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銀行取引の定石

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定石34:特別の場合をのぞき、運転資金の不足は短期借入金、それ以外の資金不足は長期借入金で調達せよ

銀行からお金を借りる場合に、長期資金で借りたらいいのか、短期資金で借りたらいいのか。この判断に明確な根拠がないというのが、一般の中小企業には多いように思う。しかし、資金導入に際して長期か短期かという問題については、はっきりと定石というものがある。それは、固定資金の不足は、長期資金で調達し、運転資金の不足は短期借入金で調達する、これが、資金繰りの一番大事な定石である。間違っても、固定資金の不足を短期借入金で調達してはならないのだ。

実際、よくある例だが、長期借入よりも短期借入の方が金利が安いからと、安易に資金不足を短期借入金で調達してしまう社長がいるが、日の前の金利は確かに少なくなっても、長期的にみて、資金繰り破綻を招くような大事になりかねない。

というのも、固定資金として運用しているカネの回収には、長い時間がかかるからだ。たとえば、固定資金運用の最たるものに、設備投資がある。設備投資をして、それが利益に結びつき、つぎ込んだカネが回収されるまでには相当の時間がかかる。ところが、この設備投資の資金を、短期間で返済しなければならない短期借入金で調達したら、会社の資金繰りが破綻をきたすのは目に見えている。

したがって、設備投資の資金には、返済のいらない自己資本で賄うことが第一であり、「5、設備投資の定石」で述べたとおり、実際の資金支出を伴わない経費である減価償却費の範囲内で設備投資をしていれば、多額の借金に依存することなく、健全に成長していけると述べたことを、覚えておられるだろうか。

要するに、長期にわたって使うことを前提に取得した固定資産は自分のカネで買うことが一番望ましいことではあるが、いわゆる好期には自己資本以上の設備投資をすることもある。この場合における安全な借人の定石は、運転資金の不足は短期借入金で調達し、それ以外の資金不足は長期借入金で調達する。なおかつ、そのために資金不足の内訳をしっかり把握せよと言いたいのだ。

ところが、問題はカネには色が着いていないから、日常の資金繰りだけをみていたのでは、まったく見当がつかない。「このところ、どうも資金繰りが苦しい…」と思っていたら、いつの間にか固定資金の運用を短期借入金の調達で賄うことになっていたというのは、実際によくある話だ。

そこで、第44表のように自社の長期借入金・短期借入金の導入区分表をつくることをお薦めしたい。まずは借入金導入区分表の見方を説明する。項目がたくさんあり、 一見ややこしく思えるだろうが、非常に単純な表だ。要するに、各期ごとに固定資金と運転資金それぞれの収支に、いくらの過不足があるかをまとめ、その不足額を長期。短期どちらの借入で調達するかを一覧にしたものである。表の区分をご覧いただきたいのだが、上から「固定資金運用」と「運転資金運用」がある。どちらもすでに説明してあるので、細かい項目の説明は割愛するが、直前2期のA社は、固定資金の源泉が1億3,000万円で、 一方の固定資金の使途は2億6,700万円である。よって、使途が源泉を1億3,700万円上回っているから、この一年間の固定資金運用では1億3,700万円の資金が不足することがわかる。対して、運転資金の状態はというと、源泉が2,800万円で使途が9,900万円と、こちらも使途が源泉を7,100万円も上回る。ということは、この一年間で運転資金が7,100万円不足するということだ。さて、こうして直前2期のA社の資金収支を出してみたところ、合計で2億800万円の資金不足が生じるのだが、これを金利が低いからと全額短期借入金で調達してはいけない。

その理由は先ほども申し上げたとおり、固定資金として運用しているカネの回収には長い時間がかかる。設備投資した翌年に、すぐ全額を賄えるだけの利益がでることなどありえないのだから、つぎ込んだ資金の回収には数年を見込まなければならない。

ゆえに、 一年以内に返済しなければならない短期借入金ではなく、金利が高くても長期で返済していく長期借入金で賄うというのが、堅実な銀行借入と資金調達の定石なのだ。

そして、第44表のように会社の資金の収支を一覧にしてみれば、こういう判断も間違いなくできる。A社は、固定資金不足1億3,700万円を1億5,000万円の長期借入金で調達した。そして、残りの不足分は、短期借入金7,000万円の調達で賄い、借入金の

