【2ー1】経営者の誇りと恥:社長に課せられた「役割」を自覚せよ。
社長の抱く夢や野望を、多くの人間の協力で実現させていくためには、その大前提として、社長がまわりから尊敬される存在でなければならない。尊敬のないところに真の協力関係は生まれないからだ。
そのために最も大切なことは、社長という仕事に課せられた世の中の役割を確実に果たすことである。たとえば、国や地域に対しては適正な納税が、「社長の地域社会への役割」である。
ところが、社長のなかには、なかなかこういう考えに及ばない方が多い。そういう社長はたいてい、法人税は高いだの不公平だのと言って、税金をできるだけ払わない工夫に血道をあげている一方で、自分の車にはお金を惜しまないものだ。
実際に、利益が500万円程度の会社で、1000万円もする高級自動車を乗り回している社長も少なくない。「せめて自分の乗っている自動車と同額の利益ぐらい出してみろ」と言ってやりたくもなる。
そんなものにお金を使うくらいなら、もっと社員の給料を上げたほうが数倍よい。多くの社員に安月給で我慢してもらい、関係者に無理を言ってようやくあげた利益よりも、社長一人の取り分が多くて当然、と思うトップに、果たして社員がついてきてくれるだろうか。
要するに、社長の役割意識に欠けた私利私欲を満たすだけの経営は、たとえつかの間の繁栄はあっても、事業の永続繁栄は望めないということだ。商売を可能にしてくれる国や地域社会に対して、株主に対して、金融機関に対して、そして何より社員に対して、立派な社長と言われるような役割を果たす。
立派だから尊敬され、尊敬されるから協力してくれる。それが最善の経営であり、自らの社長人生を豊かなものにする最高の生き方だ。
ゆえに、もしわが社を、3年先にいまよりもっと素晴らしい会社に、5年先、10年先にはさらに内容の濃い良いものに育てたいと願うなら、社長の役割意識というものを大事に大事に考えて、正面から受け止めてもらいたいのである。
社長業を一生の仕事として選んだ以上、社長の役割意識は「何のために会社を経営するのか」「誰のために儲けるのか」、その根本の生き方を決定するものであることを、心の底に刻んでおいてほしいのだ。
佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より
【2ー2】先読み経営:トップがすべきことは「先を読むこと」と「決めること」。
社長にとって最大の役割は、世の中の流れを的確に読み取って、将来の大きな方向づけを決定することである。
景気の循環にかかわりなく、たとえ景気が悪くなってデフレになっても継続的に成長して利益が上がっていく会社にするには、まず社長が将来の経営目標を決め、5年後の目標から逆算して4年後はこの8割の実績を、3年後は、2年後は、来年は…というように実現計画を練り、これを世の中の流れに合わせて修正し続けるしかない。
経済の仕組みは常に変わり、その変化に対応しながら事業を続けていくことが、社長の宿命なのである。見えない未来をなんとしてでも見極めて、決断して手を打つ。目先の変化にいちいちオタオタしていては務まらない。泣き言を言っていられない、言い訳無用の仕事である。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
【2ー3】社長は10年先の儲けをつくる人:会社経営は10年単位で考えよ。
私は10年を一つのタームとして、事業経営を変えていくようにしている。
もちろん30年くらい同じ商売ができればいいのだが、いまのように変化のスピードが速い時代において、同じマーケット・同じ顧客に、同じ製品を同じ値段で30年売り続けることはできない。それゆえ、10年単位で新しい事業の柱をつくっていくのだ。
そもそも、事業の柱となるような新規事業はそれなりのコストと、5年の歳月を要する。最初の1〜2年は赤字で、3年目でトントン。4〜5年目にこれまでの赤字を返して、6年目からようやく利益に貢献するというのが、これまでの経験からいって一番無理のない見通しだ。
しかし、新規事業が高収益を維持できるのは、よくて5年。だからこそ社長は常に10年先を予見し、事業構造を変革し続けることが必要なのである。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」よ
