社員の待遇改善が社長の思いつきにならないために、「人件費係数」を明確に把握せよ。
社長が社員の処遇に対して「情」と「理」のベストミックスを実現するツールとして、「人件費係数」をおすすめする。
人件費係数とは、人件費総額を月額給料の総額で割ったもので、給料に換算して何力月分の人件費総額を、社員の待遇のために支払っているかを示す指数である。
たとえば、給料12カ月分に対して、福利手当(住宅手当や家族手当など)を0・2カ月分、賞与4カ月分、退職金1カ月分、福利厚生費(慶弔金、誕生日会などの費用)0。21カ月分、これらに法定福利費(労災保険、健康保険、厚生保険)1・75カ月分を加えて19。16カ月分となれば、人件費係数は19。16だ。
どのくらいの人件費係数が適当かは、 一概に言えない。世間水準の給料を前提にあえて言えば、大体が19〜20前後におさまっているのではないだろうか。つまり、自社の総人件費を考えるときは、給料月額のおよそ19カ月分の人件費を要するということを、頭に入れておかなければならないということである。
皆さんの会社の人件費係数の推移は、どうであろうか?
・過去5年間の人件費係数を算定してみて、もし下がり続けていれば、特殊な理由がないかぎり、社員の待遇が悪化していると考えなければならない。
逆に、人件費係数が上がったということは、社員の待遇改善に結びついたということである。
しかし人件費係数が上がるということは、社員数が同じなら人件費総額がモロにアップするというシビアな面があることも、決して忘れてはならない。すなわち、人件費係数は社員の待遇改善を計るモノサシであるとともに、社長が総人件費を膨らませすぎないための経営のモノサシでもある。
人件費係数がたとえば18だから、何となく情緒的に来年から20にするなどという安易な対応は、絶対にやってはいけない。そうしないと、社員の待遇改善という情に流されて、肝心の総人件費が野放しになり、収拾がつかなくなってしまうからだ。
そうならないためには、ここ数年の人件費係数の推移を正しく把握して、これから5年かけて社長としてどう改善していくか、事業計画の目標利益範囲内で、中長期の人件費計画にまとめることである。
結論として、5年間でせいぜい1カ月アップをメドにすべき、というのが私のアドバイスだ。思いつき経営は、厳に慎むべきである。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
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