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3、収益向上への定石

目次

定石12:企業の収益目標は付加価値に対して内部留保5%を最低目標として、できれば10%を目標とせよ

続いて、企業収益の向上についての定石を挙げる。いかなる環境になっても、健全性と収益性を維持しながら経営するためには、少ない原資で確実に利益を出し、その利益を内部留保に回して、しっかりと自己資本を増やす。これが企業経営の本質と述べたが、そのために企業は毎年どのくらいの内部留保を確保すべきかをまず第一に述べたい。

内部留保とは、売上高から原価以下、様々な経費を差し引いて、最終的に会社に残る利益であり、 一般的なP/Lの税引後利益から、株主への配当や役員賞与など社外流出を除いたものである。そして、毎期の内部留保が「諸積立金」という勘定科目として貸借対照表の自己資本の部にどんどん蓄積されていくのだ。

つまり内部留保というのは、個人における貯金と同じで、皆さんが家庭で毎月の収入から将来のために貯金をするように、企業もまた設備投資、あるいは天災や事故など予期せぬ事態に備えた蓄積というものを計画的に行わなければならないのだ。

そして、これまで20年近く、様々な会社の決算書を見て指導してきた私の経験から、この内部留保を付加価値(売上総利益)のだいたい5%確保できる企業体質であれば、将来の倒産の危険は少ないものと判断している。

本来は、内部留保は付加価値全体の10%は欲しいところだが、現在の経営環境においては非常に高いハードルであろうから、5%に満たない会社はとりあえず、今後5年の間に、何とか内部留保率5%を目標に、経費の使い方を考えてみていただきたい。

ところで、なぜ内部留保の最低目標が5%なのかというと、現在の平均的なサラリーマン家庭の貯蓄率平均が5%だからである。たとえば、毎月の給与が50万円だとすると、そこから税金と健康保険、厚生年金、雇用保険などを差し引き、だいたい可処分所得、いわゆる「手取り」は38万円くらいになる。

この手取りが会社の付加価値に当たるもので、サラリーマン家庭では、ここから家賃やら食費やら光熱費、教育費などをやりくりしているのだが、可処分所得のうち、平均で5%は貯蓄にまわしているのだ。

サラリーマン家庭でも高度経済成長期などは平均貯蓄率が20%を超えていたが、バブル崩壊からここまで、だいたい3〜5%というのが平均である。すなわち、 一般のサラリーマン家庭でも平均5%は貯金しているのに、その何十倍、何百倍の人間の生活を守らなければならない会社組織が、これ以下の貯蓄率ではお話にならないというものだ。

ここで、ご自身が家庭の主婦になったつもりで想像してみてほしい。もし、ご主人が10%くらい貯金ができる給料を稼いでいれば、奥様の心情として「毎日、ご苦労さまです」という感謝から、夫の好みのおつまみの支度をして、ビールを冷やして帰宅を待っているところだろう。

ところが、平均である5%の貯蓄くらいの家庭の晩酌であれば、ビールくらいは冷えているだろうが、夫の好きなつまみは、支度していないだろう。せいぜい、南京豆とおせんべいが出る程度ではないか。

さらに貯蓄率3%程度の収入になると、場合によってはビールも冷えていないと思う。主人が疲れて帰ってきても、「おい、ビールは?」「ないわ、表の自動販売機で買ってきてちょうだい」…こんな扱いをされるのが関の山だろう。

これが貯蓄率1%や2%になると、まあ、晩酌の用意など期待しないほうがよい。むしろ離婚届に判を捺して、いつ亭主にぶつけようと思っているかという具合ではないか。1〜2%の貯蓄しかできない収入の亭主の晩酌風景とは、およそこんなところだろう。

しかし、会社の社員というのも家庭の主婦と同じである。どういうことかというと、貯金が1%や2%しかできない家庭の奥さんが離婚届けの用紙を支度しているのと同じような考え方で、内部留保率が5%以下の会社の社員は「どこかいい会社がないか、いい転職はないか」と探しているということだ。

経営者にとって何が寂しいといって、 一度は懐に飛び込んできてくれた社員が社長への信頼をなくしてよその会社を探すくらい、社長として惨めな寂しい思いはないと思う。そこで、内部留保を5%確保できない会社は、自社の収益構造をしっかりと見直して、何が利益を喰っているのかを把握し、今後どのような改善をすれば利益を出しやすい企業体質になるのかという対策を立てなければならない。

定石13:営業経費は付加価値の87%未満とし、できれば80%未満に抑えるべきである

それでは、内部留保率5%を確保するにどうすればいいのか。これには定石があって、だいたい営業経費を付加価値全体の87%未満に、内部留保を10%確保したければ営業経費は80%未満にとどめる体勢を築けば、達成できるのだ。

