MENU

D精機の資金運用計画

①固定資金の源泉

先に、人件費が八〇〇万円増えたことによって、当初一億七〇〇〇万円を予定していた

D精機の初年度の税引前利益が一億六二〇〇万円に減ったと書いた(第19表)。それを基

に事業税の修正を行った結果、同表の第二次修正のとおり、二四〇〇万円と設定していた

事業税が三二〇〇万円に変わった。事業税が予定より二〇〇万円減ったのだから、その分

今度は税引前利益が二〇〇万円増えることになる。つまり運営基本計画の第一次修正で

一億六二〇〇万円になった初年度の税引前利益は、第二次修正により一億六四〇〇万円に再

び修正されなければならない。この数字を第21表資金運用計画の「第一次試算」当期税引前

利益の欄にまず書き入れるわけである。

資金支出のない経費も運営基本計画の数字をここにもってくればいい。すなわち減価償却

費は八五〇〇万円、事業税引当は三二〇〇万円、引当金導入は運営基本計画の特別損益に相

当するもので二六〇〇万円、計一億三二〇〇万円が当期の資金支出のない経費ということに

なる。

長期借入金増加は、五年後に無借金会社にするという社長の基本方針を受けて、五年間で

全額返済を目標に、バランスシートにある現在の長期借入金九億九四〇〇万円を五で割った

一億九九〇〇万円を年間の返済額とする。

増資預り金増加は、予定がないからゼロである。

結局、当期税引前利益が一億六四〇〇万円、資金支出のない経費が一億三二〇〇万円、長

期借入金増加がマイナス一億九九〇〇万円で、この二つの数字を足した九八〇〇万円が、D

精機の初年度における固定資金源泉の合計額ということになる。

次に、その使途について検討してみよう。

②固定資金の使途

税金の支払いについては、さきほどの第20

表「税金関係計画」を見ていただきたい。先に

も少し触れたように、税金の支払いには、確定納税のほかに予定納税という方法がある。今

期どのくらい利益が出るか分からないので、前年の実績に応じてその三分の一を予定納税し

ておき、決算が決まってからその差額を支払うというのが税金の支払い方法なのである。

D精機の直前期の税金は、事業税一八〇〇万円、納税充当金六八〇〇万円で、計

八六〇〇万円である。その三分の一の四三〇〇万円はすでに予定納税として支払ってい

る。これに対して直前期八六〇〇万円であり、予定納税として直前期に四七〇〇万円納め

ているので、二九〇〇万円を確定納税している。したがって、この二九〇〇万円と予定納

税四三〇〇万円の合計、八二〇〇万円を確定申告として納めることになる。そこでこの

八二〇〇万円という数字を固定資金の使途の税金支払いの欄に記入する。

ただし、この税金計算については、その仕組みだけを社長が理解しておき、あとは経理に

指示してやらせればいいことである。

引き続いて第21表に戻る。

次の配当金支払いは、支払いが翌期に一年ずれるので、運営基本計画の直前期の数字

四〇〇万円を転記する。

固定資産投資は、設備投資計画から八〇〇〇万円を転記する。

投資増加は、D精機ではこれをしないのでゼロである。

以上で、固定資金の使途の欄の小計が一億六六〇〇万円と出る。

ただし、資金の源泉の合計と資金の使途の合計は一致しなければならない。そのためには、

固定資金余裕という欄を設け、両者の差額をこの欄に入れておくのである。D精機の場合、

第一次試算では初年度の源泉の合計が九八〇〇万円だから、資金の使途の合計も九八〇〇万

円にするには、固定資金余裕をマイナス六八〇〇万円とする必要がある。これで両者の合計

額がぴたりと合致することになるわけだ。

③運転資金の源泉

固定資金運用から出た固定資金余裕のマイナス六八〇〇万円をまずここに転記する。

買掛債務増加は、運転資金計画で計算した初年度の買掛債務増減の数値一億七〇〇万円を

書き入れる。

次の短期借入金増加もその他負債増加も、増減なしでゼロだ。

ここで大事なのは、固定資金余裕のマイナス六八〇〇万円である。前述のとおり、固定資

金余裕というのは、これがマイナスであれば、税金などを支払って資金が足りなくなり、運

転資金に食い込んだという意味であり、逆にプラスなら、運転資金にそれだけ回す余裕があ

るという意味だ。したがって、当然これは常にプラスであることが理想的なのだが、会社と

いうものはなかなかそうはいかない。そうはいかないのだが、これを放っておけば、結局運

転資金を確保するために借金をしなければならなくなり、バランスシートの安全度がぐらつ

いてくる。そこで、 一〜二年はマイナスでも仕方がないとして、三年目にはこの体質から脱

