セールスマンに対して、ノルマ給、歩合給などをとるべきではない。この制度は、かえっ
て真のセールスマンを育成させないと私は信じている。
実績を上げさせるためのモチベーションの一つとして、金銭を支払う歩合制度を採用して
いる企業は、堅実成長を期待する企業のとるべき政策ではない。
売上達成を急ぐあまりの措置で、邪道であり、 一番忌み嫌うものだ。 一応、やれば報われ
る制度なので、 一時的には確かに成果は上がる。しかし、これは戦略でなく、個人プレーに
陥ってしまうことが目に見えている。
弊害をひろってみると、
・自分の好みの顧客にのみ売りつける。
・売れるところだけしか売らない。
・ゴマカして販売する。
・架空売上げをやる。
・急ぐあまりみせかけ販売をやる。
・戦略的に動かない。
。セクト的になる。
・個々人の戦闘的な売上。
・マーケティング的営業でなくなる。
などがみられよう。
営業には農耕的営業と狩猟的営業とがあるが、この制度は、狩猟的営業で短期決戦の一発
勝負である。また、能力あるセールスマンを戦略的に別の地域に異動できないことが多く、
人事面での円滑を欠く。
歩合給などバックリベート制度で過大な業績を上げすぎたセールスマンは、結果的につぶ
される。収入が多額となり、消費も増加する。そして生活が派手になるなど、お決まりのパ
ターンとして、色香のトラブルがついてくる。生活のリズムが狂いだし、人間が尊大になり、
上司の命令をおろそかにするという結果になってくるからだ。
こうなってくると、もう組織無視というより、破壊へと進んでいく。プロパーの人間、後
に続くものが育つわけがない。このような失敗例は数多く目にし耳にしているが、未だに経
営の本質的なあり方を知らない経営者は、このシステムを良しとしている。とんでもない大
間違いである。
成果報酬というのは、賞与で考えればいいことであり、やっても自動車セールスの域にと
どめるべきである。そのつどに法外な賃金を支払うのは個人の生活の向上、安定に向いてい
ないのは、先ほどの例でおわかりの通りである。
このシステムを導入しているのは、エセ営業体質の企業に多い。虚業の会社は、これをやっ
ているが、商業道徳の面からみても、長続きするとは思えないことである。
〈歩合給制度の良くない例)
一年に何回かをホテルなどを会場にして展示会を開く高級商品の販売がある。招待者だけ
の入場だが「来ていただくだけで結構です」ということでお客を集める。
受付けで顧客の名前を書いたカードを胸に、その名前の下に、縦長の購入票とか呈茶券、
お土産券がミシン入りで刷りこんである。購入すれば、カードは短くなっていく、何も購入
しないと胸につけた名前とカードは、そのまま残っている。
購入した顧客には、お土産とか記念品が手渡される。会場内では、担当セールスマンが、
説明について回る。買え買えという押し売りではないが、一品でも買わずには会場を出にくい。
貧乏人でも、また理性の持ち主でも、 一種の集団錯乱状態に陥ってしまう雰囲気がある。
何か購入しないと恥ずかしいという思いを抱かせるやり方であり、プライドを損なわせるよ
うなやり方が、販売システムとしてつくられている。また、人間の虚栄心をくすぐり、競争
心を煽り、衝動買いに拍車をかけるやり方である。
会場のセールスマンは、商品を個々に借りているという方式なので、下代は決まっている
が、上代は、自己の裁量で値決めの自由というシステムである。
かくしてセールスマンは、高率のバックリベートを手中に入れることができる。そのセー
ルスマンは、売上のランキングによって特別休暇・海外旅行特別ボーナスというおまけがつく。
いい気になったセールスマンは、エリートになったつもりで、消費生活が派手になるのは
火を見るより明らかである。
会社側としては、当の本人に対して生活レベルを上げるよう要請する。服装。住宅・車など、
良いものを持つようにせよというわけだ。そのための借金までして、買い換えを促進させる。
セールスマンは、ローン漬けになり、またこの虚業のために働かぎるを得ないという悪循
環に振り回されることになってくる。
次回の展示会にはノルマも上がり、口八丁で荒稼ぎというシナリオである。
これでは長続きするはずがない。そのうちに顧客は逃げる。セールスマンは、生活がかかっ
ているので逃がすまいとして、ダマしの手を打ってくる。ひいては会社自体、自らまいた種
で追いつめられてくるわけだ。虚業のみせしめとして当然のことである。
ともかく、よく売ってくるセールスマンをほしがる経営者がいるが、切り詰めていえば、
それはその会社の商品に商品力がないということだ。
商品に六〇パーセントの力があれば商品力となるが、四〇パーセントであれば、セールス
マンに力を借りることになる。商品自体に問題があるわけだ。
また、よい商品を持っていても、その良さを伝導するのがセールスマンの役日であり、商
品の存在を知らしめる役割はどうしても必要であるから、セールスは、絶対的にシステム的
に存在しなければいけない。商品力の優れた堅実な企業は、トップや営業部長など管理者が
変わろうと売れるものは売れる。これがシステムである。
その点においてセールスマンのテリトリー、取り扱い商品などのため定期異動は必要であ
り、これがセールスマン教育になってくる。商品知識は増え、幅広い客層を知ることになる
のだ。
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