き届く。早いうちに成功を手にしようとしないで、企業規模がまだ小さく社長の目が届くというビッグチャンスを活かして、拡大せず、焦らず、自分自身を、社員を、会社を磨きあげて欲しい。

鬼 100則   47大手と互角に戦うための戦略  年商、社員数、支店数が多ければ成功だと考えて規模を拡大すると、戦いの場がランクアップし、いずれ、よりパワーのあるライバルと戦うことになる。  店の数も社員数も年商も、そこそこの規模の間は何とか戦える。だが、大きくなるにつれ、別次元の戦いに移行し、リスクが何倍も大きくなるのだ。  ある程度の規模になったことで自分は成功しつつあるなどと誇り出した頃から、成長著しい本格的な後発組に戦いを挑まれ、叩きのめされてしまうかもしれない。  そうなったら人生の後半は、無残な結果を前に心が折れてしまい、みじめなことになりかねない。  会社、そして人生の成功は、規模ではなく中身に重点を置くべきである。経営の場合、要は 1人当たりの生産性だ。  なぜか。中身に重点を置けば、社長を取り囲む軍団が、よく研ぎ澄まされ、大手とも十分戦える力を身につけることが可能になるからだ。大手相手であっても実際には目の前の自分のテリトリーでの戦いとなる。我々中小企業は、その局地戦で負けなければいい。  大手の強大パワーも、大手ゆえの弱点がある。大手の強大なパワーが分散した一支店と地元密着の集中したパワーとの戦いともなれば、後者が有利なのは明らかだ。  そのためにも、やたらに規模を拡大するな。むやみな規模拡大は、小さいならではの強みを作りあげるチャンスを失わせてしまうからだ。  売上や利益率を上げて戦う態勢では、いずれライバルのパワーで顧客を奪われてしまう。むしろ、可能な限り利益率を下げつつ、しかも 1人当たりの生産性を極大化する戦略。つまりは、利益に見合うコストで戦う戦略だ。  または、顧客のターゲット層を、ライバルとは明らかに異なるニッチ戦略で戦う。そうやって焦らず、じっくり少しずつじわじわと市場を奪っていくのだ。  要は顧客から見て、自社がとんがった、魅力的で特別に差別化された存在であることをアピールするのだ。  これが自ら創り出す人生・経営のブルーオーシャンの世界なのだ。

鬼 100則   48広げるな掘り下げまくって己を磨け  塾生たちに今後 3 ~ 5年間の計画を問うと、例外なくほとんど同じ答えが返ってくる。  「店舗を ○店に、売上を ○円に、利益を ○円に、社員も ○人に」という答えが。  それに対し、 1人当たりの売上や利益、生産性を上げたい、労働環境を整えたいと答える人はごく一部だ。要は、新規事業への進出などと、全て拡大志向なのだ。  だが、経営規模の急な拡大は内部崩壊を招く。事業で大切なのは、まず、じっくりと事業のあり方を掘り下げることだ。  人が育っているか、サービスの提供あるいは生産のための仕組みがうまく回っているか、そもそも人が活き活きと働ける環境が整備されているかなどを、自問自答してみるといい。規模の拡大は自らを磨く上で、むしろチャンスロスになる。  私にとって救われるのは、私の塾に入塾して社長力を高めたい、自分を磨きたいと答える人が増えてきたことだ。  与えられた現状でどこまで考え抜くか。また、与えられた経営環境、経営資源の中で、どこまで生産性を上げられるか。実はこのテーマに取り組むことこそが、社長の経営力を磨く最高のチャンスなのだ。平時にこのテーマと戦っておかないと、経営力を鍛えあげる貴重な時機を逃してしまう。  社員が退社してチームから 1人欠員が出たときなどは、まさにこれに当たる。 1人の退社を機会に、組織の組み直し、オペレーションの改革、チームメンバーのレイバースケジューリング、他部門とのやりとりなどを行う。   1人当たりの効率がアップし過ぎたなら、即ち、勤務シフトが限界にきたら、そこではじめて 1人追加すればいい。社員の退社は神様がくれたビッグチャンスなのである。  このように拡大志向を抑制し、現状の中でいかに戦うかをじっくり考えることで、会社をブラッシュアップし直し、生産性を向上させられるのである。逆に、拡大にばかり目が向くと、足元の改善努力を怠り、会社全体が水ぶくれ状態になってしまう。  悲劇のほとんどが、地道な足元の改善努力を疎かにして拡大志向に走ったものであることを忘れないで欲しい。

鬼 100則   49新規出店は地獄への入り口目指すは強靭な金型作り  私が指導する社長たちの耳タコになっている言葉に「新規出店はするな」がある。  出した店が、ようやく利益を出すようになった。すると社長は勢いに乗って発表。「いよいようちの会社も 2号店だ」と。  店長のポストも増えるし、売上は倍だ。社員も増えてきっと社員も喜ぶはずだ……。だが、とんでもない。私に言わせれば、地獄への入り口だ。ご愁傷様と言いたい。  冷静に考えて欲しい。 1号店がうまくいったのは、社長が現場にいて社員と密着した中で責任を持って経営を行ってきたからだ。 2号店を出そうと思ったとたん、いい立地場所のリサーチ、 2号店用のスタッフ集め、出店コストのための資金調達などの準備に追われ、社長が現場に割ける時間は減る。その段階で、 1号店の売上も下がりはじめるはずだ。  もっとも 2号店を出すことによって、売上は多少増えるだろう。しかし、利益はどうか?人件費は膨らみ、家賃などの諸経費は倍になるはずだ。また、出店に伴い、 1号店から貴重な戦力を貸し出せば、 1号店の売上にも影響が出る。何よりも、社長の目が会社全体に十分に届かないという致命的現象が起きる。  そもそも 1号店での問題の積み残しはなかったのか。売上さえ上がれば、全ての問題も自然と解決されていくという甘い期待を持っているなら、それは大間違いだ。  まずは「これ以上やるべきことがない」というレベルにまで強靭な経営の金型を作りあげる。 1号店で埋もれていた問題は、社長の目が離れたとたんに噴き出し、命取りになる。   1号店の段階で強靭な金型を作りあげられれば、その金型で新規出店しても、失敗の可能性は極小化される。焦ることはない。むしろ、将来につながる大切なときなのだ。  これまで金型ができ上がっていないのに新規出店を続けてしまい、その結果、 1店舗ずつ閉店し、社員に辞めてもらい、残ったのは社長 1人と借金の山になったという経営者をどれほど見てきたことか。皆さんにはそうなって欲しくない。間違った方向に力を使い、社長の、社員の大切な人生を無駄にして欲しくないのだ。  だが、社長が十分力を蓄えて社内体制を整え、強靭な金型を作りあげた場合は別だ。反対する理由はない。「出店?いいじゃないか。立地だけは間違えないでくれ。一緒に検討しよう」として応援エールを送ってきたものだ。

鬼 100則   50新規事業参入のヒント  新規事業を探したとき、拠り所とするキーワードをさぐった。 ①地域での普及率がゼロに近いこと ②必要性はあるが、ユーザーがその存在をまだ充分認知していないこと ③供給する側が未整備。即ち、お客様がどこで買えるかわかりにくいこと ④在庫負担が少ない、または支払いサイトが長いこと(回転差資金がプラスになる) ⑤既存の営業マンについで売りをしてもらえること ⑥商品単価が高くローンで買えるものであること ⑦付帯工事などがあって、付加価値が大きく価格がわかりにくいものであること ⑧購入によって、顧客の幸せを最大化し感謝されること  以上 8項を全て満たせば、大成功間違いなし。これぞ完璧なブルーオーシャンの世界だ。  あるときある街で、どこにでもある金物屋にふと目がとまった。物置と思っていた小型プレハブ小屋が実は商品だと気づいたのだ。  そのときピーンときた。 8項目のほとんど全てを満たした夢の商材がそこにある。プレハブ小屋(ミニハウス)は、子供の勉強部屋にも、親の仕事場や祖父母の隠居部屋にもなる。  これを余分な在庫を持たずに、今いる営業マンに売ってもらえば生産性は一気にアップする。しかも平均単価は 100万円。当時の家電店の扱う商品の最高金額だ。  四国で一番売ってみせると豪語し、メーカーから販売の権利を取得。リタイヤした一級建築士をパートで採用し、「一級建築士のいるお店」として信用もつけた。  ミニハウスの中には冷蔵庫、 TV、エアコンなどを設置し、生活感を演出して販売した。すると、 1棟売れるついでに何種類もの家電製品も売れたのだ。  さらにメーカー支払い締め日の翌日に発注すれば支払いは翌々月。しかも全てローン販売のため、先にお金が入ってくる。資金は潤沢になり、家電店舗の大型化も同時にスタートできた。  ミニハウスのみで年間 100棟の実績。これぞ完璧なブルーオーシャンの世界。こうありたいというキーワードを探し出し、ありたい姿を明確にしながらとことん追求し、自分だけのブルーオーシャンの世界を構築していくのである。

鬼 100則   51新規事業に無駄なお金をかけない  パソコンに追い風が吹き出した当時、販売増を狙い、パソコン教室の開設を目論んだ。  その際、全国の注目パソコン教室を数十社勝手にノミネートし、小旅行を楽しみながら順次訪問。  事前に調べておいた近所の住所と氏名を適当に書いて、入会するフリをしながらいろんなコースの説明を聞く。パンフレットや申込書を集め、うまく質問しながら生徒数をチェック。立地状況がわかるように付近を撮影。ついでにクローズした教室があればそれもパチリ。これでなぜクローズしたのか、その理由もわかってくる。  十分集めた資料を分析しながら、成功パターンを書き出した。点と点を結びながら、成功のキーワード、戒めのキーワードを書き出す。  そうやって成功への道筋を明確にしながら、ついに〝楽々パソコン教室〟をオープン。  新規ビジネス成功のためには、目標を高く掲げながらもワンランク下の予算も同時に発表し、達成の確率を上げ、社員に達成感を味わってもらうことが大切。パソコン教室の大半は家電製品展示の 1コーナーを独立させての設置。まずこれで家賃も光熱費も限りなくゼロに近づく。  次に家電のパソコン売場と連動させ、購入に躊躇している人をパソコン教室に案内させて入会を勧誘。これで販売と入会のダブル効果を狙う。  さらに家電のレジ袋に、パソコン教室の案内の勧誘ビラを 1枚ずつ入れる。家電のチラシの片すみにも、勧誘のコーナーを載せる。  パソコン教室の先生の募集も家電チラシと兼用。こうすれば生徒や先生の募集費用も限りなくゼロに近い。  また、教室で使うテキストは、成功している他県のパソコン教室に供給している教材会社に話をつけて、相乗り。決して、コストをかけて自社開発などはしない。  このようにしてあらゆるコストが 1掛けになった新規ビジネスは、失敗しようがない。  そして、当社のパソコン教室の生徒数は 2000名を突破した。

鬼 100則   52売上不振の本当の原因は?  売上が思うように上がらないと、機嫌の悪くなる社長がいる。「担当者のできが悪い。熱心さが足りない。もっと必死で頑張れ!」などと八つ当たり的に社員を怒鳴ったりする。だがそんな表面的な対策を打ちまくっても、まずい結果しか出てこない。売上不振の原因は、実は非常に奥深いからだ。もとより社長には、情熱とクールさという二律背反する要素が必要。このような場合、社長はクールになって、売上不振の原因はもっと奥深いところにあるかもしれないと考えるべきである。  仮に売上の上がらない理由が担当者のできの悪さにあるのなら、その原因は社員教育にある。人手不足のとき、無理してその仕事に就けてしまった人事のミスマッチのツケが回ってきたのかもしれない。  また、店舗経営であれば、人が集まりにくいとか車が入りにくいなどといった立地の選択ミスかもしれない。  さらに、商品構成に問題があったり、在庫管理が不十分でしょっちゅう品切れを起こしているからかもしれない。もしくは、ライバルより価格が高いのかもしれない。  そもそも売上予測の設定方法に誤りはなかっただろうか。また、売上を支えるのに十分な人員配置をしただろうか。販促チラシは見劣りしていなかっただろうか。売上につながるあらゆる作業の標準化が、未完成ではなかっただろうか。  競合激化の中、売上不振の原因にはもっと気づいていない点があるかもしれない。そう考えたら、ライバルより何が見劣りしだしたのかリサーチをしてみることが必要だ。  もっと根本的には、そもそもこのビジネスモデルで今後も戦えるのか。市場環境や顧客ニーズの変化の中、少し変更が必要なのではないかと考えてみることだ。  以上を理解し、売上不振の場合には、商品、オペレーション・人材費など自社内の側面やライバルとの比較、また市場、ビジネスモデルから現在の自社のポジショニングを今一度クールに分析してみることが必要なのである。  このように分析していくと、本当の原因は、過去の社長の判断ミス、または、自社の未熟さであることが多い。要は、余計な感情を入れずにクールに判断しながら、根本的な解決策にまで何としてでもたどり着き、次の手を打つ。これが経営なのだ。

鬼 100則   53売上を上げるための本当の対策  塾生に売上アップのための対策を質問するとよくこんな答えが返ってくる。・販売促進策の強化・販売報奨金をアップする・社員間・店舗間で互いに競わす・客単価を上げる  続々と出てくる。全部正しい。でもちょっと違う。前記は全て、人の努力を極限まで上げて、はじめて可能な手法だ。瞬発力で 2 ~ 3カ月ならまだしも、何年間もは続かない。  人の極端な努力に頼っていると、その人がいなくなったり、やる気を失ったりしたときに全てが崩れ去る。  人の努力にある程度は頼りつつも、仕組みで、チームで達成すれば、特別なストレスを伴うほどの努力も必要なくなる。  「売上 =客数 ×客単価」とコンサルタントの先生は教える。これも正しい。しかしこの発想も、先ほどの人の努力のみに頼った発想だ。  売上アップのための本当の対策は実は一つしかない。ズバリ、社員教育だ。  会社で最も志高く、広い視野で社内外を見つめ考え抜いているのは社長、あなただ。  社長の志すミッションを理解し、次々と誠実に社員が手を打っていけば売上アップは叶えられる。  店舗経営であれば、いい商材を見つけ出し、客に満足感を提供。チラシの枚数を増やすなら、販売員、レジ係、配送員、在庫量を増やし、欠品もなくすことが必要だ。全てがバランス良く連動しないと成果が十分ではなく、コスト割れする。さらにアクセスのいい立地と余裕のある駐車場も必須だ。もちろん、社員の心のこもった接客も。  社長の思いを汲み、同じ方向へひた走る力強い社員のパワーによってはじめて「全てが連動した前進」を生み出せる。忙しい社長 1人では全ての対策は実現不可能だ。社員のレベルが低いと、連動した対策のどこかで大きくつまずき、全体に影響を及ぼす。社長の思い、社員の力。この2つが共鳴してはじめて成果を手にすることができる。  売り上げアップ、それは日頃からの社員教育の賜物なの

