さて、最後に経営の前提とすべき、最も大きな問題は、日本が世界一財政不健全な国だということだ。
現在の日本の財政状況について、簡単に述べてみる。財務省が発表した2010年3月末の国債や借入金を合わせた「日本国の借金」は882兆円(前年度比36兆円増、過去最大)であり、これを国民一人あたりに換算すると693万円となる。
これは現在、財政危機が懸念されているギリシャの300万円の2倍以上である。ちなみに、2011年3月末予想は973兆円で、最悪の場合、翌2012年には、日本国民全体の正味金融資産の1000兆円を超えてしまう可能性がある。
さらに、882兆円の国の借金に地方債などを加えた公的債務残高の対GDP比率は、2010年3月末で218%だ。これは、アメリカの85%、イギリスの69%をはるかに超えており、ギリシャの110%をも2倍以上、上回っている。
そして、 一方の税収は40兆円しかない。税収40兆円に対して借金が1000兆円、つまり収入の25年分の借金があるということだ。要するに、世界で最も危険な財政状態と言わぎるを得ないのだが、こうなると日本は、高度成長期の頃のように景気対策という名日でやたらと公共投資を行うことができる時代ではなくなったということである。
すなわち、もう政府には、景気を後押しするような力はない。 一つの例を挙げると、日本の税収40兆円に対する国債などの利息の支払いは20兆円だ。つまり、貴重な40兆円の税収のうちの半分は、借金の利息支払いに充てられる。この利息支払い率は世界の国と地域をあわせた170カ国中で最悪の水準であり、こんな貧弱な財政力で公共投資を今後増やしていくことは不可能だろう。
したがって、「国が何とかしてくれるかもしれない」「政府が景気回復のテコ入れをしてくれるかもしれない」という期待は抱かないことだ。また、これまで挙げてきた「世界一高い人件費」「世界一贅沢な消費感覚」「世界一高い法人税」「世界一の高齢化」などの景気後退要因の解決も、現在の政治のていたらくを鑑みれば、早期の解決はとても望めない。
そうなると、冒頭申し上げたとおり我々経営者は、日本は今後も低成長が続くということを前提に、これに対応した企業経営の舵取りをしない限り、長期の繁栄は絶対にない。それは、「健全性」と「収益性」を第一に守った身の丈に合わせた成長をするということであり、次章以降、いよいよ具体的定石のすべてを述べていきたいと思う。
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