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父の部下と息子の部下

まず、息子にバトンタッチをした時に大切なことは、息子が或る人間に辞令を渡したなら、その人間は息子の部下になるということだ。

かつて、父親が、「君、常務をやってくれ」といって辞令を出した部下は、だれでも父親の部下だという自覚が非常に強い。そこで、息子は、それらの部下の中に入っていけなくなる。だから、息子を社長にした途端に、辞令はすべて最初からやり直す。そして、常務を常務のままにしておいてもかまわないが、辞令だけは絶対に息子が出し直す。こういう、ちょっとした配慮が極めて重要である。

それでも、なかなかうまくいかない場合がある。そういう場合は、息子に仲間をつくらせる。これも、大切なことだ。そして、仲間に重要なポストを与えて、任務を遂行してもらうように徐々にしていく。そうすると、組織が非常にスムーズに動いていく。

私の知り合いで、社長である父親に突然死なれた息子がいる。いままで商社にいた息子が会社に戻ってきて、社長の跡を継いだ。息子は二十六歳で、非常に若かった。小さいときから会社に出入りしていたので、みんな、その息子を「けんちゃん、けんちゃん」と言っていた。

父親の部下で、偉そうな顔をしたのがたくさんいたわけだ。そして、ある宴会のときに、事もあろうに、そばにいた役員が「けんちゃん」と、社長を呼んだ。それはたびたび起こっていたことだが、社内外の人たちが居並ぶ前で、「けんちゃん」と呼ぶほうがおかしい。この社長は、立派だった。金輪際そういうことは許さなかった。「人前で、仮にも社長をけんちゃんと呼ぶとは何事だ」と怒った。以後、全員がそれに従い、「社長」と呼ぶようになった。それで、不動の地位を得た。

こういう秩序を乱すようなことは、いつまでも続けさせてはいけない。親がいるならば、親がはっきり言うべきだ。あるいは、親から息子にきちっと言わせる。そういう物事のけじめが、すごく大切だということを知っておかなければならない。

私の義理の弟が大企業に勤めていて、そこに自分とほとんど同じ年齢の社長の息子がいた。

二人とも仲がよく、名前を呼び合っていた。今度、その息子が社長になると聞いた途端に、私は義理の弟に、「そこに座ってくれ。これからは、社長を息子さんの名前で呼んじゃいけない。社長と呼びなさい」と厳しく言った。

理屈を言おうとしたが、「だめだ」と、容塚を一切許さず、何が何でも「社長」と呼ばせたものだ。そうしたところ、義理の弟は、若くしてたちまち取締役になり、いまでは筆頭常務、上から二番目の地位についている。

けじめとは、そういうものである。だれよりも早く「社長」と呼ぶ者を、登用しなくてはならない。けじめ正しく、かつ、力がある人間であればなおさら良い。そういう者を養成していくことを、是非ともやっていくべきだ。

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