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定石37:会社のお札に二色の色を塗れ

銀行に預けるお金に対して、たとえわずかでも利息を稼ぐ関心をもつこと、これも大切な定石の一つである。

ところが多くの会社が、取引先から月末に入金されたカネを、そのまま無利子の当座預金に置きっばなし、あるいは日商の1カ月分もの現金を平気で会社に置いていたりする。

しかし、これらのカネを一日でも普通預金の回座に入れておけば、わずかでも利息を稼いでくれるではないか。たとえば、3億円を当座に置いている会社なら、現在の1カ月の定期預金の金利が0・03%だから、普通に移すだけで1カ月で7,500円程度の利息が入ってくる。

要するに、利息のつくカネと利息のつかないカネ、2種類のお札に色を塗りなさいと言いたいのだ。もちろん、本当に色を塗れという意味ではないが、会社のお金をただ漫然と置いていても、会社の財務は決してよくならない。利息を稼がない札は必要最小限に抑え、あとの札は利息を稼ぐカネだと、まずは社長が強く意識しないことには、 一円も無駄にしない社風というものはつくれない。

したがって社長は、手許現預金の目標在高を、年商20億円以下の会社なら日商分、年商20億円以上の場合は日商の半分と、明確な金額目標を定めて、これを社内のルールとして徹底させていただきたいのだ。

そこで、手許現預金のコントロール方法を述べる。まず、自社のB/Sの「現金」「預金」のなかで、利息を稼ぐカネと稼がないカネを分けるところから始める。

というのも、 一般のB/Sでは「現金」「預金」あるいは「現預金」という科目に、利息を稼ぐカネも稼がないカネも一緒になっているため、手許現預金の残高がいくらなのかがわからないからだ

第46表にフォーマットを載せておくので、この表のように、利息のつくカネと利息のつかないカネに区分していただきたい。ちなみに、利息がつかないカネは現金と当座預金。

一方、預金のなかの普通預金、定期預金、通知預金、その他の預金は、利息のつくカネである。

それと、有価証券はそのどちらでもないので、この3分類に分ける。そして、このうちの現金と当座預金の合計額が、自社の日商(年商20億円以上の場合は、日商の半分)を超えていないかをチェックしてみればよいのだ。

第47表A社の場合は、直前2期の期末の手許現預金(現金十当座預金)と、期首手許現預金(=直前3期末手許現預金)が100万円だった。一方の平均日商高は、直前2期年商11億5,300万円十365日=320万円である。

つまり、直前2期においてA社は平均日商高320万円の0。3日分しか手許現預金を置いていなかったということだ。

続いて、直前期の実績も算出してみる。直前期の平均日商高は売上高12億4,900万円■365日=340万円。

そして直前期末の手許現預金は100万円だから、こちらも日商のO・3日分であった。つまり、A社はこれまで無駄な手許現預金を置いていなかったということがわかる。

以上、とくに難しい計算は一つもないが、こうして明確に金額を区別して明示しておかないと、手許に使い道のない無駄なカネを置いて、借金するような愚を往々にして犯すのだ。さて、手許現預金の管理において、小売業やサービス業などのいわゆる日銭商売の場合は、とくに注意すべきである。

私の門下生で、地方のレストランチェーンの社長などは、売上が現金で支払いは掛け、という有利な条件で、だいたい2週間分もの現金を当座にいれたまま、という無頓着ぶりであった。

そこで、「手許に置く現金はせめて1週間分にしなさい。私の会社では1日分でも十分なのだから」と社長に申し上げたのだが、「それは無理だ。メーカーとウチの商売とは違うんです。先生も細かいことを言う」となかなか言うことを聞かなかった。

しかし、年商40億円を超えるようになって、「1週間で1億円になる。1億円ものカネを利息も稼がせないまま放置しているのか」と、社長は遅まきながら気づいたのであった。当座預金には金利がつかないことすら忘れている経営者が、世間には案外多いものである。

そもそも手許に置いておく現金は、先ほども申し上げたように年商20億円以下の会社なら日商分、年商20億円以上の場合は、日商の半分の金額で十分だ。ただし、小売業やサービス業などいわゆる日銭商売の会社は、客とのお釣りのやり取りがあるから、この基準外になってもしょうがない。

しかし、それ以外の業種ならほとんど現金を持つ必要はない。スター精密は、現金は本社で50万円、国内各支社は15万円以上は置いていないし、これ以上は必要ない。そもそも、今の日本の商売の形態で、現金払いの取引など基本的には皆無だ。給料が日払いなんて会社はないだろうし、公共料金も事務消耗品も月末払いだ。会社で毎日現金を用意しておく必要があるものといえば、接待雑費と少額の交通費程度であろう。

ちなみに我が社では、この2つについても徹底して現金決済を避けており、接待は数店の指定店があり、これはすべてツケ払いにしてある。また、国内出張の場合、新幹線はすべて回数券、ガソリン代は給油券を支給している。社員全員そうさせているし、もちろん社長の私もこれに従っている。

もちろん、振込先の回座も普通口座である。だいたい、中小企業の社長に振込先の回座を当座にしている理由をうかがうと、「普通預金だと小さな会社だと思われそうで…」とおっしゃるが、そんなくだらない見栄を張っても一円の足しにもならない。

我が社は、社長の私が言うのもなんであるが、非常にケチな会社である。しかし、社長が「たかだか数千円の利息を稼ぐために、こまめに口座を振り替えるなんて面倒くさい」と思っていれば、経理の担当者もこまめに口座を移し替える面倒をえてして省きがちになるし、反対に「一円でも無駄なカネを減らそう」と社長が執念をもって取り組めば、全社員がそのような姿勢で各自の仕事に取り組むようになる。

考えてもみてほしい。手形や小切手の決済日は月に1回、多くても2回、それも決まった日に落ちるのだから、決済前日に必要なカネを入れておけばいい。しかも、現在はインターネットで口座の振り替えが簡単にできるのだから、わざわざ銀行に出向く必要もない。つまり、決して手間がかかることではないのだ。

よって、これまで利息を稼ぐカネに無関心であったならば、まずは金利を稼がなくてもいい当座預金や手許の現預金は「月商の何日分とする」とか「当座預金は5,000万円を限度とする」というように、社長として明確なルールを決めることである。

そして、皆さんの会社の回収口座のほとんどは当座であろうが、できればこれを手形決済以外の回収を全て普通預金に振り替える。さらに、手形の決済が終わったら次の決済日までの間もこまめに当座から普通に移しておくように、経理に細かく指示をするのだ。資金については、このような細かいルールも案外大事である。それは同時に、経理担当者の躾にもつながる。つまり、社風というものは社長がつくるのだ。積極的で伸びやかな社風も、何事にも後ろ向きな暗い社風も、すべては社長がつくり出している。この自覚は大事なことである。

ましてや中小企業は、全社員が社長の方針のもとに一九となってこそ、大企業にはない中小企業ならではの強みや良さが発揮される。

したがって社長は、自らの言動や社内のルール化により「一円に貪欲になる社風」をつくるとともに、その利益追求が私利私欲に走ることがないよう、自らの人格を高める努力を怠ってはならない。これこそが、金融費削減、金融機関取引の、極めて基本的な定石ではなかろうか。

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