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第一章 私が経験した起業

目次

はじめに

経営者は、毎日答えのない選択と決断を繰り返しています。

その決断を下すために必要な情報を如何に集めるのか?

特に企業の生命線であるキャッシュに関して重要な役割の一端を担うのが税理士かと思います。

高齢化・ IT化が進む昨今、税理士業界も今大きく変わり、税理士の役割が見直されようとしています。

そして、従来の税理士とは違う新しい税理士像を求める経営者が増えています。

そう言えるのは、税金の計算だけをしてくれるちょっと相談し辛い先生よりも、親身に相談に乗ってもらえる社長の味方になってもらえる若手先生に契約を変える方が増えているからです。

まさに士業からサービス業へと変わろうとしているのです。また、税理士事務所の業態も多様化しています。所長ひとりとあとは補佐が数名いるひとり税理士事務所、所長以外にも月次担当者が数名いる20名規模からなる中堅事務所、複数の支店があり 50名以上規模の大手税理士法人、またはコンサルティングファームや大手上場企業に直接雇用されている社内税理士、国際税務などのより専門業務に特化した税理士など、税理士とは言ってもその業態や体制は様々です。

本書では日頃、経営者のみなさんが漠然と抱いている税理士に対する「税理士には何をどこまで依頼できるのか?」「世の中にはどんな税理士がいるのか?」「うちの顧問料相場はいくらなのか?」といった疑問から、上手な税理士との付き合い方や失敗しない税理士の選び方まで公開させて頂いています。

そして、今回は中小企業に最も寄り添ってもらえる立場にある、ひとり税理士事務所と中堅事務所について、より詳しく書かせて頂いています。本書が御社の今後の税務・財務強化につながり事業の継続・発展のヒントになれば私も嬉しく思います。

10年間で 1000人の税理士と面談した結果

第一章  私が経験した起業

新卒で入った企業が 1年で倒産

弊社は現在、税理士の紹介サービスを事業として行っております。

簡単に説明しますと経営者の方から相談を受け、その経営者の業種や業態、年商などを考慮してふさわしい税理士を紹介するという仕事になります。

会社は二つとして同じものはありませんし、税理士も人によって得意分野や経験が異なりますので単純にマッチングすればいいというわけではありません。

でも、適切なマッチングができれば無駄な倒産は避けられますし、事業は安定し会社は本当に成長するものなのです。  

今でこそ、多くの経営者、税理士から感謝されるようになりましたが、ここまでは紆余曲折がありました。

本編を始める前に、まずはこれまでの私の紆余曲折となぜ税理士紹介サービスを提供することになったのかについてお話させていただければと思います。

私は、もともとは経営や起業には関係ない大学に通っていましたが、将来的には自分で起業することを考えていましたので、就職する際には様々な経営者に会うことができる仕事を選ぶことに決めました。

経営者から色々なノウハウを聞いて、自身の起業に活かせればと考えたわけです。

そこで就職先として選んだのが年商 40 ~ 50億円程度のコンサルティング業務を行っている会社です。

配属された部署で、私は新規のクライアント開拓と開拓したクライアントの記帳代行、会計コンサルティング業務を行っておりました。

その頃の新規開拓はまさにどぶ板営業でした。

新設法人のリストやタウンページにあるリストに片っ端から電話したり、飛び込み営業でアポイントを取っては営業に行くという営業方法です。

現在弊社では、ウェブマーケティングを駆使して新規のお客様を獲得しておりますが、当時のアポイントを取った訪問先がクライアントになるまでの苦労を考えると、弊社を信頼してくれる目の前の 1件 1件のお客様がいることのありがたさは決して忘れることはありません。

飛び込み営業などのどぶ板営業を敬遠する人は多いものですが、そうした経験こそが、今の 1件 1件のクライアントのお役に立ちたいという想いにつながっていることと考えています。

