煩悩とは、普通、欲のことを言う。性欲もあれば、金銭欲も、名誉欲もある。私たちは欲のかたまりみたいなものだ。
欲を捨てることなどできない。人一倍、欲深の社長から欲を取り去ってしまったら、 一体、何が残るのだろうか。腑抜けの体から抹香臭が漂ってきそうだ。欲を捨てては絶対にいけない。持ち続けるべきだ。
ただし、燃やせば燃やすほど楽しくなる欲と、真反対に辛くなる欲の二つがある。楽しくなる欲とは、世の進歩と向上に役立とうとする欲であり、辛くなる欲とは、他の犠牲のうえに成り立つ我欲、我執である。
その我欲を、ある程度、理性で抑制しつつ、楽しい欲を大いにかき立てること、つまり、事業経営に邁進しつつ、世の進歩と向上を実現していくことが社長たる者のテーマとなる。欲と同時に理性がなければならない。
女がもとで、就任早々でやめた総理大臣がいた。これは、敢えて言うが、断じて人の悪口ではない。女のやきもちをおさめられないような男は、やはり欲深で、上手に金を女に使わないから、女の恨みを買うことになる。そんな男は、女と遊ぶ資格がない。
男と女がいて、男が女と、あるいは女が男と遊ぶことがだめだと、無粋なことを言っているのではない。私は、遊び人をもって自認しているくらいだ。それはとにかく、女にやきもちばかりやかせている亭主は、ろくなものではない。男と女の機微を知らないから、そういうことになる。
私の若い友人で女にもてる男がいる。ある時、その男の浮気がばれた。ばれて、奥さんが家を出て、なだめすかしたが、出たり入ったりするばかりで、どうにもならなくなった時に、私が口を挟んだ。
「お前な、女房にばかりやきもちやかせてるから、だめなんだよ。女房に、お前がやきもちをやけ。今から具体的に教えてやる」と言って、知恵を授けてやった。
その男も奥さんも、二人が一台ずつ車を持っていると知っていたので、「『きょうは酔っ払ったから』と、車を会社に置いて帰って、次の朝、奥さんに駅まで送ってもらうようにしろ。送ってもらう時に、タバコのライターをポケットにしのばせて、それを、奥さんの車の助手席の下のところに置いておけ。お前は、タバコを吸わないから、ライターはどこからか都合しろ。そして、二、三日してからもう一度、酔っ払って帰って、次の朝、また駅まで送っていってもらえ」……事の顛末は、以下の通りである。
男は、車に乗るとすぐに、助手席の下に自分が入れておいたライターを取り出し、「なんだ、このライターは」と言った。
奥さんが、「ライターがそんなところにあるの?」「ライターがある……? ライターって、これは男物だぞ。どこでこんな物、手に入れたんだ。男を乗せたのか? お前、ちょっとおかしいんじゃないか。」と怒って、会社へ行った。午前十一時ぐらいに家に電話すると、「もしもし」と奥さんが出た。そして、男は、「ああ、お前、いたか」というだけで、電話をすぐに切ってしまう。午後の二時ぐらいに、また電話する。奥さんが出る。「お前、いたのか」といって、また電話を切る。
「それを二日に一回ぐらい繰り返して、 一か月もすれば、絶対に夫婦仲が直っていく」と言っておいたのだが、実際には一週間ぐらいで仲良くなってしまった。
男と女の間とは、そんなものだ。相手にだけやきもちをやかせるから、だめなのだ。バランスがとれていない人間の証拠である。
一事が万事、人間の機微がわからない者が経営していること自体がおかしい。だから、自分も自分の心に正直に聞いてみればいい。
遊ぶには、遊ぶだけの達人になっておかないとだめだ。ふところが浅いから、責められてばかりいる。遊ぶ資格がない人間が遊んだりするから、不始末ばかり起こす。煩悩は、理性で抑えていく。遊んだら、必ず理性できちんと始末をつけておく。特に、妻には大いに手厚く色々なことをやってあげることが大切だ。
とにかく、煩悩は理性でほどほどに抑え、できるだけ地位を追われることがないように忠告しておきたい。
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