【2ー4】経営判断の真髄:経営判断とは、「現状の最善」ではなく「10年後の最善」を見越して決めること。
経営判断というものについて、私がいまも手本としているのは、「1989年の大連進出」である。
当時、創業社長である親父と私は、中国での海外生産を始めるべく、大連に工場を建てようと計画した。
多くの企業は深センに進出していたが、5年、10年先の労働力の確保に不安がある地域だったため、治安やインフラなど様々な条件を吟味し、20年はとどまれるということで大連に決めたのだ。いまでこそ2千社以上の日本企業が進出している大連だが、当時はわが社のほかに2社しかなかった。
しかし1989年、あの天安門事件が起こった。忘れもしない、1989年6月4日である。
いまでも覚えているが、当時、親父が役員会で大連進出を提案したとき、役員全員が反対した。「あの天安門事件が起こった中国で、安定した生産活動ができるのか。3年くらいは様子をみたほうがいい」とみんなが危ぶんだ。
当時、アジアで生産しているのは一部の大企業に限られ、大半の企業は国内生産が当たり前の時代だったから、そんなリスクを冒さなくても、と思うのは当然のことだ。
日本はバブルの絶頂で、わが社の業績も最高益を更新していた。いまのままできちんと利益が出ているのに、なぜリスクを冒してまで…と思うのは無理からぬことである。しかし、 親父は役員会の席で、こう言ったのだ。
「日本の賃金レベルはもはや世界最高クラスで、国内生産では早晩、限界が見えてくる。 一方の中国だって、変化のスピードは5倍速だ。いま人件費は安くても、これからどんどん上がっていく。だから、早く中国に出た者勝ちなんだ。3年様子見で何もしなければ、将来の損失は15年分になる」。
「日本のバブルはもうすぐ崩壊する。業績が悪くなってから海外に出るのでは、後手に回る。良いときに余裕をもって海外進出すべきだ」。
結局、経営判断というのは、いまが良ければそれで良しではなく、リスクをとって、5年後、10年後の最善を選ばなければならないということだ。
1989年に大連に進出しないというのは、そのときだけの損得を考えれば正しい。しかし、社長の仕事は10年後の業績をつくることである。
だから、世の中の流れを読んで、その仮定を前提としたうえで「10年後の最善」のためにいま方針を決めていくというのが、「経営者の決断」というものなのだ。
佐藤肇「決断の定石」CDより
【2ー5】本当の経営手腕:良いときに会社を伸ばすのは誰でもできる。悪いときにどう手を打つかが、経営者の腕の見せどころ。
不遜な言い方に聞こえるかもしれないが、悪いときにどう手を打つかが、経営者の本当の腕の見せどころだ。
良いときに売上を伸ばすことは誰にでもできる。世の中が好況になればよほど下手でないかぎり、上リエスカレーターに乗っているがごとく増収増益が基調だ。ゆえに、増収増益というのは、「経営努力から生れた利益増」というより、「他力頼みの利益増」と言い換えてもよいのではないか。
だから、増収増益というのは、ある意味ですごくも何ともない。社長の腕の本当の見せどころというのは、世の中が減収減益の基調でも増益にできる経営、さらに言えば、減収減益でも会社におカネを残す経営である。
だから、たとえ増収増益が続いたとしても慢心することなく、「どのような状況でも増益できる、カネに困らない体質」を築くよう努めるべきである。
【2ー6】絶対に当たる「先読みの法則」:周囲が「今後、売上は1割減るだろう」と言うときは2割減と考える。
私はいつも先の見通しを「良い」「普通」「悪い」と3パターン想定して経営にあたるが、とくに悪いパターン、それも最悪の状況を想定することは非常に嫌なことであるが、最も重要である。
なぜなら、自社が身を置く業界やマクロ経済が最悪になっても何とかなる見通しを立てておけば、それより悪くならないかぎり、後は上振れするだけ利益が増す。だから、実際に厳しくならなければ「その分は儲けもの」という気持ちで経営をやることが大事である。
たとえば、2016年、英国が国民投票により2年後にEUを離脱すると決定したとき、経営者や経済評論家の予測は「日本の会社への影響は売上1割減」というのが大半だった。
