運営基本計画に記された付加価値を達成するためには、陳腐化する設備を絶
えず更新していく始妥がある。しかしながら設備資金は、一時に高額の投資と
なり、しかも口収には長期を要する。
そこで社長として長期設備計画を立てるには、特別な場合を除き、「設備投
資額は原則として、その期の減価償却費と同額」という定ろを踏まえて、設備
の生産性が上がるように大枠を押さえて計画していくことが大事だ。
そのうえで、過去の固定資産の償却率が一定する傾向を根拠に、計画上の償
却費が当初の方針で賄えるかどうかを実証していくことが、社長としての視点
であり、実務の要点である。
設備投資の定石と設備効率のチェック法
社長としての減価償却のとらえ方
固定資産投資と減価償却は、たとえば製造業でいうと、 一般には付加価値配分の一〇%前
後の比重を占めているのが普通である。項目としては、人件費、変動費に次いで比率が大き
い。しかも、設備資金というのは、 一部ずつ徐々に回収されるものであり、その全額を回収
するには相当の長期間を要するのが通例である。それだけに、社長としても慎重が期される
重要項目なのだ。
いうまでもないことだが、設備というものは年を経るごとに陳腐化していく。したがって、
今後、より一層生産性を上げていくためには、時代の変化に伴い、仮に製造業なら最新の効
率的な設備・機械に切り替えていかなければならないし、流通サービス業なら最適な店舗や
内装設備を更新していかなければならないだろう。だが、それにはかなりの資金が要るし、
そのうえ、その資金には限度というものがある。
そこで問題となるのが、減価償却のとらえ方なのだが、ここでも、会計の専門家や経理の
見方とは違った、社長としての視点がどうしても必要になるのだ。
たとえば、建物の減価償却は、鉄筋なら六五年償却で年間償却率三・五%、機械の場合は
一二年償却で年間償却率一七・五%といったように、税法で定める減価償却率にやたら詳し
い社長は結構多い。だが、そういったことは、償却年数表を見れば簡単に分かることだ。
ところが、自分の会社で平均して償却年数何年の設備投資をしているかを聞かれて、答え
られる経営者はほとんど皆無に近い。実は、これこそが、設備投資をするに当たり、経営者
にとって最も重要な指数となる数字なのである。そういう大事な部分を社長は把握していな
ければならない。
また、五年計画を立てるとなれば、五年先の減価償却費を出さなければならないわけだが、
五年後に建てる建物や入れる機械が具体的に決まらない限りそれが出せないというのでは、
社長は務まらない。第一、五年後にどんな機械を購入するか、どんな設備にするかなどとい
うことは、いかに社長といえども分かるはずはないのである。したがって、そんなことは知
らなくても、五年後の設備投資の枠だけは、社長として決めておかなければならない。そこ
が肝心のところである。
要するに社長は、償却年数表を見れば分かるような、個別の償却率などについて、いちい
ち覚えておく必要などないということだ。何でもいたずらに詳しければいいというものでも
ないだろう。
もちろん、だからといって、頓着なく経理や会計士の先生にお任せというのでも困る。後
先を考えずに乱暴な投資をやってのけ、あとで経理担当者を嘆かせるような社長に、こうい
うタイプが多い。これも非常に危険だ。大事なことは、
①今後五年間の設備投資の枠はいくらなのか
②償却年数は平均どのくらいなのか(平均償却率は何%か)
ということを把握しておくことである。そういう大きなつかみ方が、社長として設備投資計
画を立てる際には絶対的に必要なことなのだ。
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