もちろん内部留保の源泉である付加価値を高められればよいが、これからの時代は企業の生み出す付加価値率が上がることはないと厳しめに見通しておいた方が賢明であろう。そのなかで確実に内部留保を確保していくには、社長が経費の使い方に明確な方針をもたなければ、目標の内部留保額は絶対に確保できないのだ。それでは、付加価値(売上総利益)に対して内部留保を5%確保したい場合から述べていく。

第11表は、先ほどご紹介した佐藤式P/Lである。この表を使って付加価値をどう配分していけば内部留保が5%確保できるか、営業経費以下の科目に数字を入れてみよう。

最初に付加価値の科目に「100」と書き込み、続いて内部留保を5%確保したいのだから、まっ先に表の内部留保のところに「5」と入れておく。そして、下から順番に逆算していくと、最終的に付加価値全体の何割を営業経費に使えるかが算出できるのだ。

まず、内部留保のすぐ上にある科目の「配当金」や「役員賞与」など益金処分であるが、これは株主構成が100%同族のオーナー企業の場合は、「0」とする。なぜなら、配当は税法上、損金とならないいわゆる「損金不算入」だからだ。であれば、社長が株主ならば配当も役員報酬も、社長の取り分に変わりはないのだから、配当は損金算入できる営業経費の科目である、「役員報酬」に一括して計上した方がよい。

同様に、役員賞与も損金不算入であるから、こちらも「0」にして、営業経費の役員報酬で支給するのだ。

このように益金処分をゼロにして、役員報酬に役員の賞与も配当も含めると当期利益がどう変わるかについては、後の「税務署に対する定石」で改めて詳述するとして、とにかくここでは損金不算入の益金処分については「0」とすると覚えておけばよろしい。

さて、役員賞与と配当金をともに「0」とすると、当然、当期利益も「5」のままだ。要するに、当期利益から益金処分を差し引いた残りが内部留保なのだから、逆算すると、内部留保を「5」確保するには、益金処分を「0」にすれば、5(内部留保比率)十0 (役員賞与比率)+0(配当金比率)=5(当期利益比率)となる。

続いて、5%の内部留保を確保するために税引前利益をいくらあげればよいかを計算してみよう。当期利益の上にある項目は法人税充当金だ。これは現在の税率40%に則って、第12表の計算式どおりに算出すると「3・3」と出る。

ついでに事業税引当も第12表の計算式どおりに算出すると、「0・8」となるので、各項目にそれぞれ算出した数字を入れていただきたい。ちなみに、損益計算書なので経費には△ (マイナス)をつけて表示する。そうすると、当期利益の「5」に法人税充当金の「3・3」を足すと、税引前利益は「8。3」となる。つまり、5%の内部留保を確保するために税引前利益は付加価値の8・3%の額をあげなければならないということだ。

もう一度繰り返すと、当期純利益を5%確保するために税引前利益をいくらにしたらいいかというと、税引前利益が付加価値の「8。3」%あって、その40%の法人税3・3%を払うと5%になる。言い換えれば、当期純利益を5%確保するためには、法人税充当金が3・3%になるので、税引前利益を8・3%確保しなければ、5%の当期純利益が確保できない。したがって内部留保も5%確保できない、そういうことになる。

それでは、税引前利益の「8・3」%を確保するためには、経常利益がいくらになったらいいのか。 一般的に特別損益というのは、固定資産の除却損益とか、棚卸資産の除却損益とか、貸倒引当金の繰入だとか、要するにこういった事態の備えとして、常に安全に事業を進めていくための必要経費である。

したがって、最低でも会社として1%は見ておかなければならない経費である。とすると、特別損益を1%確保しておくので、税引前利益を8・3%あげるためには、経常利益は9。3%確保しなければならない。

続いて、経常利益を9。3%確保するには、営業利益は付加価値の何%必要か。金融損益、つまり金融機関への借入または預入れに対する支払利息(損)や受取利息(益)であるが、一般的に見積もると、だいたい付加価値に対して3%くらいが通常の金融費用であろう。したがって、3%の金融費用がかかるとすれば、営業利益は付加価値全体の12。3%必要ということだ。

次の事業税の引当費用については既に0。8%と算出してあるので、営業利益を12・3%あげるためには、税引前営業利益が13・1%ないと、12・3%の営業利益が出ない。さらに、13・1%の税引前営業利益をあげるためには、付加価値100%から13・1%を差し引いて、営業経費を付加価値に対して86・9%以内に納めればよいことがわかる。