さて、新規開拓で少しずつクライアントができるようになると、クライアント先の経営者との打ち合わせも増えていくことになりました。

財務に関する打ち合わせなので、担当者ではなく、直接社長と話をすることができます。

毎月社長と面談を行い、どんな戦略が正解だったのか、また失敗だったのかを学べたことはとてもいい経験になりました。

そんなわけで、新卒で入った会社において、私は社長賞を受賞するほどに仕事に打ち込んでいたのです。

ただ、 1年半ぐらいすると会社の状況が少しずつ変わってきてしまいました。

倒産する会社にいた経験がある人なら分かるかもしれませんが、会社の業績が傾いてくると社内がざわざわとしはじめ、役員陣もせわしなく動くようになってくるのです。

銀行員や生命保険会社の担当者の来訪が増え、社内でも色々な噂が飛び交うようになります。

なんとなく会社に危機感を感じ始めると、従業員によっては転職先を探し始めたり、またクライアントを抱えたまま別会社に移動する人が現れ始めました。

私はというと、自分の会社が倒産する経験はなかなかできるものではないと考えて、最後まで残ってどうなるかを見ることにしました。

会社に残って沈み始めている船に乗り続けることを選んだわけです。

船に乗り続ける選択肢を選ぶと、少しずつ会社の状況が分かってきました。

私がいた部署では記帳代行を業務として行っていて、事業としては安定していたのですが、会社が傾くことになった原因は教材販売を行っている別の部署が原因でした。

その部署では、教材を販売して資格を取得してもらって、その資格を取得した方に仕事を斡旋するというビジネスを行っていましたが、ただ、教材を加入しても結局途中で挫折してしまう人は多いものです。

そんな中、特定商取引法の改正により、役務を提供していないお金については返金しなければいけないことになりました。

そうなるとどうでしょう。途中で挫折した人からの返金要請が相次ぐことになったのです。

売上金が現金として保全されていれば返金に応じることはできますが、会社は成長段階でまさに先行投資を繰り返している段階だったために現金が手元に残っていなかったのです。

現金が手元にない会社に返金要請が相次ぐわけですから会社は一気に傾くことになり、そして、最終的に会社が倒産することになってしまったのでした。

成長段階の会社であっても、また、年商が 40 ~ 50億円ある会社であっても、会計上や財務上の問題で一瞬にして傾いてしまうことはいつの時代でもよくある話なのです。

2社目での財務責任者としての経験

もともと私は最初の会社には 3年ほど在籍する予定で就職しました。

3年という期間を設け、その中で懸命に働いていることできっと見えてくるものがあると考えていたのです。

3年という期間を設けることでモチベーションを維持して仕事に取り組んでいた私は、営業成績はいつも 1番で、クライアントの役に立てることにやりがいも感じながら仕事に取り組んでいました。

結局は 3年どころか、 1年半で倒産することになってはしまいましたが。

もちろん、倒産したとはいえ、 1年半働いている中で学んだことはたくさんありました。

例えば、売上であってもその売上に応じた対価を提供していない場合は、そのお金は保全しておく必要があることも身をもって経験できたわけです。

本来、サービス提供の対価としてお金をいただくわけですから当然といえば当然ですよね。

また、会社が傾いたときにどうなるのか、その時の従業員の対応についても知ることができました。

自分の会社が倒産して欲しいと思っている人はいないと思いますが、あえて倒産する会社に最後まで残ってこそ分かること、勉強になることはたくさんあるものです。

さて、倒産後ですが、私がいた部署はそのまま部長が部署を買い取る形になりました。

もともと、私がいた部署は業績が悪くなかったですし、クライアントさんに極力迷惑をかけない形ということで、新会社がそれまでの業務をそのまま引き継ぐことになったのです。

私は営業成績がよかったこともあり、ありがたいことに新会社に残ってくれるよう懇願されましたが、結局私はここで一度見切りをつけようと決断することにしました。

次にどうしようかと考えていたところ、私はクライアントの中の 1社の会長から様々な会社を紹介いただいて、紹介された会社で面談を重ねる日々を送りました。

でも、実は私はその会長の会社で働きたいと考えていました。

その会長の会社はクライアントの中の 1社だったために財務状況をしっかりと分かっていましたし、財務内容を見ても私がお手伝いできることがたくさんあると感じていたのです。

そんなわけで会長にお願いし、運よくその会社のお世話になることが決まったのでした。

そこは、年商 3億円ぐらいの会社で英会話スクールを運営している、今まさに伸びている会社だったのです。

英会話スクールといっても教室を運営しているのではなくカフェなどで教えるスタイルで、英語を学びたい生徒と英語の先生をマッチングする仕事でした。

ちなみに私は、ゆくゆくは起業することを考えていましたので、会長には「僕、いずれ辞めますよ」と宣言して入社することになりました。

もちろん、会社に在籍しているうちには精一杯仕事することもお約束しましたが。

この会社で私が担当したのは財務を強化する仕事です。

実は、起業して 1億、 2億、 3億と伸びている会社は往々にして財務体制が整っていません。

成長力はすごいかもしれませんが、一方で財務が脆弱であったり、そもそも力を入れていないケースが本当に多いんです。

攻める力が圧倒的に優れている一方で、守りがおろそかになっていることが多い、そんな状況で成長の歯車が狂うとどうなるでしょうか?

