ここで、第四章につづき、D精機をモデルにケーススタディを行っておきたい。
D精機のここ数年の付加価値低下傾向に歯止めをかけて、しかも無借金会社にし、高収益
会社に転じたい、というのが長期計画を立てるに当たってのD社長の大きなテーマであった。
そこでD社長は、今後五年先までの売上高をどう設定したのであろうか。
過去三期の売上高だけを見れば、直前三期の一五億九二〇〇万円が直前二期に
一七億八五〇〇万円に上がって約一二%の伸び率を示し、それが直前期には二〇億五五〇〇万
円に増えて約一五%の伸び率を示している。D精機は、規模は小さいが日本全国を相手に商
売をしている会社だ。日本のGDPの伸びは実質約二%。それにインフレ率約二・五%を掛
けた六%弱(roω×ro濃= ro〓∞)が日本経済の名目成長率だから、成長係数で見れば、
D精機は二五〇%ぐらいの会社ということになる。
だが、これまでと同じような売上の伸び率をわが社は維持していけるだろうか、D社長は
まずこう考えた。成長係数もこれまでは二五〇%ぐらいで推移してきたが、それをそのまま
維持していけるだろうか。それに日本の経済は、これからいよいよ低成長になり、GDPの
伸び率も六%が限度と見るのが常識となっている。したがって、今後の売上の伸び率を考え
る場合、成長係数を二〇〇%ぐらいに見ておいたほうが無難なのではなかろうか、とD社長
は考えたのである。
わたしは、D社長のこの判断は正解だと思う。先にも述べたように、経営計画では、売上
も利益もある程度低めに抑えておくというのが定石なのだ。
D精機の場合、日本のGDPの伸びが六%で、想定した会社の成長係数が二〇〇%だから、
今後の売上の伸び率は一二%ということになる。売上の伸び率一二%というのは、決して低
い数値ではない。D精機が非常にいい商品を扱っているということを考慮に入れなければ、
弾き出せない数値である。だが、それを考慮に入れれば、 一二%という伸び率は、 一応妥当
な数値と考えていいだろう。そこでD社長は、まず直前期の売上高である二〇億五五〇〇万
円に一一二%を掛けた二二億二〇〇万円を初年度の売上目標として据えてみた。さらにこの
初年度の売上高に一一二%を掛けて二年度の売上高を、同様にして五年度までの売上高を算
出していった。第1
0表の売上高の欄がそれである。


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