次は再生産配分である。これは二つの点を考慮して五%と記入した。
これまでのようにリース料を支払って店舗を増やしていく方法から、自分の土地に自前の
店舗を建設していく方法に切り替えていくなら、当然建物の減価償却費が増えていく、とい
うのが第一点。もう一点は経常利益と付加価値の関係からである。五年後に一〇億円の経常
利益を目指すということは、現在二億三〇〇〇万円の経常利益を三倍にするということだ。
経常利益が三倍になれば、付加価値もほぼ三倍になっているのが普通である。
付加価値が五倍になって経常利益が三倍であれば、経費を放漫に使った結果であり、逆に
付加価値が三倍になって経常利益が三倍であれば、経費を切り詰めた結果である。したがつ
て、付加価値も約二倍になっていくと仮定すれば、その中での五%という再生産配分は、製
造業ならともかく、流通業としては決して少ない数字ではない。増えていく減価償却費に対
応するには、このくらいの配分比率が必要だろうということから設定したのが、この五%と
いう数値である。
次に経費配分だが、過去三年、リース関連の費用がかかるといいながらも、三六。三%←
二九・三%←二六・八%と下がってきており、この傾向からみて三二・五%まで下げていく
ことが可能であろうと考え、 一応これを三二・五%とした。
先行投資配分はどうか。会社の将来を考えると非常に大事な配分先である。先にも述べた
ように、業種にかかわらず付加価値のできれば一〇%はほしい。Jスポーツの場合は、過去
の配分実績をみれば一一%程度でも可能なのだが、ほかの配分をにらみながら五年度の配分
目標をとりあえず一〇%としてみた。
次の金融配分も重要である。上場後の新規事業の準備として、今から用地を確保しておき
たいというのがJ社長の基本ビジョンだ。そのためには、会社経営を不健全にするような野
放図な借り入れ方はよくないが、あくまでも健全経営ということを条件に、銀行から相当の
借り入れが必要になる。その場合、 一般に金利負担の限度額は、付加価値に対して六%とい
うのが基準となろう。それが、常識である。
ところで、いかなる場合にもつぶれない健全な会社にしたいというのも、J社長の基本ビ
ジョンのひとつである。
とすれば、金融配分は二%以下でなければならない。だが一方では、土地購入のための資
金を借り入れる必要もある。その折衷案として考え出されたのが、四%という数値である。
流通業としては少し高い配分比率であるが、以上の諸条件を考えればまあ妥当なところかも
しれない。そしてその借入金は上場のファイナンスによって十分返済できる。
さて、これまで記入してきた九つの配分比率、すなわち蓄積配分一〇%、社会配分一三・
五%、資本配分二%、安全配分二%、社員配分二八・五%、再生産配分五%、経費配分三二
・五%、先行投資配分一〇%、金融配分四%を、全体の付加価値一〇〇%から差し引くと残
りが二・五%となる。これが経営者配分である。
経営者配分の実績をみると、これまで三・五%←二・九%←二・八%と推移してきており、
五年後の二・五%は、今後付加価値が増えていく中での二・五%ならば、決して悪い数値で
はない。むしろ妥当なところだろう。このように五年後の一〇の配分目標が、とりあえず設
定できたわけである。
この五年後の数値をもとに、計画の初年度から四年度まで平均的に推移するように配分比
率を割り振り、現在と目標年度を数字で結びつけたのが第8表である。これまでの説明でお
分かりのように、すべて社長の勘と夢で作った表である。スタートはこれで良いのだ。
以上、製造業と流通業の三社のケーススタディを通して、付加価値配分目標計画の実際の
作り方を説明した。これで本章の中心である「付加価値配分目標計画」が、読者により具体
的に、身近に感じていただけたであろうか。すなわち、
①社長としての夢を描く
②社長としての確固たる役割意識をもつ
③社長としての明確なビジョンを想定する
④過去。現在の実態をにらみながら、社長のビジョンを配分目標として数値化する
という一連の実務の流れを、いま一度確認していただきたい。
そして第3表(一四九頁)を用いて、自社の付加価値配分目標計画を、ぜひ社長自らの手
で作成していただきたい。肩に力を入れず、とにかく気楽に数字を入れてみることから長期
計画は始まる。
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