私の経営塾の塾生に会社の決算書を見せていただくと、非常に長い返済条件で長期借入金を借りている会社が多い。会社によっては、長期資金を20年、30年の返済で借りていて、まるで個人の住宅ローンかと見まがう。
しかし、そういう会社に限って、「20年もの長期で借金して、一体なにに使うんですか?」とおうかがいすると、「普通の設備投資の為に」とか、悪くすると、「とくに目的はないが、手元にカネがあると安心する」と返答される。
銀行から思うように融資が受けられず、資金繰りに大変な思いをしてきた創業社長にこういう考えの方が多いが、これからの金利上昇や経済の低成長化を考えれば、20年も25年もの長期借入を、銀行の決めた返済期限のままに導入してしまってはいけない。何度も申し上げているとおり、これからの日本は右肩上がりの高度成長が終焉を迎え、低成長時代に入った。こういうときに、長期かつ無計画に利息を払い続ける無駄はなんとしても避けなければならない。
よって、銀行からの資金導入に際しては、売上・利益計画だけでなく、資金の面から「どうやって資金をつくり、いくらずつ返済するのか」という確かな計画をもたなければならなもちろん、再三申し上げてきたとおり、確実な返済計画とは、B/Sの長期計画に基づいた計画に他ならない。「毎期いくら売り上げていくらの利益を出すから、それを返済に充てる」などというP/L計画だけでは、まったく具体性も実現性もない。なぜなら、売上の増減という、最も不確実な要素が基礎になっているからだ。
そうではなくて、設備はどの程度増やすのか、土地は買うのかなど、会社全体の5年先までの資金需要を把握し、その資金を銀行から借りるなら長期・短期どちらがいくら足りないのか。そして返済の原資は在庫を減らすのか、売掛期間を短くするのか、はたまた預金を使うのかなど、そのほとんどが社長の意志で実行できるB/S計画こそが、本当の経営計画であり、返済計画なのである。
加えて、きちんとした返済計画を作成することは、融資条件の優遇につながる。考えてみれば当たり前のことだが、貸す側の人間にとっては、本当に返してもらえるのかどうかわからない人間よりも、確実にリターンをもたらしてくれる人間に多く融資したい。当然、多くのリターンが見込める融資先は優遇するし、返済能力があるのかどうかわからない高リスクの融資先には、いろいるとリスクヘッジをかける。
実際に、私の塾で長期B/S計画書を作成し、これをもって融資の相談に行った社長のほとんどは、「こんな素晴らしい計画をお持ちなんですね」と感心され、融資審査なしで何億円もの融資を受けたり、以前の借入金利のだいたい0・3%は下がるなど、銀行から優遇されるようになっている。
ゆえに、今後資金導入については、日標とする事業計画を達成するためには、いつ、いくらの資金需要があって、そのために導入する資金の返済についても、いつ、いくらずつどうやって工面していくかという返済計画を銀行に提示し、その返済計画に基づいた約定で、銀行からお金を借りるという習慣をつけていただきたいのだ。
とくに、中小企業の場合、返済に10年以上を要する借入は、私に言わせれば、分不相応な借入だといわぎるを得ない。少なくとも、中小企業の経営というのは、ROAを高めて小さな元手で大きく儲けるというのが、経営の定石である。
したがって、中小企業が資金を借りる場合は、短期借入は原則として目的、たとえば賞与資金、決算資金、短期の運転資金などの必要に応じて導入し、次の目的までに完済すること。
そして長期借入の返済期間は、通常の事業資金の場合は5〜7年の間に完済するようにし、特別の場合をのぞいて、10年以上返済期間がかかるような借入は厳に慎むということも、あわせて銀行取引の定石として心得ていただきたい。
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