そこで私は2割減と先を読み、それを前提に計画をつくり直した。周囲が1割減ると言うときは、2割減ると考える。ここで、さほど影響はないだろうと楽観視して何も手を打たないと、想定以上に悪い結果になったときに、より深いダメージを負うことになるからだ。
当時、わが社の海外売上比率は85%以上で、欧州の売上は3割弱を占めていた。さらに主力のプリンター部門の拠点は英国にしかなく、EU離脱が現実になれば、英国とEU諸国間でヒト・モノ・カネの動きの自由度が制限されることになる。
世界の枠組みが大きく変わるかもしれない、まして2年先の影響を予測することは非常に困難で、こうした不透明な情勢ではとりあえず静観し、2年後の姿が見え始めてから動き出せばよいと考える経営者もいるだろう。だが、そのときになって対応したのでは遅いのだ。だから、与えられた情報と自分の経験を総動員し、考えうる最悪の事態を想定して手を打たねばならない。
幹部にも、「離脱まで2年の猶予があると考えるな。明日突然、最悪のことが起こるという前提で準備を進めよう。離脱が撤回される可能性があるとか、EU側が譲歩して英国に有利な方向に行くとか、都合のいい情報はいっさいアタマに入れるな」と指示した。
ク経営の3坂クと言うが、「上り坂」「下り坂」いずれの局面よりも怖いのは、想定外の「まさか」である。結局、会社が潰ぶれるのは、想定外の事態に打つ手がなかったときである。
だから社長は、先行きがまるで見えないとしても、最悪の事態を想定して万全の準備をするしかないのだ。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
【2ー7】損切りの極意:斜陽事業は利益が出ているうちに切れ。
毎年、利益が減少傾向にある事業・商品は、たとえ利益が出ていても、斜陽化するものと判断してさっさと捨てるべきだ。
早い時期から計画的に、3年くらい時間をかけて徐々に撤退すれば、お客さんに迷惑をかけず、在庫も値下げなどして売り切るなど、いちばん損のないやり方を余裕をもって検討できるからだ。
そもそもカネのない中小企業が、利益率の低い事業を抱える無駄は許されない。とくに、いつ売上が急減するような不測の事態が起こるかわからない時代は、なおさらだ。
したがって、斜陽事業は早めに見切りをつけ、その分の経営資源を儲かっている事業や成長性のある事業に振り分ける。こうして収益性と健全性を維持していくのが、損切りの極意である。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
【2ー8】目標B/Sをつくれ:決算書は必ず、最初のページから順に開いて読むこと。
私が佐藤塾という勉強会で長期経営計画づくりを指南するときは、必ず決算書を持ってきてもらい、最初のページから順に開いてもらう。どこの会社でも間違いなく、P/L (損益計算書)よりB/S (貸借対照表)が先に載っているからだ。つまり、それだけB/Sを大事に経営しているということだ。
一般に、「P/Lは見るがB/S には無関心」という経営者が大半であるが、P/Lはわずか1年間の経営の結果を表したものにすぎない。つまり、この1年間でどれだけ儲けたか、あるいは損したかを示しているのがP/Lである。
しかし、景気が悪くなると、原則的に売上利益は減っていくものだ。景気が回復すれば、それはすぐもとへ戻る。このような簡単に変わりやすい数値がP/Lの数値である。
また、時と場合によっては損が出てもいいケースすらある。その損が将来のために意義のあるものなら、意図的に損を出すこともありえよう。
要するに、経営にとっては目先の損得が問題なのではない。わずか1年間の損益など、決して無視していいとは言わないが、社長はそんなことでいちいち一喜一憂する必要はないのだ。
これに対してB/Sには、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてが示されている。そこには、
「売上の割に、在庫を多くもつ体質」だとか「安易に借り入れをしてしまうクセ」だとか、要するに、会社の体質、体力、もっと言えば社長の性格、経営のやり方そのものが表れる。
こういう経営体質は、絶対に直していかなければならない。ある程度の時間も必要だろうが、直した体質は、それ以後の会社の確実な発展のベースになっていくからだ。