ここまでをまとめると、営業経費を86・9%に抑えれば、税引前営業利益が13・1%になり、事業税を払っても営業利益が12・3%になる。さらに金融費を3%払っても経常利益は9。3%出る。特別損益を1%払っても税引前利益が8・3%になる。税引前利益が8・3%の場合には、これの40%すなわち3・3%の法人税充当金が出るから、当期純利益が5%になる。そして、役員賞与と配当金をゼロにすれば、差し引き内部留保を5%確保することができるというわけだ。

もちろん、会社によっては借入の多寡によって金融費が2%で済む会社もあれば5%ある会社もあるだろうが、大きくみて、5%の内部留保を確保するためには、営業経費は売上総利益の約87%未満に抑えなければならないという一つの目安ができる。この目安というのは、企業経営の定石なのだ。

同様の計算方法で、10%の内部留保を確保するためには、役員賞与と配当金を「0」にして、当期純利益は同じく「10」%だ。10%あげるためには、法人税充当金は40%だから、「16・7」%の税引前利益をあげれば、「10」%の当期純利益が出る。

さらに、特別損益が「1」%とすれば、経常利益は「17。7」%あげなくてはならない。

そして、「1」%の金融費用のかかっている会社だと、「17・7」%の経常利益を出すためには、「18・7」%の営業利益を出せばいい。

そして事業税引当は現在税率10%で、法人税率40%の4分の1だから、事業税引当金は法人税充当金「6。7」%の25%で、約「1・7」%となる。

よって、営業利益「18・7」%をあげるためには、税引前の営業利益は「20・4」%なければ、「18。7」%の営業利益は確保出来ない。

したがって、「20・4」%の税引前営業利益を確保するためには、付加価値額全体の「100」%から「20。4」%を差し引いた「79・6」%の営業経費で収めなければならないとわかる。

つまり、こちらも会社によって金融損益などに違いが出るだろうが、それでも10%の内部留保を確保するためには、営業経費は80%未満に抑えることが目安となる。

以上、5%あるいは10%の内部留保率を確保するための経費率87%、80%という数字を定石として覚えておくこと。

そして、定石どおりの経費比率に収めてさえいただければ、無理な売上拡大に走らずとも、確実に5%、10%の内部留保を確保できるのだということを、経費枠という概念で捉えておくことが収益確保のために重要になることをご理解いただきたい。

定石14:固定費を変動費化する努力をせよ これからの企業経営にとって大事なことは安定である

これからの収益向上の要となるのは、やはり「安定」「安全」であろう。すなわち、売上の大幅な伸びが期待できないなかでも確実に利益が出る体勢を築くこと、理想としては、たとえ減収しても増益できる減収増益体勢の確立である。

そこで減収増益体勢をつくるためには、経費に占める固定費の割合を減らして変動費の比率を高めることによって、売上の増減が利益の増減に与える影響を減らすようにすればよい。なぜなら、売上高に占める固定費が多ければ多いほど、売上の増減によって利益の増減も大きくなってしまうからだ。

これを第13表で説明する。上下2つの図は、売上高、利益が同規模の会社で、上図が固定経費比率が変動経費比率よりも高い会社、下図が変動経費比率が固定経費比率よりも高い会社である。

固定費というのは、人件費や賃借料など売上の増減に関係なしにかかる費用のことだ。たとえば、今月は売上がゼロだったとしても、人を雇っている以上、給料は払わなければならない。あるいは、事務所の家賃は売上がゼロでも払うものだ。 一方の変動経費というのは、原材料など売上が発生したときに初めて発生し、売上が増えるにしたがって増える経費である。

ところで、上下それぞれの図の損益分岐点から売上が増加した場合、そして減少した場合の斜線部分の面積に注目していただきたい。

ちなみに、損益分岐点というのは売上高線と総費用線のクロスした地点で、利益ゼロ損失ゼロということだ。すなわち、損益分岐点より売上が下がれば、売上高線よりも総費用線が上に位置するようになり、総費用線と売上高線の幅だけ損失が出る。反対に、損益分岐点より売上が増えれば売上高線が総費用線を上回り、売上高線と総費用線の開きの分だけ利益が出る、というように図を見ていただきたい。

そうすると、上下それぞれの会社の斜線部分の面積は、固定費が高い会社の方が大きいことに気づかれるだろう。つまり、固定費の高い会社というのは、低い会社に比べて、たとえ売上の減少幅が同じでも利益の減少が大きくなるのだ。

