無駄な税金を払わないで済むように中間決算をすること、これも一つ、税務署に対する定石である。
というのも、会社の税金の納付というのは、原則的に年2回、期の途中でその期の税金の一部を前払いして、決算が決まってから確定納税として予定納税額との差額を支払う。期の途中とは、正確には期のちょうど中間時点から2カ月以内、たとえば3月決算の会社ならば、9月末から2カ月以内つまり11月末までに、税金の一部を前払いするということだ。これを中間申告という。
ところで、この中間申告で納める税金の決め方は2通りあり、多くの企業は前年度実績に応じてその半額を予定納税する。 一方、期の中間で仮決算を行い、そこで計算した税金を納める方法がある。この方法は、本決算と同様の作業を行うため事務負担が増えてしまうのだが、たとえば当期が前期と比べて大幅に業績がダウンしそうな場合は、多額の税金をいっペんに納めなくて済む、あるいは税金を繰り延べすることができるので、資金繰りの面で非常に有利な点があるということを知っておいていただきたいのだ。そこで、税金の支払い計算について、第49表A社を例に説明したい。
まず課税利益を算出する。ここで一つ、税金計算のルールを述べておくと、前期の事業税で、今年払った分だけは損金として認められるが、今年計算された事業税は損金不算入というのが、税金の仕組みであるという点だ。
税金は当期の税引前利益に直接かかるわけではない。事業税は経費として認められ、法人税は認められない。ただし、当期の経費として認められるのは、当期の事業税ではなく前期の事業税である。
税務署は当期の税引前利益のうち、当期に立てた事業税引当金は経費として認めてくれない。つまり、当期の事業税引当金は課税の対象になるので、課税利益に含まれる。課税利益に含まれるのだから、これは税引前利益に加算して考えなければならない。
一方、前期事業税は当期の経費として認められるから、これを当期税引前利益から差し引く必要がある。したがって、当期の課税利益は、当期税引前利益に当期事業税引当を足し、そこから前期事業税引当を引いた金額ということになる。
以上のような複雑な方式で税金を計算するから、実際に税金支払いでキャッシュがどれだけ出ていくかということは、 一般的なP/Lだけ見ていても全く理解できないのだが、とにかく、第49表が「税金引当計算」と「支払額」の2部構成になっている理由は、こういう理由からである。さて、以上のルールを頭に入れて、さっそくA社の直前3期の税金支払いを計算してみる。
直前3期の課税利益は、税引前利益7,300万円に当期事業税引当800万円を足して、直前4期の事業税引当600万円を引いて、7,500万円と求められる。実際には、交際費の限度額超過分なども課税対象になるといった細かい決まりはあるのだが、ここでは割愛する。とりあえず皆さんは、当期の事業税を足して、前期の事業税で今期払ったものを引いたのが、当期の課税利益だと理解してもらえばよい。
さて、課税利益が出たら、事業税と法人税他(法人所得税・県民税・市民税)の納税額を算出する。ちなみに、税率については、事業税が10%、法人税他(法人所得税・県民税・市民税)を40%とする。厳密にいえば、事業税も地方税も地域によって異なるし、法人税も資本金の大小でいろいろルールが変わってくるが、だいたい資本金5,000万円くらいの中小企業であれば、事業税が課税所得に対して10%、法人税他が40%くらいになる。
本当のことを言えば、むしろ若干多めに見積もってはいるが、経営の定石から言えば、経費など資金の支出は多めに見積もっておいて、結果として余りがでれば儲けもの、悪く見積もって良い方に振れたらラッキーという考えをしていただきたいので、事業税は10%、法人税等は40%というルールで計算する(例外として、建設関連会社の場合は、損金不算入の経費が多額になる場合もある。その場合は経理に確認して、より正確な税率で計算されることをお勧めする)。
さて、A社は課税利益が7,500万円だから、事業税は7,500万円×0。1=750万円の10万円以下四捨五入で800万円。法人税他は7,500万円×0・4=3,000万円だ。
この合計額3,800万円が、直前3期のA社の税金であるが、これを単純にその期に支払わないのが、税金支払いの複雑なところだ。たとえば大半の会社は、毎期だいたい同額、あるいは当期を上回る利益が来期は出るだろうという前提で、前年の税金額の半額を当期の予定納税として支払う。
A社の場合で説明すると、先ほどの計算で直前3期の税金は3,800万円と計算したが、実際に予定納税として納めるのは、直前4期の税金2,800万円の半額1,400万円である。(表中D)
そして、直前3期の上期に、直前4期の確定納税として、直前4期の2,800万円から直前5期の予定納税として支払われた800万円(表中B)を差し引いた2,000万円を支払うのだ。(表中C=AIB)
すなわち、直前3期の税金支払額は、確定納税の2,000万円と予定納税の1,400万円の合計3,400万円(表中C十D)である。
少々複雑な納税方法なので、もう一度説明する。続いて、直前2期の税金計算は、税引前利益8,800万円万+当期事業税引当900万円―前期事業税引当800万円=課税利益8,900万円だ。
よって、事業税は8,900万円×0・1=890万円の10万円以下四捨五入で900万円。法人税他は8,900万円×0。4=3,560百万円の10万円以下四捨五入で3,600万円だ。この合計額4,500万円が直前2期の税金で、実際の税金の支払いは、直前3期の税金3,800万円の半額1,900万円を直前2期の下期に予定納税として支払い、直前3期の税金3,800万円から、すでに予定納税として直前3期に納めている1,400万円(直前4期の税金2,800万円の半額)を引いた2,400万円を確定納税として支払う。
よって、A社の直前2期の税金支払額は、確定納税の2,400万円と予定納税の1,900万円の合計4,300万円となる。これが企業の税金支払いの方法で、中間申告については大半の企業が前年実績の半額を予定納税している。ところが利益が減った場合は、この方法では必要以上に多く納税してしまうため、資金繰りの面から考えて不利益を被るのだ。
たとえば、直前期のA社は、前年に比べて税引前利益が減ってしまった。ところが前年実績に従って安易に予定納税をすると、この期も4,500万円の税金の半額2,300万円を中間期に支払わねばならない。予定納税として払う2,300万円は、この期も前年と同じ規模の利益が出ることを前提として支払うから、利益が前年よりも減る場合には、不要に多く納税してしまうことになるのだ。
しかし、もしもA社がきちんと中間決算をして、どうやら税引前利益が前年を下回って7,000万円になりそうだと税務署に申告すれば、何も2,300万円も予定納税せずとも、仮決算をした半期の課税利益分を納税し、残りを翌年に確定納税すればいい。
たとえば、A社の中間決算で、半期の税引前利益をもとに課税利益を計算して、仮に3,500万円だったならば、事業税は3,500万円×0・1=350万円の10万円以下四捨五入で400万円。法人税他は3,500万円×0・4=1,400万円で、合計1,800万円を予定納税すればよいのだ。
期の中間に仮決算をして税務署に申告するのは、何もややこしい書類を何枚も出すわけではない。非常に簡単な、いわゆる税務申告書一つで、不要に多く納税するはずだった500万円分がまるまる資金繰りの助けとなるのだ。
よって、必ず中間決算をやってみる。そして、昨年よりも利益が出る目処がついた場合は、そのまま前年の半分を納めればいいのだ。しかし、前年ほどの利益が出ないとわかったら、その仮決算に基づいて税金を中間申告し、見通しの半分の税金だけを納めれば済む。
要するに、常に中間決算を行い、税金をどちらの方法で納めるか判断するということが、無駄な予定納税をすることなく、会社の資金繰りを優位にする大事な定石というわけだ。
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