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99%の社長が勘違いしていること:佐藤和夫

はじめに  社長が数字を見てつぶれた父親の会社  堀龍市と申します。私はサラリーマンをしていた 25歳のとき、親父に会社を辞めて親父の経営する繊維の会社に来てほしいと言われました。  繊維業界は当時かなり厳しい状況で、うちのような中小企業の経営は火の車でした。  新規のお客様は増えない、既存のお客様はそれほど買ってくれずで、打開策が見つからないまま日々が過ぎていきました。  経営が本当に苦しくなったとき、ワラにもすがる思いで、当時の顧問税理士のところに親父と 2人で相談に行きました。そのとき税理士に言われたのが「社長が会社の数字をきちんと見ていないのが原因。今後は数字をしっかり見て、ムダな経費を削減しなさい」でした。  親父は数字に無頓着だったことを反省し、しっかり数字を見て、ムダに思える経費を片っ端から削減していきました。製品の原価を下げ、給与に見合う働きをしていない従業員の給与はカットしました。  経費が減ればそれだけ利益が増えるか赤字が減るはず、それを信じて。  でも経費の削減を始めると、会社はさらに悪い方向に進んでいきました。  製品の質は落ち、今まで買ってくれていたお客様まで離れてしまったのです。  会社の中でも優秀だと思っていた人に「社長、私はほかでも働けるので辞めさせてもらいますわ。こんな給料じゃやっていけません」と言いに来られ、親父が必死で引き止める姿を見て、これって何か違うと思いました。でも当時の私にはどうすればよいのかわかりませんでした。  また当時、経理の仕事は経理の女性 1人と親父がしていました。  税理士のアドバイス以降、親父が経理の仕事に力を入れるようになって、親父は経理の仕事ばかりしていたように思います。  このことも会社にとってはマイナス要因でした。  社長は、お客様の声を聞いたり、世の中の風を感じ取って会社の方向を決めることが大切です。社内で経理をするのは社長の仕事ではありません。  しかし、逆をやってしまっていたわけです。  そんなこともあり状況は悪くなる一方でした。その後数カ月して、私の提案で会社をたたむことになりました。  裁判所で債権者集会が開かれ、親父と私と債権者の方々と弁護士で話し合いが始まりました。私は悔しいのと情けないのとで、債権者集会の間中、涙が止まらなかったことを覚えています。  今はどうかわかりませんが、当時の債権者集会では、会社の財産を処分していく過程で処分価格等が適正かどうか判断するために、債権者の中から代表者を選ぶことになっていました。  そのときです。債権者の 1人がこうおっしゃいました。「堀の社長の人柄はみんなご存じでしょう。堀さんは悪いことができる人じゃないから、処分価格は堀さんに任せればよいのではないか」  その言葉にそこにいた方々が同意し、代表者を選ばずに会社の財産を処分していくことになりました。  幸いにも会社の土地と建物は高額で売れたので、債権者には金銭でのご迷惑をおかけせずに済みました。  私は悔し涙にむせびながら、こんな状況でも信じてもらえるのは、親父がまじめにコツコツビジネスを行ってきたからだと感じ、誇らしかったのを覚えています。  同時に中小企業の社長は、ただまじめにコツコツやっていくだけではダメなんだとも思いました。「コツコツやるだけではダメだ」という強い思いから、私は会社に必要な数字のプロになり、うちの親父のような社長を助けてあげたいと考えるようになり、税理士を目指しました。  会社に必要な数字の知識を身につけるのはもちろん、多くの成功している中小企業の社長と話をし、その考え方、生き方を学び、成功している中小企業の社長と、成功していない中小企業の社長は何が違うのかを勉強したかったのです。  そしてそれを世間に広め、幸せな中小企業の社長を増やしたい、成功している中小企業で働く幸せな従業員やその家族を増やし、成功している中小企業の幸せなお客様を増やすことが、ひいては日本に幸せな人を増やすことにつながるのではないかと考えました。  税理士はとてもお得な商売で、成功している社長からその成功のノウハウを直接聞くことができます。  普段は忙しくて時間など作れない人たちでも、顧問税理士との時間は無理をして作ってくれます。  そのときに話してもらった数々の体験談や成功の方法を、この本で皆さんに明かしていきたいと思います。「成功している社長はみんな、ものすごく会社の数字に詳しく、税理士が要らないくらい会計にも明るい」  そう思っていました。ところが、実際はまったく違いました。数字をまったく見ていないどころか、「損益分岐点?  何それ?」と、会計の基本的な用語すら知らない人もいたのです。  当初は私も「社長が損益分岐点も知らない会社で大丈夫か?」と思いましたが、成功している社長は、みんな数字を見ていませんでした。  では成功している経営者たちが、共通して見ていたものは――。  これから述べていくことは、きれいごとに聞こえるかもしれません。「そんなことできれば誰も苦労しない!」そう言いたくなるような例も出てきます。  成功している中小企業の社長は、多くの社長たち、成功しない人たちにそう思われることをよく知っています。  だから決して自分たちのノウハウを語ろうとしません。  しかし、間違いなく言えるのは、成功している中小企業は皆、例外なくこの方法をとっているということです。  また、この方法でなければ現代では生き残ることができません。  本書は、当時の親父のように誠実に事業をしているが経営がうまくいかない、でもどうすればいいのかわからないという方に、うまくいく方法を知っていただきたいとの思いで書きました。  経営に悩んでおられるすべての中小企業の社長の、お役に立つものであると確信しております。  本書があなたの成功への第一歩になることを願ってやみません。

2012年 12月堀  龍市

【目次】はじめに  社長が数字を見てつぶれた父親の会社第 1章  税理士や経営コンサルタントに相談する会社はあぶない「経営」のカン違い 1  なぜ彼らのアドバイスは役に立たないのか? 2  コンサルタントのアドバイスは「栄養失調の人にダイエットをさせるようなもの」 3  経営分析は愚の骨頂! 4  なぜ経営分析なんて存在するのか? 5  銀行の言うことは信じるな 6  行動計画でよいサイクルを回せ! 7  企業 =営利団体ではない 8  「経営者が決めること」などない第 2章  経営者が数字を見る会社はあぶない「会社の数字」のカン違い 1  会計は経営のためにできていない! 2  会計はしょせん「代用品」 3  経理は税務申告のためと割り切ってください 4  損益計算書なんて「通帳」 5  中小企業の経営は「足し算」です 6  銀行からお金を借りるのは難しくない 7  金は天下の回りもの 8  小さな経費は無視できる範囲 9  日本の会社が会計よりも大切にすることは? 10  成功する社長は ○ ○を見る  成功しない社長は ╳╳を見る 11  人間の本能を手放せ!第 3章  「誰でも力を発揮できるマニュアル」のある会社はあぶない「人材」のカン違い 1  中小企業では「社員は家族」 2  社員は社長の鏡 3  規則より「人としてどうなのか」 4  お客様をナンパ 5  社員をリッツ・カールトンのホテルマンに! 6  人がモノを売る時代 7  ニンジンで馬は走っても人は走らない 8  経験・実績よりも重要な従業員の採用基準は? 9  中小企業は「形の違う石」で石垣を作る 10  枝葉の価値観はバラバラでいい 11  「みんなで幸せになる」ことを目指す第 4章  ライバルに勝とうとする会社はあぶない「作戦」のカン違い 1  優先すべきはお客様を集めること 2  どんなに小さくても 1位になる 3  カレー専門店になれ! 4  お客様を選ばないとお客様に選ばれない 5  ほとんどのお店は「知られる努力」をしていない 6  異業種にこそ集客や儲けのヒントがたくさん潜んでいる 7  「相場」なんてクソ食らえ 8  「相場」を無意味なものにしたりんご親父と I T社長 9  高いものを売った方が喜ばれる 10  ストーリーを語ってお客様と心のつながりを作る 11  「人の買う理由」をしっかり理解しよう 12  ライバルと「競争」などしない 13  自分の仕事(得意技)を熱く語る 14  平成の時代にモノを売るためには? 15  モノを売るのに大切な「夢」 16  追うと数字は逃げていく   ○ ○を追うと数字はついてくる 17  チャンスを運んでくるのは、人間 18  元気玉を作ろう第 5章  社長が誰よりも働く会社はあぶない「社長の考え方」のカン違い 1  中小企業の「成功」って何?

2   5000円のラーメンと 0円のとんかつ 3  大阪市長と国会議員 4  経営者がプロゴルファーだとしたら 5  「楽」を「楽しい」に 6  2つの「常識」を使い分ける 7  社長は誰よりも働いてはいけない! 8  中小企業の社長は「量は力」で勝負! 9  才能も経験も凌駕(りょうが)し、自信がつく方法 10  「自己満足アドバイス」をしてみよう 11  自己満足アドバイスをするには? 12  「会う人すべてをいい気分に」していますか? 13  最悪の事態を具体的に考える 14  変わるのは、ほんの少しのことからでいいおわりに   1億人を幸せにしたい!著者情報奥付

1  なぜ彼らのアドバイスは役に立たないのか?  多くの経営者がカン違いしているものの1つに、「経営のことは経営や数字のプロに相談するのがいい」と思っていることがあります。  世の中に「経営指南」の情報はあふれ返っており、経営について書かれている本や、講演、セミナーなどがたくさんあります。  経営のプロが作成したそれらの内容に従って経営をすれば、状況はよくなる、そんな気がします。  ちょっと待ってください。その本の著者や、講演、セミナーの講師は、どんな人でしょうか。その多くが、一流大学や上場している有名企業等の出身者です。  この本を読んでいただいている方が大企業の経営者ならそれでよいのですが、あなたが中小企業の経営者なら、間違いです。  知らなければならないのは、従業員 30人以下の会社を経営するための基本原則です。「中小企業と大企業では、経営の仕方が違う」  社員 30人以下の会社の経営者は、このことをしっかり認識していただきたいと思います。  私は大企業と中小企業では、規模、資金力、顧客の数などから、失礼を承知で申し上げますが、プロ野球と少年野球くらいの差があると考えています。  少年野球とプロ野球は教え方が違うと思いませんか?  プロ野球の名監督が、少年野球の子どもたちにプロと同じ練習をさせたらどうなるでしょう?  強くなるどころか、体を壊して試合もできなくなりますよね。  それと同じで、中小企業の経営者のうち、中小企業の経営の基本原則を勉強している人と、大企業の経営の基本原則を勉強している人、どちらが成功するでしょうか?

2  コンサルタントのアドバイスは「栄養失調の人にダイエットをさせるようなもの」  親父が亡くなるとき主治医の先生が言っておられましたが、人間は食事が摂れなくなると 1週間で死ぬらしいです。  会社の経営って、人間に似ているなって時々思います。  人間の体を想像してみてください。  口から食べ物を入れて、消化したときにできたエネルギーは体を動かしたりすることに使われたり、筋肉を増やしてより力を出せるようにしたりして、余ったら脂肪として蓄積される。  人が食事から摂る栄養で生きているように、会社は、お客様が商品やサービスを買ってくださることにより得られる売上を栄養にして生きています。  必要な売上が不足すると、会社は死にます。これが倒産ですよね。  倒産しないためには、お客様に商品やサービスを買ってもらい続ける必要があります。  エネルギーを使わないようにじっとしていても、食べ物を食べられなくなるとダメなんですよね。  世の中に「経営コンサルタント」と名乗る人はたくさんいます。彼らや、税理士がよく使う言葉が、「損益分岐点」です。  損益分岐点とは、売上高と費用の額がちょうど等しくなる売上高等を言い、損益分岐点を下げれば、その分だけ利益が出て経営はうまくいくとされています。  これって一見、正しそうに思えますよね。  損益分岐点を下げる方法は2つ、1つは売上原価を下げること。  具体的には、材料などを仕入れ業者に無理を言って値段を下げてもらうか、商品や材料を質の悪いものに変えて下げることで可能になります。  もう1つは、経費を削減すること。  具体的には、社員の給与を減らしたり、人通りの多い街中のお店から人通りの少ない地方へ引っ越したりするなどがあります。  実はこれらの方法が、とんだ間違いなのです。  これらの方法をとるのは、人間の体で言う「エネルギーを使わないようにじっとしている」状態と同じです。  私は経営が苦しくなって、経営コンサルタントや税理士のアドバイスの下、損益分岐点を下げるなどと社長が言い出しておかしくなった会社をたくさん見ています。「損益分岐点を下げる」この考え方は、昭和の時代の日本や今の中国のように、モノがガンガン売れるときに有効なものです。  モノが世の中に不足している時代、モノを作れば作っただけ売れた時代には、この考え方を取り入れて経費を削減することで会社の利益は増加しました。  でも今はモノが売れない時代です。  ライバルの会社もみんなどうやってモノを売ろうかと必死になっているときに、自社だけが損益分岐点を下げるために仕入れ先の反感を買いながら値切って、従業員の反感を買いながら給与を下げて、今の場所より人通りの少ない場所に移動して家賃を下げる。  そりゃあそのときの利益は出るかもしれませんが、長い目で見て、売上を下げる方に会社が向かっていると思いませんか?  この状況を、私は医者が栄養失調の人に、患者の状況を考えずに「ダイエットをすれば健康になる」とアドバイスしているように思えて仕方ないのです。  それで健康になるわけがありません。死期を早めているだけです。この患者に必要なのは栄養を摂ることです。  しかし、多くの中小企業の社長は、将来への不安とお金を失う恐れから、売上を増やすよりも経費削減の方向に意識が向かいます。  中小企業の社長が 100人いれば、 99人はこの方向です。  しかし、 1%の成功する中小企業の社長は、無意味な経費の削減よりも、世の中の問題を解決し、お客様の役に立って売上を上げることを優先しておられます。  成功する中小企業の社長は、事業の成功には、事業計画書や損益計算書、キャッシュフロー計算書より大切なものがあることを知っているのです。  私が成功している中小企業と考えているうちの 1人、医療法人くろだ歯科医院の総務長は言われます。「ムダを省くことは必要かもしれないが、経費を減らそうとは思わない。  新しくお客様に喜んでもらえるアイデアが思いついたときは、お金がかかってもかまわない。これがいいと思ったら、それが利益につながるかより、本当にお客様に喜んでもらえるものができるかどうかで決めている。  コンサルタントから『経費が多い』とか文句を言われるが聞き流している。彼らが目指すもの(利益)と私たちが目指すもの(患者さんが喜ぶこと)が違うのでかみ合わない。だから聞き流すようにしている。  彼らには、『ここで経費を使ったとしても、患者さんが喜んでくれるので』ということが伝わらない。考え方が違う、大切にしているものが違う」。

3  経営分析は愚の骨頂!  中小企業の経営がわからずに、小難しい理論を振りかざしてくるコンサルタントや税理士からは自己防衛しましよう。  そういうコンサルタントや税理士がよく言うのが「経営分析が大切」。  もし税理士やコンサルタントにそのように言われたら、こう聞き返してください。「あなたの事務所は経営分析をしていますか?  しているなら、それで大きくなっていますか?」と。  経営を乗り物の運転にたとえると、人数も少ない中小企業の経営は、自転車の運転と同じです。  乗っている自転車のタイヤがパンクしているなどの異常があれば、すぐに気づきます。  会社がジャンボジェットのような、社員が何千人もいる大企業になれば、コクピットからはタイヤがパンクしているかどうかわかりません。  コクピットの計器で異常を確認するか、整備士にメンテナンスしてもらうしかありません。  大企業は、パッと見ただけではわからない異常を知るために、経営分析が必要なのです。経営分析をして、余計な経費が出ていっていないかチェックすることが欠かせません。  社長がすべてを見渡せる中小企業に、経営分析をしなければわからない異常など存在しません。見てわかることを知るために経営分析をするのは、時間を捨てているようなものです。余計なことをする暇があったら、運転に集中してください。  はっきり言ってしまうと、経営分析は「社長の自己満足」以外の何物でもありません。「数字が合ってた。よかったね」と喜んでいる暇などないはずです。

4  なぜ経営分析なんて存在するのか?  私は経営分析とは銀行と投資家、そして大企業の社長のためのものだと思っています。 ●銀行用  金融機関の融資担当者がお金を貸してもよいかどうかの判断に使うものです。  お金を貸しても返ってこないこともありますから、そのときの言い訳に「この会社の決算書を分析した結果、この指標がよかったので貸しました(私のせいじゃありません)」と。  担当者はいろいろな会社にお金を貸しますから、こういう指標をもとに判断するしかないわけです。 ●投資家用  上場企業の株を買おうとする人が、 A社の株と B社の株のどちらを買おうか迷ったときに、投資をしてもよいかどうかの判断に使うものです。 ●大企業の社長用  従業員が何万人もいるような会社では、全体像が把握できないので、この指標を使って、経費がムダに使われていたり、不正に使われていないかを発見します。  たとえば、「 1株当たりの利益」という指標があります。  文字どおり会社の利益が 1株当たりいくらになるかを表すもので、投資家には大事な数字です。  自分がその会社の株を買うときに、会社の利益が 1株当たりいくらになるかってとても大事ですよね。  中小企業の社長にこの数字は何の意味があるのでしょうか。ほとんどの中小企業の社長はその会社の株を全部持っているか、せいぜい株主が数人いるだけです。 1株当たりいくらかなんて、すぐわかります。  コンサルタントのアドバイスは「栄養失調の人にダイエットをさせるようなもの」とお伝えしましたが、大企業はムダをたくさん抱えた生活習慣病のような状態になっています。  だから経営分析による経費削減というダイエットが効果的なのですが、売上という栄養が必要な中小企業には逆効果なのです。  経営分析と同じくらい意味がないのが「事業計画書」です。  事業計画書が必要なのは、銀行にお金を借りるときだけです。    新たなお店を開くなど、大きなお金を融資してもらう必要がある場合、銀行から提出を求められます。  時々立派な事業計画書を作成している方がおられますが、喜ぶのは銀行やその事業に出資をしている方だけです。  あるいは、それを作ることによってお金がもらえる経営コンサルタントや税理士だけ。「事業計画を立て、その数字どおりに実行できるかどうかが大切」と言う経営コンサルタントがいますが、そんな考えだから「数字を達成する」という思いばかり先走り、お客様の顔がお金に見えてモノが売れないのだと思います。  中小企業では、社長の頭を、社長の 24時間をどう使うかがとても大切です。  その時間をお客様のために使ってください。  事業計画なんかに使う暇があったら、新しいお客様に出会うアイデアを考えてください。  人は働いて疲れると「これだけやったんだから」と、よい仕事をしたと勘違いしてしまいます。  お客様のためのアイデアを考えても、事業計画に時間を使っても疲れます。  お客様に関わること以外で、疲れてよい仕事をしたとカン違いしている余裕は中小企業の社長にはないはずです。