逆に、固定費の低い会社というのは、売上が増えても利益の増え方が少ないともいえる。上下2つの会社の損益分岐点から右側の斜線部分の面積を比較すればわかるように、売上が同じだけ増えた場合、固定費比率の低い下図の会社の方が斜線部分の面積は小さい。

要するに、固定費比率の高い会社というのは固定費比率の低い会社に比べて、売上高の増減が利益の増減に大きく影響するということである。売上が増えた場合の利益の増加は大きいが、そのかわりに売上が減った場合は利益の減りが大きい。

そうすると、これからの企業経営としてどちらを選ぶかを考えた場合、冒頭にお話ししたように、低成長、低収益の時代はとくに、売上の減少によって利益が大きく変動する会社よりも安定した企業形態を求めていくことが必要になってくるといえよう。

そうなるとやはり、固定費を減らして、変動費比率を高めるやり方が、企業収益確保の定石なのだと申し上げたいのである。

定石15:今まで以上に資金繰りには注意せよ 無駄な支払い利息は誰も喜ばない

収益確保で重要な項目の一つに金融費がある。会社を儲からない体質にしている元凶は、とくに中小企業にとっては営業外損益の金融費だろう。そう考えて間違いない。

金融費がいかに利益の上昇にブレーキをかけているかを知るには、付加価値に対する金融費の割合を考えてみるとよい。

仮に製造業の会社で付加価値が売上に対して40%だとして、金融機関への支払利息と受取利息、手形の割引料、社債を発行している会社は社債の利息の合計、つまり金融費が付加価値に対して3%以上ある会社はかなりの危険水域にある。

だいたい、これまで20年近く、のべ千数百社の決算書を見てきた私の経験として、製造業で付加価値が40%以下かつ金融費が3%以上ある会社は、根本的にバランスシートを直していかない限り倒産の可能性がある。この基準に学術的な裏付けがあるわけではないが、現役の経営者であり、20年近く様々な業種業態の会社の経営指導をしてきた経験上の意見だ。

とにかく、過去5年間でこの金融費の割合が上昇傾向にあるなら、経営者として深く反省しなければならない。毎日一所懸命働いてくれている社員を銀行のために働かせるおつもりカ

あるいは、カネを貸す銀行の方にしても、受取利息が入ってくればそれで良い、というわけでもない。銀行が望む融資先とは、堅実に成長し、長期にわたって安定的に借り入れてくれる会社である。野放図に金融費が増えてくるような会社は、銀行にとっても決して好ましい取引相手ではないだろう。

要するに、会社の金融費が増えて喜ぶ人など誰もいないということだ。したがって社長は、今後ますます資金繰りの改善に注力し、無駄な金融費を払わないようにすることが、収益確保のための大事な定石なのだ。

そもそも、会社は銀行に金利を払うために仕事をするわけでもないし、銀行のために仕事をするわけでもないのは、当たり前のことである。ところが、世の中の好・不況のはざまで、必ず5年も10年も金利を払うためだけに仕事をする会社があとを絶たない。

そのような会社の社長は「強気が裏目に出た」と言い訳をするのが常であるが、決算書、とくにバランスシートをしっかりと読み込んでおけば防げたことも多いはずだ。かつて高度成長時代には「借金も実力のうち」と、借金によって事業を拡大していくことこそが、事業発展の定石のように言われたときもあった。

確かに、大幅なインフレが続くことを前提にすれば、借りたときの1億円は返済時に実質4,000〜5,000万円、借金して整備した土地を購入しておけば、高い金利を払っても十分に元がとれた。おまけに、必ず利益が出ていれば、利子は経費処理できるから、「借金しなければ損だ」とまで公言する経営者も少なくなかった。

しかし、これからはどうだろうか。5年先、10年先を見通したとき、従来のような借金しなければ損、という考え方は捨てなければならないと私は思う。これからは社長として、決算書の要点をはっきりつかんで、資金を効率よく回すことが一層大事になってくる。自分の失敗をインフレ経済が帳消しにしてくれると期待してはいけないのだ。

ゆえに、金融費は極カゼロに近づける努力をして、余計な借金をして儲けを減らさないということを、社長は肝に銘じていただきたい。

定石16:計画の作成については、常に厳しい見方をせよ そして、そこまで悪くならなければ儲けものと思え 一度増やした経費を減らすことは至難の業である

本書で繰り返し「社長最大の役割は先を読むこと」と申し上げたが、企業収益を確保する定石として、常に厳しい見方をせよと申し上げたい。とくに、これからは数年前とは比べものにならないほど不透明で、神様でもお釈迦様でもわからないからだ。

