計算の結果、総資本利益率が五%以下という数値が出たらどうだろうか。よく考えてみて
いただきたい。
不況などで極端に低くなる時期もあるが、金利は通常五〜六%である。これはいうまでも
なくその時代によって上下するわけで、時には一〇%にまで上がったり三〜四%に下がった
りと変動する。平均すれば金利はこれからは五%とみるのが妥当なところだろう。ここが大
事なところだ。総資本利益率が五%以下ということは、事業の利回りが金利以下ということ
なのである。たとえは悪いが、家庭の主婦でもヘソクリを銀行にもって行けば金利は稼げる。
まして事業というものは、会社という看板を背負い、土地や工場を使い、大勢の人を使い、
資本家や多くの人の協力を得て行うのである。その結果が総資本利益率五%以下だとしたら、
その経営者の能力は家庭の主婦以下といって過言ではなく、経営者として恥ずかしいことで
ある。事業を展開する意味がどこにあるといえるだろうか。
仮に、バランスシートの右側の項目をトータルして三〇億円あったとしよう。そのお金を
持って銀行に駆け込み、大口定期にして預け入れれば、その日から黙っていても相当の金利
がつく。金利五%とすれば年間一億五〇〇〇万円の利息を間違いなく貰える。ということは、
総資本利益率が金利以下すなわち税引前利益が一億五〇〇〇万円以下ならば、事業をやめ、
何もしないで寝ていても、その事業の稼ぐ利益額を銀行が、ありがとうございますと礼を言っ
て払ってくれるのだ。お金を銀行に預けておいたほうがましだということになろう。
総資本利益率が銀行金利以上でなければ、事業経営の意味がないのだ。企業として大威張
りで存在するのは恥ずかしいと、考えなければならない。これはどの業種・業界にかかわり
なく、およそ企業と名のつくすべての企業に共通した経営の原点である。
経営に逃げ道はない。
不況だ、好況だ、儲かる、儲からないと抽象的なことを言っている暇に、まず自分の会社
のバランスシートから、総資本利益率を弾き出してみることだ。もしもそれが銀行金利に満
たなければ、社長業をやめて、銀行に資金を預けた方がいい。簡単といえばこれが最も簡単
な経営法ではないだろうか。
総資本利益率五%というのは、企業としての存在価値と、社長の経営力が問われるひとつ
の大事なチェックポイントなのである。
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