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三、未来型の組織と部下への着手

絶えぎる能力開発

事業は成長拡大を推進していかなければ、潰れてしまう。成長拡大は一つのバランスである。

しかし、なぜ成長拡大できなくなるかということも深く考えてみる必要がある。成長拡大できなくなるのは、既に市場がなくなった時だ。残っている市場がまだ十三分にあるなら、商品とか、人材とかに資本を投下して、市場に積極的に打って出ていけば良い。

人がいなければゞ外部からでも連れてくる。商品が悪ければ新商品を開発し、金がなければ銀行から引き出してくる。全くあたりまえのことだが、そういうことに正しく狙いを定めて、成長拡大の手を打って行く。

そして、事業規模が次第に大きくなり、社長個人の経営能力や社員の管理能力を超えた場合には、会社を永続させるために組織のイノベーションを強力に進めていくことが重要となる。

年商十億円ぐらいの規模の会社は、大体、社長一人の手腕でうまくいく。三十億円ぐらいになったら、社長を中心にして、周りに優秀な幹部がいないとだめだ。

そして、その幹部と一緒に事業経営をやっていく。五十億から百億円ぐらいの間になると、社長と役員と部長以上が会議を開いて物事を決めることが五割以上になる。

それが三百億とか五百億円になると、会議で決めていくウエートがさらに高くなる。 一千億円以上になると、社長は事業に関する政治的な動きをし、実務処理は部下がしていくようになる。

これからどういう商売がいいかとか、どういう分野が儲かるかということを、黙って政治的に研究したりする。会社の規模によって手の打ち方が多少違うが、そういう組織のイノベーションを常に考えていかなければならない。

会社組織では、イノベーションともう一つ、絶えず若返りをしていくことが重要だ。まず、組織の中の人間に関して言えば、気持ちを若く持ち、絶えぎる自己の能力開発につとめることが大事である。特に年配の人には非常に大切だ。つまり、自分の能力を常に開発していく。

年配の人は、よく「老害」といわれるが、なぜ老害といわれるのか……その一つには、物事を多面的で柔軟に見たり、聞いたりすることができなくなるからである。そうならないためには、いつも頭の中の片方を空けておく。空の境地になれば、だれの言うことでも聞ける。

そして、何を見ても頭の中に入ってくる。

固定観念で頭を一杯にし、がんじがらめになっている人は、人の言うことが聞けないし、自己主張が激しくなる。これが老害である。頭の隅を空の境地にしておくことが大切だ。空の境地ということを、まず知っておく。

もう一つ勧めたいのは、「青春」ということの本質を知っておくことだ。サムエル・ウルマンという幻の詩人が、「青春とは、人生のある期間を言うのではない。創造力や情熱、勇猛心や冒険心に液る心の様相を青春という。年を重ねただけでは人は老いない。理想を失う時にはじめて老いる」と言っている。

見事に青春の本質をついている。単に年齢が若いことを青春とは言わないのだ。二十歳の老人もいるし、八十歳の青年もたくさんいる。若々しいとは、どういうことか……物事に感動する、心にひらめきを持つ、ドキドキしたりわくわくしたりする、こういうものを失わないことである。

肉体と心は一如である。心の思う通りになって、すべてが肉体にあらわれる。そして、心身の若さを保つためには、若い人たちと積極的につき合って、さまざまな物事に感動したり、心の未熟さを自ら進んでいっぱい持つような工夫を常にすることが、非常に大切だ。

次に、組織自体の若返りについて言えば、部長や課長は、五歳刻みで人材を養成していく。

たとえば、課長が四十歳であれば、二十五歳の係長に追いかけられるというパターンをつくる。課長は、四十五歳の部長を追いかけることになる。組織は、そのように下から追いかけられ、また、上を追いかける形が一番弾力的で、ダイナミックに仕事が流れる。社内にライバルも何にもいない、平和そのものだという環境は一番よくない。だから、五歳刻みの組織に、まず着手してもらいたい。それから、組織の原型を知っておくべきだ。

組織の原型とは、先に簡単に触れたが、社長がいて、その下に社長の代行たる役員がいて、部門長がいて、さらにその下に一般社員がいて……というそれぞれの分野からなりたっている。

事業活動では、まず、「物をつくる、あるいは仕入れる」ことが起こる。次に「物を売る」行為が出てくる。百円で物をつくって、あるいは仕入れて、百五十円で売る。売って、粗利の五十円を「分配する」。分配するとは、利益や、人件費や、利息や、税金に分配することだ。