それでは続いて、直前期の資金導入計画もやってみよう。直前期は固定資金の源泉が1億1,300万円、使途は8,800万円と、源泉が使途を2,500万円上回っており、つまり2,500万円も固定資金から余裕が出ている。

しかし、運転資金の方は1億7,300万円の不足である。よって、A社の直前期の総合資金収支過不足は1億4,800万円であるが、この不足を長期借入金で調達してはならない。不足しているのは日々の決済に必要な運転資金だから、これは短期借入金で賄わなければならないからだ。

よって、長期借入金導入はゼロで、短期借入金は1億5,000万円調達し、差額の200万円は次期繰越金となる。

以上のように、銀行から借金する場合には、その資金の区分をしっかりとつかみ、長期で借りるか短期で借りるかを検討してから資金調達することが、銀行取引の定石なのである。

定石35:銀行借入金に対しては、常に適正な見返り預金を考えよ

いま、中小企業の経営者の多くが、銀行からの融資に戦々恐々としていると思う。我が社は無借金だから、そういった借金の苦労はないのだが、私の経営塾に参加される塾生から話を聞くと、なんだかんだと理由をつけられて、・融資がおりなかったり貸し剥がしを受けたりと苦労されている。

そこで一点、「見返り預金」という配慮を忘れてはならないだろう。見返り預金とは、銀行に融資を申し込む際に要求される預金のことである。会社が銀行から借金すれば、見返り預金を要求されるのが普通である。バブル期などは、とにかくカネを借りてくれ、借りてくれと、あちらがお願いにくる状態だったから、見返り預金など要求されることはなかっただろうが、今はそういうわけにはいかない。

もちろん、表面的にはそういうことが否定されていても、銀行も商売であるからには、当然のごとく見返り預金を要求してくる。どのくらい要求されるかは各行マチマチだが、 一般的には短期借入金の30%、手形割引で20%、長期借入金の場合は10%というのが相場であろう。

短期借入金が一番高く要求されるのは、無担保での貸出が原則だからである。手形割引の場合は、相手側が発行した手形という裏づけがあり、短期借入金ほどではないが、それでも20%ぐらいは見返り預金を要求される。つまり、借入金に対して、20%ぐらいの預金をしないと手形は割り引いてもらえない。

では長期借入金の場合はどうかというと、長期借入金は返済期間が長期に渡るため、必ず担保の見返りを要求される。たとえば土地、建物、あるいは機械設備が担保物件となるわけだが、それを担保に入れた上に、なおかつ預金も要求される。ただし、担保を入れている分、短期借入金や手形割引よりも少なく、だいたい借入金の10%ぐらいが相場というわけだ。

そして、この見返り預金がないと、借り換えの約定金利を上げられたり、追加融資を断られたりするので、見返り預金の分だけは必ず運用預金を確保しておかなければならない。そこで、皆さんも会社の見返り預金を計算して、預金残高が常に見返り預金分を確保しているか確認してみよう。

やり方は、第45表A社の「借入に対する見返り預金検討表」を使って説明する。まず借入金の状況をみると、直前3期は、短期借入を8,000万円、手形割引2,000万円、長期借入を2億7,100万円返済した。よって、A社の直前3期末借入残高は8億5,400万円である。

さて、 一方の見返り預金も計算してみる。まず直前3期の「短期借入金」の見返り預金は、短期借入金の期末残高2億2,000万円×30%=6,600万円。同様に、手形割引は期末残高8,000万円×20%=1,600万円、長期借入金は期末残高5億5,400万円×10%=5,500万円。

よって、A社は直前3期に8億5,400万円の借入に対して、見返り預金用に短期借入金の見返り預金6,600万円+割引手形の見返り預金1、600万円+長期借入金の見返り預金5,500万円=1億3,700万円を、回座に残しておかなければならないということになる。

それでは、実際にA社の預金残高はどうなっているかをみてみよう。直前3期の期首に4億円だが、 一年間の資金運用の結果、2億300万円減って、結果的に期末の残高は1億9,700万円である。

