来年の人件費ではなく、5年後の人件費をつかめ。
毎年、春闘の頃になると、「佐藤さんのところでは、いくらにするの? 何%にしたの?」と聞いてくる経営者が必ずいらっしゃる。
業績好調であればベースアップを物価上昇以上にはずんで、「いい会社に勤めたものだ」と社員から言われたいのは山々だ。
とはいえ、今年はどうする、来年はどうするではなく、「自社の現在の人件費が、5年後にいくらになるか」を考えている社長は、ほとんどいないのではないだろうか。
ここで、自社の5年後の人件費を試算してみよう。仮に、社員100名で総人件費が年間5億円の会社があったとして、昇給や社会保険の負担増などで年2%ずつ人件費がアップしていくと、5年後の総人件費は5億5200万円となる。
社員を1人も増やさなくても、5年間で自動的に約5000万円も人件費が増えてしまうのである。
この2%の賃上げという数字の重みは、5回電卓を叩き、自ら人件費を計算してみた社長にしかわからない。
経営で一番大事なことは、会社の今後を大きく左右するような数字を社長として正確に把握し、常に頭に入れておくことである。そうすれば、事業経営の方向性を間違えることなど絶対にない。
5年後の人件費を試算することによって、何もしなければ加速度的に増え続ける人件費に対して、どのような手を打つべきかという発想と創意工夫が、社長であるかぎりひとりでに出てくるはずである。
だから、これをきっかけに「正社員を臨時雇用者で代替した場合、定期昇給率や人件費係数を変えた場合…人件費はどうなるか」と、条件設定をいろいろ変えて、自社の内実にそった5年後の人件費を試算し、具体的な実現計画を立ててみることだ。
その場合に単年度計画はありえない。人件費の変動費化ひとつを取り上げても、半年や1年でできることではない。労働生産性の向上にしても、人件費係数の引き上げにしても、3〜5年間の期間を見て計画しなければ実現は不可能だ。
必然的に、3〜5年間の中。長期計画とならぎるをえない。事業の再構築を成功させ、社長の従業員に対する処遇のポリシーを具体的に実現させるためには、それなりの期間が必要である。
であれば、いつまでもダラダラしている猶予はない。
「気づいたいまが、計画を立てる最高のチャンス」と思うことだ。
佐藤肇著「社員の給料は上げるが総人件費は増やさない経営」より
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