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定石・11:初年度から利益が出るような新製品や新規事業は将来の柱とならない安易な多角経営は企業を滅ぼす

会社の方向づけのための定石の最後は、新規事業と多角経営について述べる。

もし、これまでと同じ商品やサービス、マーケットのままで将来も商売を続けるというのであれば、競争の中で利幅を増やしていくことは至難の業だ。まあ、不可能に近いのではないか。

結局、長期にわたって利幅を減らさずに、利益率を高く維持しようとするには、利幅がどんどん減少する商品を捨て、これまでより利幅のとれる新しい商品を見つけるか、あるいは、

既存の商品が少しでも高い値段で売れる新しいマーケットを開拓するしかない。もし儲からない新規事業に手を出したら、他の儲かっている事業にまで悪影響が出る。多角経営について説明するとき、私はよく、新規事業をコブに見立ててお話しするのだが、

人間の身体本体を会社全体とすると、新規事業はコブのようなものである。人体というのは新鮮な血液が末端まで常に循環しているから健康体を維持できるのであるが、コブに血液が回らなければ、当然コブは壊死する。

会社も同様に、コブ(新規事業)に血液(資金)が十分行き渡らないと、コブが腐ってくるのだが、問題はコブだけが腐る分にはまだ良いが、コブが腐ることによって本体まで腐り始めてくるというケースがままある。

したがって、コブすなわち新規事業には中途半端なことをせず、会社の経営資源を集中しないことには、事業がうまく軌道に乗らないのだ。経営資源を集中し、新規事業がいよいよ軌道に乗れば、ついにはコブが完全に皮膚の一部となって会社全体のボリュームが増えることになる。

すなわち、安易な多角経営は厳に慎むべき、かつ、常に高付加価値を目指して儲かる新規事業に注力せよということだ。

そしてもう一つ申し上げたいのは、ひとくちに新規事業といっても、儲かるなら何でもいいのかといえば、そうではない。

付加価値は多ければ多いほど良いに決まっている。しかし、長く多く続けるには、新規事業についても定石を守らねばならない。言い換えると、付加価値というものの真意をどう捉えるかということだ。

いわゆる悪徳商法で、消費者をだまして不当な暴利をむさぼるような極端な話をここで取り上げるつもりは毛頭ない。なぜなら、すぐに馬脚を現し、瞬時の大儲けに終わる論外のものだからだ。

あるいは、学者まがいの価値論を展開するつもりもないが、真に言いたいのは、お客様やマーケットに提供する価値についても、社長には長期的な展望がいるということである。

たとえば、ミカンのシーズンでない時期に温室でミカンをつくり、その時期にはめったに手に入らない貴重品として店頭をにぎわす現象がある。シーズンにはひと山100円のミカンが、温室育ちの出始めには、 一個500円もするという。真夏にミカンなら、真冬にスイカというのもある。季節外れに出荷するには、手間隙をかけて、冷房に暖房にとコストがかかるから高くなるということである。

しかし、私が言う高付加価値とは、こういうものを指すのではない。そもそも、企業が生み出す付加価値とは、社会的に高い意義を持っていなければならない。ミカンが一個500円というのは、社会的な価値という点から見て、まっとうとは言えないように思う。バブルの時代には、日本中にこのような商品があふれていた。厳しい言い方をすれば、こういった商品は、利益というものをその時々の好不況という短期的な視野のなかで捉えた、その場の思いつきの商品に過ぎない。

実は我が社でも、そのような商品やサービスに似たものを、かつて手掛けたことがないわけではない。しかし、一時的には結構な儲けを稼いでくれたこともあるが、すぐにだめになってしまう。事業の血肉とはならないで、コブにしかならないのだ。当初は有卦に入っていても、後で痛い思いをして外科手術のごとく血を流して切り取ることになる。そして、かえつて本体の成長を阻害する要因となった苦い思いがあるのだ。

ゆえに、私の言う高付加価値というのは、そういう商品をつくることではないと皆さんに認識していただきたいのだ。手掛けるべき高付加価値の新事業とは、決して短期的な視点では捉えることのできないものだ。5年、10年という長期的な視野で捉え、商品やサービスとしてマーケットに提供し、はじめて高い付加価値をいただく。それを長期にわたって計画的に追求し、軌道に乗せていく。それが経営者の仕事であり、経営の定石だと言いたいのである。

となると、やはり、初年度から利益の出るような新規事業はあり得ないということがご理解いただけると思う。1年やそこらで簡単に儲けの出るようなものは、たとえ首尾よくいっても、しょせん短命のブームに終わるものがほとんどなのだ。

最初の1〜2年は赤字で、3年目からようやくトントン、4〜5年目にやっと初年度の赤字を返して、ようやく6年目から利益に貢献しだすというのが、これまでの経験から言えば一番無理のない見通しであり、新規事業の定石といえるだろう。

したがって、これまでの話をまとめると、新規事業というものは、初年度から利益の出るような安易な商品・サービスに手を出すのではなく、もっとじっくり、5年を目安に腰を落ちつけて育てることによって、今ある収益の柱のほかに、第2の柱を育てていく。

そして、経営資源の乏しい中小企業はとくに、資源を集中しなければ事業は育たないのだから、第2の柱が利益を出すようになってから、その利益を使って第3の柱をつくる。同様に、第3の柱を5年かけて利益が出るように軌道に乗せたら、また第1の柱、第2の柱、第3の柱の力を導入して第4の柱をつくっていくのだ。

最後にもう一度繰り返すが、初年度から利益の出るような新規事業はない。そして、安易な多角経営は会社を潰す。これこそが新規の事業に対する大事な定石である。

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