そうすると、見返り預金は1億3,700万円であるから、この期は見返り預金を十分補って余りあるだけの期末残高が残るということだ。

もし預金残高が見返り預金よりも少ないようであれば、A社は返済金額をもっと減らさなければならないし、逆にあまりにも預金残高が多い場合は、高い金利を払ってまで使い道のないカネを手元に置いているということだから、健全性を悪化させない程度に借入返済に資金を充てて、支払い金利を減らして利益の向上を図るべきだ。

効率的かつ健全性の高い資金運用と借入返済のやりかたについては、前著『先読み経営』(日本経営合理化協会刊)に詳述しているので、そちらをご参照願いたいのだが、とにかく銀行借入に対する見返り預金の見積もりというのは、このように計算していただきたい。

さて、同様に直前2期も計算してみると、借入金については、短期を2,000万円借りて、手形を2,000万円割り引いて、そして長期借入金は1億8,000万円返済した。そうすると、直前2期の借入金残高合計は7億1,400万円となる。

これに対する見返り預金を計算してみると、短期借入金の期末残高2億4,000万円×30%=7,200万円だ。同様に、手形割引は期末残高1億円×20%=2,000万円、長期借入金は期末残高3億7,400万円×10%=3,700万円が長期借入の必要見返り預金額となる。

よって、直前2期のA社は7億1,400万円の借入に対して、見返り預金用に1億2,900万円を残しておかなければならないのだが、 一方の預金残高は、1億3,700万円であるから、この期も見返り預金の確保は問題なくできているということだ。

同様に計算すると、直前期も問題ない。借入金8億5,400万円の見返り預金1億4,600万円に対し、預金の期末残高は1億6,700万円であった。これなら、預金残高が見返り預金を下回ることはない。

このように、銀行からお金を借りるときには、短期。長期。手形割引とそれぞれの性格別に掛率を変えて、借入に対して見返り預金が十分あるかを確認しておくことが、銀行との融資交渉において安定した資金の導入につながる大事な条件なのである。

定石36:返済期限は、銀行の約定ではなく自ら決めよ 返済計画のない借人は厳禁する

私の経営塾の塾生に会社の決算書を見せていただくと、非常に長い返済条件で長期借入金を借りている会社が多い。会社によっては、長期資金を20年、30年の返済で借りていて、まるで個人の住宅ローンかと見まがう。

しかし、そういう会社に限って、「20年もの長期で借金して、一体なにに使うんですか?」とおうかがいすると、「普通の設備投資の為に」とか、悪くすると、「とくに目的はないが、手元にカネがあると安心する」と返答される。

銀行から思うように融資が受けられず、資金繰りに大変な思いをしてきた創業社長にこういう考えの方が多いが、これからの金利上昇や経済の低成長化を考えれば、20年も25年もの長期借入を、銀行の決めた返済期限のままに導入してしまってはいけない。何度も申し上げているとおり、これからの日本は右肩上がりの高度成長が終焉を迎え、低成長時代に入った。こういうときに、長期かつ無計画に利息を払い続ける無駄はなんとしても避けなければならない。

よって、銀行からの資金導入に際しては、売上・利益計画だけでなく、資金の面から「どうやって資金をつくり、いくらずつ返済するのか」という確かな計画をもたなければならなもちろん、再三申し上げてきたとおり、確実な返済計画とは、B/Sの長期計画に基づいた計画に他ならない。「毎期いくら売り上げていくらの利益を出すから、それを返済に充てる」などというP/L計画だけでは、まったく具体性も実現性もない。なぜなら、売上の増減という、最も不確実な要素が基礎になっているからだ。

そうではなくて、設備はどの程度増やすのか、土地は買うのかなど、会社全体の5年先までの資金需要を把握し、その資金を銀行から借りるなら長期・短期どちらがいくら足りないのか。そして返済の原資は在庫を減らすのか、売掛期間を短くするのか、はたまた預金を使うのかなど、そのほとんどが社長の意志で実行できるB/S計画こそが、本当の経営計画であり、返済計画なのである。

