たとえば、自分が長兄で、次男、三男が同じ会社にいた場合は、ある年限がきたら、一つの部門を切り離したり、別の会社をつくったりして、譲ってあげる。そういう同族の計画を明らかにしておくことが肝腎だ。
別会社をつくって譲る場合には、異業種に限る。しかも、地域が遠く離れている方がいい。
互いに全然影響を受けないような業種で、しかも多店舗化しないという取り決めがあるならば、地域を違えるだけでも構わない。ただし、相当に地域を違える。そういうことを計画にはっきり書いておく。自分がリーダーであれば、兄弟相争うことがないように、事細かに配慮しておく。
同業の場合、地域の問題は、兄弟ばかりではなく、 一種の師弟関係にも起こることがある。
たとえば、ある会社で業績が大きく伸び、これまでの自社のエリアでは狭すぎて近隣に進出しようとしたが、近隣は仕事上で恩を受けた人のエリアだったというケースがある。その社長は、エリアを拡大しなければと思いつつ、義理と人情の狭間に揺れていた。近隣の同業者と親交を結んではいけないと最初から分かっていながら、今更ながら後悔しているという図である。
こういう場合は、地域を一つ飛ばすようにする。その人の影響の及ばないところへ早く出ていく。そして、まずそこでエリアを拡大する。次に、その人のエリアを囲んでいく。そうすると、いじめてはいないという姿が相手にもだんだん分かってくる。
一義理と人情の狭間に挟まりつつも、その相手方より売上が三倍、三倍、五倍と大きくなっていくことが大切だ。十年、二十年たち、こちらが大きくなっていくうちに、その人の代が替わる。息子とか孫の代になり、だれも知らないようになって、義理も人情もなくなった時には、本丸を攻めても構わない。時間がかかるが、相手が生きている間は決して手をださない。それが、事業のマナーというものだ。
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