5  銀行の言うことは信じるな  学生時代のことを思い出してみてください。  たとえば、 1週間後に中間テストがある。  中間テストでよい点を取るために、この 1週間はどういう風に勉強しようと計画を立てた方も多いのではないでしょうか。  そのときの計画ってどういうものでした?  人それぞれ計画の立て方は違うと思いますが、基本的には行動計画を立てていた人が多かったのではないでしょうか。  たとえば私の場合、月曜日、 5時に学校から帰ってきて、 5時から 7時までの 2時間は国語の勉強をして、 7時から 8時までは夕食とお風呂で、 8時から 11時までは数学を 3時間勉強する。  こんな感じで、この 1週間に何時間勉強できるかを考えて、その時間で最大の成果が出るように時間を割り振りしていました。  決して、国語は 70点、数学は 80点、理科と社会は 75点で合計 300点取ろうなんて計画は立てていなかったです。  もし、うちの息子が時間をかけてそんな計画を立てていたら、そんなことしている暇があったら、少しでも勉強しろって注意していると思います。  でも経営計画では、後者の計画を立てている方が多いです。  去年は売上 1億円・経費 9900万円で差し引き 100万円の利益を出した会社があるとします。「売上は去年の 5%( 500万円)アップの 1億 500万円、経費は去年より 5%( 495万円)カットして 9405万円、差し引きして今期の利益は 1095万円出るぞ」  不思議ですね。なぜみんなこんな計画を立てるのでしょうか?  なぜそうなっているのかと考えると、1つには銀行がこういう計画を立てない経営者は経営がうまくいかないって言うからですよね。  それって、本当だと思いますか?  本当に銀行は、中小企業の社長のことを思ってそういうアドバイスをしているのでしょうか?  そもそも、銀行員は本当に中小企業の経営をわかっているのでしょうか?  銀行員は、基本的に大学を出てそのまま銀行員になる人が多いですよね。  学校を出てから、中小企業の経営をしてそのあと銀行員になった人を聞いたことありません。  やったことのない中小企業の経営を、どうしてそんなに知っているんですか?  学校の勉強だけで中小企業の経営ってわかるんですか?  それにもっと言ってしまうと、銀行の方は本気で中小企業の経営をよくしようと思って経営計画を立てなさいなんて言っていません。  銀行が興味があるのは「貸したお金に利子をつけてきちんと返してくれるかどうか」あえて言葉を選ばず言ってしまうと、会社の経営がよくなるかなんてどうでもいいんです。  もちろんその会社の業績がよくなればお金ができて確実に返してもらえますが、そんなに長い目で見てはくれません。それよりも、「今ここで出費を削れば簡単に返せますよ」という、銀行にとって都合のよい提案をしてくるだけです。  話がそれましたが、経営分析や事業計画書の作成は、銀行が求めているなら行わないとダメですが、それで経営がよくなると思ってほしくないんです。  お客様に関係ないところで机の上だけで経費を削ったりして、利益が出たような気にならないでください。  では中小企業に必要な計画は何でしょうか。  それは「行動計画」です。  お客様が喜ぶにはどうすればいいのか、従業員のみんなが生き生き働けるにはどうすればいいのかの行動計画を立ててください。

6  行動計画でよいサイクルを回せ!  行動計画の具体的な立て方をお話しします。  まずは「社長が実現したい夢を描く」ことです。何のために経営をするのか、会社として何を目指すのかをしっかり考えます。次のページに載せた私の事務所の行動計画で言うと「今期の重点活動」と「私たちの夢」がそれに当たります。

それが決まったならば、その夢を実現するための方法を、具体的に考えていきます。  どんな商品、サービスを提供するのか、どこ(地域)で、どんなお客様を相手に販売するのかといった対外的なことから、会社としてのお金に関することや時間の使い方など、対内的なことも決めます。  行動計画が普通の経営計画と違うのは、この内容を従業員だけでなく、取引業者やお客様など外部の人も見られるようにすることです。  こういう行動計画があると知られているとなると、社長も社員もそれに反する行動はできなくなります。自然と抑止力が働き、悪いことはできなくなるのです。  また、明文化することで、各人の意識に刷り込まれていき、書かれたことが自然と自分の行動になっていきます。  行動計画は、誰が書いても最初はどうしても「自分さえ、自分の会社さえ儲かればいい」という、利己的な内容になっているものです。  それを修正するために、行動計画は毎年見直します。  行動計画を立て、 1年間活動したあとに見直してみると、「前はこんなに自分勝手な計画を立てていたのか……」と、恥ずかしくなります。  恥ずかしく思うのは、行動計画の効果が出てきている証拠です。  毎年見直し、反省し変えていくことで、少しずつ利己的な内容が取れていきます。「目標は利益を上げることを中心に考えていたら成し遂げられない、何よりもお客様のことを考え、行動することで、利益はあとからついてくるものだ」と体で理解できるようになり、それを具現化した行動計画が出来上がるのです。  行動計画がよくなり、実際の行動がよくなる。行動がよくなれば、もっと行動計画をよいものにしたくなる。それの繰り返しでよいサイクルが回り始めます。  とはいえ、行動計画に終わりはありません。私も行動計画を作成し始めて 7、 8年は経っていますが、今でも見直しの時期を迎えると「ここに改善の余地があるな」と反省することの繰り返しです。

7  企業 =営利団体ではない  ほとんどの人が会社を「利益を生み出すための組織」だと思っている。  実はこれもカン違いで、この考え方が、中小企業の経営を難しくさせています。「利益を生み出すための組織だから、組織に属する者が得することだけを追求する」  そんな発想に陥ってしまうのです。  考えてみてください。  あなたは、損得だけで毎日生きていますか?  儲けることだけを優先して毎日生きていますか?  違うと思います。  効率が悪くてもいいから、ゆったりした時間を楽しむ、多少損をしても人が喜ぶ姿を見て幸せを感じる、それが本来の人の姿です。  会計で出てくる数字は、そういった人の本来の姿を無視したものです。それに従って経営をよくしようとするから、間違ってしまうのです。「顧客を満足させることこそ、中小企業の使命であり目的である」  そう考える会社はうまくいっている。  そのためには、働く人たちにも喜んでもらうこと。  その会社の従業員が生き生きと働き、その人がお客様を喜ばせることにより、結果として売上が、利益が発生する。『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司・あさ出版)ほか、多くの書籍やテレビ等で取り上げられている、寒天の世界的メーカー「伊那食品工業」の塚越寛会長は、「利益はウンチだ」とおっしゃっています。  会社を人間だとしたら、体が健康ならば勝手に出るものがウンチ。会社も正しく経営していれば、利益は勝手に出るもの。それに、人はウンチを出すために生活しているわけではないのですから。

8  「経営者が決めること」などない  商品を買うかどうかの決定権は、お客様が 100%持っています。売る側は 0%です。  当たり前のことですが、お金は勝手にあちこちに動きません。必ず人が動かすことによってお金が動きます。「仕事がある」とは、相手に選んでいただいたということです。  だから経営は、「お客様を出発点」にして考えるべきです。  経営の本質は、まずお客様を作り出し、作ったお客様を維持し、さらに多くすることにあります。 ①お客様がいる ②自社の商品がある ③自社の人・組織がある ④人・組織を運営するためのお金・資金がある  こういう流れです。  けれど賃金制度や会計を中心に考えると、会社内部にとらわれるので ④のお金や ③の組織が先になり、 ①のお客様が遠くなります。  ディズニーランドで、こんな話を聞いたことがあります。  その日は快晴の休日で、ディズニーランドは人でいっぱいです。小さい子どもを連れた家族が、何日も前からこの日が来るのを楽しみにしてきたそうですが、満員で入れません。子どもは泣きじゃくります。  それを見ていたスタッフは、ディズニーのキャラクターを連れてその子どもに謝りに行ったそうです。「今日は入れなくてごめんね。もうちょっとだけ待っていて」  その子どもはさっきまで泣いていたことを忘れて笑顔になったそうです。  この子は、一生ディズニーランドのリピーターになるんでしょうね。  キャラクターを外に連れ出すなんて、効率だけを考えると完全にマイナスですから、これは簿記・会計を中心に経営していると出てこない発想です。  経営計画書の作り方を説いた本を見ると、 9割以上が会計を中心に説明されています。しかし、会計の仕事からは 1円の粗利益も生まれません。  さらに会計を中心にすると賃金制度や内部活動ばかりが重視されるようになります。  こうなると経営の源になるお客様作りがおろそかになり、結局業績が悪くなるのです。  会社は粗利益で生きており、その粗利益はお客様からしか出ないのですから、お客様を出発点にしてください。

1  会計は経営のためにできていない!  この章では会社の数字を見ることの問題点について、詳しくお話ししていきます。  損益計算書って、こんな風になっています。  売上         1000  経費 ①   △ 200  経費 ②   △ 200  経費 ③   △ 200  経費 ④   △ 200  利益           200  これを分析して何がわかるのでしょうか?  経費がどう使われているかしかわかりませんよね。  たとえば  売上 ①       200  売上 ②       200  売上 ③       200  売上 ④       200  売上 ⑤       200  経費             △ 800  利益               200  こんな感じに分析すれば、どんな商品が買われているかや、買ってくださるお客様の傾向や、今後の方向性などがわかるかもしれません。  しかし、会計はこうはなっていません。  ではなぜ、前者のようになっているのかというと、その会社や特定の業界独自の損益計算書を作ったのでは、他社と比べられなくなるからなんです。  しっかり認識していただきたいのは、もともと会計は、経営をよくするために作られたのではなく、財産を分配したり、お金を貸す先を決めたり、どこに投資するかを判断するためにできたものであることです。  だから、違う業種の会社でも比べやすいように、最初に書いたような書式になっているのです。  この書き方ですと、電気屋もうどん屋も同じ形になりますし、大企業も中小企業も同じ形になります。  それらのお店や会社が、同じわけがありません。  だから、会計なんかで経営がよくなるなんて思わないでください。  会計にできるのは、しょせんその程度のことなのです。

2  会計はしょせん「代用品」  皆さんは「会計」と聞くとどういう印象を持たれるのでしょうか。  お小遣い帳や家計簿など、要するにお金の計算をするイメージでしょうか。  入ったお金と使ったお金を計算して、残ったお金と合っていれば御明算!  と。  会計の起源は古代ローマ時代説と中世イタリア説があります。  いずれにせよ、会計が重要になったのは、 1600年代初頭のイギリスが経営した東インド会社からだといわれています。  航海に出て商売をするための元手を募り、航海から帰ってきたら船に積んできた財貨を処分して、元手の出資者にお金を分配したのです。  そのために会計が重宝されました。  現代社会では出資者は単なる財産の分配以外にも、お金の使用用途などいろいろな情報を必要とします。ところが出資したお金がどう使われているのか、チェックしようにも依るところがなければできません。  そこで公認会計士が監査をして「この会社の決算書は法律どおりきちんと作られていますよ」とお墨付きを与えるのです。  そうすれば、あとは自分の責任で出資を続けるかどうか判断すればいいことになります(情報誌『みみずく』(特定非営利活動法人  市民活動センター神戸) 2005年6月 1日発行第 20号を一部変更)。  会計は、昔も今も記録の道具でしかないんです。  その道具を経営の改善に使おうとするからおかしなことが起こるのです。  ビールの栓を抜くのに、栓抜きがなくて歯で抜く人がいます。  確かに抜けるかもしれませんが、歯を立てる際にビンを斜めにしたりすれば、中身がこぼれてしまいます。栓を抜くには栓抜きの方がよいに決まっています。  経営に会計を持ち出すのは、歯で栓を抜くようなもの。  栓抜きぐらいは代用品でもいいかもしれませんが、経営の改善という重要なことを、会計という代用品でしようと思わないでください。  代用品ではなく、本気で経営の改善に取り組んでください。  税理士も税務申告、節税が本職ですから、彼らのアドバイスは受けても、税理士という(経営に関しては)代用品に経営の相談をする、経営改善のアドバイスをもらうのはやめてください。

3  経理は税務申告のためと割り切ってください  会社のお金を管理するための帳簿。  実は帳簿のつけ方には、上場会社が従わなければいけないつけ方と、中小企業用の税務調査に対応できればよいつけ方の 2種類があるのをご存じですか?  株式公開を目指しているなら、「企業会計原則」という堅いルールにのっとって処理する必要があります。それもあくまでも、目的は「株式公開」であり、経営ではありません。  もちろん帳簿は完璧につけた方がミスは減りますが、管理コストは高くつきます。中小企業は、経理なんかよりお客様に商品を買っていただくために時間や費用をかける方が大事です。  以前は専門的な知識がないとできなかった会計の仕事も、今ではほとんどパソコンがやってくれますから、中小企業に必要な経理は、パソコンで済む程度にしておけばよいのです。「経理をしっかりやらないと業績悪化の原因がつかめないので対策が遅れてしまう」  そう言う人がいます。  でも、経理をしっかりやっても赤字の会社が多いです。  中小企業で、「どれくらい売れたらどれくらい儲かるのか」を考えないで商売をしている社長はいないと思います。  赤字なのは、売れる予定のものが売れなかった、それだけのことですから、経理資料を分析しないと赤字の原因がわからない社長なんていないと思います。  儲かっている会社を見ていて感じるのは、経理をしっかりやったから黒字になっているわけではないということです。経理に過大な期待をするのはやめましょう。  職人でないと経理処理ができない時代は終わりました。申告に必要な書類は、税理士に最低限の資料を送り、作ってもらえばいいだけです。「月次試算表がすぐに出来上がってこない会社はダメ」  こんなことを言う経営コンサルタントがいますが、皆さん、本当にそう思っていますか?  月次試算表ができないと会社の状況がわからない中小企業の社長なんていませんし、もしいたとしたら、その時点で経営者としての姿勢を疑わざるを得ません。

4  損益計算書なんて「通帳」  中小企業は、社長の頭の中に大体のお金の流れが入っているはずです。「損益計算書」なんて専門用語を使う必要はありません。「通帳」だと思えばいいんです。  中小企業にとって究極の状態は、預金口座を1つにして、お金の流れがすべてわかるようにすることです。  通帳を見ただけで儲けがわかるようになり、キャッシュフロー(これも要は「お金の流れ」です)がわかるようになる、それが理想です。  どうしても会計や税務で必要な発生主義の利益が知りたいときは、この通帳残高に入ってくるであろう売上等の金額を足して、出ていくであろう経費等の金額を引くことでわかります。  社長は、入ってくる数字と出ていく数字はわかっているはずです。  会計原則の1つ「発生主義」これは、税務署に申告するためのものと割り切ってください。  税務署や銀行は、発生主義じゃないと利益操作ができるから、脱税ができるから発生主義を求めているにすぎません。  発生主義の利益がわからないと経営ができないなんて、中小企業の社長は本気で思わないでくださいね。  本当に必要なのは発生主義の利益より、現金主義の会計と資金繰りだけですから。  会社がつぶれるのは、発生主義の利益がマイナスになったときではなく、支払いができなくなったときです。  会社にお金が供給される仕組みがあれば、絶対につぶれないのですから。

5  中小企業の経営は「足し算」です  会社にお金が供給される方法について。  無借金経営がよいと言う人がいます。  本当にそう思います?  もちろん、お客様に支持されて、従業員が生き生き働いている会社で、利益も十分蓄積されて無借金経営ができているのなら、これほどいいことはありません。  ところが、それほど余裕のない中小企業に借金を減らすことをアドバイスする人がいます。借金が減ればそれだけ利息が減る。利息が減った分だけ経費が減るので利益が残る。  理屈は確かにそうなんですが、これって、本当に正しい中小企業の経営でしょうか?  数字だけの経営を考えるとそういう発想になってしまいます。   A社は、預金 10万円で、借金 0円でした。   B社は、預金 1010万円で、借金 1000万円でした。  金利がかからないから Aの方がよい会社だと思います?   A社は確かに金利は不要ですが、資金ショートしないように社長は常に気を配っていないといけません。預金の残高がマイナスにならないように頭を働かせないとダメなので、お客様に 100%頭を使えないですよね。  逆に B社の場合、たとえば月の経費が平均で 500万円必要だったとします。  経費 2カ月分のお金が銀行にありますので、銀行残高は気にする必要はなく、社長の頭をお客様に 100%使えますよね。   A社と B社、どちらがうまくいく中小企業か、一目瞭然です。  金利なんて、社長の頭を 100%お客様のために使う経費と考えれば、安いものだと思います。   1000万円を年利 2・ 5%で借りたとしたら年間 25万円の利息が発生します。  1月当たり 2万円ほどで社長の頭を資金繰りから解放できるのです。  経営は引き算で考えちゃダメだと思います。この経費を削ればこれだけ利益が出る。これも削ればもっと経費が減る……。そもそも何のために経営しているんですか?  金利を削って利益を上げる >社長の頭を 100%お客様に向けて売上アップ  これは成功しない中小企業の経営者の考え方です。  金利を削って利益を上げる <社長の頭を 100%お客様に向けて売上アップ  それが成功する中小企業の経営者の考え方です。

6  銀行からお金を借りるのは難しくない「経営に必要なお金は借りておけ」  私がこう言うと、必ずこう言い返す方がいます。「そんなに簡単に貸してもらえないよ!」  そう考える方は、銀行からお金を借りるコツがわかっていません。  銀行も商売です。お金を貸し、利子をつけて返してもらうことで成り立っていますから、本当ならばどんどん借りてほしいのです。  銀行からお金を借りる簡単なコツ、それは「借りなくてもいいけど借りてもいいよ」と言うことです。  銀行の立場で考えてみましょう。「とても返してもらえそうにない」と思うところには貸そうとしません。  社長が「明日入金しないと会社はつぶれてしまう!  今すぐ貸してくれ!」と銀行に駆け込んでくるような会社に、自分が銀行員だったら貸しますか?  それよりも「今は特に必要ないけれど、何かあったときのために借りておこうと考えています」と言う会社に貸したがるのです。  銀行からうまくお金を借りられない経営者の多くは、ここでもとんだカン違いをしています。それは「銀行が経営者の苦しみを解決してくれる公共の機関か何か」と考えていることです。  先ほども言いましたとおり、銀行も商売です。利子 =銀行にとっての売上です。「取引先」と思って付き合うのがコツです。  中小企業なら、月に 1000万円もあればお金の悩みは一切なくなります。それに余裕をもって借りれば、金利も安く済むのです。  お金の不安が一切なく、社長が 100%お客様のことを考えている会社と、経費やら資金繰りでお金のことを 30%くらい考え、お客様のことは 70%くらいしか考えられない会社だったら、成功するのは前者です。

