戦術の二つ目は、組織力である。会社は、人の集合体から成り立っている。
人の力を組織して、業績を上げるために良い人材をいかに効率よく用いていくかということである。
組織力を高めるには、優秀な部下を持つのが第一条件である。そのためには、社長は、部下が働きやすい組織環境や状況を意図的に作っていかなければならない。
部下の働きと給料とは、非常に密接な関係にあるものだ。また、地位とも密接な関係にある。さらに、会社の将来性や社長の考えといったものにも大きく左右される。この四つのことが組織力を考えていくうえで非常に大切だ。
給料は、多いに越したことはない。ただし、無制限に払える訳もない。そこで、業績がよくなったら、それに応じて多く支払うというシステムをきちっと作っておく必要がある。これをインセンティブ(刺激策)という。
たとえば、業績がよくなったら、二か月分のボーナスのところを四か月分、容易に払えるような態勢にしておく。 一生懸命に働いて、業績がよくなったのに、ボーナスにも給料にも反映されないというのが一番よくない。
ボーナスをケチって利益を多く出したところで、どのみち、総額の五七%は税金に持っていかれるのであれば、経費で落ちるボーナスを思い切って多くした方が賢明である。
仮に、 一億円の経常利益を出したら、税金は五千七百万円である。したがって、残額である純利益は四千三百万円になる。この会社が社員に特別ボーナスとして三千万円支払ったら、経常利益を八千万円申告することになる。税金は、八千万円の五七%、すなわち四千五百六十万円である。
そうなると、残額である純利益は三千四百四十万円である。純利益の差はわずか八百六十万円しかない。つまり、ボーナスとして支払った二千万円から差し引いた一千三百四十万円は、政府が持ってくれたことになる。経営者は、そのくらいの負担は、社員の努力に報いるためにも喜んで受容すべきだ。
何としても、社員が努力のし甲斐があるシステムを採って欲しい。そして、実力を正当に評価すべきだ。
第二のインセンティブに、地位がある。よく働いて業績を伸ばした者には給料もボーナスも余計に与えるが、地位だけは、そう簡単に与えてはいけない。地位と給料は全く異なる。
野球の首位打者だった者が、えてして名監督になれないのと同じである。
人を上手に用いたことで有名な徳川家康や西郷隆盛が、同じようなことを言っている。「功労あった者には禄を与えるが、地位は見識がなければ与えてはならない」というのが、その教訓である。
地位は、人を使う上での優しさとか、柔軟性とか、リーダーシップとか、先見性や計画性とかいわれるような人格や見識がなければ、与えてはならない。
つまり、給料は業績に応じて与え、地位はその人物を見極めて、見識があってはじめて与えるようにする。こういうことは、今も昔も変えてはならない。
第二のインセンティブに、表彰制度がある。これも、野球のMVP表彰と同じで、月間で表彰するとともに年間でも表彰する。たとえば、月々、新規顧客開拓のナンバーワンからナンバースリーを表彰し、年間合計で最多の者に最優秀新規顧客開拓賞をあたえるといった具合である。
人間は、こういう競争に対する生存の本能を捨て去ることはないからだ。
組織の力を結集し、最大に発揮させるには、もう一つ、社長の心の姿勢を忘れてはならな長たる者の理想は、父親の強さと母親の優しさを兼備することだ。すなわち、大慈悲を有する人物であることだ。父親の愛を慈愛という。父親の威厳ある背中を見て子供が育つように、ベストを尽くしている社長の必死な後ろ姿を見て社員は育つ。「子供は、親を演技する名優だ」という言葉があるほど父親像は大事である。また、髪を振り乱して一途に守り育てようとする母親の愛を悲愛というが、社員の成功を共に狂喜し、悲しいときは共に涙を流す母親像も大事である。
社長は、社員の父親であり、母親である。自分の一生懸命な背中を見せ、愛情をふり注いで欲しい。社員に対する精神の有り様は、親になることが基本である。子を憎む親はないからだ。
組織力を高める「組織の原型」について後で詳しく書くが、取り敢えずここでは、次のことを社長は知っておいて欲しい。
組織の原型を考えた場合、組織には、①社長の代行をする役員、②誰よりも上手にものをつくる、あるいは仕入れる部門長、③それを最も多く売る部門長、④売って得た粗利益を効率よく分配する部門長、この四人が絶対に優秀でなければならない。
そして、この四人に際立った人物を充て、生涯を共にし、社員を親の愛情をもって特に面倒をみてやることが、磐石の組織を築くうえでの基本だ。どんな大企業でも、本当に動かしているのは、優秀なこの四人である。
給料とか、地位とか、システムとかいった組織のハード面以外に、ソフト面での確固たる心構えが社長にとっては不可欠である。そうでないと、永続繁栄を築く良い社長にはなれない。
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