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定石27:製造業において減価償却費が減って出た利益は自分の体を食べているのと同じである 償却前の利益を重視せよ

私の経営塾の塾生で、「今年は利益が出ました」と言われる経営者に決算書を見せていただくと、やはり景気が悪いせいか、設備投資を積極的におこなっていないことが多い。したがって、利益は確かに増えていても、それは単に減価償却費が減って利益が出たという企業が、意外に多いのだ。

あるいは、赤字決算にしたくないからと減価償却を控えて利益を出すような社長もおられる。その結果、大方の会社では使いもしない機械が減価償却もろくにされないまま、資産として帳簿に残ってしまう。しかし、資産といっても、中古機械を実際に売却しても二束三文だから売るに売れず、その差額の合み損を抱えたまま、無駄な資産でバランスシートが肥大化する。

一方、その機械購入にあてた長期借入金はそのまま残る。利益を生まない資産を抱えて、なおかつ借金があれば、ROAを圧迫し、会社の収益性と健全性が悪くなる。それでも、売上が大きく伸びていた時代ならばやっていけたが、これからの売上の大幅な増加が見込めない時代には、生産性の低い機械を買って、なおかつ赤字決算が嫌で減価償却を控えるようなことをすれば、 一気に資金繰りに詰まるはずだ。

こういう間違いを犯す社長は、要するに表面上の売上・利益には目がいっても、実際の「資金」というものがまったくわかっておられないのだ。そこで、減価償却を減らして利益を出しても、実際の会社の資金運用上は何の意味もないということを、資金繰りの面から解説しておきたい。会社の資金の流れを簡略化したのが第27表である。上段が固定資金の流れで下段が運転資金の流れを表している。そして、会社の機械設備というのはB/Sの固定資産であるから、注目していただきたいのは上段の固定資金の流れである。

まず、会社の資金の源泉の大もとは、税引前利益である。会社は、売上を発生させて付加価値を生み、そこから様々な経費を差し引いて、税引前利益が残る。これが会社の利益の源泉となるのだ。

さらに、減価償却費も経費としてP/Lには計上されるが、実際にお金を払っているわけではないので資金の源泉となる。

固定資産処分損というのは、固定資産の売却額と帳簿価額との差額のことなので、「損」という名称だが実際のキャッシュアウトはない。たとえば、帳簿価額7億円の土地を2億円で売却すると固定資産売却損は差額5億円となるが、5億円を実際に支払ったわけではないからだ。これも資金の源泉となる。

そのほか貸倒引当金や賞与引当金、退職引当金の繰り入れも実際にはキャッシュアウトしない経費なので、これらの合計5,700万円が固定資金の源泉である。

一方、この源泉に対する使途の方は、まず当期支払いの税金や配当・役員賞与がある。さらに設備投資などの固定資産投資やら、その他の投資、長期借入の返済などが固定資金の使途であり、第27表で言えばこれらの合計額7,700万円が使途となる。そうすると、資金の源泉が5,700万円で使途が7,700万円だから、その不足分の2,000万円を、今度は日々の営業にかかる運転資金の資金繰りで賄わなければならない。

ちなみに、固定資金の源泉と使途との差額を「固定資金余裕」といい、これがプラスの場合は運転資金の源泉が潤沢になり、運転資金の使途を上回った分が蓄積され、固定資金余裕がマイナスの場合は、先ほど述べたように、これを運転資金の資金繰りで賄わなければならないというのが、会社の資金の大きな流れである。

さて、もし減価償却費を減らして利益を出した場合は、資金の面ではどうなるのだろうかか。P/Lの上では減価償却費が減れば経費が減るのだから、利益は出る。しかし、資金の実態を考えてみると、資金の源泉である減価償却費が減ってしまい、なおかつ税引前利益の増加により税金支払いが増えてしまう。つまり、資金の源泉は減って使途が増えるということだ。

そうすると、結果的に運転資金へまわるカネが減ってしまうことになり、もしも固定資金余裕がマイナスの場合は、その分の資金の不足を運転資金から捻出しなければならなくなる。要するに、減価償却を減らして利益が出たと喜んでいるのは、タコが自分の足を食べているのと、何ら変わりはないということなのだ。

もっといえば、固定資産すべてにおいて、収益を生まない遊休資産は売却損が出ても絶対に処分すべきである。売却損が出ればP/L上の利益は減るが、累損分の税金は免除されて、なおかつ実際の資金支出がないまま、売却した分のキャッシュが入ってくるからだ。そのカネでさっさと借金を返してB/Sを小さくしたら、健全性は良くなるし、金利支払いの負担が減って、収益性も向上する。要するに、単年度のP/Lにしか興味のない、資金の実態をつかまない経営では、会社を潰すということである。

したがって、設備投資についても、減価償却をきちんと計上して出る利益、いわゆる償却前利益を大事にするということ、そして、資金の面から減価償却の意味をしっかりと理解することが、設備投資について覚えておかなければならない定石である。

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