私はよく冗談として、アメリカ人など外国人は決して両手で握手をしない、つねに左手を
空けておく、ということを言う。それは、友好的であっても相手にミスがあればはっきりと
クレームを言い、裁判で争うくらい平気だ、すなわち、右手で友好でも左手で喧嘩をするた
めであると。彼らは、 一緒に仕事をすることになっても、つねに相手に対する警戒、注意を
怠らない。この点が日本社会とは根本的に違うところだ。
簡単に言えば、日本は契約社会ではない。仕事を進めるうえで文書を交わし、サインをし、
契約してからも、正しく契約が守られているか、絶えずチェックを行なうアメリカのような
ビジネス環境と異なる。この点が日本の企業にシステム化が根づかない大きな理由でもある。
とくに中小企業の経営者は、ルールを決め、それを文章化し、テキスト・標準作業書をつ
くり、それを説明して、決めたことは必ず実行させ、それを継続させることや、新しく入っ
てきた社員に教えることができない。というよりやろうとしない。非常におっくうがり、やらない。
例えば在庫管理一つとっても、非常にずさんである。倉庫にある商品を出すには、伝票が
ないと出せない仕組みになっているはずである。また、伝票には上司の印鑑が押してなけれ
ばならない。だが、中小企業の場合、伝票がなくても「後で書くから」、上司の印鑑がなくて
も「後でもらうから」で通用してしまう。さらに社長などトップの権限で、伝票がなくても出
庫する場合が少なくない。時には入ったばかりの商品でまだ納品処理もすんでいない商品を
「客の注文だから」と持って行ってしまうこともある。このように、あげればキリがないほど、
お互いの善意を信じてか、キチッとした伝票処理が行なわれないことが多いので、いくら立
派な在庫管理システムをつくっても役に立たない。
日本の場合、とくに中小企業では、人間関係のほうが優先してルールをそれに合わせてい
ると言ってもいいだろう。管理というのは、決めたことを、そのとおり守ることだが、ルー
ルを守らせるという考え方が管理職にない。自分で言うのも恥ずかしながら、私がコンサル
タントとして成果を上げているのは、システム化を企業内で推進するための前提条件として、
管理職に管理能力をつけるところからスタートする処方箋を書き、それを身につけさせてい
るからだと言えるのではなかろうか。
管理とは、PーDーCーAである。
私は、管理者は管理を実行せよと単に口をすっぱくして言い続けているだけである。日本
の中小企業の幹部は、どうしても一人三役、あるいは三役でプレーイングマネジャー的にや
らないと、日々の仕事はこなせていけない。私もそれは認める。だが、管理者はただ「管理、
管理」と叫ぶだけでなく、次のような、
①計画、方針をはっきり決める仕事、および、
②計画、方針を決めたとおりにやっているか、チェックする業務をキチンと遂行し、
③それでも思うようにいかなくて計画と実際の間に差が生じるときがあるが、そのとき
に、なぜそうなるかという原因や理由を見つけて適切な対策を考え、次の改善のため
の実行を決める、ことが大切なのである。

PI DI CI Aに多くの時間を
使わなくてはならない。しかしな
がら、現場のことは自分がやれば
一番できると思い込み、現場の実
務のなかへ埋没してしまい、問題
点を理解したような気になり、そ
れで仕事を十分にしたかのような
満足感に浸る(図表616)。
だが、こうしたやり方では根本
的な問題は何一つ解決されないど
ころか、決めたことがいつの間に
か守られなくなり、目標とのズレ
が生じても気がつかず、有効な対
策や処置がなされないので、ルー
ルや組織によって動くシステム化
が崩れ、結局、その人その人なりの個人中心の仕事となってしまい、何のことはない、ベテ
ランしかやれないようになってしまう。それは、ちょうどいまの日本のように、
●進むべき国民の指針が示されず、
●対症療法だけで根本的な要因を探らず、
●自己責任、責務を果たさない。
のとまったく同じである。こうした風潮が企業内にもはびこり出し、しかも管理職がマネ
ジメント業務に消極的で、責任を回避している。これが収益性の上がらない企業経営の一番
の問題である。

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