鬼 100則   54普通の人が普通にやって成果を上げる仕組み  あなたのところには、残念ながら 007(救世主)やスゴイ人は来ない。  仮に来ても長続きしない。逆に、そんなスゴイ人が来る裏には何かがある。スゴイ人が来て、たった半年や 1年でピンチになった会社は多い。下手をすると会社のノウハウや顧客情報などをライバル社にゴッソリ持ち去られ、自社の売上が激減してしまう例は枚挙に暇がないからだ。また、架空の話で 1億もの詐欺にあった経営者がいる。  ないものねだりをしている間は、会社の改革、改善はストップしてしまう。来るはずのない人を待ち続け、もし来てくれたら大改革をしてくれて会社の業績もウナギのぼり?そんなことを望み続けてはいけない。  自らの力で、今いる社員たちを信じ、全員で話し合いながら、普通の改善をヒタヒタと行っていく。誰でもが実行できる、実行したら成果が上がる、そんなシンプルな足元の改善を積み重ねていくのだ。  まずは会社の全てを棚卸し、その中から不要な仕事を洗い出すことだ。棚卸しの対象は、経営理念や社是、社内各種制度や諸規定、マニュアル集、報連相の仕組み、仕入先、販売先、商品構成、在庫、展示、売り方、コーチャー制度、社員教育などなど。  無駄取りを行って、効率的な仕組みに変えるべきかを吟味する。  社員 1人 1人の適性を大切にし、仕事とのミスマッチを避ける。何よりも、社内の人間関係を良くすることである。そのためには、社内アンケートで社員の希望、困ったこと、意見を定期的に聞くことが大切だ。こういうことに目を配り、社長や幹部が目を輝かせて協力し合い、業務、営業、経営の改革や改善に乗り出して、額に汗して働く。そんな姿に触発された社員たちは、皆共に頑張りはじめ、作り込まれた仕組みが成果を上げていくのだ。  普通の人たちが集まって、コツコツと仕組み作りを積み上げることで、会社そのものを変えてしまう。そんな最強チームを作れば、スゴイ人はいらない。  お金がかかり、いつ辞めるかわからないスゴイ人には頼らない。普通の人が普通にやって成果が上がる仕組みを作って欲しい。

鬼 100則   55情報戦略で正しい決定を下す  私は、何か事をはじめるときには、まず情報を集める。  これは、大学入試やヒッチハイクの旅のときから変わらない。「ありたい自分の将来」と「現在の自分」との比較から浮かび上がる課題を解決するために、あらゆる情報を集め、徹底して分析し、その中から「成功のための確かな要素(キーワード)」を見つける。そして、それらを組み合わせて活用する。これが私の考える「情報戦略」の全貌だ。  情報には、良し悪しがある。いい情報が悪い結果をもたらすことも、多々ある。情報を自分の味方につけ戦略に組み込むにはどうしたらいいのだろうか。  私は、新聞・雑誌の記事の重要な情報、結論部分などは日々スクラップブックやメモに残す。その他の対象は、書籍や講演会、メディアなどの情報媒体の他に、報連相や打合せなどの日常業務からの情報、顧客・取引先・行政・恩師・家族・友人などの日常の意見や会話から得られる情報など。  その資料は今では揺るがない私の強みになっている。  社長はいつであっても、自分の志に基づいて自社にとって最適な解を導き出す義務を負っている。その判断を、今「見かけた」情報だけに委ねていいのか。  新しい情報がもたらした「兆し」や、その周囲について徹底的に調べ、俯瞰した目線で実態を把握する。そこから悩み抜いて社長が下す判断は、自社にとっての最適解となるはずだ。  以前、国内に規制緩和の波が押し寄せる兆しが見えたとき、国内の規制に守られた業界について調べたどり着いたのは、酒業界という答え。さらに情報を深めようと酒業界で新潮流を牽引する企業に接近し、ノウハウを獲得。家電量販店が本業でありながら、酒事業で年商 28億円を達成した。  情報は活用してこそ価値がある。集めたあらゆる情報をどう分析して深く読み取り、どう活かすかである。その中にきっと兆しが見出せるはずだ。  情報を自分の味方につけ、会社の糧にするには情報戦略の「徹底」が必要だ。

鬼 100則   56 2・ 8には売るな  流通業で昔から言われた言葉に「 2・ 8(ニッパチ)は売れない」というのがある。経営者にとって2月、8月は、3月や9月の決算を控えての月であり、 2・ 8は、むしろ重要な月のはずだ。だから社長の中には、「何としてでも2月、8月には予算を達成させろ」と檄を飛ばす人もいる。  だが、決算を控えた社長が一番売れないときにハッパをかけまくるなどという「点でものを見るやり方」をやめて、年間スパンでクールに対処してはどうだろうか。統計的に見て、流通業界の 2・ 8の月間売上がもし最低なら、むしろ2月、8月に売らないとするのだ。  つまり、販促を仕掛けてもユーザーの反応が鈍い時期に無理に売ることはあきらめて、予算も最低にし、会社経営にとって重要と思いつつ、時間などの関係で日頃できないことに人員などの経営資源の多くを振り分けるのである。  社員教育、店舗の大掃除、慰安旅行、半ば強制的な有休消化、市場調査、社内の仕組みの再チェック、マニュアル作り、在庫調査など、考えればいくらでもある。要は、この月は予算を達成すればいいと割り切り、会社の経営の金型を磨く上で、必要と思われることに時間と人員を割くのである。それらのことが、次に大きくつながるのだ。  ものの見方には、近づいていろいろな角度から見る「虫の目」と、高い位置から全体を俯瞰してものを見る「鳥の目」があるが、この場合は、「鳥の目」で 1年という全体から2月、8月を見て、年度を通しての予算達成ができればいいと考えるのだ。そして、 2・ 8を会社全体の収益アップのために必要なベース作りを行う特別のチャンスと捉えるのである。  年間予算を大きく狂わさないためには、むしろ社長がブレまくらないことの方が大事だ。月末や決算月を控えての達成率の悪さに社長が激怒すれば、そのパワーに押されてしまい、もっと売れないかとチラシ枚数や回数を増やすことになる。結果、売上は少しアップするものの、アップした販促費のせいで、逆に利益が大幅に減るのがオチだ。   2・ 8には酒を呑んで寝るわけにはいかないが、「鳥の目」で経営全体の目線で捉えてじたばたせず普段できなかったことを一つ一つ片づけ、年間最低予算の達成を楽しみながらじっくり戦う。「 2・ 8には売らない」は、まさしく名言だ。

鬼 100則   57郵便配達員の教えで売上 130%を実現  訪問販売は効率が悪い。朝礼で、「今日も 1日頑張ります」と叫んで出発したものの、今日も見込客は少ない。「 1日 20軒訪問します!」と宣誓して威勢よく飛び出したものの、実際、有効な訪問は 1日 10軒そこそこ。どこへ行こうかと迷っているうちに、友人・親戚と行きやすいところへつい行ってしまう。そこではコーヒーが出る。話がはずむ。ホッとしている自分がいる。  広い商圏の中で思うままに車で移動するので、 1日の半分は運転手。顧客と接する時間は少なくなり、 1日の商談数は限られ時間も短い。従って売れない。  将来社長を引き継ぐはずの私でさえもこの状況に陥った。私が古参の反対を押し切って導入した日報なのに、 20軒訪問したかのように毎日数件多めに記入してしまうのだ。情けない。  この非効率的な行動パターンをいかにして打ち破るか?社員が嘘の日報を記入しなくてもいい、しかも確実に売上の上がる方法とは?日々悩み、模索している頃、自転車で配達にまわる郵便配達員を目にした。把手のところにバインダーで留めた地図が見えたその瞬間にひらめいた。  次の休日に彼を食事に誘い、郵便物集配の仕組みを聞く。局には、毎日手紙が届く。地区別に仕分けして担当者が受け取る。担当者は、コピーした住宅地図に本日の手紙の届け先を印す。印をつけた部分を道路沿いに結ぶと、最短距離がわかるという仕組みだ。これぞ私が求め続けた〝解〟だった。直ちに2つの手を打った。  1つ目に、商圏を担当者別に分割してテリトリー制を敷いた。2つ目に、コンピュータを導入して社員の日々の訪問の順番をつけた。四十数年前にして我が社はテリトリー制を導入し、個々の訪問はコンピュータが指示書を出すことで、最高の効率を上げた。毎日朝一に、その指示書を見て、事前に電話して在宅確認をしてから訪問したので、効率はさらにアップした。  現状を見つめ、こうなったらいいなという理想のありたい姿を明確にする。反吐が出るほどその実現を渇望すると、あっと驚くヒントが舞い込んでくる。どこまでも妄想し続けることが大切だ。

鬼 100則   58ミッションが浸透すれば社員の力は爆発する  社長が何かを決意したら、社員との合意に持ち込み、共通のミッションに仕立てる。  パナソニック時代、ドイツで私を育ててくれたのは、後に副社長になられた佐久間曻二さんだった。佐久間さんに厳しく指導していただいたおかげで、今の私がある。人生の恩師。  そんな佐久間さんが、パナソニックの副社長を退かれ、 WOWOWの社長の座に就いた。  当時 WOWOWは、直近 3年間で約 90億円の赤字。今こそ佐久間さんに恩返しをしたい。その思いを社員に訴えかけた。  「 WOWOWを日本一売ろう」   WOWOWを売ることを社内の一大ミッションとすべく合意事項にまでしてしまった。  大型家電の販売に比べ、販売額も小さく、効率の悪い WOWOWを売るには意識改革が求められる。時間管理、工夫、意識そしてミッションも求められる。  「まさに、社員教育のまたとないチャンスに巡り合った」と社員を鼓舞した。これにより、社内の隅々にまで「 WOWOWを売るべし」の熱気が伝わる。  私が経営していた家電店は当時たかだか 7店舗。そんな中で掲げた WOWOW販売日本一への道は確かに厳しく、当初はとてつもなく無謀なミッションに思われた。  そこで綿密な戦略を練りあげた。まず、 WOWOWとは何ぞや。過去のいきさつや現状、またお客様にとっての価値、販売トーク、特徴などを徹底的に調べあげた。  まず、トップセールスを 4〜 5人育てあげ、実績を作った。  そして彼らにセールストーク集をまとめさせ、皆の前でいかにしたら売れるかのスピーチをさせた。もちろん売れる環境作りも徹底した。ここまでやれば絶対日本一になれる。  マインドコントロールも効果があったかも。というより、社長がのろしを上げたら、全員が頂点目指して猛ダッシュ。誇るべき軍団がミッションをクリアするごとに磨き抜かれて行ったことも大きい。その結果、ついに日本一の売上を手にした。  明確なミッションが社内に浸透したとき、社員の爆発力は半端ではない。  彼らの誇らしげな輝きが、今も忘れられない。誇るべき軍団作りのためには、日頃、身近なところからテーマをあぶり出しサクセスストーリーを作ることだ。

鬼 100則   59夢の回転差資金ゲット  流通用語に回転差資金というものがある。これは販売資金の現金回収期間と、支払勘定の支払い期間との差から生じる資金のこと。  小さな電器店は回転差資金をプラスにできない販売体系のため、回転差資金は常にマイナス。資金繰りには余裕がなく、新規出店など夢のまた夢であった。対して毎月のように新規出店できる業態に、スーパーマーケットやホームセンターがあった。  不思議に思い、調べてたどり着いた答えは、回転差資金の違いだった。電器屋は仕入れるたびに締め日の翌月支払いが発生し、在庫を抱える。他方、スーパーは、当時支払いが数カ月後、ときには 100日手形まであった。当然、回転差資金はプラスである。それに気づいたときには驚愕した。  スーパーマーケットから得たヒントをもとに、家電店でも回転差資金をプラスにできないかと、目をつけたのが住宅販売。  これが、金物屋でのミニハウスの発見につながった。  ミニハウスといえども住宅である。契約申込みが入れば、信販会社に直ちに申込書を送り、信販会社の審査を通れば入金予定日が確定。その予定日を勘案してメーカーの締め日の翌日に商材を発注する。メーカーの締め日に応じて請求が発生し、支払いを行う。家電店でのミニハウスの販売によって、スーパーと同じ「入金から約 1 ~ 2カ月後に支払い」という回転差資金プラスの仕組みを手に入れたことになる。  これは、それまでの家電販売業ではあり得なかった夢の回転差資金をプラスにするという離れ技であった。全国に 4 ~ 5万店あった町の小さな電器屋の中で、私たちだけが手に入れられたビジネスモデルだったかもしれない。  ミニハウス販売の成功には、もっと大きな意味が2つあった。  一つは、当時の商材としては一番高額な稼ぎ頭の商品を、 1人の営業マンも増やさずに、即ち、従来の家電の営業マンで、誰でも売れるシステムとして構築できたこと。  もう一つは、家電品を他のライバル店で買っていた自分の店に来たことのない顧客を、新たに家電品の顧客層として獲得できたことである。  〝回転差資金〟恐るべしである。

鬼 100則   60妄想の世界が実現を生み出す  パソコン販売比率を劇的に上げたい。そんな妄想が浮かんできた。  家電店にとって、当時パソコンは憧れの的だった。 J社の PC販売比率は 25%くらい。マツヤデンキ、カトーデンキ販売はそれぞれ約 7 ~ 10%。 Y社は約 20%。販売比率が急上昇の Y社を調査したところ、 PCメーカーを買収して一気に P C人材を手中にしたとのこと。これがヒントになって、ひらめいた。マツヤデンキの脱退の準備を進めながら、次の手を打ったのだ。  全国で P C主力の小売店を調査。秋葉原の亜土電子に目をつけ、業務提携してパソコン販売店舗を出店したい旨の直訴状を提出。店名〝 T・ ZONE〟。  「香川の電器店です。マツヤデンキの FC店で売上ナンバー 1です。マツヤデンキと提携しませんか?  今回の交渉が成功すれば、全国マツヤグループ 300店舗で〝アプティバ( IBMのパソコン)〟を販売し、あなたのアプティバ販売を全国一にできます」  このように猛アピールをし、数カ月後、高松に亜土電子の社長をご招待。屋島にある予定店舗をご案内。  そこで「大坂さん、やりましょう。四国一の PC売り場を作りましょう」と意気投合。   2 ~ 3カ月後、「そろそろマツヤデンキの社長に会わせてくれ」との申入れを受ける。申入れはもっともな話だが、実はこの件は、マツヤデンキの社長には一切言っていなかった。カトーデンキの加藤社長と 2人でアメリカへ行った折、亜土電子との提携話をはじめてもちかけた。すると交渉は全て任すとの承諾を得た。  このことを亜土電子の社長に伝え、急遽加藤社長との会談をセッティング。無事に提携が決定。これまで 1台も入手できなかったアプティバをカトーデンキの各店に展示できた。  あわせて P C専門店が調達してきた何百種類もの品揃えのサプライ用品も、そのノウハウと共に一挙に入荷。マツヤデンキを脱退し、カトーデンキと組むにあたって〝妄想〟し続けた「ライバルの Y社に負けないくらいのクオリティーの PC・その関連商品の品揃え」を 1年間で実現できたのだ。  やはり、事業のスタートはいかに妄想するかである。まさに妄想のパワー、恐るべし。

