いま時短が叫ばれ、年間労働時間一八〇〇時間を目指せといわれている。
仕事が増えたらその分を残業で、とはいかない時代である。そうかといって、仕事の増え
た分だけ人を増やしてはいられない。当たり前である。
もともとスターという会社は、人を多く使わないでもすむ事業という発想からスタートし
たこと、仕事が増えても人を極力増やさないように工場を無人化していったことは、第二章
で詳しく触れたところだ。ここで、無人化工場を考えたもうひとつの動機について補足して
おこう。
わたしの会社では完全週休二日制を一九六六年に実施しているから、わが国でも最も早い
例ではないだろうか。社内の機械化もすすみ、週休二日制を導入した当初のことである。
「どうも社員が暇を持て余しているようです」というのである。世の中の会社は土曜日も
出て働いているのに休んでいるのはもったいない、週休二日でなくていい、土曜日も働いて
給料を稼ぎたい、という反応が出てきたのには驚いたものである。
よそよりかなり上の給料をもらっている社員から「土曜日も出て、給料を稼ぎたい」とい
う声があるということを聞いて、わたしは「親の心、子知らずだなあ。しかし人間の欲なん
てキリがないから、うちの社員の反応も当然かもしれない。考えてみれば、土曜日だけでな
く日曜休日に工場を遊ばせずに動かしたら、もっと稼げるなあ」と思ったのだから、わたし
が一番欲張りといえよう。「それでは、社員が土曜日に出て稼ぐ分を、会社が稼ぐように考
えたらいい」と発想を切り替えてみたのである。「土曜日に出ることはない。土曜日の分も
余分に給料をもらったらいいじゃないか」、つまり人間が働くことはない、機械に稼がせた
らいい、と。そこで掲げたテーマは、「六三時間無人」というものであった。
どういうことかというと、金曜日の午後五時から月曜日の午前八時までが六三時間、この
間を無人で工場を運営しようというものであった。もし機械が無人で稼働してくれれば、週
休二日なんて関係ない。休みの日も機械が稼いでくれるのだから、今よりもっと給料も上げ
られる。土曜日は心置きなく休めるじゃないか、ということで「六三時間無人」を合言葉に、
完全無人化工場をつくり上げていった。
現在、作業者は午後五時に帰宅してしまう。あとは機械が土曜日と日曜日、真夜中も明け
方も二四時間、黙々と作りつづけている。この態勢は、単にコストダウンだけの目的ではな
く、社員の生活向上という目的と、表裏一体のものであったからこそ、実現したのだと思っている。
定期昇給とベースアップ
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