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不足でなく不満の時代

成熟時代に入って、国民の八〇パーセントが中流階層の中で暮らしているといわれる現代

に、「モノ」と「サービス」の需要はどんどん増えてきて、中味が変化している。あらゆる市場

に新商品が溢れているばかりでなく、似たような商品が顔を並べている。しかし、そうした

現代社会で、供給の少ない市場がまだ存在しているであろうか?

現実には供給不足の市場は、なかなか発見できないと思うが、消費者のステータスが上がっ

てくると、商品や市場に不満を抱いている消費者はかなりいることが考えられる。

需要は「ほしい」、供給は「さしあげる」これがバランスすることである。「さしあげる」部分

と「ほしい」という部分がピッタリしない場合に顧客側にとっては不満となって現れてくる。

言い換えると不足の時代ではなく、不満の時代が今、到来しているのである。

成熟社会、生活水準が向上してくるとニーズは高くなり、不満が生じてくるのだ。

世間での成功実例をみると、いい商売しているときは、この面がマッチしている。ダメな

会社はズレていることがわかる。

大阪の近郊に有馬温泉がある。大阪市内から高速道路ができ、有馬へは、今や三〇〜四〇

分で行ける。かつては大阪の奥座敷といわれていたが、あまりにも近すぎて社員旅行には、

不向きになり不況になったときがあった。中国縦貫道ができてから、そのまた奥の温泉地ヘ

車を跳ばすようになり、通過地域のようになってしまった。

そこに、供給過剰と同じ状態が現出した。

そうした状況の中で、「有馬グランドホテル」は盛況のホテルであると私はみる。

宴会時、各人の席の料理膳にある竹の皿の中は、半紙が乗っていて、そこにてんぷらが乗っ

ていない。忘れているのかと思っていたが、そうではなかった。宴会が始まると同時に仲居

さんが大きな竹カゴに揚げたてのてんぷらを持って、配り始めた。

だいたい温泉ホテルでのてんぷらは、いつもなぜか冷たいのが常識になってしまっている。

それを打ち破ってお客様が席へついてから揚げるというメニューをやっているわけだ。茶わ

んむしもそうだった。同ホテルは三〇〇人、四〇〇人のお客様でもこのシステムでやるとい

料理というのは、冷たいものは冷たく、温かいものは温かくというのが、相手の立場に立っ

たサービスである。そして、また地域性のあるメニューがほしいものだ。最近は、人手不足

もあってか、画一的であり、顧客のニーズを忘れているところがなんと多いことか。

三朝温泉に「M模」という旅館がある。経営内容もよい旅館だ。経営者が、特に団体の料理

については、口やかましく、客層をみて調理師と打ち合わせ、スケジュールを組み、サンプ

ルチェックをするという。

料理という提供商品でいうなら「うまい」ものを出せばいい。熱いものは熱く、冷たいもの

は冷たくして出す。全国の旅館の特徴のない会席料理は飽き飽きしてくる。年長者が多くな

る時代、量より質を求める社会が到来しているのだ。

この旅館も、舞台の横にお座敷てんぷらのコーナーを設けている。その場で揚げている。

世の中では「ほしい」と「さしあげる」との関係の中で商売が成り立つのであって、やろうと

しないのでは、伸びのないのが当然である。

常に顧客のいだいている不満、客の欲する様を変えていく中で生きていけるのである。野

ウサギや雷鳥は毛の色を、カメレオンは皮膚の色を周りに合わせて生きながらえるのである。

日本には一億数千万人の人口が存在している。年代が進むにつれて、その時々に不平や不

満や不便を感じる顧客は多くなっていく。顧客の見えにくいニーズを発見して、新たな売り

物を開発していくのが大事なのだ。

環境適応、不満対処、これがマーケティングの第一基本である。

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