UCCコーヒーの商品開発のお手伝いをさせていただいたときに、日本中の市場調査をさ
せてもらった。部下を使い、忙しい合間を縫って各店舗を診て回った。私の関係している食
品会社がつくっている調味料や加工食品などの陳列棚も調べた。
その際、びっくりしたことには、イトーヨーカ堂の棚には各メーカーの一番売れている商
品がほとんど並んでいた。スパゲッティーもラーメンも一番の売れ筋商品ばかりだった。と
ころが同じスーパーでありながら別の某社では、陳列棚に並んでいるのは、名前の知られた
会社の売れ筋ブランドではなく、まったくメーカー名を聞いたことのない、変わった商品が
ずらりと並んでいた。イタリア直送の細いスパゲッティーもあった。そこで、そのスーパー
ヘ勤めている幹部に聞いてみた。
「君とこだけやなあ。いろいろ変わった商品を置いているのは。いったい、どういうことや」
「社長が、これからの小売業は来店のお客様にわが社はやっぱり面白い、楽しい店だと実
感していただけるようでなければいけない。それこそがよその店との差別化につながると、
重視しています」
「その考え方はわからんこともないが、粗利益率や回転率を無視しているんと違うかな」
「そうですねえ」
「イトーヨーカ堂は君のところと品揃えでもまるっきり逆やが」
「知っています」
「どっちがいいんだい」
「と言いますと?」
「収益性で、イトーヨーカ堂は一〇〇〇億円近くの利益を上げている」
「とてもじゃないけれど、利益では格段の差があります」
そこで私は、「社長に言うておけや」と言っておいた。つまり、私が言いたいことは、売れ
るモノを置け、お客様に欲しがられるモノを置け、ということである。面白くて珍しくて、
それで買っていただけるのならばありがたいけれど、実際には買っていただけない。
スーパーの棚割は、一つの棚、フェイスごとに、並べる定番の商品とその量が決まっている。
単品管理というのは極端な例だが、 一つ売れたら、 一つ入れておけばよいわけである。この
やり方が何を考えているのかと言えば、在庫回転率である。これをコンピュータを使ってシ
ステム化しているのである。POS化もその一つである。
倉庫に行ってみると、生きている商品はどんどん回転していることがよくわかる。死に筋
商品は早く見つけて葬式を出してあげることだ。購買担当の人間がバカだと在庫はいくらで
も増える。購買担当の人間が仕入れ先とゴルフをしたり、 一緒に飲み歩いたりばかりしてい
て商品は売れるだろうか。「利は元にあり」という言葉は、売れている商品、売れ筋をきちん
と把握して、仕入れていくことである。商売とは早く売ることに尽きると言ってもいい。そ
れには購買担当、倉庫管理の人の役割が非常に重要になってくる。
ところが、実際にはこのことを理解している経営者は少ない。それどころか、誤解してい
るトップさえいる。「仕事ができないなら倉庫にでも回しておけ」「商品管理でもさせておけ」
という会社を、ときどき見かけるのが、そのいい例である。整理整頓が悪いために、倉庫の
中でどれだけロスが発生していることか。仕入れた商品が売れなければ、半額で売る。当然、
赤字となって期待していた利益が出てこない。粗利益率は値入れ率ではないのだ。
いま、ディスカウンターが流行っている。従来の酒屋さんは「ディスカウンターしても、
儲かるかいなぁ」とか、「見てみい、また潰れたわ」などといった反応をする。
ディスカウンターというのは、本来は粗利益率が二〇%あるべき商品を一〇%で販売する
というやり方の新業態店のことである。つまり一〇%損して売るわけで、その代わり、商品
(在庫)回転率を倍に上げる。だから管理の悪い会社がディスカウントすると必ず潰れる。実
際に在庫回転率がどれくらいかわからないからだ。単品管理をしていない。 一品一品の在庫
回転率を把握していないから、潰れるのは当然である。
これからの経営で、在庫回転率を高めるということは非常に重要なことである。収益性の
いい会社へ行くと、まず、在庫管理が優れている。これが利益を生み出す源泉だから、当然
でもある。
皆さんの商売で何力月分の在庫があればいいのか。 一般には売上げの一カ月分あれば十分
だが、実際には業種や規模、商売の仕方によってかなり異なる。なかには三〇日分もいらな
い、いや一五日分で十分という例がある。おたくは一週間分だろうか、三日分だろうか。
外食産業で料理屋ならば何日分でいいのか。実は二日分もいらない。電話をすればすぐに
持って来てくれる。それでいいではないか。いま、これだけ通信技術、そして物流が日進月
歩の勢いで進んでいる世の中で、広いスペースの倉庫をつくって商品を置いておく必要はな
いのだ。また、広い倉庫を使っているということは、それだけリードタイムが長く、在庫回
転のスピードも遅くならぎるを得ない。
前述したように、広い大きな倉庫スペースをつくるということは、土地、建物の固定資産
が大きくなるだけでなく、商品を置くスペースがゆったりあればそれだけ在庫が増大するの
である。○○県流通センターなどというのは、そういう意味で危険なのである。「あそこがあ
んな倉庫を建てるなら、うちはそれ以上の倉庫を」と訳のわからない理由から建てる。しか
も高度化資金があり、権利金は要らないなどと言われたりすると、なおさらだ。
北陸のある県で経営診断を行なったときに、バカでかい体育館のような倉庫をつくってい
たので、社長に半分はベニヤ板で囲って物を置かないようにとアドバイスし、結局、半分を
社員の卓球場に変えさせたことがある。大きい倉庫には大きなリスクが伴う。
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