つまり、B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。今期、利益は出たが健全性や収益性はガタガタというのでは、好不況にかかわりなく成長し続ける会社にはならない。
である以上、自社の体質を強くしていくのは、社長の意思、社長の戦略として将来のB/Sをどうつくり上げていくかにかかっていると言ってもよい。いわゆる目標B/Sをきちっとつくって、それに向かってどうすればいいのかを考える。P/LよりもB/Sを重要視した経営をする。
これこそが、社長の果たすべき役割なのだ。
佐藤肇「決断の定石」CDより
【2ー9】未来を計画するために必要なこと:企業の将来は過去の延長上にしかない。「未来は過去の延長上にある」。
これは自社の方向性を定める出発点となる、重要な考え方である。
「過ぎ去ったことは考えても仕方がない」と、過去にはあまり目を向けたがらない経営者が多いが、自社の将来を計画するときに、これまでの企業体質を切り離して考えることはできない。将来の経営は、過去の体質の延長上にプラス・マイナスのアルファが加味された姿に必ずなっていくからだ。
低迷が続く会社が実績を上げ続けるよう変貌したければ、過去の数字を検証して改善すべき点を発見し、時間をかけてそれを修正していくしかない。
発展のベースとなるものをきちんと築かぬかぎり、会社というものは安定的に伸びてはいかないのだ。ゆえに、社長が思い描く将来のわが社を実現するためには、理想と現実のギャップをまず知ることである。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
【2ー10】過去の数字が語るもの:過去5年の傾向を見れば、たちどころに打ち手が見えてくる。
自社の過去5年の傾向を見れば、将来の自社の姿が鮮明に見えてくる。私の経験から言って、会社の業績というのは、ノコギリの歯のように毎年ギザギザと上がったり下がったりせず、上昇にしろ下降にしろ、とにかく傾向というものがある。
たとえば経費ひとつとっても、増え続けた経費は何もしないかぎり増え続けるし、減り続ける売上や利益は、何の手も打たないかぎりは減り続けるものだ。
ゆえに、事業の将来を考えるときは、まず5年前まで遡り、「この事業は上がり調子か、下がり調子か」と趨勢を見れば、打つべき手が必ず見えてくる。
ちなみに、「過去3年でも傾向はわかる」と言われる方もいるが、3年では短かすぎる。先読みの精度をより高めるには、やはり5年分の傾向を見る必要があるのだ。
佐藤肇「決断の定石」CDより
【2ー11】決算書から会社の実態をつかむ:会社の実態は、「額」ではなく「率の推移」に表れる。
私は経営の良し悪しを判断する場合、売上利益などを金額や総額で見ない。金額の大小だけで考えていると、大事な経営判断を間違えてしまうからだ。
たとえば、売上は増えたが原価や販管費が売上の伸び以上に上がって、売上高利益率が下がってしまった場合、利益率の低い売上が増えているということで、じつは会社の状態は悪くなっている。売上が上がれば原価率が下がって利益率が上がるのが一般的なのだが、それに反して利益率が下がっているのならば、原因を見つけたうえで、早急にやり方を変えなければならない。
逆に、利益率の悪い売上をやめることによって、減収でも利益率が上がり、売掛債権や在庫が減ってキャッシュフローが良くなる。
大事なことは、「何の数字がどう推移し、その比率が動くことで会社に何が起きるのか」、「どのような手を打って比率を変えるか」ということである。
佐藤肇「決断の定石」CDより
【2ー12】事業経営の差はどこから生じるか:経営判断に使う数字は、社長自ら電卓を叩いて計算せよ。
経営判断に使う数字は、社長自らが電卓を叩いて計算していただきたい。
私は、経理から上がってくる月次の財務データを見ながら、必ず自分で電卓を叩いている。 一つ一つの数字を頭に入れながら足し算したり、引き算したり、割り算したりと、たとえばROAが下がっていれば、在庫の回転率や売掛債権の回収率を自分で算出して、どうしてなのかと原因を探るのだ。
そして、原因がわかったら設定条件をいろいろ変え、それをまた数字でシミュレーションして、最適な解決策を決めていく。この思考プロセスがあるからこそ、予測が外れたときにもパッと原因や代替案が浮かぶ。