こういう経営環境において安定的に、確実に収益をあげていこうとするならば、常に最悪を想定しておいて、それでもどうにかなるように手を打っておくほかない。非常に嫌なことだが、これが収益確保ひいては会社の安定的存続のために重要となるのだ。

というのも、経営において将来を甘く見積もることほど危険なことはないからだ。売上を多めに見積もると、付加価値を多めに見積もることになる。そうすると、当然のことながら経費に対する意識もゆるみ、予定していた売上があがらないと、簡単に赤字が出る体質になってしまう。しかも、 一度増えた経費を再び下げるというのは、至難の業である。さらに言えば、売上を甘く見通して在庫や売掛金を野放図に増やしてしまうと、想定外の売上激減にさらされた際に資金がショートして、倒産という最悪の事態も招きかねない。

よって、経営というのは常に厳しく見通していかなければならないのだ。たとえば、売上の伸び率が今後5年で2%ずつ下がっていくと想定しておけば、売上が落ちても利益を確保するためには、各経費をどの程度に収めねばならないか、具体的な数字を伴った見通しができるようになる。

そうして不況をしのげる体勢をしっかりと築いておけば、予想に反して売上が伸びればその分がまるまる利益の増加につながる。すなわち、企業経営において一番大事な収益確保の定石は、常に厳しい見方をする、そして、「そこまで悪くならなければ儲けもの」というか、言い方はおかしいが、むしろ良く狂ってくれる分には構わないというぐらいに、常に厳し過ぎるくらいの見方をするということが、収益確保の大きな条件である。

定石17:年度計画を作ったら毎月予実対比の打合わせを実行し、変動に対して対策を検討せよ これを繰り返すことで日標達成が可能になる 

収益確保についていぐつかの定石を述べたが、ただ定石を知っているだけでは収益確保は達成されない。

やはり収益確保の目標を設定した場合に、その目標どおりいっているかいないか、いっていないとすればどうしたらいいのかということを、必ず月次でチェックし、それに対する対策を打っていかなければ、目標は達成できないという定石を考えてみていただきたい。

そこで、年度計画に対する月次管理のやり方を、ひとつの雛形を使って説明しよう。第14表をご覧いただきたい。これは、年度計画の半期における月次管理表であるc

縦の項目を上から順に述べていくと、まず売上高の半期目標額が15億円で、その下に外部仕入の経費を10億5,000万円と設定している。そうすると売上総利益の目標は4億5,000万円である。そこから内部費用を3億3,000万円、以下、営業利益1億2,000万円、営業外収益500万円、営業外費用1,400万円、経常利益1億1,100万円と設定した。

そして、毎月の目標額と累計を4月、5月、6月…と6カ月分入れておくのだが、たとえば4月の売上目標額が3億3,000万円、5月が3億円、6月が2億1,000万円…と、半年の目標額である15億円を6カ月でいくらずう達成するかを書く。

さらに、累計の目標は4月が3億3,000万円で5月が3億円だから、それぞれ4月は3億3,000万円、5月の累計額は6億3,000万円…といった具合である。

こうして、年度がスタートしたら月末ごとに集計して書き込み、幹部を集めて「今月は目標通りに達成できたか。もしできなかったならば、その原因は何で、対策はどうするか」を話し合い、実行するというサイクルを続けるのだ。

ちなみに、スター精密は常に5年後までの計画を立てて、1年ごとに計画と実績の差を分析して計画を練り直していると前述したが、月次の管理もこの年度単位の実績管理と同じようにやる。

つまり、まず大きく5年先の目標を立て、これを達成するための1年ごとの計画を立てる。次に1年の目標を上半期と下半期に分けて、まずは上半期6カ月において毎月の計画を立てる。そして毎月末に計画と実績の差をチェックして、次月以降の軌道修正を図るという具合だ。

さらに、上半期が終わったら今度は下半期6カ月における月次目標を設定し、同じように毎月末に計画と実績の差をチェックして、次月以降の軌道修正を図る。これを続けると1年が終わるので、年間計画と実績のチェックをして、次年度以降の軌道修正を図る。非常に地道な作業の繰り返しであるが、企業経営というのは、いいところを伸ばして悪い

ところを直すことの積み重ねである以上、毎月毎月、日標と実績の差を検証してその原因をつかみ、それに対する対策を打つということを繰り返し実行することで、日標は必ず達成されるのだ。少なくとも年度計画に対しての進展度は、9割以上の精度で目標達成が可能である。

したがって、月次管理を絶えず行うことが企業の収益確保の一つの定石であり、皆さん方にもぜひ月次管理をやっていただくようおすすめする。

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