加えて、きちんとした返済計画を作成することは、融資条件の優遇につながる。考えてみれば当たり前のことだが、貸す側の人間にとっては、本当に返してもらえるのかどうかわからない人間よりも、確実にリターンをもたらしてくれる人間に多く融資したい。当然、多くのリターンが見込める融資先は優遇するし、返済能力があるのかどうかわからない高リスクの融資先には、いろいるとリスクヘッジをかける。

実際に、私の塾で長期B/S計画書を作成し、これをもって融資の相談に行った社長のほとんどは、「こんな素晴らしい計画をお持ちなんですね」と感心され、融資審査なしで何億円もの融資を受けたり、以前の借入金利のだいたい0・3%は下がるなど、銀行から優遇されるようになっている。

ゆえに、今後資金導入については、日標とする事業計画を達成するためには、いつ、いくらの資金需要があって、そのために導入する資金の返済についても、いつ、いくらずつどうやって工面していくかという返済計画を銀行に提示し、その返済計画に基づいた約定で、銀行からお金を借りるという習慣をつけていただきたいのだ。

とくに、中小企業の場合、返済に10年以上を要する借入は、私に言わせれば、分不相応な借入だといわぎるを得ない。少なくとも、中小企業の経営というのは、ROAを高めて小さな元手で大きく儲けるというのが、経営の定石である。

したがって、中小企業が資金を借りる場合は、短期借入は原則として目的、たとえば賞与資金、決算資金、短期の運転資金などの必要に応じて導入し、次の目的までに完済すること。

そして長期借入の返済期間は、通常の事業資金の場合は5〜7年の間に完済するようにし、特別の場合をのぞいて、10年以上返済期間がかかるような借入は厳に慎むということも、あわせて銀行取引の定石として心得ていただきたい。

定石37:会社のお札に二色の色を塗れ

銀行に預けるお金に対して、たとえわずかでも利息を稼ぐ関心をもつこと、これも大切な定石の一つである。

ところが多くの会社が、取引先から月末に入金されたカネを、そのまま無利子の当座預金に置きっばなし、あるいは日商の1カ月分もの現金を平気で会社に置いていたりする。

しかし、これらのカネを一日でも普通預金の回座に入れておけば、わずかでも利息を稼いでくれるではないか。たとえば、3億円を当座に置いている会社なら、現在の1カ月の定期預金の金利が0・03%だから、普通に移すだけで1カ月で7,500円程度の利息が入ってくる。

要するに、利息のつくカネと利息のつかないカネ、2種類のお札に色を塗りなさいと言いたいのだ。もちろん、本当に色を塗れという意味ではないが、会社のお金をただ漫然と置いていても、会社の財務は決してよくならない。利息を稼がない札は必要最小限に抑え、あとの札は利息を稼ぐカネだと、まずは社長が強く意識しないことには、 一円も無駄にしない社風というものはつくれない。

したがって社長は、手許現預金の目標在高を、年商20億円以下の会社なら日商分、年商20億円以上の場合は日商の半分と、明確な金額目標を定めて、これを社内のルールとして徹底させていただきたいのだ。

そこで、手許現預金のコントロール方法を述べる。まず、自社のB/Sの「現金」「預金」のなかで、利息を稼ぐカネと稼がないカネを分けるところから始める。

というのも、 一般のB/Sでは「現金」「預金」あるいは「現預金」という科目に、利息を稼ぐカネも稼がないカネも一緒になっているため、手許現預金の残高がいくらなのかがわからないからだ

第46表にフォーマットを載せておくので、この表のように、利息のつくカネと利息のつかないカネに区分していただきたい。ちなみに、利息がつかないカネは現金と当座預金。

一方、預金のなかの普通預金、定期預金、通知預金、その他の預金は、利息のつくカネである。

それと、有価証券はそのどちらでもないので、この3分類に分ける。そして、このうちの現金と当座預金の合計額が、自社の日商(年商20億円以上の場合は、日商の半分)を超えていないかをチェックしてみればよいのだ。

第47表A社の場合は、直前2期の期末の手許現預金(現金十当座預金)と、期首手許現預金(=直前3期末手許現預金)が100万円だった。一方の平均日商高は、直前2期年商11億5,300万円十365日=320万円である。