鬼 100則   61川上で勝負してブルーオーシャンの世界で戦う  海外のヒット商品を使った、ブルーオーシャンの世界の作り方を紹介しよう。  世界中の通販会社は、しのぎを削り知恵を絞って戦っている。大半の会社は年数回、分厚い総合カタログをユーザーに届けている(もちろん、今の時代はネット通販と連動しているが)。これらの情報を活用して売れ筋商品の日本総代理権を取れば、ブルーオーシャンの世界を自分で構築できる。  各国のカタログには共通点がある。ジャンル別ページの左上に写真つきで大きく掲載されている商品、または目立つような囲み枠の中に鎮座している商品がある。これらは、売れる注目商品、もしくは利益率が高くもっと売って儲けたいという商品である。  当然、これらは他の商品より説明も丁寧。売りたいという臭いがプンプンしている。この商品が年 2 ~ 3回、さらに翌年にも特別扱いされていれば、まさにそれは人気商品。  その商品のメーカーを調べて粘り強く交渉し、日本の総代理権を取る。その後、中間代理店を募集してそこから小売店へ卸す。もしくは、中間マージンの搾取を避けて、自ら ECサイトを立ち上げて直販する。  (国別の特殊事情にもよるが)他国でのヒット商品の 7割は日本でもヒット間違いなしだ。サンプルを取り寄せ、家族、社員で試用して十分チェックを行い、扱うかどうかを決定すればいい。  要は、日本市場に出回る以前の「川上」を押さえて勝負するのだ。  ただし、超人気商品でも世界企業のものはやめた方がいい。その世界企業が間もなく日本に本格進出してくるからだ。だが、先取りして、まずはこちらに超人気商品を引き寄せるという強気な人は、それはそれで活路を見出せるかもしれない。  もう一つ、次善の策として「その国では有名だが、アジアに進出していない」商品も狙い目だ。日本で成功すれば、アジアの権利も手にすることができるかもしれないからだ。  数年以上続く可能性のある「海外のヒット商品の日本独占契約」というブルーオーシャンの世界があなたを待っている。

鬼 100則   62自宅売却で利益を出す  四十数年前に、人生ではじめて自宅を購入。  私の全てを理解しようとしてくれた親の好意に甘え、私は将来の相続のためにと頭を下げ、少し贅沢だったが 2区画の土地をゲットした。  大きな庭には、当時ブームになりかけたサンテラスを設置。庭の真ん中には特大のバーベキュー設備を作った。特大の鉄板を特注し、左官職人にブロックを積み上げてもらった。部分発注なのでコストは 1掛け。  はじめてのマイホームは、その地区ではそこそこの豪邸だった。サンテラスに子供たちは大喜び。冬には、暖かい空間を特に重宝した。逆に夏は蒸し風呂状態だったが。  数カ月に一度は、決起大会、反省会などと理由をつけて社員を招待。思いっきり焼き肉を食べてもらい、お土産を持って帰ってもらう。社員やその家族にも大いに喜んでもらった。  約 10年間住んだ頃に、高松進出が決定。家の売却を 2〜 3の不動産屋に持ち込んだ。だが、こんな田舎であんな豪邸を買う人はいないとして、あまり協力的ではなかった。  そんなとき、地元の超有名企業の T製薬が、アメリカの教授を研究員として招聘するとの記事を新聞で見つけ、即、企業訪問した。そんなスゴイ人にうってつけの豪邸として勧めたが、すでに宿舎が用意されており無駄足に終わった。  そこで考えたのが「自力で売り切る!」ことだった。自力で自宅を売って、現金を回収し、高松で新しいマンションを購入しようという大きな夢を掲げた。  そのために約 1カ月間、昼夜の食事の 1/ 2を外食に変え、メイン道路沿いの目立つ店に何度も足を運んだ。親しくなった 1カ月後に、「『豪邸売ります!』の、このビラを貼らせてください」とお願いするためである。うどん店、お好み焼き店、定食屋など、来る日も来る日も外食で少し嫌になったが、掲げた大きな夢に支えられ、作戦を続行。  急に足繁く通いはじめた電器店の主人の意図を理解してくれたのか、飲食店の店主は苦笑。何とか壁に貼らせてもらった。  その約 1カ月後、ビラが、関西から毎月四万十川へ釣りに来る人の目にとまり成約。新築時の購入金額そのままを全額回収。 10年間の家賃はタダになったわけだ。大きな夢は「大いなる決意」と「小さな実行」で手に入る。経営も同じ。忘れないで欲しい。

鬼 100則   63社員の想像を超える度肝を抜く福利厚生  最大の経営要素は「人」である。社長は、磨けばダイヤモンドになる社員に「辞めたくない」と思わせる会社作りをしてモチベーションを上げなくてはならない。そのためには夢を語って社員を惹きつけ、さらに「夢の片鱗」を味わわせて社員の心をムンズと鷲掴みにしていくことである。  月並みな福利厚生を全て実行し尽くした私は、社員の度肝を抜くようなサプライズで、彼らのモチベーションをさらにアップさせる秘策はないだろうかと考え続けた。  当時、会員制リゾートホテル、エクシブの販売代理権を獲得し相当数販売していたので、あるとき鳴門のエクシブを全館貸し切りにして、パートを含めた全社員を招待した。  感動する社員を前に新制度を発表。 3カ月に一度、各人の業績に応じてポイントを付与し、そのポイント数に応じて〝夢のエクシブ 1泊無料招待〟というもの。効果は絶大。家族全員での 1泊を夢見て全員がチャレンジしてくれた。多くの社員が全国のエクシブを満喫。これに比例するかの如く、業績はうなぎ登りで、毎年、 1000万円 ~ 3000万円を特別賞与として分配。社員に喜んでもらえば、利益はどんどんついてくることを実感したものだ。  さらに、腰を抜かすほどのインパクトのある施策を次々と実施。アメリカ西海岸、東海岸への旅。カナダ・スキー三昧の旅。ヨーロッパ 3カ国・ドイツワインバイイングの旅。ドイツの新しいサッカー場での日本対イタリア戦に興奮。私が親善大使を務めるザイン城での晩餐会、ドイツ国際平和村での子供たちとの食事会、ベルリンのドイツ大使館での日本語スピーチコンテスト展開などなど、とどまるところを知らず膨張した。  たどり着いたのが、最高益のときのみに実施される最優秀社長賞の家族で地球一周の旅。発表時には社員総会の会場が大きくどよめいた。結果、 7人の家族が世界一周の権利を手に入れた。  社長は、自らの描いた人生設計・経営計画を完成させるためにも、労働環境をよくして社員の不安を取り除くと共に、「夢の片鱗」を社員に味わわせて働きがいのある会社にしていくことだ。そうすれば社員のモチベーションが大幅にアップし、並行して会社の利益も上がっていくこと受け合いである。

変えるにはリスクが伴う。変えなければもっと大きなリスクが伴う。ジョン・ヤング(宇宙飛行士)最も偉大な人とは、日常の小さなことを軽蔑する人ではなくて、それらの事柄を細心の注意をもって改善する人のことである。サミュエル・スマイルズ(作家・医師)

鬼 100則   64会社のスタート時に陥りやすい罠  さあ、創業だ。長年の思いが結実して、いよいよ大海に乗り出す。大いに高揚した気分となり、友人たちに次々と声をかけ、創業メンバーも確定してくる。同じパートナーだという理由で、創業時の 2 ~ 3人を同じ持ち株比率とし、かつ創業時の今が一番大事なときと考え、お前が専務、お前が常務という具合に、現状でのベストの布陣を作ってしまう。  だが、経営者として未熟な段階での持ち株比率の確定や組織の策定はおそろしい。非常に高い確率で 10年後、 20年後に、大きな悩みの種となるからだ。  私のこれまでの経験からも、可能な限り誰よりも多く資金を拠出して圧倒的持ち株比率を保持し、かつリーダーシップを発揮できると思われる人が社長となって意思決定をした方がうまくいく。  とにかくはじめから完成形を作りあげないこと。会社のビジョンに照らしながら、 1年、 3年、 5年、 10年と進むうちに、新しい事業分野が拡がり、そのときどきにふさわしい仲間が次々と参画してくるものだ。そんなときのためにも、スタート時点では社長以外の役職を極力排し、シンプルな組織図のもとで仲間作りを行う。そして、ひたすら自分の志に基づいてありたい未来を構築し、ブレないよう留意しながらフレキシブルに会社を運営していくのである。  ちょっとばかり耳にした情報を深く検証することもなく、即、採用してしまうリスク。安易に社員の希望を全面的に取り入れて、新規ビジネスに次々と参入してしまうリスク。そんなリスクを抱え込めば、魑魅魍魎がひしめくビジネス世界ではひとたまりもない。  会社のスタート時には、「今はいつでも途中形」と心得て、急いで階段を駆け上がろうなどと安易な道に走らないことである。社員数や店舗数が少なく、事業規模が小さいスタート時こそ、会社の基盤をしっかり作りあげる最大のチャンスなのである。慌てずにじっくりと足元を固めつつ、経営者たる社長の考え方をどんどんと深めていって欲しい。  この過程で手を打つのが早過ぎ、規模拡大に走ると、会社の弱体化につながっていく。「今はいつでも途中形」という言葉を胸に、会社の成長を長期スパンでの自らの生涯ストーリーとリンクさせながら、 20年後、 30年後の壮大な夢の実現に向かって、堂々たる歩みを続けて欲しい。

鬼 100則   65経営の大元を押さえる  どの経営者も、戦いの日々を送っている。毎日の数字データをチェックし、ルーティーン業務が想定通りうまく回せているか、突発的に起きてくる問題にどのように適切に対応すべきかなど、目の前の業務処理に忙殺される毎日のはずである。  だが、社長が日々どんなに愚直に、そして真面目に働いていても、ある日突然、まるで天が見放したかのような大きな落とし穴にはまってしまい、再起不能に陥ることがある。  これは日々の業務に忙殺されるあまり、目の前の業務処理などにばかり目が行っていたことが仇となり、会社存続に関わる重大テーマを見過ごしていたことに起因する。重大テーマとしては、ざっと見て次のようなものが挙げられる。  ①持ち株比率  ②運営の実権  ③印鑑・通帳の管理  ④人事権  ⑤組織上のポジショニング  ⑥ブランド名、メイン商材の権利・特許・商標登録  ⑦土地建物の賃借契約・期限・代金  ⑧保証・担保  ⑨ F C・ VC契約の中身・解約条件  ⑩借入金・金利などの条件  ⑪販売先や仕入れ先の中でウエイトの高い取引先への対応や、在庫高の中で大きな比率を占める商品の完全コントロール  ⑫社員との絆作り・社員に寄り添う  時代の先端を行くコンセプトが受けて大繁盛となり、マスコミ取材などで一躍脚光を浴びた居酒屋のオーナーが、 2号店・ 3号店と多店舗展開を図ろうとした矢先、地主から賃借契約の期限切れ(正確には、期限が来ても借主側から契約更新の申し出がなかった)を理由に退去を求められたため、続けられなくなったという悲劇がある。  また、大塚家具のお家騒動の例を引くまでもなく、創業者の家族や親族などに株式が分散されており、社長の株式保有が少なかったために、親族同士の敵対が原因で社長を解任されるということもありうる。  経営者たる者は、月に 1回は無理でも、年に数回は、これらの会社存続に関わる大きなテーマについて深く考え、じっくり手を打つことが必要である。  そして、今から手を打つべきテーマを毎年、あるいは半年に一度はどうしたいのかを真剣に考え、長期計画の中に落とし込んでいくのである。そうしておけば、とんでもない悲劇を避けられる可能性は高まる。

鬼 100則   66株争奪戦 ~あなたの持ち株比率は ~  塾生たちからの質問で大変深刻なテーマは株の問題だ。 ①創業のとき、 2人で立ち上げ、持ち株比率は 5: 5。その後 1人は社外に去り、今裁判中 ②創業者が死亡。その後創業者一族から株買取請求。その額なんと 10億円。塾生は代表取締役、しかし、持ち株ゼロ ③妻と離婚。大事に至らぬ前に全株買取 ④ M& Aで売却を計画。古参 1人が 20%保持。売却反対に遭い難航 ⑤創業間もないが、毎年最高益を更新中。社員持ち株制度を要求される ⑥ 3兄弟に早くから等分に株を分配。その後後継者は 1人に決定。他の 2人分を買取中 ⑦創業者の死亡をきっかけに、 10年前に株を分配。買い戻し費用なんと数千万円 ⑧やり手の古参幹部の持ち株は 10%。もし今買取請求されたら 6000万円。それを知ったら退職して郷里に戻り、独立するのではないかと日々心配 ⑨ナンバー2の役員就任時に 10%を贈与。トラブルで退社。法外な金額での買取請求  会社が成功すると、功労者を役員にしたり、株を持たせたくなったりする。あまり義理人情を働かせすぎると、のちに大変なことになる。長期ビジョンの中で、冷静にことを進めていこう。  特に、肩書きと株は一度付与すると、元へ戻すのは至難の業だ。  長い間お世話になった功労者に報いたい気持ちは、それはそれでいいことではある。  しかし、会社の成長と共に、これからも次々と優秀な人が入社してくる。  そのときの社内バランスは非常に微妙だ。できることならあまり拙速にことを運ばず、ゆっくり少しずつ取り組んで欲しい。そのときのみで判断しすぎない。そのときはこれから何度もやってくるのだから。  ところで、持ち株比率が 0とか 1 ~ 3割の社長も多い。どんな事情があるにせよ、これでは雇われ社長だ。いざというときに何の権利もない。  業績が悪いときなどのチャンスを決して見逃さず、株式移転を進めて欲しい。  将来成功するために頑張っているのに、成功したときは、株価は手をつけられないほど高くなっているかもしれないのだ。

鬼 100則   67レイバースケジューリングで無駄を省く  各地で講演の際、「レイバースケジューリングを導入している会社はどれほどありますか?」との問いを投げかけても、実行されている会社はほとんどない。  レイバースケジューリングとは、 1人 1人の社員が、毎日、単位時間当たりどれだけの仕事をしているかという実態を把握し、無駄な時間を削ぎ取って生産性を上げるための手法である。   1人の社員について 1週間、毎日の作業を 15 ~ 30分刻みで分析する。すると彼の能力からして、担当させておくのは勿体ない生産性の低い仕事が必ず浮かび上がる。  電話対応など作業途中に彼がしなくてもいい仕事のせいで、たびたび作業が中断させられていたような場合、中断されたその時間がなければ、彼の仕事はもっと効率よく進められたはずだ。  そんな「彼でなくてもできる」生産性の低い仕事を集め、学生アルバイトに振るなどして、彼にしかできない、彼本来の能力に見合った仕事に集中してもらう。  他の 3 ~ 4人の社員からも彼らの時給より安い仕事を集め、時給 1000円の 1人の学生に割り振れば、 1人当たりの労働生産性は格段に向上する。これがレイバースケジューリングだ。  このレイバースケジューリングを、課内、部内、社内全体へと押し進めていくと、社員 1人 1人に、 1日または 1週間の枠の中で 2 ~ 3割の時間的余裕が出てくる。部長がしなくてもいい仕事は下に下ろし、その時間を使って部長本来の仕事を精度高く突き詰めてもらうなどが可能となるわけだ。  レイバースケジューリングは、社長こそが率先して行うべきだ。 1週間を分刻みで考えたとき、今社長がすべきではない仕事が山ほどあることに気づく。そこで捻出できた時間を会社の 5年後、 10年後を見据えた経営戦略の構築に当てたり、社員のルーティーンワークにメスを入れて効率化を図ったりすることが可能となる。  このように無駄な仕事をなくせるばかりか、本来なすべき仕事の漏れを防いで、各社員には会社から要求されるタスクをしっかりこなしてもらう。これを忠実に実行すれば粗利益額 10 ~ 20%アップは間違いない。しかもこれは、社長にしかできない仕事だ。