そうすると、組織にとって大切なことは、社長である自分以外に、「物をつくる、あるいは仕入れる」部門と、「物を売る」部門と、「分配する」部門の二つに、強烈に優秀な人間を、できるだけ若いうちに採用して、腹心として仕事を教えていくことである。腹心の部下を育成する最大のポイントは、 一生涯、その人間と行をともにするわけであるから、分配や処遇からプライベートな世話にいたるまで、十三分に面倒をみてあげることである。

私に一番長くついてきている部下は、私の大学の二年後輩で、大学時代から今なお続いている。歳は私とほとんどかわらない。しかし、私は、私の子供、分身だと思っている。だから、もしも、お客様を取るか、彼を取るかといったなら、私は彼を取る。こういう選択をすると、互いに一生涯の付き合いになる。

技術的に育てることは、いくらでも簡単にできる。しかし、行をともにし、仲よくやり、私に一生涯ついてきて、「ああ、おれの人生、よかったな、牟田さん」と言われるような幹部を育てるには、精神的な絆を結ぶことが第一の条件である。

腹心の部下を育てるうえで、技術的なことにも一言触れておけば、細かいことを教え過ぎない、自分で考えるところを残しておくということが最大のポイントである。

考えるところを残すとは、どういうことか。処理する力がある人間は、考えることをしない。与えられた通りにしか処理しない。これからの時代に大切な幹部は、処理する人間よりも、考える力のある人間だ。だから、考えさせることが非常に重要である。

私には、十歳上の部下がいる。この人は、かつて全く別の会社の社長をしていた。どうしても合理化協会に入りたいと言って、私のところに来た。その時、既に六十歳近かった。それでも、私は年上だと思ったことはない。私の子供だと思っている。私は、「子供の不幸を願うわけがない。子供の幸福をひたすら願っている」と、あまり頻繁ではないが、時々口にするようにしている。十歳年上だと学ぶことも多いし、この人の場合、社会経験も豊富で、私自身尊敬もしている。良きアドバイザーである。

私のところには、もう一人、私の大学の後輩がいる。たまたま頼まれて、私が大学に講演しに行ったのが、そもそもの縁である。大学院とゼミの学生が私の話を聴いていたが、その時に彼は私のところに入りたいと思ったという。二年間ぐらい、普通の会社で修業をし、その後、私のところに入って、以来十数年、私についてきている。私のちょうど二十歳下だ。

だから、私は彼に期待をしている。後述するように、後継者としては二十歳下が理想的である。だから、彼は非常に有望な地位にいる。もちろん、彼にはライバルも多い。

しかし、そのように心を込めているということが、腹心を育てる第一条件である。あとの技術的なことは、確かに重要なことではあるが、どちらかと言えば末節である。

自分の息子にも、これと同じことを教えて、組織の若返りを常に図っていけるようにしておくべきだ。

なぜ、若返りが必要か。特に、物をつくったり仕入れたりする人間と、物を売る人間、それに分配する人間の二人に、万が一、老害が出るようなことがあれば、それこそ会社の命取りとなりかねないからである。

商品が年齢と同じように古くなった、お得意様も年齢と同じように古くなったという企業が多数ある。だから、若い人たちに、早日早目に代行させたり、新しいジャンルに挑戦してもらうことが大事だ。

ただし、歳とった人たちを、すぐに首にしたりしてはいけない。顧間とか、あるいは参与とか相談役とか、相応しい役職をたくさんつくっておく。

そして、役員の場合は、六十五歳を超えたら、いままでの給料の三割カット、次の年には三割カット、次の年には四割カット…というようにして雇用の延長をしていく。

だんだん歳をとっていっても、年寄りだけが知っていて、若い人が知らないことがたくさんあるから、そういうやり方を工夫しなければならない。

部長クラスでは、六十歳あたりから顧問などという形で、給料を一歳ごとに三割とか三割五分引いていくようにして、六十五歳まで雇用する。

そして、禄は減っていくが、地位は参与とか顧間とか相談役という形で残していく。そういう人たちのために、 一部屋を設けても構わない。

組織として、そういうことを上手に考えて、若返りを図っていく。絶えぎる能力の開発をしていく。 一人ひとりも大切だが、組織全体の若返りという大きな観点から見ていくことはもっと大切である。

大企業のサラリーマン社長、雇われ社長は、二期四年とかの短期サイクルで交代するから、組織というものを、オーナー社長のように二十年というロング・タームでは考えない。

一般に、部長とか課長とかと同じように、五年のタームで自分の任務を刻んでいるから、サラリーマン社長は平気で交代できる。しかし、上場していない会社の創業社長の場合は、後継社長について、自分よりも二十歳下でも十五歳下でもいいから、長いスパンで考えていたほうがいい。

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