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食品問屋Y社の大型スーパー進出への対応計画

Y社も第一章に、「自社ブランド開発で飛躍した問屋」として紹介した会社だ。

その後、Y社にとって将来を大きく左右する事態が発生した。

日本有数の大型スーパーが進出してきたことによって、地元の食品問屋の淘汰整理が加速

化してきたのだ。たび重なる、利益を度外視した目玉商品提供の要請、先方主導の配送要求

などで、売上総利益率が目に見えて低下しだしたのだ。

Y社長は必死で対応策を練った。利益率を改善するには、ヨソが手掛けていない商品を見

つけなければ競争にならない。経費も新しい発想で思い切って合理化しなければ、再び淘汰

される側に回りかねない。そこで、これまでの長期計画を全面的に見直し、新たな五年計画

として、次のような運営基本方針を出した。

(運営基本方針)

①売上の伸びをGDPの伸び率と同一に修正する。

②競争力を強化するため、取扱商品の差別化を、自社ブランド商品中心に進める。

③売上総利益率は、日標年度に八%とし、商品の差別化と仕入れ方法の改善で対応する。

④労働分配率は四三%とし、業務内容を詳細に洗い直し、男女の業務区分を明確にし、

あわせて、パートタイマー、中高年層の積極活用を図る。

⑤経費はすべてゼロ予算からの積み上げ方式とし、経費分配比二八%を目標とする。

⑥運転資金増加は、買掛債務の増加で調達し、金融調達はしない。

⑦予定していた配送センターの建設資金は、財務内容の改善によって生み出した自己資

金をもって行うことを、原則とする。

③目標年度に金融費用をゼロとする。

⑨期末にデッドストック、スロームーブ、陳腐化固定資産の除去に常に留意し、日標年

度の安全分配比率を一%とする。

⑩目標年度の税引前利益五億円、蓄積配分比率一〇%を達成する。

Y社長は、第34表の新たな五年計画を幹部に示してそのポイントを説明した。売上計画も

旧来より低く設定したが、それで経費が前と同じでは会社が成り立たない。人は増やさず、

一般経費は思い切って削り、これまでの長期計画の大幅な方針変更であったが、幹部の受け

止め方は前向きであった。「分かりました。社長、やるしかありませんね」と。幹部も社員

もたくましく育っていたのである。

やがて商品の開発部門から、若いスタッフがこんな面白いものを見つけてきたんだが、社

員の奥さんが出してきたアイデアなんだがと、次々に有望な企画が上がってきた。その中

から選んでいくつかをテスト的に商品化して発売してみると、行けそうなものが二、三商品

出てきたのであった。仕入れ部門も、経理も人事も、担当長が社長の出したギリギリの数

値目標をよく理解して、達成に邁進したのだ。その結果、決して楽ではなかったが、売上

三〇〇億円、売上総利益二四億円、売上総利益率八%、仮営業利益は六億円近くとなり、こ

れまた見事に目標を達成したのであった。

Y社長がしみじみと語ってくれたことだが、「うちの社員には足を向けて寝られません。

ョソの会社が消費不況で軒並み赤字だと騒いでいる厳しい環境のなかで、経費を大幅に削っ

て、よく当初の目標を達成してくれたと思う。それにも増してうれしいのは、この計画を達

成して、社員が一回りも二回りも成長したことです。これからも決して楽観できる情勢では

ありませんが、もっともっといい会社にしていけるような気がします」と。

社員の成長を喜ぶY社長の顔は、以前よりさらに頼もしく生き生きとしていた。

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