鬼 100則   68レイバースケジューリングで危機を脱する  関東のある会社でクーデター発生。  「3月末日までに社長一族全てが辞任しないなら一斉に退社する!」  この要求を呑まなければ会社は倒産するかもしれないと、 SOSを発信する塾生が、夫婦で何度も訪ねてきた。  資料を提出してもらい精査した。一番重要なのは組織表からの分析とデータ。すると、だんだん実態が浮き彫りになってきた。  何としても倒産だけは避けたい。追い詰められた社長の願いを叶えようと知恵を絞る。  そこで、伝家の宝刀〝レイバースケジューリング手法〟で、誰が何をどのようにどれほどの時間をかけて行っているかを分析したのだ。すると、クーデター参加者の人件費が全体の 80%以上を占めることがわかった。もしこの人件費をぶっとばすことができたら、夢の人件費 1掛け戦略が実現するのだ。そこで、まずはクーデターを起こした社員全員に希望通り退社してもらう。  運のいいことに 1人の優秀な 007(スーパーコンサルタント)が月に 1 ~ 2回の契約で活躍してくれていたので、週 1 ~ 2回来てもらうことにした。さらに 2人目の 007と契約して、月に 1回、年 12回指導してもらう。 2人目の 007は何を隠そうこの私だ。  3月末にクーデターを起こした社員を一斉に退社させ、4月、5月、6月の 3カ月で新たに社員をかき集めれば何とかなるのではないかと計算。このシミュレーションによれば総人件費の 80%が削減される。だから、売上が 3 ~ 4割落ちても半年持ちこたえればなんとかなる。4月から毎月売上は急降下。その間、社長と 007が活躍し、少しずつ社員・パートの補充を続けた。  大きなつかえがとれたのか、社長は経営面で実力を出しはじめた。優秀な 007が週 2日勤務にシフトしてくれたことも大きかった。新入社員にも素晴らしい人たちが次々と加わってきて、新しく生まれ変わった新体制で今後の躍進が期待された。  そして決算を迎えた。なんと過去最高益。シミュレーション以上の大成果だった。会社が大ピンチに陥った際に、数々の決断を迫られ、見事に会社の危機を乗り切った社長と奥様に大いにエールを送りたい。

鬼 100則   69毎日 1時間は面談禁止  仕事の効率の悪い社員の傾向を調べてわかったのは、次のようなこと。  彼らは、人が良くて、上司や仲間から作業を頼まれると断れない。そのため、引き受けて頑張っている内に、本来の自分の仕事が滞って周囲に迷惑をかけてしまう。  もっと仕事に集中したい、この仕事をやっつけてしまいたい、と思っているのに、社長や上司の突然の呼び出しや会議、または突然の新たな作業追加によって本来の仕事の流れがズタズタにされてしまう。  そんな多くの社員の抱える悩みを解決する方法が一つある。毎日あるいは週に何回か、例えば 1 ~ 2時間全員が業務に集中する時間を決めてしまうのだ。  可能ならその時間内は、取引先からの電話や訪問もご遠慮願う。または、当日の担当者が 1人で全て対応する。取引先の担当者が突然訪問してきた場合、これまでは、ニコニコと誠実に対応していたため、先方のスケジュールの都合のおかげで、こちらの肝心な仕事にブレーキがかかってしまっていた。しかし、これからは事前にアポイントを取って、面談テーマも事前にメールしてもらう。面会の必要性があまりなければ、丁重にお断りする。これで仕事の効率は 20 ~ 30%アップすること間違いなし。  あるとき、生産性が低いと言われているA子さんと個人面談した。  彼女のレイバースケジューリングをまとめてみると、原因は明確だった。人柄のいい、心優しい彼女は周囲の多くの人からお手軽に利用されていたのだ。お手軽に引き受けてくれるため、業務を渡す側の人も自分の仕事の効率化を考える必要がなくなる。お手軽に引き受けてくれる分、自分を磨くチャンスを失うのだ。  そこで、彼女への雑多な依頼項目を関係者で話し合い、整理整頓した。  そのときに浮かび上がってきた各項目のうち、不要なものをカット。必要なものでも各人に割り振りし直す。さらに残りの項目は仕事の少ない人、または新規採用したアルバイトに担当してもらう。こうすれば社内の月間効率は相当アップすること間違いなしだ。  とにかく今一度仕事の中味を精査し、社内外に働きかけて各自のコアタイムを確保しよう。 1人でじっくり考える時間が増え、自分磨きのスピードも上がる。そして社員 1人当たりの生産性が確実にアップする。

鬼 100則   70大きなトゲを取り除け  入塾時、塾生たちには、経営の現状の問題点などを洗い出すための「見える化シート」を 25枚手渡す。その中には、ゾンビのように社内各所にはびこる大きなトゲをあぶり出すシートがある。・職場の悩みワースト 10・こんなものいらないリストワースト 10・業務を妨げている(社内)ワースト 10/(社外)ワースト 10・発生したトラブル(社内)ワースト 10/(社外)ワースト 10  これらはいずれも、社員からアンケートを取ると続々と出てくる、大中小のさまざまなトゲだ。こんなトゲと日々戦ううちに、社員たちはだんだんと疲れ、諦めの心が芽生えてくる。そして生産性は低下し、離職者がではじめる。  こういうトゲが社員たちに刺さったままでは、会社の躍進などはとうていおぼつかない。現場を動かす大切な彼らから、いかにうまく、かつ早くトゲを抜き去るか。社長の度量とスピードが試される場面だ。  社長の勇気ある判断、行動により、社員たちは長く悩んできたテーマから解放され、職場が一気に息を吹き返すことも多い。  社長たる者、常に社員たちの思いに心を寄せ、彼らがストレスを感じることなく、職場で思う存分活躍して欲しいと願っているはず。  なのに、なぜ解決への一歩を踏み出せないのか!  それは、大きな志、夢がどこかへすっとんでしまったからか。過去幾度となく試みた改善に対して思わぬ抵抗を受け、いつの日か諦めてしまったからか。それとも日々の雑務に忙殺されてしまったからか。あるいは社内テーマの遅れについて社内の誰からも指摘を受けないことをいいことに、社外活動を優先してきたからか。  社長としての責任感、使命感の置き場を間違えてはいけない。この際原点に戻り、社長にしか与えられていない役割をまず果たすべきだ。  やってみると意外とうまくいき、社員のやる気の沸き起こった顔に笑みがこぼれる。社長の「実行力」のすごさを味わって欲しい。

鬼 100則   71現場に神宿る  「現場に神宿る」という言葉がある。中坊公平氏(弁護士)の言葉だ。また、「神は細部に宿る」というドイツ建築家のミース・ファン・デル・ローエ氏の言葉もある。  社内で何か、事件・事故が発生すると、社長をはじめ、幹部連中が終日集まって会議に次ぐ会議の中で右往左往する。だが、事件の原因のさらなる原因は、社長室内にも、役員室内にも、会議室内にもない。現場にあるのだ。兎にも角にも、現場に足を運び、原因を追及しなければことははじまらない。  現場に足を運んだら、 1人 1人からヒアリングをし、 1枚 1枚の資料を分析し、その中に潜んでいる原因を追及する。原因を発生させた元凶を、根元まで深く掘り下げて探るのだ。探し求める元凶がそこに潜んでいるに違いないからだ。  私の場合、まず社内の組織図及び、社外との関連図をにらみつけながら、発生した事象の関連性をたどる。そして、然るべき人をセレクトしてプロジェクトチームを組む。  私の代わりに彼らがチームとして現場に赴き、原因の原因までとことん掘り下げ、 1人 1人からヒアリングをし、 1枚 1枚の関連資料を分析するのだ。  神様が支配する現場には、数多くのヒントが潜んでいる。ちょっとしたことでも何らかの兆しと捉え、その兆しと思われる事象を極大化したり極小化したりしながら、あらゆるシミュレーションを行うのだ。  そして、その中から浮かび上がってきた気になることをつなぎ合わせてみる。つなぎ合わせながら線にして、最終的に画像に仕上げていく。彼らは、それらについて逐一上層部に報告しながら、原因の元凶を絞り込んでいくのである。  社長室や幹部会において、さらには頭の中でいろいろ思い巡らせてもまとまりのなかったことについて、現場のあらゆる情報に接する内に大きな解が見えてくるのだ。  まさに、〝現場に神宿る〟〝神は細部に宿る〟である。  何か問題が起きたとき、社長らしく振る舞おうなどとして、これまでの経験から軽々しく事件の原因を判断してはならない。まずは現場に足を運び、現場を預かる社員の話を聞きながら、現場のどの部分に事件の元凶が潜んでいるのか、謙虚に追及する姿勢が大切なのである。

鬼 100則   72オールリセット内観のススメ  会社の業績も順調に上昇を続けていたが、何かが足りない。社員も頑張っているし、私も頑張っている。オペレーションの改革、立地選定もレベルアップ。リクルート戦略の完成度も高まった。社員教育のレベルアップは他に自慢したいほどだ。社員 1人 1人に寄り添って他社ではやっていない独自の戦略も多く成果大であった。  でも、何かが足りない。業績は、 3 ~ 4年ごとに倍々ゲームで成長してはいるが、力ずくで引っ張っている感がある。  会社としては 80点をクリアし続けているが、決して 90点ではない。 90点ではない未熟さが随所に現れ、力を消耗して疲れる。しかも毎年繰り返すテーマとの格闘だ。  やはり完成の域にはまだまだ距離がある。  なぜだろうと悩み続けた。そんなときに出会ったのが〝内観〟だ。  これは、己の内面を見つめ、自分をさらけ出すことにより、自分自身を深く知り直すこと。つまり、幼少期から今に至るまで、両親や兄弟、知人、先生や友人にしてもらったことを整理し直すのだ。それにより、現在の自分が形づくられた原因が明確になる。  次第に両親、仲間、家族への大きな感謝の念がふつふつと沸き上がり、新人もベテランも、昨日までとは別人のように物事を考え、振る舞いはじめる。  これは、個々人が現状からの脱皮 →変身 →成長を遂げていく大きなきっかけになる。  社内ではこれを「成功への鍵を見つける過去への旅立ち」と位置づけた。  我が社に不足しているものは、これだったのだ。以降、〝内観〟の世界にのめり込んでもう 30年近くになる。私が運営している大坂塾でも 10年前から導入している。  一般社員、ベテラン社員、経営者、後継者に特化した〝内観〟。この制度の導入により、今一歩突き破れなかった壁を突き破り、会社のレベルを数段引き上げることに成功した。本人が何とかしたいという思いが強いほど、〝内観〟の効果は絶大だ。「突き破るべき壁」という成功の鍵を見つけたとして、絶大な効果を心から願っている人には最高の時間になるはずだ。大きく脱皮した塾生はすでに 200名を超す。  今からでも遅くない。大切な人の脱皮のためにも、〝内観〟をとり入れることをおすすめする。

鬼 100則   73お客様の生の声で経営改革を実現  とりあえず手っ取り早い、しかも効果的な経営改善策がある。  1つ目は、お客様の声を聞く。2つ目は社員の本音を聞く。この2つに定期的に耳を傾ければ、 2 ~ 3年で会社は大変身できる。私が経営していた会社では、以下のようにして精度を順次上げていった。 ①アンケート用紙を社員と協業さん(契約業者)からお客様へ直接手渡ししていたが、ほぼ全て良好な反応にビックリ →揉めたお客様には渡していなかったことが判明。 ②商品の梱包箱の奥深くにアンケート用紙を入れ、抜き取れないようにする。お客様が開梱して自宅で記入して返送。実態が浮き彫りになり、一気にクレームが増えた。 ③接客したが大型商品を購入せずに帰った人の中には不満を抱いている人も多い。その人が小物商品を買ったとき、レジ袋の中にアンケート用紙を同封したり、店内各所に目安箱を設置したりする。 ④大型商品の配送セッティング後、一定期間内にアトランダムに配送伝票をめくり、直接電話を入れる。効果絶大だ。自分の修理や配送の態度を本社に直接ヒアリングされる。おのずと緊張が走り、クレームは激減する。 ⑤ミステリーショッパーズの活用。可処分所得が少ない社員の奥さんやパートを臨時雇用。ちょっと気になる社員の担当商品を購入させる。そのときの商品説明やクロージングを録音して、後日テープ起こし。本社担当者に分析させる。  アンケートを 2グループに集約。「ベスト 10とワースト 10」を総会で社長が発表。ベスト 10は名指しで、社長の見えないところでここまでお客様に心遣いしていることに感謝を述べる。ワースト 10の発表は実際のエリアではなく、本人の特定が難しいようにカムフラージュして「まだこんなことやってる社員がいる。その原因は実は ○ ○だった。彼だけのせいではない」と厳しく叱って、必ず最後に救済する。   1年に 1回、または 2 ~ 3年に 1回実施するだけでも効果は絶大。社員は今日も目の前にいるお客様がミステリーショッパーかもしれないと思い、誠心誠意対応。常に真剣勝負となる。社員には申し訳ないが、こんな試練を受けながら、 1人 1人がプロフェッショナルへの道を自ら切り開いていって欲しいと願うばかりである。

鬼 100則   74メンターを使いたおせ  世界中には〝すごい人〟がいた。そして今も世界中には〝すごい人〟がいる。その人が生涯をかけて築きあげた考え方やビジネスモデル。それは私が 1000年かけてもたどり着かない驚くべきレベルだ。幸いにも、今の時代は PC 1台あれば難なくその世界をのぞき見られる。そこには大いに参考になるその人の情報がまとまって満載されている。  だが、会社経営の真っただ中で苦しみ悩んでいるとき、テーマに 100%フォーカスしてヒントをくれるのは、 PC上の情報よりも、メンターとなる〝すごい人〟そのものの力だ。直面している問題の解決どころか、その先の先まで示唆してくれるからだ。  しかし、そんな人は社内にいるはずもなく、年収何千万円払っても社員として抱き込むことはまず不可能。だったら、週に一度、月に 1 ~ 2回、または年に数回会って指導を仰ぐことにすれば、年に数百万円か 1000万円の支払いでこと足りるかもしれない。これなら正社員あるいはパート 1人分の人件費でしかない。だが、それでも万金に値する。  だからこそメンターに近づき、メンターにかわいがってもらい、メンターのエキスをそっくりいただく。気に入ってもらえれば値千金。要は、メンターのパワーをしゃぶりつくすほどの思いで対峙するのだ。   1人で何年も悩み続けていたあなたのテーマがたちどころに解決する。限りある人生だ。時間をもっと大切に。あなたの貴重な時間を大幅にショートカットせよ。そのためにもメンターの活用を急げ!  では、どうやってメンターを探すのか。自ら探し求めるのだ。  その際、我が社にはどんな特性のメンターが必要なのかを考える。社長や幹部に強烈なヒントやアドバイスをして欲しい。社員のモチベーションも大幅にアップしたい。会社の労働環境をもっと整えたい。このように自社に必要なメンターの要件を具体化するのだ。  それが決まったら、こちらの要望にかなうメンターを正式に募集すればいい。何度も面接し具体的に何ができるのか、そして、過去どんなところで何をしてどれほどの成果があったのかを正しく掴み取ることだ。  有料でお試しに 3 ~ 4カ月使ってみてから 1年毎更新を条件に正式に契約するのも一法だ。だが、中途半端でいいかげんなコンサルタントが横行しているので用心した方がいい。

