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定石2:世の中に対する役割を自覚せよ

社長の抱く夢や野望を、多くの人間の協力で実現させていくためには、その大前提として、社長が周りから尊敬される存在でなければならない。尊敬のないところに真の協力関係は生まれないからだ。

そのために最も大切なことは、社長という仕事に課せられた世の中の役割を確実に果たすことである。たとえば、国や地域に対しては適正な納税というのが、「社長の地域社会への役割」である。

私の会社で言えば、日本国に、そして静岡県とか静岡市の協力に対し、地方税、事業税、法人税を納めることだ。

言うまでもないことだが、我々は日本という国があるから、あるいは静岡という地域のおかげで仕事ができている。それに対して納税というかたちで報いるのは、社長として当然の義務である。

ところが、社長のなかには、なかなかこういう考えに及ばない方が多いように思う。そういう社長はたいてい、法人税は高いだの不公平だのと言って、税金をできるだけ払わない工夫に血道をあげている。私とて、日本の税制度のあり方には大いに異議をもっているが、それとこれとは別問題だ。そもそも、きちんと利益を出して納税しているからこそ、その使途にも意見を言う権利があると思っている。

しかも、そういう社長に限って、自分の車にはお金を惜しまないものだ。実際に、利益が500万円程度の会社で、700万円も1,000万円もする高級自動車を乗り回している社長が少なくない。まして、赤字会社のトップが派手な外車に乗っていたら、「せめて自分の乗っている自動車と同額の利益ぐらい出してみる」と言ってやりたくもなる。

そんなものにお金を使うくらいなら、もっと社員の給料を上げたほうが数倍よい。社員からみて、「うちの社長は我々のことをよく考えてくれているな」という声が出てくるような努力をしたほうが、どれほど偉いかと思う。そして、そう言われるようになってはじめて、社長が「社員に対する役割」を果たしているといえるのだ。

とくに、株式を上場していないオーナー企業ならば、役員報酬や役員賞与は、いわゆる社長の「お手盛り」であるから、たとえ最終利益より役員報酬が多かろうが、赤字会社の社長がベンツに乗っていようが、税務署にはチクチク言われるだろうが否認はされまい。しかし、多くの社員に安月給で我慢してもらい、関係者に無理を言ってようやくあげた利益よりも、社長一人の取り分が多くて当然、と思うトップに、果たして社員がついてきてくれるだろう力″また、会社に資金を提供してくれる株主や金融機関に対しても、誰もボランティアで会社にお金を出してくれているわけではないのだから、支払利息や配当というかたちで役割を果たさなければ、結果的に会社は経営していけなくなる。

要するに、社長の役割意識に欠けた私利私欲を満たすだけの経営は、たとえつかの間の繁栄はあっても、事業の永続繁栄は望めないということだ。商売を可能にしてくれる社会に対して、株主に対して、金融機関に対して、そしてなにより社員に対して、立派な社長と言われるような役割を果たす。立派だから尊敬され、尊敬されるから協力してくれる。それが最善の経営であり、自らの社長人生を豊かなものにする、最高の生き方といえよう。ゆえに、もし我が社を、3年先に今よりもっと素晴らしい会社に、5年先、10年先にはさらに内容の濃い良いものに育てたいと願うなら、社長の役割意識というものを大事に大事に考えて、正面から受け止めてもらいたいのである。

社長業を一生の仕事として選んだ以上、社長の役割意識は「何のために会社を経営するのか」「誰のために儲けるのか」…その根本の生き方を決定するものであることを、まず心の底に刻んでおいてほしい。

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