はじめて取り組まれる人には、これらの一連の実証作業が一見、いかにも難しそうに見え、
億劫で面倒な作業に思われるかもしれない。
だが、どうだろうか。たとえばわたしは、先にも述べたように、旧制の中学校しか出てい
ない。バランスシートのどちらが貸方で借方なのか、今もって分からない人間である。その
わたしにさえ簡単にできるのだ。社長は経理でも会計士でもないのだから、専門知識は必要
ない。必要なのは、経営の定石と、電卓を使った加減乗除の計算能力ぐらいだろう。だが、
それで十分なのである。今述べた七枚の資料にしても、それだけの能力さえあれば十分に実
証作業ができるように様式が整えられている。仕組みも簡単だ。
それでも、数字を見るとジンマシンが出るくらい計算が苦手だとおっしゃるなら、税金計
算や金利計算などは一部、経理の担当者に手伝ってもらってもいい。
だが、基本はあくまでも自分で実証することである。コンピュータも使うべきではない。
社長の野望をより具体化していくには、電卓を片手に数字を弾き出していくことだ。それは
決して時代遅れなのではない。さまざまな経営判断を加えることによって微妙に変化してい
く数字を、自分の目で確かめていく。そのことによって、経理や事務の人間には分からない
経営発想の偏りや陰路、あるいは新たなビジョンの発展が眼前に浮かんで見えてくる。次の
経営判断や対応策は、そこから生まれてくるのだ。
こうして生まれた新たな判断や対応策は、以前のそれよりも確実に次元の高いものとなっ
ている。それが大事なのである。
それでは次章から実証作業について具体的に取り上げていこう。
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