鬼 100則   75社員を守れ!会社を守れ!  メーカー主催の新商品勉強会。社員にはもっと成長して欲しい。そのための勉強のチャンスを与えたい。多くの社長はそう願い現場対応に多忙な中、有能な社員をチョイスし、彼らに時間を割かせて勉強会に派遣する。  そこには新商品が並び、コスチュームに身を包んだ素敵なお嬢さんたちの、笑顔で親切な説明がある。多くの社員が、普段とは違うゴージャスな場所での非日常的なシーンの中で、夢のような数時間を過ごす。気分も次第に高揚してくる。  いろいろな人との名刺交換。当然、そこではライバル社の人たちとの交流もあり、お互いに相手の現状を探り合いながら、ときには会社の待遇についての会話も交わされる。  「えっ、有休も取れず、夜 8時まで仕事してるの?大変だね」  「それで、給料はいくらくらいもらってるの?」  後日そんな情報が、ライバル社の上司に伝わり、食事に誘われ、転職の可能性を探られる。  運が悪ければ数カ月後、勤続 10年のベテラン社員が他社の名刺を持つことになる。  こんなことを考えると、メーカーから新商品勉強会の誘いがきても、他社の有能な人との交流で何かが起きなければいいのだがなどとして、心が悪い方にざわめいてしまう。  かくしてメーカーからのせっかくの招待も、巧みな口実を作って断ってしまう。  だが、こんな場合にも、対策は3つある。 ①社長がしっかりと経営の舵取りを行い、多くの社員を満足させておく ②社長と社員との間の信頼関係を確立し、絆を深めておく ③メーカー主催の新商品勉強会には参加させない  だが、 ③は、新知識の吸収に遅れをとるばかりか、社員にはネガティブに映る。  この場合、社員 1 ~ 2人の派遣ではなく、数カ月間の仕入れ約束の見返りに自社社員のみの勉強会をメーカーに開催してもらう。条件により素敵なお嬢さんにも来てもらう。  こうすれば引抜きのリスクを低減させた上で、より多くの社員のレベルを一気にアップできる。有能な社員を守り、ひいては会社を守るためにも、このように社長には日々必死の経営の舵取りが必須であることを忘れてはならない。

鬼 100則   76立派な規定集の落とし穴  ふと気づくと規定集が十分揃ってない。  就業規則をもっとしっかりしたものに変えたい。帳票類ももっといろいろできるはずだ。  そこで、専門家の意見を聞いて契約。何回かヒアリングを受けただけで、何カ月かあとには相当立派な規定集ができあがる。部厚いページにふさわしい相当ビッグな請求書も届く。  不思議なもので、経営者はこれらを見ると大いに満足し、会社が非常に立派になったような気になってしまう。  しかし実際は、膨大なページ数のために、その規定集はなかなか活用できない。  社員に徹底する間もなく、運用を開始。現実の問題に規定を当てはめてみたものの結局、現実とうまく噛み合わない。  運用すればするほど、修正点や矛盾点が露呈してくる。ついにはページ数こそ少ないものの、現実的だった昔のシステムの方が懐かしくなる。  本当に必要な規定集や帳票類は、はじめは必要最低限のボリュームで十分だ。  あるべき理想の姿を求めながらも、現実をしっかり見据えつつ苦しみながら、自分の手で作成すべきである。  最初は超シンプルな雛型を参考にしながら、とにかく自前のものを作りあげる。会社の成長と共に、いろんなテーマが湧き上がってきたら、それに対応しつつページ数を増やしていけばいい。自分たちで作ったものだから、その規定集・帳票類は十分活用できる。  社員には全て公開し、認識を共有する。立派すぎる規定集や帳票類は現実離れしていて、所詮社長室や本社の飾りものになるだけだ。  過大な情報量は活用しようという覇気をも失わせる。本当に必要なデータだけに絞り込み、絞り込んだ帳票類は十分分析し、現場に落とし込み、そして活用する。  結果として、絞り込んだ手作りの帳票類が役に立ち、業績は大きく向上する。  とにかく規定集にしろ、帳票類にしろ、立派すぎるものには要注意なのだ。

鬼 100則   77経営のリスクリスト  次のようなコントロール可能なリスクについては仕組み化を行い、日々の経営業務の中で対応するように心がけなくてはいけない。 Ⅰ社長個人に由来するリスク ①交通事故などによる社長死亡のリスク:与える影響度が格段に大きい。後継者の育成 ②大型詐欺に引っかかるリスク:うまい話はない。弱い社長に狙いをつけてくる ③犯罪に引っかかるリスク:裏リベートで社長が逮捕される事件があった。何が犯罪に該当するか、特に商法上のリスクは十二分に研究しておく。影響度が大きい ④社長の思いつき発言:現場から離れている社長の権威をかさに着た「こうした方がいい」という思いつき発言は、会社ルールを壊していく。発生頻度は少なくない ⑤おつきあいの甘い罠(友人の紹介・義理に因る保険加入、建築発注、コンサルタント等) Ⅱ会社のマネジメント等に由来するリスク ①「設計ミス」のリスク:リコールや商品回収は信用面・経済面のダメージが大きい ②契約書のリスク:社長が自分で内容を深くチェックすること ③恵まれ過ぎたビジネスモデルがもたらすリスク:ビジネスモデルが良すぎると、ずっと勝ち続けられると過信して危機感がなくなり、手を打たない中でリスクが増大する ④子への承継のリスク:親子に溝があるのに十分な教育をしないまま承継してしまう ⑤負けの習慣化:計画未達という負けの習慣化が、社員のモチベーションを下げて生産性を落とし、果ては会社の将来性に希望が持てずに社員が会社を去る ⑥オペレーション不備に由来するリスク:売上不信の本当の原因はこれが多い ⑦優越的地位を濫用(返品・作業協力・仕入れ力):訴えられるリスクを想定する ⑧立地選定のミス:立地選定の基本を知らない Ⅲ社員個人に由来するリスク ①社員の就業違反行為:会社に損害を与える不正を働いた社員を徹底的に追い込んで解雇するとネットなどを使った報復もありうるので注意する ②情報漏洩・データ流出: PCに USBを差した社員を特定できる仕組み化などにより情報漏洩リスクを少なくする

およそ事業をするのに必要なのは、する力ではなくそれをやりとげるという決心なのである。ブルワー・リットン(小説家)成功の秘訣?それは大きなビジョンが持てるかどうかだけだよ。ビル・ゲイツ(実業家)

鬼 100則   78とんがりすぎた部下の専門性と社長の自信喪失  優秀な社員がいることで会社のかじ取りがうまくいかないという相談をよく受ける。  優秀な社員とは、専門分野で特別に秀でている社員だ。特に P C分野の人材や、トップセールス、レベルの高い資格保有者、または非常に頭のいい人などがそれにあたる。  彼らに見られる傾向として、社員を含め上席者をばかにすることだ。そして、自分の意見をひたすら通そうとする。結果、周囲との調和ができず、チームワークにヒビが入る。  一方で社長は、その人の専門性が高く優秀であればあるほど、とかく勇気をもって直言できなくなりがち。これを見抜いてか、彼らはその言動をさらにエスカレートさせる。  彼らの共通点として挙げられるのは、広角的なものの見方や長期ビジョンが欠如していることである。会社が一番大切にしているのは、仲間たちとの絆、チームワークだ。しかし彼らは、会社の成果がチームワークによって築きあげられていることに気づいていない。  気づいていないばかりか、気づこうともせず、自分の得意分野にのみ光を当てて、自分の優位性を決定的に周囲に認めさせるような発言を繰り返す。  そんな人材を前に、経営者としてどう対処すべきか?  縁あって会社に来てくれた社員である。組織社会の常識がわからないからといって、上司や仲間が批判し、その芽をつぶしてはならない。私はそんな 1人 1人に対し、さらなる成長を願い、次のように話した。  「ことさら自分の優秀さを強調する君の発言は、周囲には痛くてしょうがない。君の得意な能力は皆の認めるところだ。それよりも部下に教えることで、君が持つ特色や特技をもっと会社全体に拡げてくれないか。その素晴らしい君の得意な能力は、他に自慢するためにあるのではない。皆のため、会社全体の発展のために使ってはどうか。そうやってみんなを引っ張っていって欲しいのだ。そうすれば、君はもっと上のポジションを狙える。責任者として上の立場から眺めた会社の景色は、今とはまったく違う壮大なものだよ。そこを目指してみないか」  彼らは、自分の得意な能力を認めてくれ、かつ、それの活かし方まで伝授され、エールを送ってくれたことに大きな手ごたえを感じてくれる。凝り固まっていた彼らの殻は、次第に取り払われ、素晴らしい社員として成長してくれるのだ。

鬼 100則   79ナンバー2は最大のリスクと心得よ  あえて言う。ナンバー2の存在は会社の最大のリスクであると。  多くの経営者が、自分の自信がない分野で力を発揮し、会社を成長させてくれるナンバー2に大きな期待を寄せる。ナンバー2は社長の期待を知り、力を尽くし成果を上げる。  するとナンバー2には「社長ができないことを自分がやっている」という自信が次第に芽生える。その自負が、「自分がいないとこの会社は回らない」という感情に変わる。  何年かあとには、「彼さえいなければ」と考えるようになる経営者は少なくない。  社長からは「自分がトップであるかの如く振る舞ったり、社長の発言を陰で否定したりするようになった」と、悲鳴のような声が聞こえてくる。しかし、ナンバー2、社長、どちらが悪いわけでもない。ナンバー2というポストが、彼を変節させるのだ。「ナンバー2の性」なのだ。  社長が自らしなくてはいけない仕事、すなわち会社全体はもとより、個々の社員に目を配り、判断し、自らの熱い思いを会社の隅々にまで浸透させるという大切な仕事。この仕事を安易に他人に任せたことが原因だ。ナンバー2を暴走させ、ナンバー2自身の成長さえも止めてしまったのは、他ならぬ社長なのだ。  これは、社長にない強い営業力により、ナンバー2の売上が、会社の売上の大半を占めている場合や、代替の利かない ITや経理の責任者である場合に起こりやすい。  もちろん、世の中には素晴らしいナンバー2も数多く存在する。しかし、発展途上の中小企業では、このような傾向は 6、 7割の確率で当たっていると思う。  では、ナンバー2問題を防ぐにはどうすればいいか。社内のナンバー2にあたるポストを 3人分作り、 1人に権限を与えすぎないことだ。ナンバー2の立場に安住することなく、 3人が切磋琢磨し、より成長できるような組織の環境にするのだ。  社長は彼らの思いとパワーをテコに、彼らの力を存分に発揮させれば、会社は躍進する。ナンバー2に任せてしまうのではなく、社長自身が会社の「核」として発信し続け、求心力を保ち続けるのだ。そうすれば、ナンバー2ほど頼りになる人はいないという、健全な構図が作っていけるのだ。

鬼 100則   80なぜ人が集まらないのか?とんがっているか?  ハローワークをはじめ数々の求人媒体に募集広告を出しても、人がなかなか集まらない。その理由は明白だ。そんな募集広告は求職者の目からすれば、大体次のようなものだ。 ①目立たない ②その他大勢の中の一つとしての存在でしかなく、それ以上のものではない ③行きたくなるような特別な魅力が何一つない  要は、募集広告がとんがってない!  では、自社のどこをとがらせるべきかというと、次のようなものがあげられる。 ●社長の目指す志、会社のミッション、それを支える社員たちの思い ●会社の風土、仕事の仕組み ●整備された労働環境 ●人事評価制度 ●自慢の商品やサービス ●自慢の制度:(例)コーチャー制度/月に 1回週休 3日制/テレワーク/チャレンジポストで仮昇進/最優秀社長賞:家族で地球一周の旅など  特に多くの人が食らいついてくるのが、社員 1人 1人の「将来にわたる成長戦略」だ。社員個々の担当コーチャーや上司と話し合いながら、 3、 5、 10年間の各人の成長戦略を決めていく。具体的には、いつまでにどんなスキルを身につけるか。いつ、どんな資格にチャレンジしはじめ、いつ頃までに取得するか。主任・係長・課長・部長になるには、どんなことをマスターしていけばいいのか。このようなことを決め、毎年 1回開催の総合面接でリニューアルする。これがあれば社員の満足度は倍加する。  会社ぐるみでここまで細かく、新人社員を手厚く育てようとの覚悟のほどを示せば、必ず彼らの心を打つ。そこまでやる会社だとアピールすれば、他社を圧倒して完全にとんがれる。注目度が一気に上がり、問い合わせは大幅アップするはずだ。ただし、入社してみたら〝そんな欠片も感じない〟では騙し討ちとなり、逆に離職率は一気にアップ。  社長中心に全社員で心からの愛情を持って受け入れる。そんな会社を辞めたい人はいないはずだ。

鬼 100則   81あなたの会社に 007は来ない  厳しい言い方だが、「こんな人が来てくれたら、我が社の抱える課題は一気に解決。飛躍的に成長する!」と思うような 007(救世主)は、あなたの会社には来ない。会社に来るのは、今のあなたの会社に見合うレベルの人だ。  ときに、「こんな人材が来てくれるとは!」と目を見張る応募者の来ることがある。しかし、それに飛びついてはいけない。要注意だ。喜んで採用すれば、とんでもない地獄が待っていることがあるからだ。  自社の仕事のやり方、顧客リスト、取引先情報などを持ったまま退社して独立。または華麗なる職歴を携えてやってきた 007が詐欺まがいを働き、大変な損害を被ることもある。これは塾生に実際に起きた出来事だ。  私は「素晴らしすぎる人材!」と思った人物ほど不採用としてきた。  採用担当者から「どうしてですか社長!あんな人材がやっと来てくれるような会社になったんですよ!」と悲鳴のような訴えを受けることも度々あった。  面接の結果、あまりに優秀なので不採用にしたかったが、そのときばかりは採用担当者の顔を立てて内定を出した。しかし、案の定、数カ月後には、大手から内定をもらったとして辞退される始末。こういうことが何度もあった。  会社には会社にふさわしい人が来るのだ。その事実を社長は素直に受け止めなくてはならない。来てくれるだけですでに「人財」なのだ。  従業員数名からスタートした、会社としてまだ何も整っていない時代、採用はとても厳しいものだった。大卒などもちろん夢のまた夢。来てくれた人をどう育て磨きあげるかが、社長としての私のテーマだと心得た。  大卒など来てくれなかった時代に、私は新入社員を 1人 1人を磨きあげた。個性の強い、やんちゃな社員もいた。彼らは今、取締役にまでなり会社を牽引してくれている。   007が来てくれることを待つのではない。その人が来てくれたことに感謝し、彼をどこまで育てあげられるか、なのだ。それは社長がひたすら社員の心に寄り添い、長期スパンで成長させたいと心から願っているかどうかにかかっている。

