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回収率と支払率の差に注意する

買掛債務については、基本的には売掛債権の考え方の逆である。支払率が低ければ低いほ

ど資金調達が少なくてすむことになる。だからといって、支払いが悪ければ、相手が物を売っ

てくれなくなるだけだ。当たり前のことである。

そこで社長としては、買掛債務の支払いについて次のことに注意することが肝心だ。「も

し支払率が一〇〇%なら、回収率も一〇〇%が条件」、ということである。もし回収率が

八〇%や七〇%のままで、支払いだけはきっちり全額というのでは、必ず資金が詰まってく

るからである。資金繰りからいえば、支払率は回収率より原則的に低めでないといけない理

屈だ。

特に商社のように、たとえば一〇%とか一五%というような売上総利益率の低い業種の場

合は、回収率より支払率がよかったら、売上増に応じて運転資金がどんどん膨らんでくる。

そこで支払率の高い会社は、まず回収率を上げることが大事だ。それでも回収率より上回

るようなら、支払率を下げる交渉も考えないといけない。しかしこれはうっかりやると、「何

だ、あの会社は危ないのか」ということになりかねないから、長期にわたって、徐々にでな

いとできない相談である。

ここでモデル会社D精機の例をみてみよう。

第17

表の「調達運転資金」の欄をご覧いただきたい。直前期をみると買掛債務(買掛金と

支払手形)が二億三六〇〇万円、これに当期の原材料仕入れが八億七二〇〇万円、 一般経費

のうち買掛の対象となる経費が一億二六〇〇万円、都合一二億三四〇〇万円が当期支払対象

額であった。そして決済したのが期末買掛債務二億三〇〇〇万円との差、 一〇億四〇〇万円

で、支払率八一・四%となっている。

ここでD精機の回収率をもう一度確認していただきたい。七〇%である。ところが支払い

は八一。四%というのだから、資金繰りは苦しくなる一方である。これは社長の放漫という

以外に言葉がない。

しかも直前三期をみると、回収は七八%で支払いは七〇・六%であった。これなら商売が

大きくなっても資金繰りに困らない会社であったのだ。ところが直前二期に支払いを七八・

五%にしている。なぜ急に数字が変わったのかD社長に確かめた。案の定、銀行さんのアド

バイスで、わざわざ、支払い条件をよくしたのである。「社長さん、支払いを短くしてその

分値引きなさい、いくらでも有利な条件で融資をするから」と銀行に言われたとおりのこと

をやってしまったのだ。確かに支払いを短くした当初は値引くかもしれないが、すぐに何だ

かんだといって、元に戻してしまうのが商売の常道である。その結果はどうかといえば、売

上総利益率の三年連続の低下となって、大失敗である。

ここで回収率と支払率の別な読み方をしてみよう。回収率七〇%とはどういう意味なので

あろうか。七〇%の回収で八億一〇〇万円残っている。直前期の売上は二〇億五五〇〇万円

だ。八億一〇〇万円が売上の何力月分かというと、

∞8 ・―。NOuu× HN= 卜ヽ

つまり回収できなかった売掛債権が四・七カ月あったということは、売上が発生してから

五カ月、締め日から大ざっぱにいって四カ月、 一二〇日の手形をもらっているということを

意味しているのだ。

では支払いの方はどうか。同じように計算してみると、

N∞o■ にω卜× に= N・Nト

大ぎっぱにいって、締め日から一カ月ちょっとで支払っていることになる。払う方は一カ

月、貰う方が四カ月の手形では、資金が詰まってくるのも当たり前である。ところがD社長

はこのことに気がついていなかったから、経理にも別段注文をつけていなかったのである。

これを放漫経営という。このような失敗は、何もD社長だけではない。案外にいろいろな会

社で似たり寄ったりの放漫経営を繰り返しているのは、社長としてバランスシートを読みこ

なしていないということなのだろう。

さて、回収率がよくて、支払率が低ければそれでいいのかといえば、そうともいえない。

小売業がその典型だが、特に美容院、飲食店など、日銭で現金が入って、支払いは月払い、

手形もあるというような商売の陥りやすい間違いがある。それは、売上が増えれば増える

ほど、流動負債が増えて、流動比率を悪くしてしまうことである。この場合は、流動比率

一二五%以上というのが大事な指標となることは前に説明したとおりである。つまりすべて

ほどほどが大事なのだ。

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