つまり、直前2期においてA社は平均日商高320万円の0。3日分しか手許現預金を置いていなかったということだ。

続いて、直前期の実績も算出してみる。直前期の平均日商高は売上高12億4,900万円■365日=340万円。

そして直前期末の手許現預金は100万円だから、こちらも日商のO・3日分であった。つまり、A社はこれまで無駄な手許現預金を置いていなかったということがわかる。

以上、とくに難しい計算は一つもないが、こうして明確に金額を区別して明示しておかないと、手許に使い道のない無駄なカネを置いて、借金するような愚を往々にして犯すのだ。さて、手許現預金の管理において、小売業やサービス業などのいわゆる日銭商売の場合は、とくに注意すべきである。

私の門下生で、地方のレストランチェーンの社長などは、売上が現金で支払いは掛け、という有利な条件で、だいたい2週間分もの現金を当座にいれたまま、という無頓着ぶりであった。

そこで、「手許に置く現金はせめて1週間分にしなさい。私の会社では1日分でも十分なのだから」と社長に申し上げたのだが、「それは無理だ。メーカーとウチの商売とは違うんです。先生も細かいことを言う」となかなか言うことを聞かなかった。

しかし、年商40億円を超えるようになって、「1週間で1億円になる。1億円ものカネを利息も稼がせないまま放置しているのか」と、社長は遅まきながら気づいたのであった。当座預金には金利がつかないことすら忘れている経営者が、世間には案外多いものである。

そもそも手許に置いておく現金は、先ほども申し上げたように年商20億円以下の会社なら日商分、年商20億円以上の場合は、日商の半分の金額で十分だ。ただし、小売業やサービス業などいわゆる日銭商売の会社は、客とのお釣りのやり取りがあるから、この基準外になってもしょうがない。

しかし、それ以外の業種ならほとんど現金を持つ必要はない。スター精密は、現金は本社で50万円、国内各支社は15万円以上は置いていないし、これ以上は必要ない。そもそも、今の日本の商売の形態で、現金払いの取引など基本的には皆無だ。給料が日払いなんて会社はないだろうし、公共料金も事務消耗品も月末払いだ。会社で毎日現金を用意しておく必要があるものといえば、接待雑費と少額の交通費程度であろう。

ちなみに我が社では、この2つについても徹底して現金決済を避けており、接待は数店の指定店があり、これはすべてツケ払いにしてある。また、国内出張の場合、新幹線はすべて回数券、ガソリン代は給油券を支給している。社員全員そうさせているし、もちろん社長の私もこれに従っている。

もちろん、振込先の回座も普通口座である。だいたい、中小企業の社長に振込先の回座を当座にしている理由をうかがうと、「普通預金だと小さな会社だと思われそうで…」とおっしゃるが、そんなくだらない見栄を張っても一円の足しにもならない。

我が社は、社長の私が言うのもなんであるが、非常にケチな会社である。しかし、社長が「たかだか数千円の利息を稼ぐために、こまめに口座を振り替えるなんて面倒くさい」と思っていれば、経理の担当者もこまめに口座を移し替える面倒をえてして省きがちになるし、反対に「一円でも無駄なカネを減らそう」と社長が執念をもって取り組めば、全社員がそのような姿勢で各自の仕事に取り組むようになる。

考えてもみてほしい。手形や小切手の決済日は月に1回、多くても2回、それも決まった日に落ちるのだから、決済前日に必要なカネを入れておけばいい。しかも、現在はインターネットで口座の振り替えが簡単にできるのだから、わざわざ銀行に出向く必要もない。つまり、決して手間がかかることではないのだ。

よって、これまで利息を稼ぐカネに無関心であったならば、まずは金利を稼がなくてもいい当座預金や手許の現預金は「月商の何日分とする」とか「当座預金は5,000万円を限度とする」というように、社長として明確なルールを決めることである。

そして、皆さんの会社の回収口座のほとんどは当座であろうが、できればこれを手形決済以外の回収を全て普通預金に振り替える。さらに、手形の決済が終わったら次の決済日までの間もこまめに当座から普通に移しておくように、経理に細かく指示をするのだ。資金については、このような細かいルールも案外大事である。それは同時に、経理担当者の躾にもつながる。つまり、社風というものは社長がつくるのだ。積極的で伸びやかな社風も、何事にも後ろ向きな暗い社風も、すべては社長がつくり出している。この自覚は大事なことである。