鬼 100則   82 007はパートで雇え  「あなたの会社に 007は来ない」と前述した。しかし、会社の躍進のために、ときには 007の力も必要だ。そんなときには、パートで雇えばいい。ここで言うパートとは、「固定費化せず、仕事の成果報酬に近いイメージの社外パワーの活用のこと」である。  かつて、我が社の家電販売店が 2、 3店舗の頃、新規事業のミニハウス販売により、我が社は飛躍的に成長した。家電販売の販売員が、ミニハウスを受注しやすいシステムを開発したためだ。そのとき、ノドから手が出るほど欲しかったのが、一級建築士だ。しかし、小さな会社にはそれは夢でしかなかった。  そこで、すでにリタイアしている一級建築士を探し出してパートタイム契約で雇い、ミニハウスの打ち合わせのときだけ、現地に来てもらうことにした。  彼らにしても、悪くないオファーだったはず。もう現役バリバリの仕事はできない。でも、少しはお小遣い稼ぎをしたい。自分の能力も発揮したい。彼らの思いを汲みながら、時間の拘束は 1回につき 2〜 3時間程度で、報酬は 1物件 1万円の契約。必要に応じて時間を作って駆けつけてくれる。顧客にはパートだなどとわかるはずもなく、「この電器屋さんは、ミニハウスを売るのに、一級建築士を連れてきてきちんとしてくれる」として、絶大な信頼を得た。  彼らの力も借りて、我が社は、ミニハウスを年間 100棟販売、四国トップクラスとなったのだ。年間 100万円の負担で、 007を手にした。おまけにミニハウス販売で、回転差資金まで手に入れた。資金がだぶつき、店舗大型化の流れができた。  私はコストには大変厳しい。コストをいかに圧縮して、成果を上げるかにこだわり続けてきた。これはほんの一例だが、この頃から、必要なスキルや能力をパートで賄ってきた実績は枚挙に暇がない。  塾生にはその価値と活用を大いに伝えており、中には社外の 007に週 1〜 2回また月 1〜 2回の出社で、年間 500万円〜 2000万円支払っている者もいる。充分な年間利益を叩き出してくれるのだから、決して高くはない。  「会社にとって足りないスキル、足りない能力をいかにしてパートで賄うかというシステム」をどのように構築するか。それも社長の大切な仕事だ。

鬼 100則   83社員・パートさんが思い通り採用できる  「パートが集まらない!」。多くの塾生からこんな悲鳴が聞こえた。  「勤務は週 ○日以上、時間は ○時 ~○時、時間給は ○ ○円」など、就業規則のひな形丸写しの決まりきった、何の興味もそそらない文言がただ並んでいるだけの募集。社員もパートも自分の生活パターンに合った仕事場を探しているのに、会社の都合で人を探す。これでは、自社の都合を押しつけ、「募集項目が自分の都合に合えば来てもいいぞ」と言っているのに等しい。会社にとって都合のいい、そんな人はめったにいない。  求職者は、自分のわがままな都合に合っている会社を探し求めているのに、求職者が目をとめるような熱い誘いがないのである。とにかくとんがっていない。これでは 100年経っても人は来ない。  求職者のわがままにぴったりの会社が、大阪にある【(株)パプアニューギニア海産】だ。実は当社でも、パートの募集に困った際にこの会社のやり方に倣った。  塾生が全国に広がった頃、当社の業務が滞り出し、急遽、パートさんを募集。しかし、反応はゼロ。そんなとき、あるグループがワイン会を開くと耳にした。早速連絡して、自慢のドイツワインを持参して飛び入り参加した。  そのときに出会った 1人のママさんに注目した。とにかく人懐っこい。スピーチがうまい。魅力的だ。彼女なら信頼できる友人も多いに違いない。そこで彼女のご家族を家に招待し、ワインを振る舞い、パートさんが集まらなくて困っているので手伝って欲しいと提案した。  しかし、「私の友人の専業主婦は子育て中の人ばかり。難しいと思う」との反応。  そこで、『いつ来てもいい。いつ帰ってもいい。まったく自由。月に 4 ~ 5日以上、 1日 2 ~ 3時間以上。 100%自分の都合で OK』というパプアニューギニア海産の方式を伝えた。すると彼女は身を乗り出して、「本当?それなら来る人はいるかもしれない」と返事。結果、何人もの人と面談。理想にかなった人を採用。  今は何人もの素敵な方と楽しく仕事ができている。彼女らは、月間計画表を見ながら、自分の好き勝手な都合に合わせ、勤務したい日の希望時間帯を自宅で PCに打ち込む。皆、優秀だ。仕事ははかどり、おかげで、今や塾生は全国 900名の規模になった。

鬼 100則   84パート正社員のパワー

経営していた家電チェーンの新店オープンを控えたある日、有能そうなパート希望者と出会った。他社との競合の中、果たして来てくれるかどうかは微妙。  そこで、次のような質問を投げかけた。  『家はマイホームですか?』「そうです」  『新築ですか?ローンを組んでますか?』「はい」  『月々いくら?ボーナス払いは?』「そこまで言わなくてはいけないですか」  『言った方がいい結果につながると思いますよ』「 1回 ○万円です」  『ということは、ご主人は 20年以上も健康で、事故にも遭わず、払い続けられるということですか?会社は倒産の心配はないのですね。もしものとき、あなたが支えなければならないのですよ』  「そうですね。万一のとき、私が支えなければならないです。でも、とにかく今は 800円でパート募集をしていたから、応募したのです」  『まず 800円で入社して下さい。とりあえず 2 ~ 3年で時給 1000円以上を目指し、次にパート正社員を目指して下さい。ボーナスも出ます。時間はパートですが、能力はフルに発揮して貢献して下さい。期待しています』  彼女は、目を輝かせて入社し、大活躍した。まもなく部門の責任者になった。

あるとき店長から、彼女が社長に直接話があるという。聞けば、ご主人の会社が倒産しそうだ。もっと働きたい、パート正社員になりたいとのこと。有能で、すでに実績を上げているので昇格させ、変則勤務体系にした。土日の内、 1日は出る。セールのときは夕方 6時まで OK。  成績は大幅にアップした。同様の業務で、ボーナスもしっかり出ている正社員の売上より、 2倍近く上回った。そこで特別ボーナスも支給。  かくして彼女は 10年以上貢献してくれた。パートの能力、恐るべしである。  彼女たちの能力を引き出し、会社の成果につなげるという、経営者冥利につきる大仕事。同時に社長磨きにも効果絶大のテーマである。  だから、楽しすぎて社長業はやめられないのである。

鬼 100則   85なぜ人が育たないのか

人は石垣、人は城。戦略も戦術も、人がいてこその実行だ。人が育ってこそ、実行のレベルや精度があがり大きな成果を期待できる。では、なぜ人が育たないのだろうか?人が育たないのには明確な理由がある。 ①その人とその仕事とのミスマッチ、レベルが違いすぎて仕事がその人に向いてない。または作業過多これは明らかな人事担当者のミス、または人材不足により、やむを得ず無理矢理人を配属したツケだ。もしくは、採用目標者数の確保のために、採用担当者が能力不足と知りながら合格させた結果だ。 ②その人を育てる環境がない、教える人がいない、または教える人がいてもマニュアルもなく教え方がわからない。使い勝手のいい PCなど、必要な道具類の不足つまり愛情不足で絆が結べないでいる。 ③目標が不明確で、ミッションを感じない。人事評価制度が不適格、もしくは適格でも制度が十分活用されておらず、効果を発揮していない ④ストレスの多い社風つまらない些細なことで相手と自分にストレスを与えないようにする。ストレスが多いと、突発事故や事件をきっかけに全てが嫌になって社員は去っていく。仲間との信頼、愛情、絆を強くし、風通しのいい社風にする。 ⑤突発事故が多い繰り返す突発事故は、過去の事象を元にパターン化し規定集を作成する。担当者を決めて具体的方針を決め、職場全体で事故撲滅に取り組む。  少なくとも人が育たないこれらの理由、すなわち組織のトゲを社長が先頭に立って抜く努力をすることである。そして社員を育てることも会社のミッションと規定し、社長を頭に全員で、 1人 1人の社員に心を寄せて絆を結ぶことが大切だ。

鬼 100則   86部下を育てる人を最大評価  かつては販売額の多い人が一番評価され店長になった。だが、 1店に 50名〜 100名もの従業員がいる今では、店長の仕事は複雑で多岐にわたり、自分で売る暇などない。  売上の予実管理、販促計画から顧客や業者への対応や店舗管理はもちろん、従業員のシフト管理から健康管理まで、店長は日々大忙しだからだ。  個人個人に頼る売上や業務推進力はもちろん大切だ。だが、しょせんそれは 1人のマンパワーに過ぎない。 1人のスーパーマンに頼るよりも、売上や業務推進力で平均以上の力を持った人を数多く揃えた方が、総体としての成果は大きくなる。  だとすれば、店長には自分の能力、パワーを部下につぎ込んで育てていくことが求められる。むしろこれこそが、会社を成長させる最大のパワーなのだ。  だが社長は、口先で「人を育てよ」と店長に言い放つだけではいけない。具体的に人を育てる方法を教え、かつ、ケーススタディで事例勉強をさせる。さらに、人を育てた人には、正しい人事評価を行うことが大切だ。  そして、何よりも「なぜ人を育てるのか。育てたら組織はどう変わるのか」といった人事育成の必要性を店長に十分理解してもらうことが大切である。そのためには、コーチャー制度を設けるなどして人を育てる仕組みを作り、途中経過のチェックを行う。そして最終評価を行い、良ければ優遇するという一連の制度設計を行うのだ。  なお人事評価制度については、人を育てることの大切さを、具体的に数値化しておくことが大切。そうでないと、結局、お題目を並べただけで終わってしまうからだ。  このような「部下を育てる人を最大評価する」という制度を構築し、一連の流れをしっかりと運用して欲しい。注意すべきは、多くの社員が注目しているということである。だからこそ、その運用は丁寧に扱うのだ。  納得した人が増えるに従い、組織の中には育てる環境が整ってくる。これが組織の風土として定着してくれば、もう本物だ。  兎にも角にも社長がその重要性を声高らかに叫び、部下を育てることを社内の最大のミッションとしてしまうことだ。そして、そのための環境を整えよう。

鬼 100則   87偉大なる高卒軍団  社員十数名のときだったと思う。新卒として、高卒がやっと 1人採用できたときは興奮した。  それから十数年間、大卒は諦め、高校生と専門学校生に的を絞った。地元の穴吹専門学校の理事長や幹部の方にお願いして、毎年 1 ~ 2人、多いときは 3 ~ 4人卒業生を送っていただいた。当社に派閥はない。だが、あえて言うなら、あるのは穴吹専門学校派閥である。「人は石垣、人は城」と言うが、初期の頃の我が社は、穴吹様のおかげで成り立っていた。  それからさらにときが経ち、あるときインタビューに答えた。  タイトルは〝偉大なる高卒軍団〟。  誰も言ってくれないので、自分でこのように命名した。その名の通り、彼らは一丸となり、最前線で一生懸命働いてくれた。業績は 3 ~ 4年ごと倍々ゲームで成長して他を圧倒。偉大なる軍団となったのだった。多くの経営者から社員教育は一体どうなっているのだろうという興味津々の声が寄せられた。おかげで、年を追うごとに私は講師としてお呼びのかかることが多くなった。  ところで〝偉大〟として敢えて強調することには3つの狙いがあった。 ①高卒の活躍する会社が急成長しているとすれば、一般ユーザーに好感を持ってもらえること ②まだ採用のない高校に対して出遅れ感を与えることができること ③(これが一番大きな狙いだが)活躍している高卒の彼らの自尊心をくすぐるということ。「偉大なる軍団」というフレーズで社長が自分たちを誇らしげに広告していると感じてもらえること  でも、決して大げさではない。彼らの素晴らしい活躍により、我が社はその後も大躍進を続けることになるからだ。要は入社した社員のレベルがどうこうではなく、何が何でも育ててものにしてしまう。会社が長期スパンで全員の総力を上げて 1人 1人を磨きあげ、プロ集団の一員にしてしまうことだ。  このようにして、人が勝手に育つような組織、職場環境、人事評価制度、そして人間関係の構築という具合に、システムで人材の成長を下支えしていくことが大切である。

鬼 100則   88戦略人事ボードで超見える化を実現   30名 → 50名 → 100名と、 2〜 3年ごとに倍増。社員が急速に増えだした。   1人 1人の社員との接点の密度が気になる。  社員が 10 ~ 20名の人手不足のとき、あれほど頼りにしてきた社員たち。そんな社員の数が 50名を超す中で、彼らとの接点が少なくなるのを恐れて独自開発したのが「社員接点表」だ。さらに 100名に近づく中で、社員の名前が覚えられなくなってきた。  そんなとき、台湾の地方銀行で頭取をしている社員の親類を表敬訪問した。 30数年前のことだ。アルバイトで入社して総経理(社長)にまで昇りつめた Aさんの社長室には、各支店の行員さんの情報が顔写真つきでボードに貼られていた。これを目にした瞬間にピーンとひらめき、帰国後開発したのが〝戦略人事ボード〟だ。  社長室の横に一般社員は入室できない戦略室を作った。戦略を練るための特別室である。壁の 2面全スペースを使って、現在の、そして次の出店時の、さらにその次の出店時の理想とする人事配置図をマグネットシール製のカードを使って壁に貼りつける。壁紙は磁気を含む磁気シート。着脱はシンプル。カードには社員個々の顔写真と個人情報が暗号化されている。  必要に応じ、又は時間のあるとき、声をかけ合って戦略室に集まり人事戦略を練る。ボードを見れば、いつ、どの店の、どの部門にどんな人が不足かもしくは余剰かが、一目瞭然だ。  新店の店長を誰にするかについて、候補があがる。だが、 1人移動すると、そこへの穴埋めが 1人必要となる。既存店の店長から 1人抜擢して新店大型店の店長に据え、その穴埋めに既存店の副店長がノミネートされる。その副店長を早めに店長会議に参加させるなどしながら人材を育成していく。  このような会議を何度か開いている内に、やがて全員の顔と名前、個人情報が一致してくる。そうした話し合いを重ねるごとに、幹部と個々の社員との距離が狭まり、昨日も会って話をしたかのような錯覚に陥る。〝戦略人事ボード〟が社員個々の可能性をあぶり出してくれるのだ。さらに、幹部も社員のことを十分理解した上で人事異動にかけられるので、大幅なミスマッチを防げる。  見える化で大きな力を発揮してくれる〝戦略人事ボード〟。ぜひ導入をおすすめする。

鬼 100則   89組織表で日々戦略を考えよ  洋服のポケット、 iPhone、 iPad、 PCなどの中には、いつでもどこでも見られるように、組織表と過去 2 ~ 3年、これから 2 ~ 3年後までのスケジュール表が入っている。  生涯プランの中のこの 2 ~ 3年間で、人生を、そして組織をどううねらすかを考えるためだ。 2 ~ 3年後のあって欲しい姿を手に入れるために、常に、今年はどう手を打つべきかを演繹法で考える。その打つ手の一つ一つが 2、 4、 6年後の組織を作りあげる。  具体的には、現在の組織表と 1人 1人の顔写真、個人の社内履歴が記された人事ボードの2つを連動させ、両者を見つめながら、将来の人事構想を練りあげていく。そして、現在、 2年後、 4年後の彼らの年収計画にも夢をふくらませる。  例えば 3年後、ある人間をプロジェクトチームのリーダーにしたいと考えたとしよう。そのためには、現在の組織上の、どのポジションで、誰と何に関与させるかを考える。そうやって 3年後には、彼を確実にリーダーにまで押し上げ、年収を 500万円台に乗せる。そのときの彼の自信と希望に満ちた笑顔は容易に想像できる。  このようにして社長があるべき組織の姿とガップリ四つに取り組むことで、想像の範囲が広がり、組織戦略のレベルが日々バージョンアップされていく。  いつも頭の中でただ単に漠然と思い巡らすのではない。どのようにして、いつまでに彼らをそのポジションに就け、そこで何をどのように行わせるかなどについて具体的にシミュレーションしていくのだ。  社長は日々、社員 1人 1人の履歴と写真を見つめながらシミュレーションを行う。だから、組織の状況に非常に詳しくなり、かつミスジャッジも防げる。実は、社長が練りあげた組織表をもとに、会社の成長戦略を日々構想していくことが、同時に大切な社員個々の成長戦略を見つめることに直結していくのである。  だからこそ社長は、暇があれば組織表を広げ、逆に多忙であればあるほどに組織表を見つめて、組織の無駄を省き、効率化を図るための構想を練り続けなければならない。どんなに素晴らしいビジネスモデルも、理想的な組織なしでは絵に描いた餅だからだ。  組織表は活用次第であなたの進むべき道に大きなヒントをくれる「魔法のペーパー」になることを肝に銘じて欲しい。