7  金は天下の回りもの「経営は『利益を出すための仕事』ではなく『お金を回すための仕事』」  株式会社ソニックジャパンの添島副社長の言葉です。  お客様に買っていただいてお金が入ってきて、それを取引先や従業員に払う、回していくのが使命と考えるのです。  お金が会社に回れば、会社は調子がよくなります。  会社のかじ取り役である経営者がお金を貯め込もうとするから、うまくいかなくなるのです。  会社のお金のプロとして、多くの会社を見てきて、強く感じます。  ビジネスは、お金を回そうとするとうまくいく。  お金を留めようとするとおかしくなる。  社長は頑張ってみんなの給料を上げる。  会社の心臓である社長は、重要な役割を果たしているので、一番高い給料をもらえばいい。  その理屈を説明すれば、社員は誰も文句を言わないと思いますし、私の知る成功している経営者は、みんなこうしておられます。  それを会社は自分のものだと考えて、従業員を安く、長時間働かせて会社に残った利益を全部自分のものにしようとするから、うまくいかないのではないでしょうか。「お金を回せばもっと大きくなって帰ってくる」  そう考える人は、会社もうまくいくんです。

8  小さな経費は無視できる範囲  ここまでお話ししても経費が気になる方、次ページの図をご覧ください。

これは一般的な会社の月次損益計算書です。いろんな経費が書いてありますよね。  会社を経営するにはいろんな経費がかかります。これを見ていると、経費をカットしたくなりませんか?  では、次ページのグラフを見てください。

先ほどの会社の月次損益計算書をグラフにしたものですが、大きな山は原価・給与・家賃ですよね。  これ以外の山は、ほとんど山とは言えないほど小さいです。  グラフにしてみるとわかりやすいでしょ。  原価・給与・家賃の3つの山以外なんて、削ったって大きな数字にはなりません。  そんなところに社長の力を使うのなら、お客様に喜んでもらって自社の商品やサービスを買ってもらうことを考えましょう。  ちなみに、原価・給与・家賃の大きな山は削っちゃダメですよ。これらはお客様に喜んでいただくのに必要な経費ですから。  成功しない中小企業の社長は経費の心配をしてエネルギーを浪費していますが、成功する中小企業の社長はつねにより売上を上げることに意識を集中しています。

9  日本の会社が会計よりも大切にすることは?  皆さん同じかもしれませんが、私は独立したとき、まったくうまくいかず、どうしたら契約していただけるんだろうと、真剣に悩みました。どうしたら買ってもらえるんだろうと考えました。  夜も寝られないくらい考えて、気がついたのです。「お金を儲ける」とか「ライバルに勝つ」そんなセコイことでは買ってもらえないと。  お金は自分の意思では動きません。どんなにお金を集めようとしても、お客様に買うと言っていただけない限り、お金が入ってくることはないのです。  そしてお金を動かしているのは誰かというと、人間です。  当たり前と言われるかもしれませんが、ビジネスで動いているのは、お金に見えますが実は人間なんです。  ビジネスで動いているのはお金と思っているうちは、経費を削減すると経営効率が上がると思ってしまいますが、ビジネスで動いているのは人間なんだと気がつくと、経費削減で悪循環が始まることに気がつきます。  このように間違う原因の1つは、簿記会計や経営分析といった手法はヨーロッパやアメリカから入ってきたものであることが大きいかもしれません。  アメリカって合理主義的なイメージですよね。そもそも、欧米で発達したシステムで日本の会社の経営はよくなるのでしょうか?  アメリカ型の経営は、「効率を追求し、できる限り短期間に利益を最大化すること」を目的としています。独立して事業を成功させ、その会社を他人に高額で売ることにより、自分は多額のお金を手にする、それがいわゆるアメリカンドリームです。  それと日本人の経営に対する考え方って違うと思うんです。日本人は、基本的に会社を売却することを考えていない人が多いと思います。  会社を興した人にとっては、その会社は自分の子どもも同じ。一生かけて大事に育てていきます。  事業が長続きすることを重視して、人を育てていくことも日本の会社の大切な仕事だと思います。  アメリカの経営者は、短期間に利益を最大化することを目的にして、高額で会社が売れたあとはどうなっても構わない。だってもう他人の会社ですからね。  従業員はそのとき会社に必要な人が集まって力を出せばいい、役目を終えたら解雇。幸せでなくても構わない。  日本の経営者は、会社が長期的に繁栄することを目的として、お客様や従業員や関係者に喜ばれて繁栄していくことを目指します。会社の目的は存続することです。  もともと理想とするところが違うのです。  多くの成功しない中小企業の原因は、お客様のことをあまり考えていないところにあると私は考えます。経営がうまくいかない理由を、アメリカ型の合理主義的な考え方で解決できる、会計の情報で経営ができると思い込んでいるのが間違いではないでしょうか。「今年の利益をどうすれば出せるのか」そればかり考えることは、今年はよくても将来の会社の寿命を縮めることになります。  日本人の理想とする会社は、帳簿の数字合わせではできません。決算書を分析して利益を出そうなんて、的はずれもいいとこです。お客様に喜んでいただいて、自社の商品を選んでいただいて、利益を出すんです。  銀行は、あなたの会社にアメリカ型の経営をしなさいと言うかもしれません。  なぜなら銀行は、あなたの会社の短期利益にしか興味はないからです。  昼休みはオフィスの電気を消すなど、経費を削減することで短期の利益は上がるでしょう。  しかし、暗いオフィスで昼食を摂る従業員は、どんな気分でしょうか。  目先の利益確保は、従業員のやる気をなくさせるのにもっとも適した方法ということに気づいてください。  ビジネスで動いているのは、お金のように見えますが、それを扱う人間なのですから。  もうこれ以上、目先の利益のために長期の利益を犠牲にするのはやめてください。  会社の活力がなくなる行為を積極的に推し進めるのは、やめませんか?  成功しない中小企業の社長はお金を得ることばかり考え、成功する中小企業の社長はみんなが幸せになるように考えています。  自分の大好きなことをして、お客様の問題を解決してお金を稼ぐ方法を見つける。  人は皆、考え方を変えれば繁栄への道を歩むことができますが、成功しない中小企業の社長はそれに気づいていない方が多いです。

10  成功する社長は ○ ○を見る  成功しない社長は ╳╳を見る  ある成功している社長の考え方をお聞きして気づいたのですが、成功している社長と成功していない社長は、目標の定め方が違うのです。  成功している社長は、損益計算書の一番上の項目、すなわち売上に焦点を置いておられます。  売上はお客様からしか出ないので、そのために全力を尽くす。  そのためには、社長・従業員・関係する人たちが協力して、お客様のためになることを考える仕組みを作る。  いたってシンプルなのです。  成功しない人は、損益計算書の一番下の項目、すなわち利益に焦点を当てておられます。  利益を出すには、売上を上げる以外にいろいろな方法があります。 ●原価を抑える  仕入れ業者を泣かせれば利益が出ます。 ●人件費を減らす  従業員を泣かせれば利益が出ます。 ●支払手数料、その他の経費を減らす  税理士等の関係者への支払額を減らせば利益が出ます。 ●雑収入を増やす  本来の事業以外のところで儲けを出しても利益が出ます。 ●特別利益を増やす  持っている土地を売却したりしても利益が出ます。  利益を出すために考えるべきことは複雑です。  複雑なことを考えると、社長の頭がお客様のところまでなかなか回りません。

11  人間の本能を手放せ!  多くの中小企業の社長は、なぜ数字を見て、経費の削減の方に動くのでしょうか。  それは人間の本能が大きく影響しているのだと思います。  私たちの頭は、合理的な計算機ではありません。  ビジネスにお金を使ったり、節約したり、何かを決める段階になると、不安などの感情が出てきて、社長の決定を大きく狂わせるのです。  多くの人にとって、損をして失ったものは、得して得たものより価値が大きい傾向があります。これを損失回避性と言います。みんな損失は回避したいのです。  合理的に考えれば、 1万円落としたことの苦痛は、 1万円拾ったことの満足度と同じのはずです。  ところが、人間は同額の利益から得る満足より、損失から受ける苦痛の方がはるかに大きいと感じてしまうのです。  たとえばあなたが A社株 100万円と B社株 100万円とを持っていたとします。  あるとき、 A社株は 120万円になり、 B社株は 80万円になりました。  あなたはどちらの株を売りますか?  多くの方が A社株を売ると答えられます。   120万円になった A社株が 100万円に戻ってしまうかもしれないと思い、せっかく得た 20万円の利益を失いたくないとの思いから、上がり目の株を売り急ぐ傾向にあります。  また 80万円になった B社株を売ってしまうと、 20万円の損失が確定してしまうので、確実に損することを嫌がって、 100万円に戻るかもしれないと、損失を避けようとする考えが起こり、下がり目の株を売り遅れる傾向にあります。  損失を避けたいという人間の信念が、経営においても意思決定に大きな影響を与えます。  だから周りのみんなを幸せにして売上を増やそうという行動より、ムダを削って経費を減らそうという言葉に反応してしまうのではないでしょうか。  そして冷静に考えると明らかな失敗の選択をするのです。  ある社長は、経費に目をつぶったら会社はつぶれてしまうのではないか、社員や家族を路頭に迷わせてしまうのではないかと、夜も眠れないくらい悩み、苦しんだそうです。  悩み抜いた末に「経費には目をつぶる。お客様に喜んでいただくためのお金は惜しまない」その覚悟を決めて行動に移した結果、思わぬものに出会いました。  今までのやり方では出会うことのできなかった、お客様の心からの笑顔です。お客様に「ありがとう」と言われた従業員も、嬉しそうでした。  社長は思ったそうです。「このために商売をやっていたんだ」と。  現在その社長の周りには幸せな人が増え、ビジネスも成長しています。  本能がもたらす苦しみを乗り越えられた人には、幸せが待っているのです。

1  中小企業では「社員は家族」「中小企業のスタッフは家族と同じ」という発想が大事です。  ある人が「スタッフに給与を少なく払う方法」を教えてくれましたが、私は従業員にはできるだけ多くの給与を払いたいので、そのノウハウにはまったく興味がわきませんでした。  みんなでお客様を喜ばせて、お客様が増えて、その結果自然に給与を増やすようにしませんか?  お客様が「この会社は世の中に必要だよね」と思ってくださって、スタッフが「この会社は好きだから長く働きたい」と思ってくれて、業者の方が「この会社とは長くお付き合いしていきたい」と思ってくださったら、必ず繁栄します。  逆にお客様に「こんな会社は世の中に要らないよね」と思われて、スタッフが「こんな会社は早く辞めたい」と思い、業者の方に「こんな会社とはできたら取り引きしたくない」と思われたら、成功するはずがないと思います。  うちの事務所のクリスマスパーティーは、事務所でスタッフの家族を呼んでやります。  日頃お世話になっているスタッフ、そのスタッフを支えてくれている家族全員に喜んでほしい。  そのために 11月末からの日曜日は、嫁とクリスマスプレゼントの買い出しに行きます。  あれがよい、これがよいと、毎週いろんなお店に行って、買ったプレゼントの総数 50個。「これをあげたら喜ぶかな。これをあげたらびっくりするかな」って考えながらプレゼントを買います。楽しいですよ。  みんなで頑張って今年もお客様が増えたし、お客様に喜んでいただいたし、売上も増えました。その結果利益も増えました。  これもスタッフの皆さんが頑張ってくれたおかげです。  来年ももっといっぱいお客様を喜ばせて、お客様が増えて、もっといっぱいのクリスマスプレゼントを買おうね!  こんな風にスタッフと付き合っていたら、この間嬉しいことがあったんです。  事務所に来られたお客様がお帰りになるとき、みんなが立ち上がって「ありがとうございました」ってお辞儀してくれたんです。  誰もそんなこと頼まないのに、「お客様のおかげで私たちは幸せになれている。もっとしっかり感謝の気持ちを伝えたい」とみんなで考えてしてくれたのです。  嬉しくて涙が出そうになりました。  スタッフのみんな、ありがとう!  来年のクリスマスは、プレゼント 100個にしようね!  自慢めいてしまいましたが、税理士の仕事を通じて得られた多くの成功している中小企業のノウハウを積極的に取り入れることで、私の事務所はよいサイクルが回り始めました。

2  社員は社長の鏡  中小企業のしてしまいがちな「人材」に関するカン違いを述べてまいります。  私の次男は今大学生で、学校が終わって夜に居酒屋でアルバイトをしています。そこでの出来事です。  その日は雨が降ってお客様の数が少なかったので、オーナーである店長が、みんな好きなもの頼んでよいよと言ってくれたそうです。  そして、うちの息子に「伝票の宛名をオーナーって書いておいて」と言いました。  いわゆる「オーナー伝票」っていうやつです。  この話を聞いて、私はこの店のオーナーはすごいと思いました。すごいところは2つあります。  飲食店等は、雨が降った等で客数の少ないとき、経費削減のためシフトに入っているアルバイトを帰らせるといったことがよくあります。  お店はいいかもしれませんが、アルバイトはもらえるお金がなくなるわけですから、たまったものではありません。  しかし、このお店はバイト代をきちんと支払ったばかりか、好きなものを頼んでいいと言った。  みんな嬉しくなって、頑張ろうって思ったそうです。  もう1つすごい点が、みんなが飲み食いした分をちゃんと売上に上げていること。現金商売ですから売上を抜く、ごまかすことはやろうと思えばできますが、このオーナーは不正をしたりしないとスタッフは感じるわけです。  人間誰しも、不正をしている人の下で働くのは嫌ですし、その人についていこうなんて思いませんよね。従業員はそういうところを見ているんです。  正直な人には正直な人がついてきます。ウソをつく人にはウソをつく人がついてきます。  これは経営にとても大切なことです。  事実、このお店にはいい店員が集まっています。  すると、いいお客様が集まってくるのです。  お店も繁盛していて、うちの息子はいつも遅くまで働いています。  いい従業員が集まらない、いいお客様が集まらないとぼやいている社長がいますが、もしかしたら社長、あなたがそういう人を引き寄せているのではないですか?  お客様を喜ばせるのは、従業員の仕事です。  社長だけでは無理です。  お客様に喜んでもらうには、従業員に喜んでもらわなければいけません。「こんな会社で、お店で働くなんて嫌だ」と思っている従業員が、お客様を喜ばせることなどできるはずがないのです。  事実、成功している会社に行くと従業員が幸せそうに生き生き働いています。  お客様を喜ばせるには、まず従業員を喜ばせましょう。  スタッフ、出入りの業者、その他会社に関わる人たち、みんなが幸せになれば、お客様を幸せにしてくれるのですから。  社員を喜ばせるには、まず社長が楽しく働くこと。  そのための方法は第 4章、第 5章で話していきますが、まずは従業員についてお伝えします。

3  規則より「人としてどうなのか」  組織に関して、よくいわれていることがあります。「特定の社員に依存せず、どの社員も同じ力を発揮できるのが強い組織。経営者は、そのための環境を作ることが大事」  確かにそのとおりです。そのために会社には決まりがあり、お店にはどのお客様も同じサービスが受けられるよう規則やマニュアルがあります。  しかし私は、中小企業にはあまり細かい規則やマニュアルは要らないと考えています。  それより重視したいのが「人としてどうなのか」。  あるレストランの話をします。  多くのレストランでは、お子様ランチは子どもしか頼めません。  ある日、 1組の夫婦がそのレストランに来て、 2人分の食事とお子様ランチを注文しました。  お子様ランチは子ども限定なのでスタッフは注文を断りました。  でも待てよとそのスタッフは思ったのです。   2人分の食事を注文されているのにお子様ランチは余分ではないかと。そこでその夫婦に、なぜお子様ランチを注文したいのか尋ねました。  すると、あることがわかったのです。  その夫婦の子どもは先日亡くなって、今日はその子が生きていれば誕生日のお祝いをこのレストランでする予定だったのです。「あの子はこのレストランのお子様ランチが好きだったので、つい頼んでしまいました。頼めないことは知っていました。すみません」と言われました。  それを聞いたそのスタッフはすぐにお子様ランチをキッチンに注文して、その夫婦に提供したのでした。  その夫婦はたいそう喜んでいたということです。  世の中には規則を重んじる会社が多いです。  もちろんそれは大事なことですが、規則より前に「人としてどうなのか」を考えた対応をスタッフにしてもらいたいものです。  働く人が「自分が客だったら買わない、そのお店には行かない」と思っている会社が発展するはずがありません。  それよりも「自分が客だったら利用したい、人にも薦めたい」  そう思って働いてもらうこと。  そのためには、スタッフとどう向き合っていくべきなのか。  人件費を減らして利益を出そうとばかり考えている経営者の下で、そういうスタッフが育つのか。あなたはどう思われますか?  人件費を減らして利益を出そうとすると、会社と従業員は利害が対立する関係になります。  会社は働いた分だけ給与を払うから、仕事は短時間で終わらせて、余計な残業などはしないよう要求する。  従業員側も、会社がそういう態度なら、こっちも言われたことだけやって給料をもらえばそれでいい。それ以上のことは一切やらない。  こういう関係で、果たしてお客様に喜んでもらうサービスや提案ができるのでしょうか?  成功している社長は、従業員が幸せになるにはどうしたらいいかをいつも考えていて、従業員も社長の思いに応えるのは、自分がお客様を喜ばせて会社を好きになってもらうことだとわかっています。  そんな会社では、あちこちでお客様を喜ばせる接客ができていくのです。  大企業は「どのお客様も同じサービスが受けられるように」と、しっかりしたマニュアルがあるので、「規則なのでできません」というように、マニュアルをはずれて親身になったサービスは望めないことが多いです。  お客様の数が多い分、例外を認めてしまうとほかのお客様全員にも認めなければならないことから、一律でできない、例外は認めないというスタンスなのです。  そこはお客様の数が多くない分、柔軟な対応ができる中小企業の出番です。「私もお子様ランチを食べたい。何であの客だけ認めるんだ!」と言い出すお客様が現れたら(現れないと思いますが)、「こうこうこういう理由から特別に提供しました。ご理解ください」と説明すればいいだけ。   1人ひとりにきちんと説明すれば、納得しないお客様はいないですし、もし納得されないようならそのお客様にもお子様ランチを提供すればいい(いないと思いますが)。  自社のお客様全員と向き合える中小企業だからこそ、取れる手立てです。  大企業ができないことを中小企業がやる、こういうところで大企業に勝たなければ、どこで勝つというんでしょうか?

