「未来は過去の延長線上にある」という考え方で、自社の過去の数字をみると、
将来の姿が予測できる。もしそれが社長の野望とはほど遠いものであれば、そ
のギャップを埋めていかなければならない。
この現実と理想のギャップをまず知ることこそ長期経営計画の出発点でなけ
ればならないのだ。
自社の実態を具体的に知る手掛かりは、過去のバランスシートに集約されて
いる。すなわち儲かる体質か、いざというときに万金の体質か、バランスシー
トを経理的にではなく、あくまで社長として読みこなす羹要がある。自社の現
実を正確に知れば知るほど、長期計画の具体的な課題が、社長の日に明確に見
えてくるようになるのだ。
社長としてわが社の体質を把握する
過去の数字が語るもの
「未来は過去の延長上にある」。これは長期計画作成の出発点となる重要な考え方である。
自社の将来を計画するときに、これまでの企業体質を切り離して考えることはできない。
将来の経営は、過去の体質の延長上にプラス・マイナスのアルファが加味された姿に必ず
なっていくのだ。もし社長に明確な体質改善の意識と対応がなければ、将来その範囲を超え
るような変化は、到底、期待できないのである。
これまで低迷しつづけてきたような会社が、明日からでもすぐ高収益を上げられる会社に
変身したいと願っても、無理なものは無理なのである。実績を上げつづける会社にしたかっ
たら、過去の数字を検証して改善すべきポイントを発見し、時間をかけてそれを修正してい
くしかない。過去の数字を分析することは、会社の体質を知るためにこそ必要なのである。
だが、現実には「過ぎ去ったことは考えても仕方がない」として、過去にはあまり目を向
けたがらない経営者が多い。視線は、むしろ目先の損得にばかり向けられる。
おそらく、そのひとつのあらわれだろう。 一般に損益計算書に関心のある経営者は多いが、
バランスシート(貸借対照表)に関心を示す経営者はそう多くない。 一〇〇人の経営者に会っ
て、損益計算書とバランスシートのどちらが大事か、どちらに関心をもっているかと聞いて
みれば、おそらく九〇人の経営者が損益計算書と答えるのではないだろうか。要するに、た
いていの経営者は、「いくら儲かったか」「経費はどれだけかかったか」といった目先の損得
が気になり、すぐ損益計算書に目がいくものなのである。人情としてそれも理解できないわ
けではないが、しかしよく考えてみていただきたい。
損益計算書というのは、わずか一年間の経営の結果をあらわしたものにすぎない。つまり、
この一年間でどれだけ儲けたか、あるいは損したかを示しているのが損益計算書である。し
かし、たとえば世の中の景気が悪くなると、原則的に利益は減っていくものだ。景気が回復
すれば、それはすぐもとへ戻る。このような簡単に変わりやすい数値が損益計算書の数値な
のである。
また、時と場合によっては損が出てもいいケースすらある。その損が将来のために意義の
あるものなら、意図的に損を出すこともありえよう。要するに、経営にとっては目先の損得
が問題なのではない。わずか一年間の損益など、決して無視していいとはいわないが、社長
はそんなことでいちいち一喜一憂する必要はないのだ。
これに対して、バランスシートというのは、会社創業以来の累積の結果をあらわしたもの
である。いってみれば、創業以来一〇年も二〇年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が
現在有している体力のすべてを示しているのがバランスシートなのである。そこには、事業
の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたかたちであらわされ
ている。要するに、会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、
バランスシートには示されているのだといっていい。ここが大事なところだ。長年にわたっ
てできあがった体質は、一朝一夕には変わらない。また、体力も急にはつかないものである。
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