鬼 100則   90肩書は変動制でいつも緊張感を  社員の成長なくして、会社の成長はない。  年商 7000万円の大坂屋が、上智デンキで 7億円になり、マツヤデンキで 35億円、ケーズデンキで 339億円まで達成できた。政府認定ボランタリーチェーン加盟により全メーカーを取り扱い、マツヤデンキ加盟により戦術を身につけ、全国区の世界に身を置いた。そしてカトーデンキ販売に加盟して加藤修一社長と出会い、戦略を身につけた。  そんなあるとき社内風土に問題が生じた。ポストを意識しすぎて肩書でもの言う人が出てきたのだ。一気に解決する方法はないかと、考えに考えた末にたどり着いたのが文鎮型組織。  数年間のグループ別業績をもとに、さらに部下をどれだけ育てたか、組織の風通しがどれだけ良くなったかを基準に評価し、白紙状態から新たな組織を発表すると告知。その際に、全社員の肩書剥奪。具体的には、部課長制度を廃止し、数年間「 ○ ○さん」呼びにすることに変えた。その理由は2つ。 ①肩書があるがゆえの上から目線の物言いと考え方を正すため。優秀で、やる気があり、人と協調して成果を上げてきたから部長、課長、係長になったのに、間もなくすると、脳内が変調をきたす。「俺は部長」が自分の中で重みを増しすぎる。周囲の人も部長になったのだからと認める。すると部長の重みが足枷に変じてしまうのだ。 ②他部門との協調を崩し、自部門の優先ばかりが目立つようになった。部門長となり責任を感じ、部門の成果を追い求めるあまりセクショナリズムに陥ってしまうのだ。  これらの2つの悪弊を取り去るため、この方法を数年続けた。結果、全員対等の雰囲気が社内に行き渡り、組織が伸び伸びと明るいものに変わった。  人事評価とは、会社が従業員に対して何を求めているか、どんな社員になって欲しいのかを最も明確に伝えるメッセージだ。  結局、「全員、〝さん〟呼び」という基準を示すことで、「成功したければ、人を育てるしかない」という強いメッセージを社員に伝えられたということである。

鬼 100則   91チャレンジポスト  これはすごい制度だから、ぜひとも即導入して欲しい。  昔の訪問販売時代には、「よく売る人」が店長だった。 1店舗に社員 3 ~ 4人で、トップセールスの売上で店の成績が決まった時代の話だ。しかしときと共に、店長選抜の基準は「店舗売上高」に少しずつシフトした。さらにときが流れ、「マネージメント力のある人」を店長の基準にした。予実管理、在庫管理、パート・社員の健康・出勤管理、近所・顧客とのトラブル交渉など、店長の仕事は多岐にわたる。  店長の役割が大きく変わったちょうどその頃、事件が起きた。  ある店で、若いマネージメント力のある人を店長に抜擢した。彼は力を発揮。だが、その部下の 10歳も年上のトップセールスの気持ちは複雑だった。  店長不在のとき、仲間にこんなことを言ったらしい。  「あの店長は若すぎてお客様のことがわかってない。俺が店長ならもっとうまくやる」と。  店長不在をいいことに日頃の鬱憤を仲間にぶつけたため、店内は騒然となった。トップセールスで声が大きいだけに、その影響は大きい。  そこで私が考えついたのがチャレンジポストだ。  その古参に「店長をやってみるか?」と声をかける。「ただし、チャレンジポストなので、 3 ~ 4カ月で降りてもらうので家族の誰にも言わないこと」も約束してもらう。しかし、彼は喜んで店長を引き受けた。  だが、それから 2カ月後、彼は「店長がこんなにしんどいとは知らなかった。もういいです。降ろしてください。私はやはり売りが好きです。売って売って売りまくります」と訴えてきた。彼の中から若い店長への不満はなくなり、つかえたものがとれたようにセールスに邁進。  他方、チャレンジポストで 3カ月経っても降ろす必要がなく、そのまま 10年間も店長をやり続け、その後部長になった者もいる。  出世意欲という社員の思いを汲みながら、彼らの心に刺さっているトゲを抜いていけば、今度は水を得た魚のように社員は活躍する。  チャレンジポストは魔法の仕組みだ。一度、試してみたらどうだろうか?

鬼 100則   92べクトル会鍛え抜いた社長の懐刀集団を作れ  会社を活性化させ、 1人 1人の力を伸ばすとっておきの方法に〝ベクトル会〟がある。  これは部長課長などの役職とは関係ない社長直属の組織である。私が期待を込めて全社から選び抜いた精鋭たちのグループだ。彼らに託す思い。それは社長とベクトルを合わせ、会社の重要なテーマに対して共に戦うこと。部署や役割を越えて選ばれた彼らは、社長からの期待を一身に背負う軍団である。ネーミングも彼らから公募して決定した。  当然、〝ベクトル会〟のメンバーは社長の思いや夢を共に実現するために、そのあふれ出んばかりのやる気とエネルギーで重要テーマに取り組む。  例えば新規事業への参入をする際、まず社長が時間をかけ念入りに書きあげた青写真を〝ベクトル会〟にかける。他の社員へは他言無用だ。〝ベクトル会〟メンバーは、人知れず社長と共にその業界のことを調べあげ、商材について探求し、立地を探る。事情があって社内に隠したまま、新規事業を開業したことすらある。  〝ベクトル会〟のメンバーは、担当する業務を十二分に全うしている人から選び出す。彼らは当然、通常業務を不足なく行いながら新規事業を手がけることとなる。従って、現状の仕事について 80%の時間で成果を出せるような仕組みを構築し、残りの 20%で第 2のミッションに挑戦することになる。  本業で給料を支給しているので第 2のビジネスは無給。結果、人件費の 1掛け作戦が実現し、夢の P/ Lが完成する。  社長と共に何かおもしろいことをはじめたい、それに関わりたいという熱い思いで集まったメンバーたち。こうしてスタートを切った〝ベクトル会〟主導の新規事業が、成功しないわけがない。既存事業以外から儲けを出すのだから、当然会社の利益が上がる。予算達成すれば毎年、特別ボーナスとして分配されるのだ。  だが、〝ベクトル会〟のメンバーは定住制ではない。私が、彼はもう……と思えば、メンバーから外れてもらう。外れた彼は、またその熱い場に戻ろうと再度奮起する。〝ベクトル会〟はその場に選ばれた者はもちろん、社全体の成長を促すのだ。特に選ばれなかった部課長には緊張が走る。  社長の魂を社員にぶつけろ。社員の魂に引火させろ。

鬼 100則   93社員接点表で絆を結べ  会社が大きくなるにつれ業務も大幅に増えた。新入社員がどんどん入社してくる。社員が 10 ~ 20名の頃は声をかけて居酒屋へ行くこともできた。ところが、 50名、 100名と社員が増え、次々と優秀な人が入ってくるに従い、近しく接することもままならず、かつての社員との間にも徐々に距離が生まれはじめる。  社長としても、古参社員との間に距離を感じ、以前ほどこちらの思いが伝わらなくなったと感じる。おそらく彼らも、自分たちはもはやこの会社のメインではないと思いはじめているのではないかと思う。  そこで「誰と、いつ、どんなときに、どれくらいの間、何を話したか」のポイントを記入する〝社員接点表〟を作成。 A君とは週 1 ~ 2回なのに、 B君とは 2カ月も話していないなどとわかれば、目の前の受話器を取り、「 B君、元気か」などと声をかける。その前に、毎月各店の店長から私のタブレットに送られてくる彼のデータに目を通しておく。これにより、わずかな時間で彼との距離をグッと縮める話ができる。  個人情報の問題はあるが、私は積極的に情報を集めた。おばあちゃんが手術を受けた、息子が小学校に受かったらしい、先週県下でベスト ○位の売上を達成したなど。目的はただ、会社の団結、社長の求心力アップ、そして社員の成長のため。  「会社がどんどん大きくなり社員個々との間に距離ができていく中でも、私のことを見つめていてくれる」と思ってもらえる社長を目指す。  各店を巡回する際も、接点の少なかった人に意識的に近づいて声をかけるようにする(ただし、交替勤務なので会えない人もいる)。とりわけ給料日を利用し、毎月振込日の数日前から全店舗を訪問。まず店長と面談して社員の新しい情報を仕入れる。そして、タブレットに送られてくる最新情報に目を通し、万全の態勢で 1人 1人との面談に臨む。  ホットな話題を織り込みつつ、「ご苦労様」と激励と感謝の言葉を添えながら給与明細を手渡す。思いは伝わり、「よし、頑張ろう」と思ってくれること請け合いである。  私は、パートさんを含め必ず月に 1回の接点を持つよう努力した。ここまでやっている社長は少ないと思う。社員が 100 ~ 200名に増えても、社員は「社長との絆は強い」と実感してくれるはずだ。要は「社長は私を見つめてくれている」がポイントなのだ。

鬼 100則   94人が育っても辞めない会社を作れ  入社以来、一生懸命頑張った甲斐もあり、 3、 5、 10年経つうちに仕事にも慣れ、人間関係もできた。そこそこ仕事の実力もつき、周囲からも期待されるようになった。すると、心に少し余裕が出てくる。  そんなとき、ふと「何かが違うのではないか。今のままで本当にいいのだろうか」という思いが頭をもたげてくる。それが何なのか、突き詰めて考えはじめる。  と同時に、今の状態がさらに 10、 20年経って果たして自分は一体どうなっているのだろうか、と自分のありたい将来についても考えるようになる。  仕事のやり甲斐、キャリア、仲間たちとの関係、年収、家庭、あらゆることが脳裏をかすめる。「もっと家族と交われる時間が欲しい」「地域とももっと交わりたい」「あんなに好きだった趣味も、中途半端なままにしておくのは惜しい」などなど。  そもそも自分にはもう少し大きな夢があったはずだ。自分ならもっとキャリアアップできてもいいはずだ。力のある人ほど、物事を長期スパンで捉えて冷静に現状を分析する。  社長が将来を嘱望していた彼は、いつの日にか何かのきっかけで別の世界に夢を馳せ、それまで築きあげた人脈・信用、蓄積してきたノウハウなどの全てを捨て去り、あるいは持ち去り、辞表を提出して、あなたのもとを去っていく。  会社の核となり、さらに 10年は活躍して欲しいと社長が期待をかけてきた人物の突然の退社ほど悲しいものはない。有能な人の去就は企業業績をも左右する。  そのような悲劇を招かないためにも、「社長は未来に向かって、目を輝かせながら、 1歩 1歩前進しようとしているのか」「そもそも社長、幹部、社員が心を一つにして目標達成を目指しているか」を今一度点検しなければならない。  また、「各人の仕事にやり甲斐があるか」「この職場にさらにとどまることによって確実にキャリアアップができるか」「社員はもちろん、その家族や友人たちからも喜ばれる未来が待っているか」などについても考える。  社長は、そして会社は、このように社員の人生と向き合い、彼を将来にわたって幸せに活躍させられるのかを真剣に考えなければならない。

鬼 100則   95社員の心に寄り添え  社員と絆で結ばれ同志となったとき、社長は万人の軍団を手にしたことになる。  社長が志を大切に持っているように、社員にも夢がある。だから社長は自身の社長としての夢の実現だけでなく、社員の個々の夢にまで心を配るべきだ。  私の主宰する大坂塾では 25枚の「見える化シート」を配布して、講義をスタートさせる。その内の、実に 5ページを占めるのが、社員各個人に寄り添うテーマだ。 ①個々の社員の基礎データ:現状と 2 ~ 4年前とあとの権限の範囲、年収。計画と実績の対比。その計画に至るまでに克服すべきテーマと仕事の範囲。 ②社員個々の成長策:ミスマッチを防ぐため、上司が本人と相談しながら決める。本人の期待が大きくなり、計画的な成長が期待できる。 ③社員接点表:個々の社員と 1カ月間に何回接点を持ったかのチェック。それは会議の席上か個別か、立ち話か電話かメールか。約何分間か。気になったことは何かなど。 ④退職者の辞めた理由:退職者の中で辞めて欲しくなかった人に接触。辞めた本当の理由を聞き出す。退職済みのため、対等の立場で辞める前に言ったこととは異なる本音が聞ける。実はこれらが会社の改善テーマであり、会社躍進のキーワードの可能性が大である。  あるとき、ある店のトップセールスマンの売上がストップした。店長に聞くと「あいつ最近全然やる気ないんですよ」と言う。気になるので、昼食に誘って話を聞いた。 1時間も経ってやっと理由が判明。  「彼女に振られて、何もやる気がしない」。若い彼にとって、彼女を失うことは、全てを失うほどの重大事。売上などのテーマは二の次なのだ。私は「これをチャンスに営業にのめり込んで、新しい彼女に、オレはトップセールスマンだと胸を張れる、目の輝いた男になれ!」とハッパをかけた。  翌月から再び彼はトップセールスの座に返り咲いた。  叱咤激励するだけでは足りない。社員 1人 1人の本当の思いに心を寄せ、彼らの喉に突き刺さっているトゲをとってやれば、彼らは生き生きと活躍してくれる。社員あっての社長であり会社だ。ゆめゆめ忘れるな。

鬼 100則   96面授口訣で社員の心を鷲掴みにせよ  会社の規模は小さいほどいい。社員の育成の点から言うと、規模が小さいうちは、社長と社員とが濃厚に接触できる。社員と共に日々業務をこなしながら、機会あるごとに思いを伝えられる。  社長に夢があるように、社員にも夢がある。夢に向かって共に手を携えて、協力し合えるようになれば理想的だ。そのためにも、ときには 1対 1の超近距離の中で語り合いながら、社長の夢、志の渦に、社員の夢も少しずつ巻き込んでいく。社長は目を輝かせながらあふれんばかりの熱い思いで社員とやり取りを交わす。そうやって目指すべき目標を積み上げていくのである。  仏教用語に、師匠が弟子と向き合い、面と向かって言葉で奥義を授ける面授口訣というものがある。相手と面と向かって、自分の思いを語りかけながら、少しずつそれを相手の腑に落としていく方法である。  当然ながら社長の思いと社員のそれとの間では、いくらかの距離がある。両者の思いのギャップを埋めるためにも、社長は社員ときっちり対峙し、自らの熱いそして大きな思いを伝えなければならない。  さとすように!丁寧に!わかりやすく!熱い思いで!くり返しながらほとばしり出る熱い思いで!焦ることなく!時間をかけてヒタヒタと迫っていくのである。  他方、社員の思いにも真剣に耳を傾ける。ときどきメモ取りを相手に促すと同時に、自分も意識的に彼の思いをメモする。まさに面授の双方向版だ。相手の質問・意見に冷静に対応しながら仕事のフローの見直しを図り、あるべき姿に整理したりする。  そうやって 1人 1人に心を寄せて相手の話をじっくり聞きながら、社長の熱い思いを伝えつつ、こちらの考えを相手の腑に落としていく。  社長と社員は、互いにかけがえのないパートナーである。社長の目の届く範囲であれば、面授口訣を通じて社員の心に寄り添い、社員をあって欲しい姿に押し上げていける。そういう意味で、会社の規模は小さいほどいい。私の場合、この方法を使って、飽きっぽくて成績の悪い人を人材に様変わりさせた経験がある。  だから、私は言いたい。 1人 1人に心を砕いて接して、社員の心を鷲掴みにせよ。