4  お客様をナンパ  うちの長男があるレストランでホールスタッフのアルバイトをしていました。  そこの店長が息子に言った言葉に私は感心しました。「お客様とお話しするときは、お客様をナンパするつもりで話しましょう」。  女の子をナンパするなら、相手に気に入ってもらわないと成功しませんよね。  その気持ちでお客様と接しなさいというアドバイスです。  このお店はとても流行っています。  店員 1人ひとりが、じっくりお客様とコミュニケーションを取りながら料理を提供しているのです。  このような指導は「短時間でできるだけ多くの料理を運ぶ」ことを一番に考えているレストランでは無理です。  スタッフがお客様と話している間、料理は運べませんから。  私がそのレストランに客として行ったときのこと。  食べ終わった料理の皿を下げに来てくれたホールスタッフに料理のことを聞いたら、そのスタッフは質問に答えたあと、私の事務所のホームページを見ましたと言ってくれて、私は嬉しくなって、話をいろいろしてしまいました。  私の話を聞いてくれている間、そのスタッフはほかの仕事ができませんから「忙しいところ悪いかな」とも思い始めていたとき、別のスタッフがスーッと寄ってきて、話を聞いているスタッフの皿を運んでいきました。  私の話を聞いていたスタッフは「私の仕事はほかの人がしてくれましたから、どうぞお気になさらず」と言ってくれたので、私はもっと楽しく話させてもらえました。  これって嬉しいサービスですよね。リピーターが増えるのもうなずけると思いました。  従業員の「お客様を喜ばせたい」という思いを、実現しやすいよう仕組みにするのが社長の役目です。このお店では「ある従業員がお客様につきっきりになったら、ほかの人がヘルプに行くこと」という決まりがあるようでした。「従業員が一番力を発揮できる環境を整える」のが、社長の仕事です。

5  社員をリッツ・カールトンのホテルマンに!  リッツ・カールトンホテルで、ある会社が忘年会をしたときのこと。  女性の社員がジュースを頼んだのですが、そのジュースのビンがとてもきれいだったので「持ち帰ってもよいですか」とホテルのスタッフに聞いたところ、「もちろんです。袋に入れてお渡ししますね」と帰りがけにジュースの空きビンの入った袋を手渡してもらえました。  女性社員がその袋からジュースのビンを出してみたところ、なんとびっくり、そこには空きビンではなく、新品のジュースのビンが入っていたのです。  経費がかかってもよい、お客様にサプライズを仕掛けて喜んでいただく。そのために必要なお金を使う際は、一定額までは上司の決裁を得なくていい。  これがリッツ・カールトンのリピーターを増やす仕組みです。  多くの中小企業では、もし従業員がこのリッツのホテルマンのような対応をした場合、以下のように言っているのではないでしょうか。「お客は空きビンでいいと言っているのに新品を渡すなんて、何を考えているんだ!」と。  成功しない中小企業の社長は、小銭を節約する数々の方法を考えます。  成功する中小企業の社長は、小銭を節約するより、お客様を幸せにして、より多く買ってもらうことにより売上を増やし、より大きく儲けることができるようになるのです。  新品のジュースをもらったこの社員や、このことを聞いた友人、会社の人たちは、またリッツを利用することでしょう。  ほかにも、こんなことがありました。  以前、セミナーを受けるために東京の品川へ行ったときのこと。少し時間があったので、友人とレストランに入りました。  コーヒーを注文し、いろいろ話をしていて、ふと時計を見るといつの間にか 11時になっていました。  セミナーは昼からだったので、その前に食事でもしておこうかと思いカレーを注文すると、店員の方が、「お客様、あと 5分程でランチタイムが始まります。それまでお待ちいただければ、ランチセットをご注文いただけますので、同じ料金でサラダとコーヒーがつきますよ。また、そこまでお待ちいただければ、先ほど飲まれたコーヒーをランチのコーヒーにしておきます」と言ってくれました。  お店の都合を考えれば、ランチタイムの始まる前に注文を取った方が、カレー代もコーヒー代ももらえますから、その分売上が上がりますよね。  でもその店員は、お客様のことを考えてこう言ってくれたんです。  感心した私はその後も品川に行けばこのお店に行くようにし、この店員さんがいれば必ずこの方に注文します。  お客様のことを考え柔軟な対応ができる社員を多く抱えること、それこそが中小企業の強さ、大企業にできない戦略になるのです。  そして、社員がお客様のための行動を起こしたら、社長は称賛すること。間違っても「利益を減らすようなマネをするな!」などと言ってはいけません。

6  人がモノを売る時代  一昔前は、財産がモノを売る時代でした。  昭和 30年代を舞台にした映画『 ALWAYS  三丁目の夕日』の時代は、大きな土地を持って、大きな工場を建てて大量生産すればモノは売れていきました。  そのような土地・建物を用意できるかが、会社が売上を伸ばせるかどうかの差だったのです。  平成の現代は、モノが売れない時代です。ただ作るだけでは、お客様は買いません。  平成は人がモノを売る時代、誰からモノを買うかが、お客様にとって大切なのです。  こういう時代こそ中小企業が活躍できるのです。  財産がモノを売る時代なら、中小企業は太刀打ちできません。大企業のような大きな土地や建物は用意できないですから。  この時代だからこそ、中小企業は、規模が小さいことのメリットを活かすべきなんです。  弊社のクライアントに、従業員を大切にする歯科医院があります。  そこのスタッフはいつも生き生きして楽しそう、患者さんにも笑顔で接します。「このクリニックで働いていることを誇りに思っています」  そんな言葉が、自然とスタッフの口から出てくるのです。  従業員を大切にしない天ぷら屋さんが事務所の近くにありました。  揚げたての天ぷらを食べさせてくれて味はよかったのですが、この店の店長は、効率を考えて従業員に文句ばかり言っていました。  従業員が店中に響き渡るような大声で怒られていることもしょっちゅうで、お客としてその店にいても気分がよいものではありませんでした。  また、従業員も店長が怖いのでお客様の方を向かないで、店長ばかり気にしています。  そのお店は、いつの間にかつぶれてしまいました。  経営者さえ得をすればよい。従業員はこき使う、従業員が幸せかどうかなんてどうでもよい――。  今の時代は、これでは成功しません。  今は一緒に成功する経営の時代です。  アメリカンフットボールのように、社員で持ち場を分けてそれぞれが力を発揮し、お客様に喜ばれ、売上が立つ。  そしてそれがスタッフみんなに分配され、スタッフ 1人ひとりが幸せになる、そういう経営をしておられるところが成功しています。

7  ニンジンで馬は走っても人は走らない  従業員にやる気を出させるために歩合給を取り入れる会社があります。  これを聞くたびに、馬の前にニンジンをぶら下げて走らせるみたいだなって思います。  馬は走るかもしれませんが、人間である従業員は、これで走り続けられるのでしょうか?  社員は馬じゃなくて、 1人の人間です。会社は社員という人間の集まりですよね。  成功しない会社の多くが、このことを忘れて、ロボットが働いているかのように、機械的な経営をしているように思います。  社員である人間が、いかに生き生き働けるようにできるかを考えてこなかった会社が多いのです。  うまくいかない会社に勤める社員の多くは、生活のため、給料のため、仕方なくこの会社で働いているという意識なので、同額の給料をもらえるならば、今の会社でなくてもよいと思っている人がたくさんいます。「成果を出した従業員に高い給与を払う」  この方法は、努力に報いるという点では正しいですが、お金だけが従業員とのつながり、従業員のやりがいだと、その人はもっといい給料をもらえる会社に簡単に移ってしまいます。  従業員が会社に求めているものは、お金以上に「働く目的・働く意味、意義」です。  成功している会社の社員は、このままここで働きたいと考えている人が多いです。「この会社っていいよね。この会社がなくなったら困るよね。この会社がなかったらもっといい会社なんてそう見つからないよね」と思っている人たちの集団。  だからお客様を喜ばせようとする。お客様を喜ばせると自分も幸せになるとわかっているから。  私の知るもっともすごい会社は、「従業員の空き待ち」があります。  ここで働きたいけれど空きがない、登録だけしておいてほかの会社で働きながら欠員が出るのを待っているという会社もあるのです。  ただ決められた時間だけ働けば給料がもらえて生活ができる。そう思っている集団と、会社が繁栄すれば自分たちが幸せになることを知っていてお客様を喜ばせようとする集団。この2つの集団が生み出す利益の差は計り知れません。  成功しない社長は、社員の気持ちの扱い方をきちんと考えてこなかった。そんなものは経営者にとってたいして重要ではない、そう考えていた。  でも成功している社長は、数字を追う経営ではなく、人を扱う経営をして、そのことがもたらす利益と喜びに、経営に自信を持っておられます。  私の思う成功している社長に近づくための方法は、当たり前のことをやること。  社員はニンジンだけでは走らない、社員が求めるお金より大事なものとは何なのか。  能力を発揮するにはやる気がいる。やる気がなければ社員がどんなに優秀な人間でもお粗末な結果しか出せないと思います。  自分は必要とされている、評価されている、社員がそう感じなくてはやる気は出ない。  この会社にいれば公私共にいいことがある、と思ってもらう。そういう会社にする。  そのためには経費の削減なんてケチなことは考えずに、社員のためにお金を使う。「みんなのためのお金をみんなで稼ごう!」という組織を作る。そして稼ぐための方法はお客様を喜ばせること。  ものごとを数字の結果ばかりで判断していると、そういう組織はできないです。

8  経験・実績よりも重要な従業員の採用基準は?  中小企業はどんな人を採用するのがよいのでしょうか。「やっぱり業界で実績を上げている人がいいな。でもうちみたいな小さいところにそういう人はなかなか来てくれないから、せめて業界の経験が長い人がいい」  そう考える社長は多いですが、それが成功していない中小企業社長のカン違いです。  カン違い社長は、その業界にどれだけいたことがあるか、すなわち即戦力を採用したがります。  成功している中小企業の採用基準は、その業界にどれだけいたかではありません。  即戦力ではなく、自社の経営方針である「お客様を喜ばせること」にどれだけ親身になって対応してくれるかを基準にしているところが多いです。  ある業績好調な中小企業の社長は言われました。「業界の常識をわかっている人に、世間の常識を教える方が楽なのか、世間の常識をわかっている人に、業界の常識を教える方が楽なのか、どちらが楽だと思う?」  これを聞いて、なるほど成功している方はこういうところから違うんだなと思いました。  弊社のスタッフも成功者のマネをして、異業種からの採用を多くしています。銀行・証券会社・リース会社・コンビニ etc。  もちろん業界経験者もいますが、この業界しか知らないという人はいません。  私たちの目標は「中小企業を幸せにすること」です。  私たちは、お客様にいっぱい喜ばれて、私たち自身が幸せな気持ちになれることを目指しています。  私たちの事務所に入ってもらいたい仲間は、心の温かい人です。スタッフやその家族に喜ばれる事務所になりたいのです。  採用基準は、申告書が書けることではなく、お客様に感謝されることに生きがいを感じられること、お客様の立場になったサービスを提供できること、お客様にサービスで感動していただくために努力できること、お客様に喜ばれることで、いっそう頑張れることです。「人に喜ばれることが自分にとって最大の幸せである」  この私の言葉を心で理解できる人に、入っていただきたいと思います。  専門知識や経験はなくても、入ったあとに身につけてもらうつもりで教えていきます。専門知識なんてものは、長い間やっていれば誰でも身につくものですから、教えればいいだけです。  それ以前の「人として大切にしていること」や「価値観」は教えられませんから、持ち合わせていることが必要です。  価値観を共有できる人が税務をわかってきたとき、経営をわかってきたとき、本当の力になるのです。  中小企業は大企業のように多くの人材を抱えることはできませんから、少数精鋭で戦うしかありません。「少数精鋭」というと、精鋭を少人数集めればいいって思っている人がいますが、少し意味が違います。  少ない人数で働いていると、その人たちが精鋭になってくれるんです。  少数精鋭のチームを作るためには、入口で基本の価値観を共有できる人を採る必要があります。

9  中小企業は「形の違う石」で石垣を作る  中小企業では、「社長の価値観に共鳴できる」という柱が通ったら、あとはバラバラであっても構わない、むしろバラバラであるべき、と私は考えています。  お客様にもいろんなタイプがいて、価値観もさまざまですから、お客様にストレスなく対応してくれるのは、さまざまな価値観を持ったスタッフであり、いろんなタイプがいなければ、お客様を満足させる対応ができないのです。  納めた商品が不良品で、お客様からクレームがあった場合で考えてみましょう。  お客様はどのようにすれば対応に満足されるでしょうか。  あるお客様は、「謝罪があるのが筋」という価値観をお持ちで、担当の営業マンが即座に謝罪に行ったことに満足されました。  しかし、別のお客様は「ただ謝りに来られても意味がない。謝りに来る暇があったら、不良品を修理、交換してくれたほうがよっぽどいい」と考えるかもしれません。  このとき、「クレームがあったら何よりも謝罪」と考える社員しかいなかったら、お客様はまったく満足されず、新たなクレームになってしまうかもしれません。  お客様の価値観の数だけ、対応できる社員の価値観も多くあるべきで、社長は社員 1人ひとりを形の違う石として活かした組織を作る必要があります。  武田信玄は「人は石垣  人は城」と言いましたが、会社でも人は石垣であるべきです。   1人ひとりが形の違う石だと、組み合わせて積み上げていくのは大変で、時間も手間もかかります。  しかし、一度組み上がれば、とても強固でそう簡単には崩れないものになります。  1つひとつが形の違う石であるために、業界の経験者という「同じ石」に近い人たちよりも、業界も経験もバラバラな人を採るのがよいと私は考えます。

10  枝葉の価値観はバラバラでいい「お客様を喜ばせることが喜び」という、柱となる価値観には共鳴しても、枝葉の価値観はまったく異なる社員の集まりが強い組織――。  言うのは簡単ですが、実現はそうやさしいものではありません。  中小企業の社長のような、大きな権限のある人がやってしまいがちなのが、「自分と同じ価値観を他人も持っていると思ってしまう」こと。  ものごとを限定せず、まずは進んでいく方向や到着地点を定め、その方向に向かいながら最終的にベストな到着地点を決めたいという価値観の人、この人を「アバウトタイプ」とします。  このタイプは、人やものごとのつながりを意識しながらベストな到着地点を模索するのが得意で、私もこのタイプです。  それとは逆に、ものごとをより明確に具体的に捉えたい、抽象的なものはできるだけ具体的にしていき、最終的にはピンポイントに絞り込んでから行動したいという価値観の人がいます。この人を「キッチリタイプ」としましょう。  どちらがいい悪いということではありませんが、お互いがお互いの傾向をわかっていないと、会社がうまく進まない原因にもなり得ます。  たとえばこんなケースはないですか?  アバウトタイプの上司がキッチリタイプの部下に仕事を頼みました。  アバウトタイプの上司は、大体のイメージを伝えればできると思い、とりあえず概略を考えて持ってくるように指示します。  キッチリタイプの部下は、とりあえずと言われても、どれくらいの進捗度まで仕上げればよいのか、いつまでに仕上げればよいのか指示してほしいと思っています。  アバウトタイプの上司は「そんな細かいことまで説明しなければ仕事ができないのか?  ダメな部下だ」と思う。  逆のこともあるでしょう。キッチリタイプの上司が、アバウトタイプの部下に指示をすると、キッチリタイプの上司が細かく指示するのに部下はあまり聞いていない、いつも思っていたものと違うものができる。そして使えない部下だと思う。  これはどっちが正しいわけでも間違っているわけでもありません。キッチリタイプの部下に仕事の指示をするときは、仕事の全体像や具体的な期限をきちんと伝えてあげると、部下は力を存分に発揮していい仕事ができますし、アバウトタイプの部下に仕事の指示をするなら、大まかな方向性を伝え、とりあえず何から始めるかを伝えてあげると力を存分に発揮してくれます。  大切なのは、人間にはいろんなタイプがあり、それぞれが自分らしく力を発揮できるポイントは違うのだと理解していることです。  組織にはいろんな人がいた方がいいのです。それぞれのデメリットを打ち消しあい、 1 + 1を 3にも 4にもする。それが組織の強みです。  社長がスタッフのそれぞれの価値観を把握していれば、相手が理解しやすい指示命令ができるので望む結果が得られる可能性が高くなります。  スタッフも自分の価値観で仕事ができるため、生き生きと働けるようになります。  野球でたとえると、腕力が強くホームランを打てるが足が遅い選手に、お前はホームランは打てても足が遅いからダメな選手だ、毎日スピードドレーニングをしなさいと、その人の嫌いな練習ばかりをさせて、結局得意なホームランを打つ能力も殺してしまうようなもの。  ホームランを打てる選手は長打力を鍛えるのに専念してもらう、足の速い選手は内野安打や盗塁の技術を磨くというように、お互いの得意な分野を受け持てばいいのです。  得意なことは楽しいですから、アイデアも出てきて、とても楽しい作業になります。  このようにお互いの特性をわかっていれば、それぞれ得意分野に専念すればよいだけ、好きだから苦痛には感じないし、スキルもアップし効率も上がります。

11  「みんなで幸せになる」ことを目指す  従業員とは価値観を共有することが大事ですが、実際の業務でお客様を喜ばせ、「お客様を喜ばせると嬉しい」と実感してくれたとき、心から価値観を共有する、スタッフは本物になると感じます。  スタッフが、自然に本物になっていく、そういう環境作りが社長に必要です。  今の会社に必要なものは、合理性ではなく、昔の日本にあった大家族のような雰囲気だと私は考えています。  自分がいいだけではなく、家族みんなが幸せになるような組織を作る。みんなで夢をかなえる。それが日本人の気質に合っているのではないでしょうか。  成功している会社は、この考え方を社内だけではなく、関係者にもされます。  ある会社は、弊社の顧問料をこちらがお願いしていないのに上げてくださいます。  そうされると、私も嬉しいので何か恩返しをと考えてしまいます。  その会社と別の会社である問題が起きたとき、私は「私に任せてください」とだけ伝え東京に行き、相手の会社の弁護士と話をしてきました。  そして解決し、結果を報告しました。  この行為にかかった費用は、上げてもらった顧問料以下の金額です。  しかし損失の回避は何千万円の値打ちがあると思っています。  この会社は、会社に関わる人たちが喜ぶ付き合い方をされて、このような協力をいろいろな人からしてもらっているのだと思いました。「成功する会社は成功するように行動している」と感じた出来事でした。