却し、三年間の累計でプラスになるようにすることが大事なのである。これが、社長がこの

数字を見る場合の一番のポイントだろう。

④運転資金の使途

売掛債権増加も棚卸在庫増加も手元現預金増加も、運転資金計画から数字を転記する。

売掛債権増加は六八〇〇万円、棚卸在庫増加はマイナス五三〇〇万円、その他資産増加は

ゼロ、手元現預金増加が五〇〇万円で、小計二〇〇〇万円。これを運転資金の源泉の合計

二九〇〇万円から引けば、自動的に運用預金増加の一九〇〇万円という数字が出てくる。金

融費計画には、この数字が大事なのだ。この数字が出ないと金融費計画ができない。つまり、

これで金融費計画を検討する根拠ができたわけである。

以上がD精機の資金運用計画である。

資金運用計画は、経理の人だけがやる特殊な仕事に見えるが、実はそうでないことがご理

解いただけたと思う。もう一度繰り返せば、当期税引前利益は運営基本計画から転記するだ

けであった。減価償却費も運営基本計画から転記する。事業税引当金は税金計算の数字をもっ

てくる。引当金導入も運営計画から数字を転記する。長期借入金増加の数字だけは社長のポ

リシーを入れる。税金の支払いは税金計算の数字をただ転記するだけだ。配当金の支払いは

運営基本計画の前年度の数字を転記する。固定資産の投資は設備投資計画から転記する。買

掛債務の増加は運転資金計画の数字を転記する。売掛債権の増加も棚卸在庫の増加も運転資

金計画から数字をもってくる。手元現預金増加も同じだ。いわゆる資金運用計画というのは、

これまでの既存の数字をただ転記して、足し算と引き算を行えば、自動的に出来上がるもの

なのである。 一見難しそうに見えても、実は極めて簡単な、だれにでもできる計算で作成で

きるものだということが十分ご理解いただけたのではなかろうか。

では、運用預金増加の一九〇〇万円が、はたして金融費計画にどれだけの影響を及ぼすか、

受取利息にどれだけの変化をもたらすかを次にチェックしてみよう。

金融費は、支払利息と受取利息からなっている。ここで第22

表を見ていただきたい。

支払利息とは、短期借入金、手形の割引、それに長期借入金に対して支払われる利息のこ

とだ。大きな会社になると、社債などその他のいろいろな対象があるが、 一般にはこれらに

対して発生する利息が支払利息である。

一方、預金をすることによって受け取る利息もある。この支払利息と受取利息との差額が

金融費である。そう考えていただいて間違いなかろう。

支払利息は、期首と期末の借入金の平均残高に金利を掛けて算出する。つまり、期首にお

ける借入金の残高と期末における借入金の残高を足して二で割り、それに金利を掛けたもの

が支払利息の額ということになる。

これに対して、受取利息はどのようにして発生するだろうか。会社が銀行からお金を借り

入れれば、見返り預金を要求されるのが普通である。表面的にはそういうことが否定されて

はいても、銀行も商売であるからには、当然のごとくに見返り預金を要求してくる。どのく

らい要求されるかは、銀行によってまちまちだが、たとえば短期借入金の場合は、常識的に

いって、三〇%ぐらいだろう。パーセンテージが比較的高いのは、 一般的に短期借入金には

担保を入れないのが原則だからだ。

手形割引の場合は、相手側が発行した手形という裏づけがあり、短期借入金ほどではない

が、それでも二〇%ぐらいの見返り預金を要求されよう。つまり、借入金に対して二〇%ぐ

らいの預金をしないと手形は割り引いてもらえない。

では長期借入金の場合はどうだろうか。五年とか七年、あるいは一〇年という長い期間で

返済していくのが長期借入金である。したがって、銀行はこれに対しては必ず担保の見返り

を要求する。たとえば土地、建物、あるいは機械設備が担保物件となるわけだが、それを担

保に入れたうえに、なおかつ預金も要求される。常識的にいって、それは借入金の一五%ぐ

らいだろう。

こうして預金したお金が受取利息を発生させる。その受取利息を支払利息から差し引いた

金額が金融費ということになるわけである。

この程度のことは、読者の皆さんは当然ご存じのことだろう。

では利益の変更によって、金融費がどう変わるのであろうか。はたして金融費は、当初の

金額で済むのか。その実証をしなければならないわけだが、それには資金繰りの全体、資金

運用の全体を見て、借入金と預金の関係などをチェックしていく必要がある。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次