前章で述べたことだが、わたしが仕えた初代社長と先代社長から教えられたさまざまなこ
とを思い起こすと、そこに数々の経営の定石があることを、改めて感じ入るのである。
これからの日本における製造業はどうあるべきかという高い次元から事業決定をし、これ
からは脱下請けだ、輸出が必要だ、これからはエレクトロニクスの時代だといったように、
絶えず時代の流れを読みながら会社の将来を方向づけすることこそ社長の一番大事な役割で
あること、会社には、方向づけする人と、具体的に効率的にそれを実現する人の両方が必要
なこと、事業の永続繁栄は、悪くなっていくものを捨て、良くなっていくものを育てること
等など、珠玉のような経営の定石をたたき込まれたのであった。
なかでも「事業経営は長期で考えよ」という定石は、経営を簡単なものにする一番のポイ
ントとなったと思うのである。
実は本書で長期計画をつくっていく手順そのものも、極めて地道な定石の積み上げなので
ある。漠然とした社長の夢とか野望というようなものを整理して、経営ビジョンにまでまと
めたり、具体的な社長方針として決定するには、数字の約束ごとと経営の定石による検証が
必要なのだ。経営の定石にそって長期計画をつくると、見えない未来が数字でわかりやすく
見えてくる。経営の決断が下しやすくなり、明快な指示も与えられるようになる。要するに
経営が簡単になってくるのである。
長期計画の前提となる定石のいくつかはすでに述べたとおりだが、さらに二つの重要な定
石について、次にまとめて触れておきたい。
一つは、経営の本質は何かということであり、もう一つは、付加価値経営のすすめについ
てである。どちらも、わたしの長期経営ノウハウの前提をなす基本的な考え方なのである。
乙事業経営の本質は何か
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