設備投資計画を立てるには、次のような定石を知っておくことも必要である。
すなわち、「設備投資額は、その期の減価償却費と同額にする」という定石である。これ
は定石であって法律ではないのだから、必ずしも守る必要はないわけだが、社長として忘れてはいけないことだ。
もっとも専門家の中には、これを「償却費以内」としている先生もいる。わたしは「イコー
ル減価償却費」と指導しているが、いずれにせよ、設備投資額を減価償却費と同額または減
価償却費の範囲内に抑えるというのは、経営のひとつの基本なのである。
いうまでもないことだが、なぜそうなのかといえば、減価償却で減った分を投資で増やし
ていくのだから、プラス・マイナス・ゼロとなり、常に安定した状態を保てるからだ。減価
償却費の範囲を逸脱すれば、その分どこからか新たに資金を調達してこなければならない。
ただし誤解されると困るのは、これはあくまで通常の設備投資の場合であって、建物など回
収に時間のかかる投資の場合は別だ。償却に数十年を要するような投資には、それ相応の長
期借入金をもってきて、これは別勘定にして運営するわけである。
ところで、後先をあまり考えようとせず、減価償却が二億円のところに五億円の設備投資
をしたりする社長がいるとしよう。経理の責任者や会計士がいくら無茶だと制止しても、「そ
んな消極的な発想で事業を伸ばせるか!」と、聞くものではない。よく見かける社長のタイ
プだ。乱暴といえば乱暴だが、 一方、この社長の言うことにも一理ないわけではない。
特に、積極経営を推し進めていこうとしている創業間もないような会社なら、敢えて定石
を破り、減価償却を上回る思い切った投資をしていかなかったら、いつまでたっても発展で
きず、結局零細のまま終わってしまうことになるだろう。
したがって、「投資額イコール減価償却費」というのは、あくまでも原則であって、絶対
にイコールでなければならないということではない。積極的に事業を展開していかなければ
ならないときは、減価償却費を上回る投資もありうる。もちろん、これは長期計画の裏づけ
があっての話だ。
しかし、定石は、やはり定石である。経営者は常にこれを頭の中に入れておかなければな
らない。バブル時代に甘い投資をし、今になって放漫経営のつけに泣いている会社が少なく
ないのは、定石を無視した結果だろう。したがって、減価償却費を上回る投資をするときは、
かつての反省の上に立ち、本当にそれが可能なのかどうか、次章で検討する「資金運用計画」
とも十分に相談しながら決めていくことが必要なのである。
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