1  優先すべきはお客様を集めること  成功する会社になるためにとても大切なのが「作戦」です。「お客様を喜ばせたい」そういう思いはあっても、方法が正しくなければ意味がありません。  すべての中小企業において、最大の課題はお客様を集めることです。  お客様が増えると、会社はいい方向にいきます。お客様が減る会社は、どんどん悪い方向にいきます。  まずお客様を増やす。これを一番に持ってこないとダメです。  以前、うちの事務所であったことです。  私が販売用の DVDをお客様から見える位置に並べようとしたとき、「 DVDのジャケットが陽に当たって色あせてしまうので並べないでほしい」とスタッフに言われました。  私の考えも、スタッフの言い分も正しいのです。   DVDを並べれば、お客様の目につきやすくなり、商品を買ってもらえる可能性が高まります。  その分、陽に当たって色あせたら作り直さないといけないかもしれないですから、陽に当てなければ費用は抑えられる。経費の削減です。  ここで考えるべきは「優先順位」商品を買ってもらう可能性を増やす、そのためにはお客様の見やすい位置に並べる必要があります。  不景気といわれる今でも、売上の伸びている中小企業はあります。  お客様の心になりきれば、必ずビジネスは成功するのです。  そのためには、お客様の欲しいものを提供していないと成功できません。  事業がうまくいかないことを不景気のせいにする方は多いですが、モノがあふれている時代に、ただモノを作っているのではダメです。「損得抜きで、変化していくお客様の欲求に応える、喜んでいただく」という方針で事業に取り組むと、成功します。  私のアドバイスどおり、この方針で経営改善に取り組んだところは、皆成功していっています。  成功とは言えないところもありますが、それは私に言わせてもらえば「お客様を喜ばせることだけを考え切れていない」会社です。  どうしても「業界の常識では〜」と既存の考えにとらわれたり、「やっぱりちょっとでいいから経費を削減したい」と、踏ん切りをつけられていないのです。「本当に覚悟を決めて行動に移せば、売上は必ず上昇する」と私は考えています。

2  どんなに小さくても 1位になる  ランチェスター法則の専門家、竹田陽一氏によると、業界で 1位を取った会社の従業員 1人当たりの経常利益は、 2〜 4位の会社の 3〜 6倍も多いそうです。   1位の会社と、 2〜 4位の会社から適当に従業員を 100人ずつ集めてペーパーテストをしたら、 1位の会社の従業員が 2〜 4位の会社に勤める従業員の 3〜 6倍の点数を取るでしょうか。  多少は違うかもしれませんが、こんなに差がつくとは考えにくいです。 「1位になる」だけで、ビジネスは圧倒的に有利になります。「富士山は誰でも知っているが、日本で 2番目に高い山の名前は誰も知らない」のです。「でも中小企業で 1位なんて……」と思った方、名古屋に名糖産業という会社があります。  この会社は「名古屋でのアイスクリーム販売のシェアで 1位」です。  ここに中小企業の生きる道があります。  どんなに小さな分野、ジャンルでも 1位になるのです。  お客様に「 1位だから信頼できる」と思ってもらえると同時に、社長の、社員の意識も大きく変わります。  中小企業の 99%は「 1位を目指す」など一度も考えたことがありません。初めから目指していないので、 1位になることのメリットを誰もご存じないのです。 「1位を目指す」  それを目標にしてください。

3  カレー専門店になれ!  どうやって 1位を獲得するのか。  中小企業ならではの作戦を立てていきます。  今がうまくいっていない大きな原因は「経営者の視点でモノを売っているから売れない」ことです。  たとえば、商品の数。経営者は商品を数多くそろえようとします。商品数が多いほど売上が多くなると信じているからです。  でもお客様の立場になればどうでしょう。「いろんなものを売っている店、いろんなものを扱っている会社」という印象を与えるだけです。「いろんなものを売っている、何でもあるところと思ってもらった方が、多くのお客様に来てもらえるに決まっているじゃないか」と思う方がいるかもしれませんが、「何でもある店」に行くとき、ほとんどのお客様は品揃えの多い、規模の大きな店を選びます。資金力のある大企業には絶対にかないませんから、中小企業が「何でもある店」を目指しても、大企業の劣化版、中途半端な店と言われるのが関の山です。  じゃあどうすればよいのか?  絞り込むのです。  参考になるのがカレー専門店。  よく私はお客様と「カレー専門店とファミリーレストラン」について話をします。  お客様と話をしていて、カレーライスを食べに行こうということになったとします。右に行くとカレー専門店が、左に行くとファミリーレストランがあります。どちらの店もカレーライスがあります。  あなたならどちらに行きたいですか?  こう聞くと皆さん、カレー専門店に行きたいと言われます。  皆さん、「専門」とか「 1番」という言葉に興味を持たれます。  これが中小企業の成功の秘訣なんです。お客様は、「絞り込まれた店」を選んでいます。  総合店より専門店を選びます。  しかし、経営者の立場になると考えがガラッと変わってしまい、お店を作るときは、総合店を目指してしまうのです。  カレーだけ出しているお店が、カレーもチャーハンも牛丼も出せば、カレーもチャーハンも牛丼も食べたいお客様が来てくれてもっと儲かる、そう思ってしまいます。  お客様の立場のときは選ばなかったファミリーレストランを作り出すのです。  だから売れません。その結果、安売りをしてお客様の気を引こうとし出します。  大企業は、「総合」というキーワードで集客しますが、中小企業の集客のキーワードは、「絞り込み」なんです。「いいものを作っていれば、自然と売れるはず」  そう考える人は多いですが、まさにモノが不足していた昭和の発想です。  よい商品が売れるのではないんです。よい商品だとお客様が認識するから売れるんです。  売り込むのではなく、相手から商品を求めてくるようにするにはどうすればいいかを、日々考えるのが経営者の仕事です。  商品を絞り込むと、磁力を持つかのようにお客様を引き付けることができるようになります。  絞り込みに邪魔な商品を思い切って捨てるわけですから、言うのは簡単ですが、勇気が要るのはわかります。みんな躊躇してしまうのです。

4  お客様を選ばないとお客様に選ばれない  私は「中小企業専門の税理士」と名乗り、従業員 100人以下、とりわけ 30人以下の法人と個人を主な顧客とし、それ以外はお断りしています。  私がこう言うと、こんな反応が返ってきます。「大きな会社からの依頼を逃してしまうのでは?」  確かに大きな会社からの依頼は顧問料も高く、つぶれる可能性も低いですから、定期的な収入を得られて経営も安定するというのが、常識的な考えでしょう。  しかし、それでは選ばれません。税理士なんて 7万人います。その中から選ばれるためには、人と違うことが大事です。  私は大きな会社を切り捨て、中小企業に特化しました。絞り込んだのです。その結果、中小企業からの依頼を多くいただきました。  そして、実務を通じて中小企業のためのノウハウが集まり、中小企業が成功するための考え方がわかりました。  そしてそのノウハウや考えを顧客の中小企業に伝え、顧客が本当に必要とする仕事ができているのです。  もちろん人と違うことをするには勇気が要ります。失敗したらどうしようと思います。  しかし、ビジネスの世界では、みんなが同じだと競争しないといけないんです。戦わないといけないんです。  私の知る成功者は、競争なんかしていません。他人と違うことをやっているだけだから、争う相手がいない。そんな状況で楽しみながら経営しています。  私も成功者の皆さんに教えを受け、すべての机が入口を向き、いつも音楽を流し、オブジェをやたらと置いている事務所にしました。  税理士事務所というと堅苦しい、難しい話をする場所という印象があったので、それを変えようと思ったのです。お客様が「たいした用はないけど寄った」となっていただける事務所を目指しています。

5  ほとんどのお店は「知られる努力」をしていない  私が子どもの頃、家の近くにうどん屋は 1軒だけでした。  うどんを食べたければそこに行くしかない、いわゆる独占状態だったわけです。  この状態なら、集客を考える必要はありませんでした。もっと言えば、そのうどんがおいしいかどうかすら求められなかったわけです。  現在はうどん屋どころかその他の外食もたくさんあり、コンビニに行けばカップめんなども豊富に売っていますから、別にそこのうどん屋に行かなくてもいいわけです。  これはうどん屋に限ったことではありません。  お客様を集めるために必要なのが営業戦略、集めたお客様が定着するためにすべきが顧客戦略です。  でもすでにいるお客様、顧客戦略ばかりに力を入れて、営業戦略にはまったく力を入れていない社長も多いです。  この2つは、分けて考えることが重要です。「ちゃんと対応している」  と言いたくなると思いますが、私に言わせてもらえば、現状は、営業戦略を何もしていないのと同じです。  考え方を完全にシフトしてください。  いくら内側を磨いて改善できたところで、それを評価してくれるお客様を集められなければ、何の意味もない、お客様が増えることはないのです。  するべきは「どんな会社か、お店か」をはっきりさせる(絞り込む)ことと、会社やお店について知ってもらうことです。  すでにいるお客様を大事にすることも必要ですが、新規顧客を獲得するためには、まったく違う戦略が必要になるのです。  飲食店のコンサルティングをしておられる、株式会社ホスピタソンの勝田社長のお話をさせていただきます。  コンサルティングを依頼されたのは、千葉県の浦安で駅から 10分のところにある、 10席の割烹料理屋です。  お客様がまるで来ない。勝田社長が初めて店を訪れたときは、閑古鳥が鳴いている店でした。  その店の板長は、おいしい料理を出すのが料理屋だと言っていました。おいしい料理を出しさえすれば、お客様は集まると思っていたのです。  まず勝田社長がアドバイスしたのは、絞り込みです。そのお店を天ぷら専門店にすること。板長は天ぷらを得意料理としており、天ぷらに関してはかなりの実力者であることがわかったからです。  日本料理屋という総合店ではなく、天ぷらの専門店に絞り込むことでお客様の反応は変わります。  全員をお客様にしようとするとお客様は来ません。自分のお店は誰に喜んでほしいのかを自分が決めていないのに、お客様は反応できないですよね。  みんなに好かれる店作りは、大企業に任せてください。  次にそのお店に歩いて来られる距離の住宅にチラシを撒いていきました。  知ってもらう努力を始めたのです。  中小の飲食店が目指すべき 1位は、「小さな場所で 1位になる」という地域戦略です。  一番近くの地域が終わったら少し先の地域にチラシを撒くというように、徐々に地域を広げていきました。  多くの顧客を獲得した今は、予約が取れない状態になっているそうです。  繰り返しになりますが、知ってもらう努力の前に「 1位になる努力」をしましょう。  それがなければ、どんなにチラシを撒いても効果は薄いのです。

6  異業種にこそ集客や儲けのヒントがたくさん潜んでいる  成功しているある歯科医院の先生は、「診療所の受付窓口のスタッフは、北新地(大阪の高級クラブの集まるところ)の女性の接客が必要」と言っておられました。「従来の歯科医院の考え方から抜け出すために、考え方を激烈に変える必要がある」のだそうです。  一般的に、歯科医院の受付スタッフは、正直に言ってあまり対応のいい人はいません。  患者さんが来院されても、受付窓口に座ったまま応対しますし、ひどい人になると、下を向いたまま(書類を読んでいるのでしょうか)接するところもあります。「歯科医院は専門性が求められる仕事。サービス業ではない(だから接客に力を入れる必要はない)」という「業界の常識」があります。  その歯科医院は、その業界の常識に疑問を持ちました。  受付のスタッフは、ただ受付に座っているのではなく、高齢の患者さんには自分から近づいていき、ひざまずいて患者さんの目線になって話をすることがよくあります。  また、自動ドアが開く前に、入口に映る患者さんの姿を見て、高齢の方の場合は入口に迎えに行きます。  その医院の受付窓口のスタッフは、元銀行員です。  彼女は、私が入っていったときも座ったままではなく、わざわざ立ってお辞儀をしてくれます。  お客でない私にまで気を遣わないでくださいと言うと、銀行時代から立ってお辞儀することに慣れていて、立ってお辞儀しないと気持ちが悪いからと言われます。  世の中になかった新しいモノではなく、業界の当たり前に、異業種の当たり前をミックスしたら、それだけで新しいモノができるのです。  経営者の皆さんは、ぜひ同業者ではなく異業種の集まりに積極的に顔を出し、学んでいってほしいと思います。「異業種から学ぶのが大事ということはわかった。だが何から始めたらいいか」  そう思った方は、同業他社と違う言葉を使う、こんなところから始めるのもいいかと思います。  私は、事業を始めたときからお客様に「先生と呼ばないで」とお願いしてきました。  先生というと「教えてやっている」というイメージがあって嫌だと思っていたのと、お客様と同じ目線でお話ししたいと考えていたからです。それに、税理士なんて偉くもなんともありません。  私の事務所は「オープンキッチンのレストラン」をイメージしています。  一般の税理士事務所は、税金の計算などの「作業場」であり、その場にお客様を呼んでいるという発想が既に間違いだと考えました。  新規のお客様が来られるときには、エレベーターが開いてすぐのところに「歓迎   ○ ○様」と書いたウェルカムボードを置きます。お客様は、ほぼ全員嬉しいと言ってくださいます。  旅館に行ったとき、自分がされて嬉しかったから取り入れました。  打ち合わせでお出しする飲み物は、数種類あるメニューから選んでいただきます。ノンアルコールビールもあって少し笑える内容にしています。  喫茶店で好きなものを選ぶ要領で取り入れました。  ほかにも、会社の設立日には、誕生日カードを私の直筆でお送りします。  美容室等がバースデーカードを送ってくるのが嬉しかったから取り入れました。会社の誕生日は、顧問税理士しか知らない情報なので皆さん喜んでくださいます。  私の「お客様に喜んでいただく」考えが、スタッフに伝わるのでしょう。ありがたいことに、どのスタッフも非常によい対応をしてくれて、お客様にご好評いただいています。  それは事務所の食事会でレストランに行ったとき、そのレストランの対応にスタッフの皆が気持ちよいと感じてそうしてくれているのです。  私はそのように異業種からどんどん学んでほしいと思い、定期的に開いている事務所の食事会の場所には気を遣っています。  事務所のスタッフがよいホスピタリティを感じられるレストランを探しているのです。  業界の常識に、異業種の常識を取り入れるために。  食事会にはスタッフの親睦、従業員を喜ばせるという目的のほかに、「 1人ひとりに異業種のよさを肌で感じ、取り入れていってほしい」という理由もあるのです。

7  「相場」なんてクソ食らえ  モノが売れない時代に、高い注文住宅がバンバン売れている。そんな建設会社が京都にあります。  そこの会社はかつて経営が行き詰まり、いつ倒産してもおかしくない状態でした。  何とか売上を作ろうと、大手建築メーカーの下請けになり、安い仕事ばかりをやっていたのです。  本当に追い詰められたとき、社長は考えました。「うちの会社は他社と違い、腕のよい大工が多くいる。それを活かした方がよいのではないか?」  そこで、こういう売り方に変えました。「うちで建築されると、他社より高いです。その代わり、担当の大工がそのあともあなたの家を見守ります。家は何十年も住むものです。家が壊れた、雨漏りがする等が起こった場合、あなたの家の建築をした、あなたの家の隅々まで知り尽くした大工が責任を持って修理します」  今は建築を頼もうとしても 1年待ちらしいです。  私が「原価を上げてお客様に喜ばれることだけ考えましょう」と言うと、必ずある反論が「商品やサービスには相場があるから、一方的に好きな値段をつけることはできないよ」といったものです。  その考えがすでに、「業界の常識」にとらわれたものです。「不況だから高いものは売れない。安くしないと」と考える人が大勢いますが、それを高いと考えるかはお客様次第。「高いけどいいものだからお金を払う」というお客様はたくさんいますし、そもそも不況だからこそ頭をひねって知恵を出し、好業績の会社はたくさんあるのです。  先ほどお話しした、お願いしなくても顧問料を上げてくださった私のお客様のように、満足したらきちんとお金を払いたいと考えてくださるお客様はたくさんいるのですから。「うちは下請けだから、自分たちで値段は決められないよ」  そういう会社もあると思います。  私がそういう会社にアドバイスしているのは、「下請けの割合を常に一定にする」ことです。  私の親父が繊維の会社を経営していた頃、飛ぶ鳥を落とす勢いの大手スーパーから大きな注文が入るので、自社の売上の 50%以上がそこからという会社が多くありました。  売上が安定してよいように思えましたが、自社の売上の半分以上を1つの会社が占めることで、ほぼその仕入先の言いなりになってしまい、どんどん安売りを強要され、さらにそのスーパーからの注文が減ったことで共倒れしてつぶれていった会社がたくさんありました。  共倒れすることなく、今も健全な経営を続けている繊維会社の社長が、こんな教訓を残しています。「もし大口のご注文をいただいたとしても、受ける金額は自社売上の 30%以内。それ以上はいくら注文をいただいてもお断りする。  その会社にもっと多く売りたいときは、自社の総売上を増やす努力をして、『自社売上の 30%』の数字自体を上げる努力をする」  売上を追って大手の言いなりになってしまうと、売上をキープするために赤字を増やして、従業員は疲労困憊、やればやるほど赤字、契約を打ち切られると会社も終わりという道を歩んでしまいます。「価格決定権は自社が持つ」ことが大事です。

8  「相場」を無意味なものにしたりんご親父と I T社長  成功する社長になるか、成功できないかのカギがまさに「作戦」です。  私のよく知っているある I T企業、株式会社 B a・ Lanzaの社長、須田さんはスキーがお好きで、信州にスキーに行ったとき、りんご農家をしている通称「りんご親父」と友だちになりました。  りんご親父はりんごが売れずに困っていたらしいです。そこで須田さんが、「私がホームページであなたのりんごを売ってあげます」と言ったそうです。  それを聞いたりんご親父は「ホームページで売れるなら苦労はしないよ」と言いました。  そりゃそうですよね、ホームページでりんごを売っていても、私も買わないと思います。  そこで須田さんは、「自分がホームページでりんごを買うなら、どんな風に売られていたら買うだろう?」と考えました。「普通じゃない売り方なら買うかも!」と思ったそうです。  そこで、彼は、りんご親父がなぜりんご農家になったのかを、なぜ一流企業を辞めてりんご農家を始めたのかをホームページで語ったのです。  ある日、りんご親父はスキーで信州に来ていて、窓から景色をぼんやり眺めていたそうです。そして「窓からこの景色が毎日見られたらよいな」そう思いました。  ただそれだけの理由で一流企業を辞めてりんご農家を始めたんです(笑)。  その場所には、「りんごの木のオーナー制度」というものがありました。 1本 15000円で、りんごの木のオーナーになってくれる人を募集するものです。  オーナーになってもらった木にはネームプレートが付けられて、その木から収穫されたりんごはすべてオーナーのもの。  しかも信州まで行けば、自分の木に会えるんです。家族で収穫に行き、自分の名前の書かれたりんごの木の下で、もぎたてのりんごをみんなで食べる、そんな体験ができるのが売りです。そして収穫したりんごは、親戚やご近所に「私の木からできたりんごです」と言って配れます。  須田さんはこう思いました。「オーナー制度という面白い制度と、りんご親父というユニークな人、これになら人はお金を払う!」  普通は「りんご」を売ろうとするが、彼はりんご親父という「人」を売った。  普通は「りんごを買って」と言うが、彼は「りんごの木のオーナーになって」と言った。  競争相手がいっぱいいる中でやるのは、本当にしんどい。  でも、競争相手がいなければ、本当に楽です。  須田さんの作ったホームページで、りんご親父の農園のりんごは、飛ぶように売れました。  さらにこんなメールがたくさん届いたのです。「子どもに自慢できました、ありがとうございます」「友だちに、『俺の木のりんごだ』と自慢できました。ありがとうございます」「近所の人たちに配って、とても喜ばれました。ありがとうございます」 etc。  須田さんはこうして、喜ばれる喜びと、違うことをしたら売れるということを同時に知りました。  それからはりんごの木のオーナー制度のようなアイデアをいろいろ考えていきました。  どんなアイデアも、その根っこは同じ「どうすればお客様に喜んでいただけるか」。  成功している人って、やっていることはこれだけなんです。  そして、「喜んでいただければ、お客様はきちんとお金を払ってくださる」。  買ってもらう喜びを体験して、変わりましょう。  そして、きちんとその対価を請求しましょう。

