ある社長は、アメリカの量販店に売り込みに行ったときのことを、こう話している。
アメリカでの売り込み対応は大変フェアで、日本と比べて非常にやりやすい。その会社は
セミプロ用の簡易ポンプメーカーだが、量販店へ売り込みに行ったところ、話を十分に聞い
てくれ、提出したサンプルの品質、価格をチェックして、よければすぐに購入を決めてくれる。
それに引き替え、日本では、まず取引口座がありますか?。といわれ、取引口座が新規の
業者にはとれない。何年間かの取引実績がものを言う。日本では「品質がよくて価格が安い
から」という理由で、先方から買いに来る場合は別にして、売るほうから売り込みに行っても、
まず取引は成功しない――。
私は当初、このことが不思議で仕方がなかったが、徐々にその理由がわかってきた。外国
に比べ排他的な取引関係は、人間関係、情を重んじる風土に根ざした「村=ムラ」社会的な慣
行がそうさせるのであるが、瑕疵責任(輸送中の破損、品質、数量の間違い、納期遅れ)など
のトラブルを阿咋の呼吸で納入先が責任を認める処理をしたりする。トラブルを起こしたく
ない日本人の感覚からであろう。
さらに、法的にはやってはいけないと言っていながら、日本の量販店など大型小売業で行
なわれている「買い取り仕入れ」「委託仕入れ」「消化仕入れ」「返品条件付きの買い取り仕入れ」
というまったくの不条理な買い付け交渉が、いまだに大手を振ってまかり通っている。
これらを納入業者に認めさせるには、短期の取引では、いくらなんでも納入業者が納得し
ない。長期的、安定的な取引を通じてお互いのプラスとマイナスをチャラにしようという日
本的取引習慣があってこそ、はじめて成り立つものである。
大型小売業では「これからは自社開発商品の時代だ、粗利益率の高い付加価値商品を持た
ずしてはやっていけない」と唱えなからも、「売れ残っても返せず、不良在庫の責任をとらさ
れるのはまっぴら」と言い切る。日本では、いつまでたってもこの系列関係、上下関係、取
引慣行から抜け出せないのである。
だが、納入業者にも悪い点はある。日では大型小売店の横暴を嘆きながら、 一方では新商
品をどんどん納入できるので、売れるという確信のない商品まで大量に納入し、どうせ返品
があるだろうからと、そのロス率を事前に納入価格に折り込んでおく。だから価格も高い。
これもまた、慣れ合いの談合取引であり、世界には通らない「業界の常識」「業界の秩序」とさ
えなっている。このような排他的な取引慣行、業界ルール、官庁の行政指導などは、建設業
界の談合的体質とまったく同じである。
これに対し、小売業の新業態であるカテゴリーキラー(業態破壊型小売業)はすべて、自
社の社員、自社の責任で企画。開発した商品を仕入れ、買い取るなど、小売業者としての自
主的自律的商いを行なっている。
真に腰の強い経営を求めるなら、中小企業といえども、政府の保護政策を求めたり、前述
のような旧態依然とした不合理な取引慣行に頼らずに、自由競争の原理をあくまでも追求す
る努力を怠ってはならない。
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