ましてや中小企業は、全社員が社長の方針のもとに一九となってこそ、大企業にはない中小企業ならではの強みや良さが発揮される。

したがって社長は、自らの言動や社内のルール化により「一円に貪欲になる社風」をつくるとともに、その利益追求が私利私欲に走ることがないよう、自らの人格を高める努力を怠ってはならない。これこそが、金融費削減、金融機関取引の、極めて基本的な定石ではなかろうか。

定石38:必ずメインバンタをつくれ そして最善のコミュニケーションを常に心掛けよ

銀行取引の定石の最後は、必ずメインバンクをつくりなさい、ということだ。そもそも、「メインバンク」とそれ以外の取引銀行との違いというものが、明確にわかっていない社長がおられる。よく間違われるのは、借金が多ければ、そこがメインバンクだと単純に思われることだ。

そういう会社は、ヨソから積極的な融資を持ちかけられると、「今度はこっちがメインバンクだ」と思ってしまうのだが、大事なことは、こちらが相手をメインバンクだと認識するように、相手も自分たちがこの会社のメインバンクだとお互いが認め合ったときに初めて、企業と銀行とのメインバンクの関係が成り立つということである。

そして、こういう信頼関係が成り立つためには、業績の良い時も悪い時も、銀行に自社の業績を隠し立てせずに、つまびらかに公開すること。

とくに業績が悪い時ほどきちんと情報公開をして、具体的な業績回復のプラン、すなわち事業計画書、売上利益目標のほかに、5年先までのB/S目標、およびそれに基づいた借入返済の計画を提示して、融資を要請する姿勢を保つことが必要である。

そういう努力をして、メインバンクから有利な融資を引き出せるようになると、自然と他のサブバンクが全部動くようになる。例えばメインバンクが金利を下げてくれれば、他の銀行は間違いなくメインバンクの金利に追従して下げてくれる。

銀行のこういう動きを知っていただければ、メインバンクをつくることがいかに重要であるかがわかると思う。金利一つとっても、銀行からの信用度によってまるで変わってくるからだ。

ひとつ、銀行の融資先査定について述べておくと、銀行というのは、融資先をだいたい5段階に格付けて、信用度の高い会社と低い会社では金利の設定を変えているものだ。

銀行が最も信用力の高い企業に貸し出すときの金利をプライムレートというのだが、格付けの高い企業は、現実にはプライムレートよりもさらに低い金利で借入ができる。たとえば、2011年6月時点で、長期借入金のプライムレートがだいたい1・5%くらいであるが、財務内容が非常に良くて、収益性と健全性の高い会社は、さらにO・2%とか0・3%引いた金利、つまリアンダープライムで借りられる。

一方で、格付けの低い会社にはプライムレートに1%から2%の金利を上乗せした金利、オーバープライムで貸し出される。

ということは、1%近い金利差が生まれるということであり、たとえばオーバープライムで5億円の長期借入をした会社は、アンダープライムの会社に比べて毎年500万円も多く利息を支払わなければならないということだ。

そこで皆さんも、まずは自分が今までどれくらい無駄な利息を払ってきたかを知るために、取引銀行のプライムレートを調べて、自社の金利と比べてみて欲しい。調べ方は簡単だ。プライムレートは各行によって若千の差があるから、借入をしている銀行それぞれの受付窓口に電話して「おたくの現在の短期と長期のプライムレートを教えてください」と言えば、すく゛にわかる。

その際の注意点として、プライムレートは国内外の経済や外交、為替の変動などにより結構変動するものなので、借りた年度のプライムレートで比較した方がよい。たとえば、3年前に借りたものならば現在のプライムレートではなく、3年前のプライムレートと比較するのだ。

若千説明が細かくなったが、とにかく銀行に対して、「あそこの会社のメインバンクはウチの銀行だ」という認識を持たせるよう、常に最善のコミュニケーションを心がけること、これが銀行から有利な融資を受ける定石の一つだということをご理解いただきたい。

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