9  高いものを売った方が喜ばれる  あるお客様が、弊社と顧問契約をしてくださいました。  以前契約していた税理士が税務調査に立ち会い、税務署と折り合いがつかずもめているとのことで、知り合いを通じて相談に来られたのです。  本来は税務調査の途中の段階でご相談に乗ることはありませんが、知人の紹介でどうしても断れず、お受けした案件でした。  私がアドバイスをして、税務調査は終了しました。  後日、顧問契約を依頼していただいたので、以前の税理士の顧問料をお聞きすると、とても安く、私の事務所がお受けできる金額ではありませんでした。  とはいえご紹介いただいた方の手前もありますし、「半年間は前の税理士の値段でさせていただきますが、その後は当社の規定料金でお願いします」と、断られるのを前提でお話ししました。  するとどうでしょう。「前の税理士さんって、そんなに安かったのですか。別に安くしてと言うつもりはないので、今月から正規の値段でよいです」と言われました。  ビジネスって、正規の値段をいただけるように、頑張ってサービスを改善し、お客様に喜んでもらえるように、工夫することが必要だなと改めて感じました。  お客様に喜んでもらう工夫をせずに、お客様に対するアピールは低価格だけ、そんな中小企業は、絶滅していくしかないのでしょうね。  この方は、前の税理士の顧問料が業界の通常料金よりかなり安いことを知りませんでした。その税理士は低価格を売りにしていたと思いますが、それすらもお客様に届いていなかったわけですよね。「安かろう悪かろう」よりも、「高くてもいいものを」と思っている方はたくさんいます。  お客様が本当に喜ぶものをご提供できる自信があるなら、堂々とその金額を請求してください。  ついでに言うと、「料金が高いとそれに見合った内容でなければクレームがあるのでは」と思われる方も多いですが、実は料金が高い方がクレームはありません。  むしろ「いいものをありがとうございます」とお礼を言われます。  覚えておいてください。

10  ストーリーを語ってお客様と心のつながりを作る  頑張っている人を応援したくなる。学生時代の友人は何年ぶりかに会っても仲良くできますよね。それはお互いのストーリーを知っているからだと思います。  お客様とそんな風に学生時代の友だちのような関係になれたら、自分の今までのストーリーを聞いてもらいます。  私が独立して 1年目のこと、私は月曜日から土曜日まで、通常の税理士業務をして、日曜日はセミナーや交流会に出かけて人脈作りという日々を送っていました。  息子はまだ小さくて、お父さんと一緒に遊びたい年頃です。  でも日曜日も家にいない私はなかなか相手をしてやる暇がありません。  当時、セミナーや交流会は午後 1時頃から始まるものが多かったので、交流会の会場付近まで一緒に行って昼ごはんを一緒に食べて帰りの電車に乗せます。   12時 30分発の電車に乗せたからと嫁に電話すると、嫁がその頃に大阪駅のホームで待っているという感じでした。  彼は回転寿司が好きだったので、いつも回転寿司のお店に行っていたのです。そこでの出来事です。  回転寿司のお店はネタによって 100円、 200円、 500円、 1000円と、いろいろな色の皿が回っていたのですが、彼は 100円の皿ばかり食べるのです。  そうです、小さいながらに私に気を遣っているんです。  たぶん嫁に「お父さん独立したばかりやから、あんまりお金を使わせたらあかんで」と言われていたのでしょう。  私が彼に「違う色の皿も食べてよいで」って言うと、彼は「ええねん、これが好きやから」と言います。  息子の気持ちが嬉しいですが、親としては悲しいですよね。  そこで私は「お父さん、 500円の中トロ食べたいねんけど、あかんかな」と言いました。  すると彼は「ええんちゃう、お父さん食べたら」って言ってくれます。  それで私は、 500円の中トロの皿を手に取りました。   2個載っているので、そのうち1つを口にします。  私は彼に「むっちゃおいしいわ。 1個食べてみ」と言って、残った皿を差し出しました。  すると息子は喜んで手に取り「ほんまや、むっちゃおいしいなお父さん、口の中で溶けるよな」と、とても嬉しそうでした。  やっぱりほかの皿を食べたかったんですね。  この日以来、日曜日の親子の行動は決まりました。  朝から出かけて、セミナー会場の近くの回転寿司でお昼を食べます。   2人で、 100円の皿ばかり食べておなかいっぱいになったら、「仕上げやな」と、 500円の中トロの皿を取り、 2人が 1個ずつ食べます。   2人はこの瞬間がとても幸せでした。開業当初の懐かしい思い出です。  今ならどの皿も食べることができます。 1000円の皿も大丈夫(笑)。  でも 2人にはルールがあります。  それは、おなかいっぱい食べたあと、息子は「お父さん、仕上げいこか」と言って、 500円の中トロの皿を取ります。  そして、 1個ずつ食べて、 2人は顔を見合わせ言います。「むっちゃおいしいな、口の中で溶けるよな!」  私は今も息子と回転寿司へ行くのが大好きです。  たとえば私にはこんなストーリーがあります。  こんな話をしていると、お客様も「俺もこんなことがあってな」と話を聞かせてくださいます。それで昔からの付き合いのように仲良くなれるんです。  数字だけの関係じゃなくあったかい関係になれる、そんなやり方が中小企業には合っているんじゃないかなと思っています。  大企業にできないものであり、また働く人たちにとっても気持ちのよい働き方、それが中小企業ならではの作戦なのです。  医療法人まえだクリニックの待合室にこんなポスターが貼ってありました。「ボウリング大会の参加費無料。靴代の 300円だけ持ってきてください」  すごいでしょ、経費すら一部しかもらわないんですよ。  この日は患者さんのほかに先生・奥さん・スタッフやその家族も来られます。  この行為自体は、利益をもたらしませんよね。損益分岐点分析には悪い影響しか与えません。だって売上ゼロどころか、経費でどんどん赤字ですよ。  でも先生は、患者さんが喜べばそれでよいとおっしゃいます。  ある患者さんから「いつも先生の診療所に来ない私の友だちがボウリングに参加したいって言っているんですけど、連れてきてもいい?」って聞かれたそうです。  先生の答えはもちろん OK。  楽しくボウリングされたその方は、先生のことも好きになってその冬風邪をひいたとき診療所に来られたそうです。  これが中小企業の経営だと思いませんか?  中小企業は人と人のつながり、心のないところに繁栄はありません。  数日後、先生の机を見ると写真が増えていました。先生はいろんなイベントのときに集合写真を撮って机に飾っておられます。仕事中にも見られるように。患者さんたちの笑顔を見るのが、楽しくて仕方ないそうです。  こんな先生に診てもらいたいと思いませんか。  利益を追いかけるのではない。お客様の幸せを考えたら、勝手に売上は伸びるんですよね。

11  「人の買う理由」をしっかり理解しよう  人間の「買う」という行動は、 2段階の行動に分かれているとされます。 ①「欲しい」と思う ②買えるか買えないかを決める  成功している社長は、お客様が ①の欲しいという気持ちが起こるように日々考え、行動しておられます。  ②の買えるか、買えないかは、そのとき使える金額などお客様の状況次第なので、お客様にお任せするというスタンスです。  成功していない社長は、お客様が欲しくなるような行動を起こさずに、経費の削減や従業員の歩合給など、内側に向かって行動しておられます。  それで売れない理由を、不景気なので ②の「買えないからだ」と自分を慰めているのです。  成功する人は、 ①の対策として「お客様が欲しいと思うアイデア」を考え、成功しない人は、 ②の対策で安売りを始めます。  お客様は欲しくなっていないのに、成功しない社長同士で低価格の競争を始めて、お互いの首を絞めあっているのです。  お互いの首を絞めあっているだけならまだいいのですが、そのツケを経費削減という名目で従業員や関係業者に押し付け、日本の不景気に積極的に参加しているのです。  だいたい、安さ競争では絶対に大企業に勝てません。  その安さは、大企業だからできる大量生産、流通力が可能にしていますから、中小企業にその価格は絶対にできないのです。  できたとしても、それで売れても誰も幸せになりません。  成功している社長は、価格競争に参加していきません。  それでもお客様は買ってくれるので、従業員の給与も増やしますし、関係業者を値切ることもしません。  周りの人は幸せになり、好景気に導くような経営をしておられます。  ①の対策である「お客様が欲しいと思う情報」を出し続け、お客様の購買意欲を高めましょう。  アイデアを考えることを放棄し、低価格競争に参加するのをやめましょう。  何度もお伝えしますが、優良なお客様にとって、安さは購買の決め手とはなりません。  成功しない社長に共通するのが、安さという情報が、購買の意思決定の決め手になるのではないかと思っていることです。

12  ライバルと「競争」などしない「ライバルと競争」とよくいいますが、競争なんてしている暇はないんです。  そんな暇があるのなら、もっとお客様の方を向いてください。  他社の値段ばかり気にして、他社より少しでも安くしようとばかり考えている人がいます。  これって、お客様の方を向いてないのがわかりますか?  競合他社の方ばかり見ていますよね。  儲けること、会社を維持することばかり考えてしまっている状態です。  そう思うと、急に苦しくなってしまいます。  成功する人にとって、ビジネスは、仕事は、とても楽しい行為です。  ライバルを蹴落とす、ライバルに勝つ必要はありません。  勝つべきはライバルではなく、現在の自社、現状に甘んじている自社なのです。  もしあなたの仕事が楽しくなかったら、「本当にお客様の方を向いているのか?」を考えてみてください。  楽しんで行動し利益を出している会社が、たくさんあるんですから。  成功している会社には、ライバルに役立つ情報を教えたりしているところもあります。  成功する人は、他人の成功を手伝えば自分の成功にもつながると知っていて、業界全体のレベルが上がれば必ず繁栄することを知っているのです。「何か売れるものはないか」ではなく、「何が今の世の中に必要なのか?」「何を今の人々は必要としているのか?」「私の得意とするところで貢献できることは何なのか?」。「どうしたら売れるのか、どうしたら利益が出るのか」ではなく、「世の中に何が必要なのか、お客様は何を求めているのか」  お客様の思いに気づくことが必要です。「お客様は、モノが欲しいわけではない」  お客様は、なぜ掃除機を買うのか?  大きな音のする機械が欲しいわけではないですよね。部屋をきれいにして、気持ちよく過ごしたいんですよね。  気持ちよい日々が欲しいから掃除機を買うんですよね。  商売で悩みにぶち当たる人は、この認識がズレているんです。  大切なのは、どうしたら利益が出るのかではなく、どうしたらお客様の求めているもの、お客様自身も気づいていない、欲求に応えられるかを考えることです。  お客様を喜ばせることができたら、ご褒美がもらえる、それが利益なんです。  その思いがあれば、アイデアは街を歩いていても自然と出てきます。  その気持ちがあれば、自然とそれらを見つけようと努力し始めるのです。

13  自分の仕事(得意技)を熱く語る  患者さんから「ツボ押し職人」と呼ばれている整体師の方がいます。  整体師の中でも、その人にしかできない技があるらしく、ツボについてホームページでアツ〜く語っています。  ツボを押してもらうなら、この人にって思いませんか?  私は、押してもらいたいです。そしてチョー気持ちよいです。  この人が「ヒザが痛い方はこのサポーターがいいよ」って言ったらどうです?  買いたくなりませんか?「この人が薦めるものなら間違いない」と勝手に思ってしまいます。  売るために語るんじゃないんです。  語るから、その結果、売れるんです。  好きなら、気持ちを前面に押し出して、共感を得ましょう。  お客様は共感したら、必ず買おうと思ってくれますから。アツい気持ちを語ると、勝手に売れます。  私の場合、親父の会社をたたんだこと、税理士になって親父のような社長を 1人でも減らしたいと思ったこと、そのためにどんなことをしてきたか、またこれからしていくかと、この本でお伝えしているような、会計に基づかない経営の原則を語ると、契約いただける確率が高いです。  こちらから契約してくださいなんて言ったことありません。  アツい気持ちを語ると、それに応えてくださる、お金を払ってくださる方は必ずいます。

14  平成の時代にモノを売るためには?  テレビやラジオで流れる「コマーシャル」が昭和と平成で違っているのに気づきました?  昭和の時代は「こんなときこの商品!」といった「商品の説明」の CMが多かったのですが、平成の時代は商品そのものではなく、「商品を使ったメリット」の CMが多くなっています。あるアンケートによると、消費者の 85%は「欲しいものはない」と答えているそうです。  モノがあふれているので、欲しい商品はないと思っている平成のお客様に、商品のよさをいくら言っても買ってくださいません。当然ですよね。  商品が売れないのではありません。  お客様は買う理由がわからないのです。  お客様に買う理由を、わかりやすくちゃんと教えてあげなければいけないのです。  昔は、お客様の買いたい商品が決まっていた。  だから商品のスペックを説明すればよかった。  今は、お客様が買いたい商品が決まっていない。というよりわかっていない。  だから、お客様に買いたいと気づかせてあげないと売れないんです。  実は売れる商品とは、お客様が買いたいと気づいた商品なのです。  みんな欲しいものに気づいていないんです。欲しいものがないと言っているお客様に教えてあげる必要があります。  商品を買う前に、商品を買ったらこんなによいことがあるよと気づかせてあげる必要があります。  平成の時代になって、世の中と消費者は変わりました。「モノに囲まれても幸せじゃない」と、平成の消費者はバブル崩壊で学んだんです。  消費者がモノやサービスを買わなくなったのではなく、本当にそれは必要なのか、自分の人生にどんな喜びをもたらしてくれるものなのかを考えて買うようになったのです。  昭和の時代は、モノがなかった時代は、利用者のニーズを無視していても売れたんです。  でもモノが余っている平成の時代は、モノだけを売っている会社はダメです。  商品に頼っている会社が、不景気でモノが売れないと言っている会社です。  平成は、昭和の「モノ」の売り方をしていると売れません。  モノが売れなくなると、値段を安くして余計にモノを売ろうとする人が多いです。  でも、モノを売ろうとすればするほどモノは売れない。そこに気づいた人だけが売れるようになる。  これに気づいていない人にはピンチですが、気づいている人にはチャンスです。  気づいていないライバルは寝ているのと同じです。  常に「なぜそれが欲しいんだろう?」と考える習慣が必要です。夢を売ってください。  たとえば、私は電気製品は壊れない限り買いません。  壊れる以外の買う理由を誰かが教えてくれない限り買わないです。  そんな私に嫁が電気炊飯器を買ってよいか?  と聞いてきました。「家に電気炊飯器あるやん?」と私は言いました。  嫁は「家にあるやつとは違うねん!  めちゃくちゃおいしく炊けるねん!」と譲りません。その気迫におされ、渋々 OKしました。「ほんまかいな?」と思っていましたが、その炊飯器で炊いたお米を食べてみると、めちゃくちゃおいしいじゃないですか!「普段食べているお米がこんなにおいしくなる!」  お客様に気づかせてあげましょう。平成のお客様は忙しいんです。お客様はあなたの商品のよさを知っているほど暇ではないのですから。

15  モノを売るのに大切な「夢」  嫁と結婚記念日にジャズタクシーに乗ってきました。  ジャズタクシーとは、ジャズを流しながら夜の東京をドライブしてくれるタクシーです。  ホームページから予約して、運転手の安西さんと何回かメールでやり取りしてお金を振り込みます。  安西さんが売っているのは、「人を運ぶ」ことではありません。ジャズの流れる空間を、夢を売ってくれるんです。  安西さんからの「結婚記念日のお祝いなら、こんなこともやりましょう」というさまざまな提案のメールで、嫁の喜ぶ姿が目に浮かびました。  安西さんは、ドライブの最後に神社に連れていくと教えてくれます。  そしてその神社の言い伝えとかを教えてくれて、その話をしながら、神社の階段を 2人で歩いて上がってくれと言われます。  言われたとおりに、神社の言い伝えを嫁と話しながら上がっていくと、安西さんが先回りしてワインを用意して待っていてくれています。  嫁との結婚記念日のドライブは神社の境内で、ワインで乾杯!  このプランを説明されて、私は2つ返事でこのワインの購入を決めました。  よく考えたら、このとき「ワインを買ってください」とは一言も言われていません。夢のプランを説明され、それにお金を払うことを決めた結果、そのプランに必要なワインも買うことになったのです。  このタクシー会社の社長さんは、「ただタクシーで人を運んでいるだけでは、価格競争に巻き込まれるし絶対に大手には勝てない」と思い、異業種を参考に、「夢を売るタクシー」を作りました。  そしてお客様を喜ばせることに専念し、堂々と費用を請求する。  お客様も満足されているので、喜んでそのお金を払う。  喜んでもらえるしお金もきちんといただけるので、商売をしていて楽しい。  安西さんは、ホテルに送ってくれる道中で駅前のタクシーの行列を見て、「お客さんが喜ぶ方法を考えたら並ばないでいいのに」としみじみと言っていました。「お客さんが喜ぶ方法を考えることなしに、ただ単に駅で客待ちをしているタクシードライバーを見ると情けなくなってくる」とも。  少し発想を変えるだけで見えてくるのに、発想を変えることができない 99%の人には見えない世界があるのです。  中小企業の社長は、「ライバルに勝つ」とか「少しでも安く」とか、嫌いなことをしてお金を稼いでいます。  労働は大変なもの。汗水たらして働けばお金を稼ぐことができると学校で教えられたからです。  成功する人はその思いから抜け出して、好きなことでお客様を幸せな気持ちにしてお金を稼いでいるのです。

