では部下を自けさせないで、全社一九となって仕事をする態勢を、どうつくるか。
それは、社長が自らの確固たる経営ビジョンを示し、実現可能な未来を具体的に示すしか
ないのだ。
ところが社長と社員のコミュニケーションについて、勘違いしている人が多いのには、驚
いてしまう。いわく、「酒飲んで裸のつき合いをすれば、部下もついてきてくれる」、いわく
「膝突き合わせて、言いたいことを言い合う」。前にも述べたが、「俺に任せろ悪いようには
しない、黙ってついて来い」等など、社長の人間的魅力だけで社員を引っ張っていく行き方
は、二、二人の個人企業ならこれでもいいかもしれない。しかし人を何十人、何百人と使っ
て仕事をする場合は、これだけではだめなのだ。
創業時代には酒を一緒に飲んで語り合う、これでも人はついてきた。しかし人も増え、事
業も大きくなった今は違う、というのが大方ではないか。「どうだ、たまに酒でも飲んで腹割っ
て話そう」と社長が誘っても、今の若い人は一緒に飲むのはおつき合い、お義理で仕様がな
くということが多いのではないだろうか。なかには、誘った社長の目の前で「ちょっと女房
に聞いてみます」と、その場で電話して「えっ、もう食事用意してるの、じゃ帰るわ」、「社
長すいません、今晩は失礼します」というような極端な話も、このごろでは珍しくない時代
だ。このような旧来のやり方では、部下の動機づけには、もはやマイナスにしか働かないと
知るべきだ。
飲み食いでコミュニケーションを図るのではなくて、部下の仕事を成功させるように、的
確な方針を出し、一緒に達成法を考え、場合によってはよその部門から協力者を連れてきて、
「こいつのこの仕事をアドバイスしてやってくれ」と調整もして、何としても日標を達成す
るように指導して、その人が成功したときに、はじめて本当に尊敬される上司となる。目標
を与えただけで、フォローもしないでいくら飲み食いしても、今の人は動いてくれないので
ある。第一、それほど社長は暇ではない。
では、すべての社員が自けないでやる気を出してくれるような「的確な方針」は、どこか
ら生まれるのかといえば、社長のつくった長期計画以外にないのである。
運営基本計画は、単なる利益計画ではない。すべての数字には社長の夢やビジョンが込め
られている。将来の社員の処遇についての具体的な方針、発展するための設備投資への方針、
どんなことがあってもつぶれないための資金への方針を検討し、売上目標も過去の実績と市
場性を踏まえて設定した、これらを全部含んだ計画である。
社長の熱い思いを、冷静に数値化した「実現可能な夢」が語られているのだ。
これらをワンセットにした社長の長期計画こそ、全社員の心の底まで届く強烈な動機づけ
となるものである。
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