「設備投資の枠は、減価償却費の範囲内」という定石について述べたが、それでは設備投資をどういうふうにして決めたらいいのか、設備投資を決定するための定石を述べておく。
それは、設備生産性の向上により労働生産性が上がるか、チェックするということだ。人件費の定石のなかで述べたことだが、少ない人数でいかに生産性を高めていくか、 一人あたりどのくらいの付加価値を生み出しているかというのが、「労働生産性」の指標である。この労働生産性を年々上げていくことが企業の発展には必要であり、また労働生産性の向上なくして社員の待遇改善も増員もありえない。
したがって、この労働生産性を設備の面からもチェックする必要があるのだが、式は第22表のとおり労働生産性=労働装備高×設備生産性となる。
労働装備高とは、機械設備の平均資産残高を平均社員数で割ったもので、社員一人当たりがどれだけの設備を装備しているかという指数である(前に説明したが、「平均」は、期首と期末の実績を足して2分して算出する。
つまり、当期の平均社員数は前期末(当期期首)の社員数と当期末の社員数を足して2で割った数、当期の平均償却資産残高は当期期首の償却資産残高十当期末の償却資産残高の半分である)。
ということは、労働生産性を上げるには、 一つはこの労働装備高を上げることだ。社員がどれだけの設備を装備しているか、装備率の高いほうが生産性の向上に役立つことはいうまでもない。つまり、戦争をするのに兵隊が竹やりで戦うのと、ピストルや戦車などで重装備するのとでは、重装備した方が勝つに決まっている。
ただ、労働装備高を年々上げることは、収益性の面からも健全性の面からもあまり望ましいことではない。なぜなら、固定資産がどんどん大きくなると、その分B/Sが肥大化するからだ。よって、これからの時代はとくに、労働装備高は横ばい、あるいは微減で推移し続けるようにコントロールすべきである。
それよりも、もう一方の設備生産性を高めて労働生産性を上げることの方が望ましい方法だ。設備生産性とは、付加価値を平均償却資産残高で割ったもので、設備一円あたり、どのくらいの付加価値を上げるかの指標である。
償却費以上の付加価値を稼いでくれない機械設備など、ただの置物と一緒だ。ましてや、これからいよいよ低成長が予測されるなかで、ムダな設備を入れられたら利益の足かせになってしまうだけである。したがって社長は、工場長から「こういう旋盤を入れたい」などといった設備投資の要求が出た場合、今よりも設備生産性が上がるかどうかをチェックするのだ。
そして、設備生産性の向上が見込める設備ならば黙って承認印を捺せばよいし、見込めないのならば、社長としてひとこと言わなければならない。つまり社長は、機械一つひとつについての細かい指示までする必要はない。それは担当部長の仕事で、社長はそこまでやる必要はない。
その代わり、その設備投資が設備生産性を向上させるものなのか、また、今後5年の設備投資で設備生産性は向上し続けるのか、これを設備取得の指標として、必ずチェックしていただきたいのだ。
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