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四、長期の資金・資本戦略

必要資金を安定確保する

事業を十年、二十年、五十年とロング・タームで考えた場合、資金計画は不可欠である。

必要資金は、経常利益という形で、まず自らが産み出す。次に、銀行から借金をする。昨今は、銀行の経営自体が非常に悪化し、海外の格付け会社の評価に神経をとがらせているような有り様である。いきおい、銀行も融資先を厳しくランク付けし、貸し渋りどころか

融資打ち切りや引き上げを、なりふりかまわずやるようになった。このような時代にあって、長期的な資金繰りと調達の安定確保を考えた場合、特に次の対応が肝要である。

①借金のメドを知っておくこと

借金は、年商の三分の一を越えては絶対にいけない。このことを子々孫々まで伝えていく。

会計学や税制に照らし合わせても、年商の三分の一以上の借金を持つと、資金繰りがつかなくなることは明々白々である。現行の税制でいくと、借金の返済額の約二倍の経常利益が必要である。二億円借金して、十年で毎年二千万円返していくとすると、少なくても三千万円の三倍=九千万円の経常利益を、その間、出し続けなければならない。同じく、三年返済なら、二億円になる。こうなると、銀行のために商売しているようなものだ。ナンセンスである。

借金のメドを明確にした上で、厳密な返済計画を立てておくべきだ。これは、決して誇張でも脅しでもない。

と言うのも、「借金を返せないと、銀行に迷惑をかけるから、よく注意しなさい。借金は年商の三分の一以内だ」と、日頃から口が酸っぱくなるほど言っているのに、平気で五〇%した、 一〇〇%したという社長が後を絶たないからである。本当に嘆かわしい。

また、「手形は、できるだけ切るな。会社は手形で倒れる」と、繰り返し念を押しても、苦し紛れに不相応な額の手形を切ってしまう。

バブル崩壊後に、こんなことがあった。ある社長が資金繰りがつかずに、私のところに泣きついて来た。私とて、打ち出の小槌ではない。

「今回だけは、メインバンクに迷惑をかけなさい。そんなことが三度と起こらないように、私が銀行に保証してあげてもいい」と、アドバイスした。ところが、その社長は、「そんなことをしたら、銀行の方から信用不安が漏れる」と言って、私のアドバイスを頑として聞き入れなかった。

この社長は、仕入れ先に支払いをしないで、銀行に返済をした。つまり、銀行に迷惑をかけない代わりに、八十軒の仕入れ先に迷惑をかけることにした。すると、いずれの仕入れ先も、「現金じゃないと、おたくには納めない」と言ってきた。ビックリした社長は、糊塗策を弄して、八十軒の仕入れ先に金額の小さな小さな手形を切っていった。

これが裏目に出て、 一遍に大きな信用不安を招いてしまった。全くお話にならない。こんなことは、その社長に、百万遍、教えてきたことだが、どうやら馬の耳に念仏だったようだ。そんな社長が、ごまんといる。

怒り心頭、「何回言ったら分かるんだ」と怒鳴ったが、それでも見捨てる訳にもいかず、あれこれ指示したが、正直言って、私もほとほと疲労困悠の体だった。そんなことが、最近とみに多い。

②経常利益を出し続けること

前述したように、経常利益で正常先かどうかランク付けされる。出せない会社は、返済能力がないと見なされ、金融機関は融資をしない。

③担保力を付けること

差し出す担保がなければ、資金は借りられない。当たり前だ。日本では主に不動産であるが、何かの償却資産でも良いから、利益が出たら少しずつ蓄えて行くようにする。

デフレ基調の場合は、資産が下落するので現金の方が良いとも言えるが、より長期的に見ると、安くなった時点で不動産や利用価値のある物件を買い取っておく方が得策である。

④増資をすること

増資をする場合は、上場会社になって資本市場から資金を調達していく。第二者に割り当てる時は、必ず、持ち株の比率を忘れてはいけない(詳しくは、第四章の「上場への手の打ち方」の項を参照)。

⑤社債を発行すること

中小企業の場合は、会計士とよく相談し、発行社債の上限などを決めて欲しい。たとえば、額面百万円で五十人に引き受けてもらい、五千万円以下で社債発行する場合の償還する時期などを決めるようにする。

増資でも、社債の発行でもそうだが、日頃の友人が非常に頼りになるものだ。普段から、できるだけ多くの友人を持つように心掛けるべきである。

⑥資産を売却すること

小資産は問題ないが、大資産はいよいよの場合の手当に限る。特に、個人の資産の場合は問題が多く、慎重を要する。

会社の規模がだんだん大きくなるにしたがって、中には、投下した資産を売却して資本に充てるというように、資産管理によって調達を図るケースも出てくる。こうなると、資本戦略の全体の枠組み自体が変わってしまう。

だから、そういうことにも配慮して、長期の考え方をきちっと持っておくことが大切である。そのための基本は、経常利益と銀行だということをよくよく心して欲しい。

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