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総資本利益率とは、貸借対照表の左側に記載されている現・預金、受取手形、売掛金、商
品在庫、工場建物、工場設備、土地など、その企業の持っている総資産を駆使して、年間い
くらの利益を経営者が稼ぎ出したかを見る指標である。この数値が五%以下の一〜三%で
あったらどうだろうか?。景気― ‐不況の影響もあろうが、事業の利回りが、何もせず寝て
いてもくれる銀行の定期預金の金利以下では絶対にあってはならないのである。
皆さんの関係していらっしゃる企業の総資産はいくらだろうか? 貸借対照表の左右の一
番下の総合計が仮に五〇億円としたならば、それを全部処分して大口定期(国内外、多種な
利回りの金融商品で運用)にするならば、寝ていても五%の二・五億円は稼いでくれるはずだ。
私は、社長だ役員だと言って胸が張れるのは最低でも五%以上で、 一〇%以上に回して初
めて優秀な国際的経営者だと言ってもよい、と申し上げている。
この総資本利益率という算式は、要するに当期利益を総資本で割った値である。この比率
を高くするには利益を上げるか、総資本を減らすか
のどちらかであることはおわかりになるだろう(図
表11 5)。こういうきわめて単純な原理。原則は
絶対に覚えておいていただきたい。くどいようだが、
商売というものは少ない資本でたくさんの利益を上
げることが望ましいのである。この場合、総資本と
いうのは総資産のことである。よく資本金と間違え
られる方があるが、ぜひ間違えないようにしていた
だきたい。
総資本(=総資産)を少なくするにはどうしたらい
いか。それには、できれば土地は持っていないほう
がいいし、建物もないほうがいい。機械や設備もで
きるだけ速く償却して金額が少ないほうがいい。さ
らに在庫商品もないほうがいい。
もう一つ、大切なことは、お金を速く回収するこ

とである。その場合障害になるのが、先ほども触れた手形や売掛金で納入商品の代金をもら
うことである。なぜ売掛金が残るのか、なぜ現金でもらえないのか、真剣に考えて対策を講
じることが大切である。実は、手形が商売上まかり通っているのは、先進国では日本だけで
ある。土地も建物もない、在庫も少ない、さらに売掛金や手形もなく、現金商売だという会
社は、必ず収益が上がる。
診断先の重役と話をしていると、よくこんな声を聞く。
「いやぁ、もっと広い土地が欲しい。いまのままでは建物は狭いし、新しい機械を入れた
くても入れられない。在庫を持つなと言われるけれど、先生、在庫は品揃えを豊富にするた
めにもぜひ必要なんです。それに、現金、現金と先生はおっしゃるが、私たちの業界で現金
で支払ってくれるところが、いったい、どこにありますか」
と平気で言う。そこで私が「現金でなかったら手形をもらっているんだろう、何力月先に
現金化される手形をもらってきているのか」と聞くと、「相手の得意先によってまちまちです
よ」と、これまた、それが当然と言わんばかりの答えが返ってくる。実は、商売なり経営を
していて最も怖いのは、こうした考え方が至極当然になってしまっている点である。
事業経営とは、意志的に、意識的に、いつの日か受取手形をやめよう、在庫手形をやめよ
う、在庫を月商の三分の一にしようと念じ、長期的に改善することである。
デュポンピラミッドと言われる図表116を見ていただきたい。
総資本利益率は「総資産回転率」と「売上高利益率」とを掛けたものである。調達資金の効率
を見る「総資産回転率」は、売上高を増やすか、総資産を減らすかの二策しかないのである。
いや、分母の総資産が大きくなれば効率は悪くなり、分母を小さくすれば効率がよくなる。
いたってシンプル、簡単なのである。
売上げが自然に増える好況期には、在庫、売掛金、受取手形が当たり前といえば当たり前
のように増える。工場、店舗、設備も増える。売上げの伸びより総資産の伸び率が大になる
と、回転は悪くなる。好況が続けばいいが、好況の後には不況が必ずくる。そして、売上げ
は簡単に低下するが、総資産はそう簡単には低下しない。総資産のなかに、固定資産という、
売上げの変動に即応しにくいものがあるからである。
不況期に入ると「放漫経営による業績悪化、倒産」という記事や見出しが経済紙誌によく載
る。このバブル不況のとき、「担保価値がこんなに乱高下するとは誰も予想しなかった」と言っ
て東西のビル賃貸業者が居直った発言をしていたが、経営を知らないでブームに乗った放漫
経営だったのである。「売上高利益率」は、わかりやすく言えば、十分な利幅をとって商売を
していますか?。ということである。自由競争経済のなかで、規制や談合がなくなっていけ
ば、あらゆる業界ではこの利幅がつねに悪化する傾向にある。コストダウン、人的効率化、
システム化によって経費を削減する経営努力を実行することは、もちろんだ。前項で詳述し
たように、マーケティング。新商品開発行動をとって粗利益率(付加価値率)の向上を長期的
に意識的に実行しなければならない。

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