16  追うと数字は逃げていく   ○ ○を追うと数字はついてくる「ありがとう」と言われるのは、誰でも嬉しいもの。  お客様を喜ばせることで、社長も従業員も幸せになっていきます。  お客様を喜ばせることは、それ自体が喜びに満ちたものなのです。  ある訪問診療の歯科の先生が、寝たきりのご老人のお宅を訪問したときのこと。  家族の方から、何年も寝たきりで起き上がることはできないと聞かされました。  その先生が誠心誠意、そのご老人の歯を治療してあげたところ、何回目かの訪問でそのご老人が座っている光景を目にされました。  そのご老人は、生きる望みを失っておられたとのこと。それを先生が歯を治療してあげることで、ご飯がおいしく食べられるようになり、生きる喜びを感じられ、起き上がることができたのだそうです。  ご老人のご家族はこの先生のファンになり、知り合いにこの話をしていったので、ご近所一帯がこの先生のファンになりました。  こういう喜びを動力にした社長たちは、他社と競争するという発想はありません。お客様を喜ばせて、自分のファンを増やすだけ。それだけで売上が上がっていきます。会社がうまく回っていきます。  私は「幸せパンチ」を提唱しています。  誰かを殴ったら、殴り返される。  人は自分がされたことを、相手にもしたいと思うもの、よく知られている「返報性の法則」ですね。  相手に幸せをぶつけたら、相手は幸せを返そうと思います。  さらに、この幸せ貯金は実は利息がつくんですね。  わかっている人は、何かをしてあげてもすぐに見返りを求めません。  利息がついて戻ってくることを知っているからなんです。  幸せをあっちこっちに預ける。するとそのうち、どれかが満期になるんですね。  それで、喜ばせてもらえる。嬉しいからまた幸せ貯金をする。  この好循環に入ったら、もう仕事が人生が楽しくて仕方ないですよ。  数字を追いかけると数字は逃げていきます。  でもみんなの幸せを追いかけると数字はついてくるのです。

17  チャンスを運んでくるのは、人間  成功する経営者は、人に好かれる人です。  お金に縛られず、お金で人を縛ることもしない。  見返りを要求しない姿が共感を生んで、協力者や応援者が自然に現れ、ツキに恵まれ、仕事もプライベートもうまくいく。  感謝の心が周囲に広がってお金が巡ってくるのです。お金に執着するよりほどほどに手放す。その方が経営はうまくいきます。  ビジネスの場に身を置いていると、お金に踊らされている人に出会います。  損得勘定でしか人を見られない人。  お金が大切なのは誰でも同じ。でもお金だけで動く人は、最後にはお金から捨てられる運命にあるようです。  お金だけでものごとを推し進めようとすると、つまずくことが多くなります。  私が独立した当初、とても勉強させてもらった方がいます。  その方は保険の営業を仕事にしておられました。  彼は、いつも人のためになること、自分が他人に協力できることはないか探していて、私も色々なことをしていただきました。  してもらうばかりでは気持ち悪いので何かお返しをと考えたところ、彼は保険屋さんですから保険が必要な人を紹介してあげようと思いました。  そのとき、ふと気づいたのです。彼が保険屋さんだと、私は彼から直接聞いたことがなかったことに。  彼が保険の代理店をしていることは、別の人を通じて知っていたのでした。  私にとってこの経験は、新鮮でした。今まで保険の営業をする人には何人も会っていますが、皆さん自分の売り込みや、紹介をもらうことに必死でした。  これができる営業マンのやり方を知った日でした。  チャンスを運んでくるのは人間であり、人間がお金を呼ぶのです。

18  元気玉を作ろう  元気玉って知っていますか?  マンガ『ドラゴンボール』の主人公、孫悟空の必殺技です。この技にはいくつか特徴があります。 ①孫悟空の力だけでは倒せない強敵を倒すために、周囲のあらゆる生物から微量なエネルギーをもらって大きなエネルギーにして敵に放つ ②威力は絶大だが力を集めるのに時間がかかる ③悪の心がある者は元気玉を作ることはできない  私は多くのビジネスの成功者にお会いするたびに、元気玉のことを思い出します。いくつもの共通点があるからです。 ①自分 1人では成し得ないビジネスを成功させるために、周囲のいろんな人の協力を得る ②日々周りの人が幸せになるように行動することによって、いろんな人が協力してくれる ③自分が儲けさえすれば、他人は泣いていてもお構いなしというような人にはできない  私の知っている成功している中小企業の社長は少なからずこのような考えをお持ちです。「成功者は元気玉の発想」  あなたも始めてみませんか?

1  中小企業の「成功」って何?  ここまでいろいろ述べてまいりましたが、最後に「中小企業の社長が持つべき、成功するための考え方」をお伝えします。  成功している中小企業の社長にお話を聞いていると、「成功」の概念が違うことに気がつきます。  成功しない社長は、利益が上がることが成功であると思っています。  成功している中小企業の社長は、そんなレベルの低い成功を目指してないんです。  会社に関わる人たち全体の幸せ、お客様・従業員・関係者みんなが幸せになって事業が育っていく、そんなところに成功の概念を持っておられます。  私が成功している社長だと思う方々は、「同業他社より売上が多いので成功だと言われる」そうです。  しかし皆さんおっしゃいます。「私は成功しているとは思ってないよ」と。  本当の成功者は、目先のうまくいっていることを成功と考えません。  他社より売上が多いとは、サッカーの試合で言うゴールを決めたようなもの。  ゴールを決めても、相手に多くゴールを決められては敗北です。  本当の成功者の目指す成功は、「試合に勝つ」ことです。  さらに言うと「試合に勝ち続ける」ことです。  私の顧問先で、ビジネスで成功している人は、人生も豊かになっておられます。  それは単なる金銭的な豊かさだけでなく、精神的にも豊かになるからです。  成功している人は、従業員の成長を喜び、幸せな気持ちになります。従業員は生き生き働き、楽しい職場になります。  誰もが皆、精神的に充実していくのです。  成功しない人は、従業員の無能さを嘆き、従業員がサボっていないか絶えずチェックし、どうしたら従業員が働くのか日々思い悩み、疲弊していきます。  これでは精神的豊かさは得られません。  会社とは、関わるみんなが幸せになる仕組みです。  お客様を喜ばせ、従業員を喜ばせるといったことが会社の目的です。  会社が衰退するのは、その本質を忘れて「利益の最大化」といった内向きな発想になるからです。  社長のやるべきは、数字をいじって利益を出すことではなく、放っておいても従業員がお客様を喜ばせる仕組みを作ること。それと世の中の変化に対応するためにお客様の望むモノを見つけることです。  自分のことばかり考える経営者は、長期的には、絶対にうまくいきません。  景気が悪いから、利益が減るからと経費を使わない(お客様のためになることも積極的にやらない)という人がいますが、景気が悪いからこそ、経費を使ってもお客様のためになることをやる、そう言える人が成功するんです。  とはいえ、成功している会社、社長にも好不調の波はあります。成功していると思えるある病院の院長が、ある時期売上を落としたことがあります。  その頃「相談がある」と言われた私は、てっきり経費の削減についてかと思っていましたが、さすがは成功している院長、そんな話は一言も出ませんでした。  こういうはがきを出そうと思っている、こういう風に病院の外装をリニューアルしようと思っている等々、いかに患者さんに来てもらうかという話ばかりです。  社長の頭にあるのは、大事なのは経費削減という目先の解決ではなく、立て直すには患者さんに来ていただくしかない、という発想だけなのでした。「経費を削減しない」そう決めて転換を図ると、最初はうまくいかないことも多いと思います。  しかし、この本で取り上げたような、成功している会社の社長の考え、行動をしていれば、必ず多くの人に受け入れられ、応援されるのです。

2   5000円のラーメンと 0円のとんかつ  阪神淡路大震災のとき、食料品が不足しているのに乗じて、 1杯 5000円のラーメンを出したラーメン屋があったそうです。  この店には 200メートルも 300メートルも人が並んでいましたが、 1カ月くらいしたら誰も並ばなくなり、半年後には倒産したらしいです。  時を同じくして、とんかつを無料で近所の人たちに食べさせてあげたとんかつ屋の親父がいます。  ここの親父は、電気もストップしているので材料はじきに腐ってしまう、それなら困っている近所の人たちに食べさせてあげようと考えました。  この店は 20年近くたった今でも行列ができているそうです。  前者は自分の繁栄だけを考えた経営、後者は周りの人の幸せを考えた経営です。どちらが成功するかは明らかですよね。  この話を聞くと、誰もが「このラーメン屋みたいなことはしない」と言います。  でも実態はどうでしょう?  私の知り合いが勤めている病院は、経営者が 2代目になり経営改善という名の下、税理士の指導を受け経費の削減に励んでいるそうです。  その中心は、従業員の給与カット。聞こえてくるのは不満の声ばかり。  こんな状態で、お客様である患者を喜ばせることができるのでしょうか。   5000円のラーメン屋さんに似ていませんか?  こんな会社が多いのです。  そうではなく、周りの人を喜ばせる経営を考えていけばうまくいくのに……。

3  大阪市長と国会議員  大阪市の橋下徹市長は、批判されることも多いですが高い支持率を維持しています。  大阪のこと、日本のことを考えて、そのことにまい進しておられるように見えるからではないでしょうか。  損得なく行われるこういう行為には、人間誰しも協力してあげたいし、応援したい気持ちになりますよね。  それに比べて、国会議員の多くは、日本のために真摯に行動しているように見えません。  既存の政党に残った方が、次の選挙で勝てるだろうか。それとも離党して新党を作った方がいいか。  そんなことばっかり。テレビを見ていても嫌になりますね。  既存政党の支持率は落ち続けています。多くの人は今の国会議員を応援したい気持ちにはならないのでしょうね。  ビジネスでも同じだと思います。  橋下市長のように世の中はこうあるべきだと損得無しで行動する人は、国民に支持されます。私の知る成功している経営者も、お客様の喜ぶサービスを提供することに一生懸命なのでお客様から支持され、結果的にたくさん売れています。  ある診療所を経営しているお医者さんは、自分の診療所ではできない手術が必要な患者さんを総合病院に紹介しておられますが、休みの日にその患者さんのお見舞いに行かれます。  紹介したあとなので、自分の患者さんではない(売上は発生しない)のですが、困っていることはないか気になるので、お見舞いに行ってはいろいろ聞いてあげるそうです。  もちろんこの診療所は流行っています。自分の損得ではなく、患者さんのためを思うこの先生の行動を支持しない人はいないと思います。  国会議員のように、自分が生き残ることばかり、自分の利益ばかり考えている人は、国民に支持されません。  成功しない経営者も、経費の削減を含めた自分の利益ばかり追い求めている人が多いのでお客様に支持されず、結果的に売れません。  経営者の皆さん、国会議員が腹の中を国民に見透かされているように、お客様や従業員に社長の腹の中を見透かされていることをわかってください。  ビジネスでも自分の利益ばかり考えている会社をお客様は嫌いですし、従業員もそんな会社を好きになれません。「こういう商品で世の中をよくしたい」と真摯に考えて、お客様に支持される、従業員に支持される会社を作りましょう。その会社の商品は、売れますから。4  経営者がプロゴルファーだとしたら  経営者がプロゴルファーだとします。  トーナメントの最終日、その人の順位は 1位。でも同スコアーでもう 1人、 1位がいます。  サドンデスのプレーオフです。  延長戦の 1ホール目、その人がパーパットを決めました。  そして相手のパーパットを待ちます。  同じ状況でも、 Aさんと Bさんはまったく違う考え方をします。   Aさんは「はずせ!」と心の中で思います。   Bさんは「入れ!」と心の中で思います。  なぜでしょう?   Aさんは、相手がはずせば優勝賞金 1000万円が手に入ると考えます。   Bさんは、パー(平均点)で優勝するのは嫌だ、バーディーかイーグル(平均以上)で優勝してギャラリーを喜ばせたい、感動を与えたいと考えます。   Aさんは、どんな過程を経ようと自分が勝てればいいと思っていますが、 Bさんは相手に関係なく、自分が最高の力を発揮し、結果的に勝てればいいと思っているのです。  相手選手がパーパットを決めました。   Aさんは「クソ!  入れやがって」という気分を引きずりながら、次のホールへ向かいます。   Bさんは「よし、よく入れてくれた。次のホールでは、イーグルで逆転優勝するぞ」と思いながら次のホールへ向かいます。  次のホールで、 Aさんはマイナスのイメージを引きずりながらのプレーでベストパフォーマンスが出せず、優勝を逃します。   Bさんは、前のホールから勝つイメージができていますから、ベストパフォーマンスを出して優勝します。  これはゴルフのお話ですが、成功する経営者は Bさんのような考えをお持ちです。「相手は関係ない。自分のベストパフォーマンスでお客様を喜ばせるだけ」その思いで臨んでいるのです。  それこそが、成功する経営者が素晴らしいパフォーマンスを引き出す源泉なのです。  成功しない経営者は、私に同業他社の情報を聞こうとします。同業他社に勝つことが目標のようです。  成功する経営者は、異業種を見ていて気づいた点や、それをご自分のビジネスにどう取り入れていこうかを話してくださいます。自分の業界でやっていないことを、どう取り入れるか、今がうまくいっていても、もっとうまくいくようにしたい、もっとお客様を喜ばせたい、この発想の違いが必要なのです。

5  「楽」を「楽しい」に  人を成功させないようにしているものがあります。  人間には、基本的に変化を嫌う、現状から変わりたくないという性質があります。  多くの人が成功しないのはこのためです。  人間の脳にはもともと、変化を避けようと働く機能が備わっているのです。  そういう意味で、現状を簡単に変えられないのはある意味、当たり前なのです。  私たちは知らず知らずのうちに「そこにとどまりたい」という意識を作り出しています。  それが、自分が楽でいられる場所だからです。  変化は、本質的には大変です。楽ではないことなのです。  成功者は変化を「楽ではないが楽しいこと」と考えています。  逆に成功しない人は、この「楽でいられる」場所にとどまろうという意識のせいで、現状を変えたい思いが本人にあっても、そこにとどまろうとする力の方が大きく働きます。  口ではいくら変わりたいと言っても、「楽でいられる」場所から動かないように思考や行動を無意識に制御してしまうのです。  無意識に、現状から変わらないようにしているのです。  でも成功するにはこの力に打ち勝たなければいけません。  あなたが成功するかどうかは、この力に打ち勝つような生き方をできるかどうかにかかっているのです。  成功しない人は、変わりたくないのを無理やり変えようとするわけですから、努力を苦痛に感じてしまいます。成功する人は好きなことをしているだけと思っているので、周りの人は「すごい努力だ」と思っていても、本人は努力しているとは考えていません。「変化」を「楽しい」に転換することができれば、本当の成功が手に入るのです。6  2つの「常識」を使い分ける「常識」  よく使われている言葉です。  私は、常識には2つあると考えています。  常識 ①は、昔からある常識、時代が変わっても不変の常識。  たとえば「人には親切にしましょう」これって江戸時代もそれ以前もそうだったと思うんです。このあとの時代も「人に親切にしないのがよいこと」とはならないでしょう。常識 ①は、人がずっと守り続けるものです。  それに対して常識 ②とは、昔からあったわけじゃないもの、最近できた常識、時代と共に変わっていく常識です。  たとえば、以前は財布の中にテレフォンカードを入れておくのが常識でした。  街中で電話したいとき公衆電話にテレフォンカードを入れれば、小銭がなくてもどこにでも電話ができました。  でも今はどうでしょう?  携帯電話が普及して、テレフォンカードを持っている人はほとんどいないのではないでしょうか?  こういう常識が常識 ②です。  常識 ②は、絶えず疑ってみる必要があるのです。  よく「業界の常識」と言いますが、ほとんどが常識 ②だと思います。  我々の業界でも同じです。「税理士業界の常識はこうだからそれはできない」という言葉をよく耳にしますが、そもそも税理士は、江戸時代にはなかった職業です。  常識 ②である以上、時間の経過と共に変わっていくものなのですが、業界の常識にとらわれて動けない人が多いです。しかし、私の知る、今業績を伸ばしている方たちはほとんどが常識 ②にとらわれていない人たちです。  だから皆さんも業界の常識にとらわれることなく、変わっていきましょう。  常識 ②は多くの場合、売る側の常識であり、買う側(お客様)は、それを常識と思っていないことが多いです。弊社のクライアントも常識 ①にはこだわり、常識 ②を自分のやり方で変えていくところが伸びています。  成功している方は、常識 ①を重んじられます。  常識 ①は守るが常識 ②は守らない、無視します。というより意識の範疇にないといった感じです。  成功していない方は、常識 ②を重んじます。  常識 ②は守るが常識 ①は守らない、常識 ①を甘く見ている人が多いのですが、それでは他人の協力を得られません。  成功する人は自分個人の力はたいしたことないと知っておられます。  謙虚です。だから周りが協力、応援してくれます。  成功しない人は自分の力を過信し傲慢になっています。  傲慢な人に周りは協力しません。困ったときも助けてくれたりはしないものです。

7  社長は誰よりも働いてはいけない!  中小企業の社長は、誰よりも働く必要があります。  しかし、同時に私はこうも言います。「中小企業の社長はヒマであれ!」と。  会社を軍隊にたとえると、企画、マーケティング、営業などの部隊が兵士に当たり、社員は兵士で社長は将軍です。  作戦を考え、兵士の配置や攻撃の指示を出すのが将軍の役目です。  兵士と将軍は役割が違うのですが、多くの中小企業では、将軍が兵士の仕事もしている、社長が企画部長や営業部長、経理などを兼ねていることがよくあります。  人が足りないなどの事情があることはわかりますが、社長が兵士の仕事をしては、全体を見通すことができません。  連日外回りの営業をしてクタクタになった状態では「今、目の前の売上を補うために必要なのは……支出を抑えることだな」というように、私が何度も否定してきた経費削減など目先の成功を求めてしまいます。「社長はヒマであれ」と言ったのは、兵士の仕事を社長がしてはいけないということです。  兵士の仕事から離れて、セミナーや勉強会に行ったり、異業種交流会に行ったりして、人脈や見識を広げましょう。  実際、社長が現場レベルの仕事から離れても、決して暇にはなりません。社長が本来やるべきことが見えてきます。  その結果、兵士の仕事を手放す前よりも忙しい自分がいることに気づきます。  それこそ、社長にしかできない仕事です。  経営資源の乏しい中小企業が、大企業も参加しているビジネスの世界で生き残るには、時間戦略が大切です。  時間は誰にでも平等ですから、時間を多くかけることで差をつけるのです。  うまくいっていない中小企業の社長は、同業他社の社長よりも長時間働くことを意識してください。  成功している弊社のクライアントさんは、ほとんどの方が長時間労働です。  そう言うと苦しそうなイメージですが、好きなこと、楽しいことをしているだけなので、本人は長時間労働だとは思っていません。それが成功の秘訣だと思います。  成功したい中小企業の社長が取るべき戦略は実に単純明快、成功した中小企業の社長の考え方を学び、マネをし、行動を起こせばよいのです。