鬼 100則   97定期的な社員のガス抜きアンケート  現場の声と社長との距離は社長が思っている以上に大きい。「私は社員のことをいつも考えている」と声を張り上げる人ほどギャップは大だ。  社員の本音を聞き出すと経営改善のヒントが続々と出てくる。まるでお宝だ。  いきなり無記名アンケートをとると、罵詈雑言などであふれてしまい大変なので、順序を踏んで 2 ~ 3年計画でじっくり進めるのがベター。  まず第 1段階は、社員数にもよるが、毎月 2 ~ 3人あるいは毎週 2 ~ 3人との個別面談。事前に用意したシートに従って意見を聞く。  準備すべきは個々の社員データだ。入社歴や売上推移から表彰歴まで。また、家族の誕生日や全員の健康状態を気にかける。  そして本書で何度か伝えているが、相手の目を見て、ときにうなずきながらメモまでとる。しかも社長の話は 50%におさえる。積極的傾聴法だ。  「どうやったら、何がどうなったら会社はもっと良くなると思う?」  「会社をもっと良くしたいんだが、どうしたらいいと思う?」  というように積極的に、しかも謙虚に聞いてみよう。思いがけないヒントをくれるかもしれない。  いずれにせよ、まず第 1段階では 1対 1で少しずつガス抜きをした方がいい。  これが 1 ~ 2年続き、社長にとってトゲとなっている各種テーマがクリアされていった段階で次のステップへ。記名式アンケートの実施。これにより社員もいくらか遠慮がちの回答になり炎上しにくい。第 2段階にふさわしい意見が出てくる。  次に本番。無記名アンケートだ。  実施した A社では相当辛辣な、しかし正しいと思われる意見が次々と社長に突きつけられた。テーマ別に担当責任者に割り振り、皆で対策を練り改善を続けた。 1年後、なんと過去最高益。自分の投げたテーマに会社がどうこたえるか、社員たちは結果をかたずをのんで見守っている。  社長も心を開いて社員の心に寄り添って対応しよう。

鬼 100則   98社員の辞めさせ方  出店が短期間に集中する時期、大幅な人員増が必要なため、少し無理をして新卒 30人と中途採用十数人を受け入れた。彼らは、研修期間を終えてそれぞれの赴任地へ向かう。  しばらくしてある店長から、「彼にはこの仕事は厳しい、向いていない」との連絡が入る。その訴えを受けて、業務を変えたり、彼に対する教育やコーチを誠心誠意重ねたりしたが、なかなかうまくいかない。店長はもとより、部長、社長までもが加わり話し合いをしてたどり着いた結論はこうだった。  採用面接で我々は「会社の目線」で彼を選んだ。会社は必死で彼を育てようとしている。だが、どうしても会社と合わない。彼の青春の大切な時間を食いつぶしてしまう。  彼も苦痛だろうと感じるようになった私は、勇気を出して、実家に電話をかけた。  ご両親から相当なお叱りを受けた。「何のための採用面接だったんだ!」と。  ご両親とは心を込めて話し合った。彼のために議論に議論を重ねてたどり着いた結論である旨を伝えた。その際、社内で彼を見つめ続け気づいた彼の特性、彼と相性がいいと思われる労働環境などを伝えた。ご両親の知り合いにそういった会社がないかを聞いた。  もし万一、いい会社が見つかって入社の内諾が取れた場合、ご両親から「今の会社は土日は多忙。『疲れた、辛い』と毎日漏らすのを見ているのは親としても苦しい。知り合いにお前と相性の良さそうな会社がある。今の環境に自分から見切りをつけて新天地に行ってみないか」と話してもらうことにした。  後日彼は、自分の意志で我が社に別れを告げ、胸を張って新天地へと旅立っていった。  彼のご両親からは「 1人の若造のために、ここまで将来を考え抜いてもらってありがたい」というお言葉をいただいた。  本人の適性を無視した採用は絶対にしてはならない。  また、会社に長く貢献してきた功労者であっても、会社のさらなる前進にとって障害となる場合もある。そのような場合に会社としても手を打たざるを得ない。だが、この場合も目の敵にして追い出してはならない。社員たちがいたからこその事業である。社長が心を込めて次の人生へ送り出してあげるのだ。送り出すときまでも誠心誠意をつくし、その後のその人の人生を考え抜く社長の思いは、きっと伝わるはずだ。

鬼 100則   99社員の退職を社内見直しのチャンスとして捉えよ  「社員が退社してしまった」と、がっくり肩を落として報告してくる社長がいる。  これまで大切に育て、期待をかけていた社員の退社は特に身にこたえる。その気持ちはわかる。しかし、そこで落ち込んでいる暇はないし、落ち込む必要もない。  こんなとき社長の多くは、慌てて人員確保に走ってしまう。仕事に影響が出ないように、なるべく早く新しい人を採用して、辞めた社員の穴を埋めようとするのだ。だから、すぐさま総務にハローワークへの依頼を指示し、人材募集のサイトをチェックさせる。  でも、これは間違っている。まずやるべきは、レイバースケジューリングだ。辞めていくA子さんのしていた仕事を徹底的に分析し、まずは最小単位で一覧表にして精査すべきだ。  すると、 10項目の仕事の中の重要度の高い部分を 3、 4人に分配できるのではないかと気づく。意外かもしれないが、辞めた社員の仕事は、半分近くカバーされてしまうのだ。  カバーできずにはみ出した仕事は、辞めた社員よりも時間給が低いアルバイトに任せる。  辞めたA子さんがきっかけで、レイバースケジューリングを進めることができるのだ。残った社員に、これまで任せていなかった仕事を割り振ることで、社員教育を大いに進められる可能性もある。   1人の退社という、日常的ではないことが起きたとき、これは神から与えられた「会社・組織を効率化するビッグチャンス」と考えるのである。慌てて不足人員を補充することで、かえってせっかくのチャンスの芽を摘み取ってしまう。  考えた上で人員がどうしても足りないと判断できたら、そのときに採用を検討すればいい。  ただし、すぐにアクションできるよう、それまでにハローワークや他の採用媒体との連携を保っておくことは、もちろん大切なことだ。  一番避けるべきは、社員が辞めたとたん、間髪を入れずその場しのぎの採用をしてしまうことである。

鬼 100則   100辞めた社員は金

多くの経営者が、辞めた社員のことを悪く言う。  「あいつは、こんな風だった」「良くしてやったのに、こんな風に辞めていった」  そんな情けないことは一切言うな。社長が辞めた社員の悪口を言っているのを、社員はどういう思いで聞くだろうか。  辞めた社員と、今いる社員とは接点もあるだろう。だから会社の満足できない点を理由に離れていった社員は、辞めてなお自分が悪く言われるのを聞くことになる。それは会社にプラスになるだろうか。  彼らはどんな思いで辞めたのか。成果が上がらなかったのには必ず理由がある。能力が足りないこともあるだろう。しかし、彼らの能力に見合う仕事を渡していたのか。指導は正しく行われていたのか。  社長は逃げることなく向き合い、辞めた社員の痛みまでをも受け止めなければならない。  少し時間をおいてから、彼らを食事に誘う。そして頭を下げる。  「お前が夢をもって人生を預けてくれたのに応えてやれなかった。悪かった」と。彼らにとって、一度きりの人生の貴重な時間を無駄にしたのだ。育ててやれなかったのだ。  そして聞く。「教えてくれ。会社を良くするには、どこをどうしたらいいと思うか?」と。最初は口が重いだろう。でも、こちらが誠意をもち、胸襟を開いて話をしていると知ったとき、彼らは口を開いてくれる。そのとき聞ける話は、まさに〝金〟に匹敵する厳しい意見ばかり。身をもって経験した会社の改善すべき課題を鋭く突いてくれる。耳が痛い。  内部を知る彼らの経験から出てくる言葉は、どんなコンサルタントの言葉より重く、そして意味がある。そこを改善すれば、会社は輝く会社に生まれ変われるのだ。  社長が頭を下げ手を握り、これまでのことに感謝する。何となく気づいていても、フォーカスせずにやり過ごしていた会社の弱点を教えてくれる彼らは、社長にとって〝金〟だ。彼が辞めた理由は、会社の成長を妨げている大きなトゲだったのだ。聞いたことをどうやって改善するか。それが社長の仕事だ。  辞めた社員は〝金〟。そして今、会社のために辞めずに活躍してくれている社員はもちろん、それ以上に大切なプラチナだ。

あとがき  人は誰しも幸せな人生を歩みたい。だが、幸せは突然天から降ってくるわけではない。幸せを掴み、幸せを手にしたければ、まず、将来こうありたいという夢を〝妄想力〟を使って大胆に描くことからはじめないといけない。逆に言うと、現在の延長線上に自分の将来を描いても、幸せな人生はやって来ないということだ。  世界の賢者も「人類を支配しているのは想像である」(ナポレオン・ボナパルト)、「夢、これ以外に将来を作り出すものはない」(ヴィクトル・ユーゴー)などとして、〝強烈な想像や夢、強い志は現実化する〟と口を揃える。これは経営者に必須の能力だ。  経営者としてビジネスの世界に飛び込むはるか以前より、私はこの夢見る力を駆使して、誰もが青年期にぶつかる人生の壁を乗り越えてきた。  そして誰もが越えられないと思うような高い壁も。  皆、何かしらの夢を持っている。行きたい学校、なりたい職業、成し遂げたい人生をかけた夢。その中でなぜ私は、昔自分が夢見た人生を上回るような成功を手にできたのか。  私は妻から「夢見るゆめおくん」とよく言われた。  できるはずがないと思われるような壮大な夢を描いた。想像どころか、「妄想」していた。  大学受験に際しては、「いつの日か海外で仕事がしたい」という少年の頃からの夢実現のために、私は上智大学を目指した。どうしても合格したい。しかし、英語が高校のクラスで中位の私にとって、上智大学合格は夢のまた夢。絶対に無理と言われた。  だが、上智大学には絶対に合格するぞという〝妄想〟が、その後、とてつもない隠れた情報を引き寄せてくれた。  過去問を見て驚いたのは、上智の入試には帰国子女向けに設けられた第二語学があること。難易度において英語に比べると大学入試と中学入試ほどの差があることがわかったのだ。これなら 3年間集中すればドイツ語でも合格できると確信。出身の大手前高校はたった数名のためにドイツ語の授業を用意。  まさにブルーオーシャンの世界の発見だ。そして合格を手にすることができた。  そして、この「妄想力」こそが、私の経営人生にも成功をもたらしたのだ。  あなたは心のどこかにある壮大な「妄想」を、それは無理だとすぐに殺してはいないか?  脳が千切れるほど探し、考え、悩み尽くすほど「熱望」しているか?  記憶力や体力などで他に劣る〝弱者の自分〟は、この〝妄想力〟を起点に、強者にも打ち勝てる「弱者の戦略」に目覚めたのである。そして人生を通じて「妄想」を持ち続けたことが普通の男の能力もはるかにしのぐところにまで引き上げてくれたのだ。  妄想力を駆使して、「ありたい自分の将来」を思い描き、「現在の自分」と比較し両者の間のギャップを探る。このギャップこそが「自分にとってのこれからなすべき課題」なのだ。  いつまでに、何を、どのように行うことで、この課題を解決すべきかを考え、それを工程表に落とし込んで行く。あらゆる情報を集めて分析し、成功のための確かな要素を見つけて対策を立てる必要がある。  これが人生戦略成功の要諦であり、かつ経営戦略成功の要諦でもある。  私が本書で展開している、実践に次ぐ実践の中、死に物狂いで作りあげてきた経営ノウハウも、全てこの〝妄想力〟が大きなバックボーンになっていることを申し述べておきたい。  ここまでおつき合いいただいた読者の方には、ここで改めて御礼を申し上げたいと思うと同時に、日々の経営の中でもがき苦しみながら、鬼のような執念で掴み取り、実践の中で磨きに磨いた《生きた成功のメソッド》を使って、社長として思い描いている妄想の世界へとたどり着いていただきたい。  ドイツ語のチャンスを与えていただいた大手前の倉田理事長と釜下晃先生、今は亡き山口寮弌先生、坂本康實先生が人生の基礎を作ってくださった。社会人、経営者として、佐久間曻二氏、平井謙三氏・平井進吾氏、加藤修一氏にステージごとに育てていただいた。人生のメンター達に深い感謝を記したい。  皆さまには、読者の会でお目にかかるのを楽しみにしている。  最後に、本書『社長の鬼 100則』の発刊に向け、一方ならぬお世話になった、鬼ならぬ仏のように心優しい久松氏には、紙面を借り、ここで改めて御礼申し上げる。大坂靖彦

■著者略歴大坂  靖彦(おおさか  やすひこ)非営利株式会社ビッグ・エス  インターナショナル代表取締役/大坂塾塾長(株)ケーズホールディングス元常務取締役(株)ビッグ・エス元代表取締役上智大学・香川大学元非常勤講師松下幸之助経営塾元講師東京大学国際オープンイノベーション機構元共同研究員ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章香川県大手前高校卒。上智大学在学中 24ヶ国をヒッチハイクで無銭旅行。海外で活躍するビジネスマンを目指し、パナソニック入社(ドイツ駐在)するも挫折して、従業員 3人、年商 7000万円の家業の家電小売店に入社。売れない訪問販売の毎日から、経営者として成功することを目指し自社の経営改革に乗り出す。結果、従業員 800名、年商 339億円の企業に成長させる。ナショナルショップ店、政府認定ボランタリーチェーン四日電、マツヤデンキ、カトーデンキ販売(現ケーズホールディングス)と弱者の戦略で時代の先を読みパートナーを変えながら都度ステージを大きく変えた。 2010年全ての役職をリタイヤ後、自身の全ノウハウを次世代の中小企業経営者に伝授すべく始めた経営塾・大坂塾は、現在までに 900名が学ぶ。夢・志を掲げ、その実現のために、妄想し、ひたすらシミュレーションを重ねて細部まで綿密な計画の上実行する。自らが実践し成果を出してきたメソッドをあまさず伝授し、経営者たちの成長を阻む棘を一つ一つ抜く指導により、多くの経営者が結果を出している。若者への人生戦略の考え方を伝える『若者未来塾』、小中学生向け『ドリームシッププログラム』も精力的に開催している。全国での経営者向け講演会は 10年間で動員数 10000人、コンサル実績 1000回。 https:// www. yasuosaka. com/

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