「社長には、電卓片手にチマチマした計算をやるよりも大事な仕事があるだろう」と思われるかもしれないが、その大事なポイントをしっかり押さえるためにこそ、自ら電卓を叩いて計算してみる必要があるのだ。
佐藤肇「決断の定石」CDより
【2ー13】会社の未来をつくる:社長は、「会社の数字を意図的に創り出す人」でなければならない。
会社の数字は、社長の意図・方針を明確に反映していなければならない。たまたま帳簿にいくら良い数字が並んでいたとしても、それが社長の考え方を明確に数値化した結果でなければ、先見の明にはつながらない。偶然良かったということで、状況が変化すれば、またまた夜も寝つけないことになる。
別の言い方をすれば、社長は「経営の数字に自らの意思を込める」ことが必要である。世の中の流れを読んで、10年後、20年後の自社の将来を構想しながら、同時に過去5年間の数字を横に見て、理想と現状のギャップを埋めるベく「具体的な経営ビジョン」をつくり上げていく。これこそが社長の役割だ。
ただ念仏のように、回先だけで「100億企業にしたい、上場したい」と唱えていても、絶対に前には進めない。必ず成し遂げたい夢や野望とともに、その実現計画を、全社員に具体的な数字で示していかねばならないのだ。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
【2ー14】経営とは分配である:企業の存在意義は、付加価値を「生み出すこと」と「分配すること」
企業経営とは、自社の経営資源を使って、企業の外部から購入した原材料や商品・サービスの上に、自社の顧客が対価を支払ってくれるであろう価値、すなわち付加価値を付け加えて世の中に送り出すことだ。
もし、外部購入価値と同額以下の売上しか実現できないとしたら、その企業は付加価値を生み出していないわけで、経済的な価値がない。ゆえに、社会における企業の経済的存在意義は、社会に有益な商品を提供することによって、いかに多くの付加価値を生み出せるかだと言えよう。そして付加価値を造成できたとき、当然ながらこれに貢献した者は、生み出された付加価値の分配を受ける権利がある。
たとえば、従業員をはじめ資金の提供者である金融機関や資本家へは給料や金利支払いや配当というカタチで、公共のインフラやサービスを提供してくれる国や地域には税金で付加価値を分配する。
あるいは事業遂行のための経費や、設備更新のための減価償却、未来事業を育てるための先行投資、将来の予期せぬことへの備えとして、内部留保や各種引当金への分配も必要である。
さらに、各協力先に対して十分に報いているのならば、社長は堂々とその報酬を受け取るべきだ。中小企業のオーナー社長の大方は、銀行からの借入に個人保証をつけて高いリスクを取っているのだから、無報酬ではやっていられない。経営者として調和のとれた分配を受けるべきである。
このように付加価値は、「会社を支えてくれる関係者に分配されるもの」であり、付加価値をそれぞれに過不足なく分配することで、翌年にはさらに大きな付加価値を生み出していくことが、長期的な事業発展の要と言える。
ところで、生み出した付加価値をこのようにすべて分配してしまうと、結局残りはゼロになる。すべてを分配してしまうのだから、残りがゼロになるのは当然といえば当然なのだが、じつはここに大きな意味があるということを私は言いたいのである。
これらの分配先は、お互いに一方を増やすとそのぶん他方が減る、いわゆるゼロサムの関係にある。しかもどの分配先ひとつとっても、もし協力が得られなければ付加価値を思うように造成できない。それぞれの付加価値造成の役割に対して「正当な分配」が行われてこそ、協力が得られる関係にあるということである。つまり分配の方針次第で、会社は良くも悪くもなる。要するに、企業の究極的な目的は利益を出すことではなく、生み出された付加価値をどう分配するかということにある。それが経営である。
佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より
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