8  中小企業の社長は「量は力」で勝負!  具体的に説明していきます。中小企業の社長が朝 7時から夜の 8時まで働いたとします。  ちなみに、これは私の勤務時間です。  昼休憩を除けば、 12時間。  もし、一般の会社の社長が 8時間労働だとしたら 1・ 5倍ですよね。  また、中小企業の社長は 1年に 310日働くとします。   365日- 52日(日曜日)- 3日(正月休み) = 310日  中小企業の社長は、日曜日と正月三が日だけ休むと考えてください。  お盆休みと祭日、土曜日は働くこと(これも私の勤務時間です)。  中小企業の成功に欠かせないのは、社長の能力を高めることです。   1日で、他者の 1・ 5倍の経験値が積めるわけですから、翌日はその 1・ 5倍   1・ 5 × 1・ 5 = 2・ 25倍の経験値  またその翌日は昨日の 1・ 5倍、 2・ 25 × 1・ 5 = 3・ 375倍の経験値を積めると私は考えています。  これを毎日続けると、 1年でどうなるか計算してみますと 1・ 5の 310乗ですよね。  その答えは、なんと 3・ 8 × 10の 54乗になります。  天文学的な数字ですよね。  ちなみに単位で言うと、 380恒河沙って言うらしいです。  聞いたことないですよね。  経営資源の少ない中小企業は、時間という最大の資源を使わない手はないですよ。  成功している会社の社長は普通の人の何倍の能力がありますか?   2倍ですか?   3倍ですか?  もし差があったとしても、そんな差くらい、この数値を見れば簡単にひっくり返りますよね。  というよりも、成功しているその会社の社長こそが、今お伝えしたような時間戦略を取り入れているのではないでしょうか?  だからこそ、あなたの何倍もの能力を手に入れたのではないのでしょうか?  成功する中小企業の社長の考え方を学んで行動に移したら、成功する中小企業の社長の仲間入りを果たすことができます。  さしたる能力もない私が多くの仕事相手に恵まれ、楽しく働くことができているのは、間違いなくこの時間戦略のおかげです。

9  才能も経験も凌駕(りょうが)し、自信がつく方法  私は息子に時間戦略の話を聞かせたことがあります。  息子は、中学からラグビーをしていましたが、中学 1・ 2・ 3年、高校 1・ 2年の夏までずっと補欠でした。  私がラグビーの試合を見に行きたいと言うと、かたくなに拒否していました。  自分が補欠でベンチにいるのを私に見られるのが嫌だったんですね。  息子に時間戦略の話を聞かせたのは、彼が高校 1年生の頃でした。  彼はこの話を聞いてから一念発起し、毎日早朝練習でランニングをして持久力をつけることを思いつきました。  ラグビーをよくご存じの方はわかると思いますが、ラグビーのフォワードというポジションは、体重が重い方が有利です。  彼は、同じポジションのライバルの子より体重が 10キロ以上軽いです。  ライバルの子は 4年間、毎週試合に出ていて、彼はベンチに座っているだけなので経験でも勝てません。  体格も、経験も圧倒的に相手の方が上です。  ただ、レギュラーの子は体重が重い分、持久走の練習は苦手だったんです。  息子は毎朝、始発の電車で学校に行き、 1時間目の授業が始まるまで走り続けました。  私のこの話を信じて……。  そして 1年以上走り続けた結果、ラグビー部の全体の体力測定で、チームで一番の持久力を誇るまでになりました。  こうなると監督も使いたくなりますよね。  高2の夏以降、前半は、レギュラーの子、後半は交代して彼が出るようになったのです。  この頃に、私が彼のラグビーの試合を見に行くことが解禁されました。  やっぱりベンチに座っている姿を見られたくなかったんですね。  そして、秋の大会では前半も後半も、彼が試合に出るようになりました。  彼は、毎週試合に出るようになったので、いつの間にかラグビーセンスも、ライバルの子と同等かそれ以上になったように見えました。  親のひいき目かもしれません(笑)。  彼は、時間戦略でラグビーのレギュラーをゲットしたのです。  彼は、高校ラグビーの最後の日に私に言ってくれました。「お父さんの言うとおりやったわ。時間戦略やったから最高のラグビー人生送れたわ」  これって、多くの経営資源に乏しい中小企業の社長が、自分より大きな会社と戦って成功を収める話に似ていると思いませんか?  成功しない中小企業の社長は景気がよくなって会社がよくなるのを待っています。  しかし時間はどんどん過ぎていきます。  最大のリスクは何もせずに時間が過ぎていくことです。  成功する中小企業の社長は、本当に楽しいのは目標の達成そのものではなく、「目標を達成する過程で自分がどういう人間になっていくかを確認すること」だとおっしゃいます。  ぜひ時間を意識してみてください。「量は力」といいますが、長時間頑張ることの報酬の1つは、自分に自信が持てることです。「こんなにやったのだからきっとうまくいく」と思えるようになること、これは大きな変化です。  自分に自信がつけば、誰を前にしてもオドオドしなくなります。「堂々とした態度だからうまくいく」ことはたくさんありますから、そこでもよいサイクルが回り始めます。

10  「自己満足アドバイス」をしてみよう  社長は日々お客様のことを考える、日々どうしたら買ってもらえるかを考える。  そのために効果的なのが、いつでもお客様のことを考えられる発想体質にすること。慣れれば簡単です。  私が休日に嫁の買い物に付き合うとき、私は暇なので、いつもやっていることがあります。お店にいろいろなアドバイスを心の中でするのです。「これはこうした方が、お客様に喜ばれるのに」とか、「これを企画した人は、何を考えているんだ。これじゃお客様のことを何も考えてないじゃないか」とか。  売る側の立場だと見過ごしてしまうことを、消費者の立場でサービスを受けると次々に思いつくのです。  実はこれって自分のビジネスのアイデアを発想するときの訓練になります。  私はヒントは異業種にあると思っていますから、異業種の考え方、ダメ出ししたことを自分のビジネスに取り入れるとしたらどう使えるのかな?  と考えてみたり。「今、私はダメ出ししているけれど、自分のビジネスでも同じことをしていないのだろうか?」とか、思いつくことはたくさんあります。  アイデアも出てきて面白いですよ。「自己満足アドバイス」あなたもやってみませんか。  これも、楽しみながら成功する人になれる方法の1つです。「ビジネスは楽しんでする」と、お客様も従業員も楽しくなります。あなたが仕事を楽しんだら、会社の業績もよくなるのではないでしょうか。  成功している人は、日常からさまざまなヒントを見つける方が多いです。  成功しない人は、日常からヒントが得られない人です。  だっていろいろなビジネスをしておられる方が、どうすればお客様に喜んでいただけるかを一生懸命考えて出来上がったものが山ほどあるじゃないですか。  それらを使わない手はないのです。  社長にとっては、休みの日も貴重な仕事の場です。

11  自己満足アドバイスをするには?  今までお客様と従業員の気持ちを書いてきました。  でももっと大切なのは、中小企業の社長のモチベーションです。  もっと言うと、仕事を好きになれるかどうかです。  ゴルフの好きな人は、駅のホームなんかでついついスウィングチェックしてしまいますよね。私も最近ゴルフを始めたのですが、ちょっと暇があるとついつい傘をゴルフクラブにしてしまいます。これなんですね。  好きになると、少しでも時間があればしてしまう。  誰かにやらされているわけではないので、苦にならない。  私の知っている成功者を見ると、仕事をこのゴルフのように趣味として捉えておられます。  どうしたらお客様と従業員を喜ばせることができるかをいつも考えておられるのです。  でもそれは義務じゃなく楽しいからそうしておられるのです。  それは好きになるように仕事をしているからです。  お客様が喜んで「ありがとう」と言ってくれたら好きになります。従業員に「ありがとうございます」って言ってもらったら、また喜ばせようと思います。  成功しない人は、仕事が好きじゃない。経費の削減ばかり言って、お客様にも従業員にも好かれていない。不満や不平ばかり言われているから、嬉しくならない。だからたまの休みくらい仕事を忘れてリフレッシュしないと疲れてしまいます。  成功者の「仕事が趣味、休みの日でもみんながどうしたら楽しいかに考えが向く」のと、成功しない人の「たまの休みくらい仕事のことは考えない」との間に、長い年月で大きな開きが出ることはお話ししました。  その差の根源は、利益を追求しているのか、みんなに喜んでもらった結果、商品やサービスを買ってもらえるのかの差です。  私の知る成功者は、仕事が好きになるように働いています。  その会社に行くとみんなが笑顔、スタッフの方から世間話をしてきてくれる。  ダメな会社に行くと、何か暗くて、スタッフは必要以上のことは話さない。  その結果、成功者の会社は売上が上がり、ダメな会社は売上が下がります。  学校の成績でもそうだと思いますが、点数が上がってくると、勉強が楽しくなる。楽しくなるから勉強するという好循環になっていく。  成功している会社は、売上が上がってきてスタッフが楽しくなって、もっとお客様を喜ばせて、また売上が上がるという好循環になっています。

12  「会う人すべてをいい気分に」していますか?  ビジネスというと特殊なことをしている気がしますが、なんてことはない、「あなたの人生の延長」です。  もっと簡単に言えば、会う人会う人を嫌な気分にさせるか、気分よくさせるかで人生は変わります。  レストランに行ったら、私は客だからと、偉そうにする人がいます。  それが間違いです。  お水を持ってきてもらったら、「ありがとう」と感謝して、料理を持ってきてもらったら、「ありがとう」と感謝する。帰るときは「おいしかったです。ありがとう」。  私の知る成功者は、皆そうしておられます。  多くの経営者は、売り手の立場で経営を考えすぎではないでしょうか。  今まで、人生の中で買うことと売ること、どちらが多かったですか?  買うことの方が多かったのではないでしょうか。  実は、お客様の立場で考えたらありがたいものってかなりあります。  タクシーは、お客様を乗せなくても街中をぐるぐる走ってくれています。ありがたいです。  電車は、人が乗っていなくてもいつもの時間に走ってくれています。ありがたいです。  コンビニは、お客様が来なくても 24時間、店を開けてくれています。ありがたいです。  こういったことに、「ありがとう」と思わないで、お客様から「ありがとう」と思ってもらえるビジネスってできるのでしょうか?  商売は、どれだけありがたいと思ってもらえるかを積み重ねることで成功するか否かが決まります。自分がありがたいと思っていないのに、人に思ってもらえるわけがないですよね。  自分がよいお客様じゃなかったら、よいお客様が来るわけないじゃないですか。「あまりいいお客様が来てくれない」と思っている社長は、自分が嫌な客だから、きっとそういうお客様を呼び込んでいるのですよ。「ありがたい」の思いを毎日積み重ねている人は、そうじゃない人と長い間に大きな差が開くのでしょうね。

13  最悪の事態を具体的に考える  私は、いろいろあって思いもよらぬ形で独立しました。  独立のための準備を、まったくと言っていいほどしていなかったのです。  そのため、独立当初はかなり厳しい状態でした。  でも今はあの状態で独立できたことに感謝しています。  当時はこの先の不安が山ほどあって、一晩眠れないくらい悩みました。  悩みに悩んだ末に、嫁とこんな話をしました。「最悪を受け入れてしまえば、1つひとつの出来事にビビることはない」  この本をここまで読んで「うちの会社も変わろう。数字を見るのを、経費を削るのをやめて、もっとお客様を喜ばせることに専念しよう」と思ってくださった方もいると思います。  そのとき頭をもたげてくるのが「失敗したらどうしよう」という不安です。  うまくいかず倒産したらどうしよう。  私は「起こりうる最悪の事態を想定する」ことで不安を乗り越えることができました。  心理学的に説明すると、人間は「わからないことだから不安になる」そうです。  たとえば、乗っている電車がいきなり止まった。原因が何かも、いつ動き出すかも、まったくわからない。  そういうとき、とても不安になるものです。  でももし止まったとき、こんなアナウンスがあったらどうでしょうか。「ただ今信号機のトラブルで停止しています。車両に故障はありません。あと 5分程度で復旧する予定です」  不安はなくなるのではないでしょうか。  失敗したとき起こり得る事態を具体的に、具体的に考えて、それを受け入れられると感じた瞬間、不安はなくなります。  最悪も想定の範囲内だから、困ることは何もないのです。  私の考えた最悪は、「 1人もお客様がおらず、事業が続けられなくなること」でした。  私は嫁にこう言いました。「うまくいかなかったら、離婚して母子家庭となって子ども 2人を中学校に行かせてくれないか」  嫁はこのとき、「わかった」と言ってくれましたね。  こんなとき、女の人は度胸ありますよね。  この嫁だったから、独立できたんだと思います。「でも心配するな、必ずうまいこといくから」って言いました(何の根拠もないですけど(笑))。「約束する。来年の今日、『な、独立してよかったやろ』って言うから」と言いました。  そして、どうなったか?  言ってみるもんですね。 1年後、嫁にこう言いました。「な、言うてたとおりになったやろ」と。  だから、今が大変な状態の人頑張って!  神様は、乗り越えられない試練は与えないっていいます。「死ぬわけじゃない」そう考えれば、どんな試練も小さなものに感じられます。  試練を乗り越えたとき、幸せな生活が待っていますよ。  大きく転換するというのは、飛行機で言うと離陸したのと同じ。  飛行機が離陸したら、安定してシートベルト着用のサインが解除されるまで歩き回れません。  離陸するときは、水平飛行のときの 3倍の燃料がいるといいます。  しかし安定すれば、燃料消費は少なくなり、自由に動き回ることもできるようになるのです。  苦しいかもしれませんが、それを脱したら、楽しいときが待っています。

14  変わるのは、ほんの少しのことからでいい「売上の悪いのは不景気のせい」  成功しない中小企業の社長はよくこう言います。  そして次は、会社内部の経費を削り始めます。  まるで利益が出ないのは経費のせいだと言わんばかりに。  最後まで誰かのせいにし続けます。  売れないのではなく、売ろうとしていないだけなのに。中小企業の場合、儲からないのは社長に原因がある場合が多いです。  社長が売ることに専念すれば、やり方はいくらでも見つかります。「社長の考え方や思いが変わるだけで、売上は伸びる」  多くの経営者を見てきた私の感想です。  社長の判断が間違っているから、ビジネスがおかしくなるのです。社長の考えがブレてなかったら判断ミスが減ります。  社長の頭がどっちを向いているのか?  お客様の方を向いているのか?  自分の方を向いているのか?  これが間違っていなかったら判断ミスは減ります。  何も特別なものは要りません。  売上が下がったときに忘れている言葉は、「仕事は、自分のためではなく、自分以外の誰かのためであること」です。  多くの社長が、「この業界の常識はこうです」とか「こういう風にしないと」といった固定観念に縛られて、売るための工夫をしていないのが現状です。  以前は売れて、今は売れないと言っている人は、景気のよいときは、「売れていた」のではなく「商品やサービスを供給していただけ」ではないですか?  モノを売る努力をしていましたか?  中小企業の社運を握っているのは、何と言っても経営者です。  経営者の考え方が中小企業の結果を決めるのです。  経営者が心から経営に真剣になり、逃げも隠れもできない状況の中で、背水の陣で経営をすれば成功できます。  私の場合がそうでしたし、多くの経営者がそうやって立ち直り、多くのお客様に喜ばれる会社になるのを見てきました。  業界の常識から抜け出せず、ビジネスの基本である、お客様が買いたいものを忘れることが経営難の始まりです。  でも体に染み付いた固定観念や考え方を変えるのはとても難しい。変わろうとしない、変わりたくない自分がいるからです。  変わるのは、少しのことからで大丈夫です。  この本でこれまで述べてきたことを、1つずつ始めてみてください。  目の前のことから取り組みつつ、長い目で「本当にお客様の喜ぶことは何か」を考える。  それを続けることで、唯一無二の存在、多くのお客様に求められる会社に変わっていくことができるのですから。

おわりに   1億人を幸せにしたい!  日本にある会社のうち、 99%が中小企業です。  中小企業に勤めている、家族が中小企業勤務、中小企業の取引先や顧客がいる、中小企業から商品やサービスを購入しているなどで、日本に住む多くの人が中小企業に関わっていると言えます。  私は本気で信じています。 「99%を占める中小企業に関わる人たちが幸せになれば、 1億人が幸せになれる」と。  中小企業の社長がお客様を、従業員を喜ばせる。その結果、お客様も従業員も幸せになれる。  そうなれば、お客様や従業員の家族も幸せになれます。  日本の会社の 99%を占める中小企業に関わる人たちがみんな幸せになれば、日本人の 99%、 1億人以上が幸せになれるのです。  長引く不況で、日本を暗いムードが覆っています。  しかし、この本の中でお伝えしてきたように、不況でも、不況だからこそ知恵を絞り、「お客様に本当に求められるものは何か」を考え、好業績の中小企業がたくさんあるのです。「中小企業の 7割は赤字」といわれていますが、私に言わせてもらえば、力を発揮できていないだけ、大企業と品揃えや価格で競争したりと、間違った戦い方をしているだけです。  本書でお伝えしてきたような、中小企業ならではの、中小企業にしかできない戦い方で、お客様を喜ばせていく。  結果として上がった売上で、従業員を喜ばせていく。  その先にあるのは、誰もが幸せな世界です。  そしてその世界は実現できると、私は思っています。   1人が変わることで、その周りの人も変わっていく。  まずはこの本を読んでいただいたあなたに、幸せへの一歩を踏み出していただきたいと思います。  中小企業の経営者の皆さん、私たち 1人ひとりの力で、日本を元気にしていきましょう!

著者紹介堀  龍市(ほり・りゅういち)税理士・ランチェスター財務株式会社  代表取締役大阪府出身、大阪府立大学卒。一般企業勤務後、父親が経営する会社に後継者候補として転職するも、父親が税理士のアドバイスに従って経営改善をした結果、状況がみるみる悪化していくのを目の当たりにし、会社の解散を提案。経営者に最も身近な存在であり、相談できる相手のはずの顧問税理士が経営に関しては素人と知って愕然とし、必死で会社を支えている社長を経営面からサポートできる税理士を目指し、税理士資格を取得。その後、税理士として多くの経営者と付き合う中で、「成功する社長の考え方」を知る。また、ランチェスター経営の第一人者、竹田陽一氏に師事。「大企業にできない中小企業ならではの戦略」を学ぶ。現在は「中小企業の社長と従業員とその家族が幸せになれば、世の中が幸せになる」を合言葉に、クライアントの売上向上と税金対策に携わっている。堀龍市税理士事務所ランチェスター財務株式会社 〒 541- 0046  大阪府大阪市中央区平野町 1- 7- 3   BRAVI  北浜 10階 TEL: 06- 4963- 3333   FAX: 06- 4963- 3337 MAIL: hori@ 21 tax-low. com   URL: http:// 21 tax-low. com/

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