それは、まさに私が新卒で入社した会社で起きたことでした。

そうならないよう、私は成長力を維持しながら財務を健全化する仕事に力を入れていったわけです。結局私はこの会社に 2年いることになるのですが、この会社では成長の原動力となっているマーケティング力なども同時に学ぶことができ、とても有意義な経験ができましたし、私もしっかり貢献できたと考えています。

ここまでで社会人として、最初の 1年半と 2社目の 2年半で合計 4年経過したわけです。

27歳で起業・・・暗黒の 3年間

2社目を辞めた後は色々な会社の財務のお手伝いをしながら 1年ほど過ごしていました。

気づくと 27歳になっていた私は、いよいよ起業のタイミングだと考えました。

そして、あっさり私は起業してしまったのです。

これが暗黒の 3年間につながります。

今思うと、私はそれまで苦労したことがあまりありませんでした。

最初の会社は倒産こそしましたが、営業成績もよかったですし、仕事で困ったり躓いたりした経験があまりなかったのです。

また、 2社目もあっさり決まりましたし、私自身の仕事を考えてみても成功体験であって、決して失敗体験ではなかったわけです。

そんなわけで私は結果として安直でノープランな起業をしてしまうことになるのです。「きっとなんとかなる」当時の私は本気でそう考えていたのです。

当たり前ですが、起業した直後は収入がありません。

そして、入ってくるお金がないとなると、当然ですが家賃が払えなくなります。

貯金に力を入れていたわけでもない私は起業後、いとも簡単に住むところを失くしました。

お金がなければ食べることもできませんから、毎日のご飯にも困ることになります。

起業したことで衣食住のうち、食と住が一瞬にして不自由になったわけです。

では、衣食住のうちの「衣」はどうだったかというと、実は着るものもとうに捨ててしまっていて、「衣」についてもスーツ一着とジーパンだけという有様でした。

「なんとかなる」はずが「なんともならなくなる」とどうなるかご存知でしょうか。

まずストレスで視野が狭くなり、自分に自信がなくなって卑屈になります。「あいつは悪いことをしているから上手くいっているんだ」「上手くいっている人は運が良かっただけだ」

このように、物事を曲がった見方しかできなくなると、本来自分が持っている能力すら発揮できなくなってしまうのです。

冷静さを失い、焦りと苛立ちの感情にのまれ、負のスパイラルに陥っていくことになります。こうなると誤った選択肢ばかりを選ぶようになってしまうのです。これは、資金繰りが悪化した時のストレスで経営者がよく陥りがちな状態です。

会社が上手くいっている時には正しい判断ができていても、余裕がなくなるとどうしても誤った判断を繰り返すようになり、結局は倒産に向かって突っ走ってしまうことが結構多いのです。

少し話が逸れましたが、負のスパイラルに陥った私は、まさに誤った選択肢である「消費者金融に手を出す」という選択肢まで考えるようになります。

それでも、収入がないので貸してもらえなかった事が後々助かったのですが、それでもいつ終わるとも知れない暗黒時代を過ごし続けることになります。

一番辛かったことは、やはりご飯を満足に食べられないことでした。お腹が空きすぎると人は寝られなくなります。  漫画喫茶を渡り歩きながら生活をして、お腹が空きすぎて寝られないので水を飲んでお腹を膨らまして寝るという生活が続き、事業のことに集中したいのに、頭の中はいつも資金繰りのことばかり・・・、「このままでは駄目だ」何度もそう考えるのですが、お金がなく心の余裕がないといいアイディアすら浮かばないものです。

結局こんな生活が 1年近く続きました。そのため資金がショートする怖さは身をもって痛感しています。

実家に帰るお金もなく親に心配されて、本当に暗黒な時期ではありましたが、それでも諦めずにもがき続けると、本当に少しずつですが光が差し込んできました。

「このままではだめだ」を何度も繰り返して、何度目かでようやく会計の仕事でいただいたお金をコツコツ貯めることができるようになり、小さな自宅兼事務所を借りることができたのです。

電話線を引き、私は寝泊りができる自宅兼事務所を構えることに成功したのでした。

きっかけは一件のテレアポ受電

自宅兼事務所を構えたといっても、生活が苦しいことに変わりはありませんでした。

数少ない会計のコンサルティングの仕事で食いつなぎながら毎日を過ごすだけで、「現状の維持」はできても「現状の好転」までには及ばなかったのです。

でも、そんなある日、ホームページ制作会社を名乗る人から 1件のテレアポがかかってきました。その電話は「ホームページを制作しませんか?」という、いわばありがちなセールスだったのですが、実はこれが大きな転機となります。

当時はまだホームページをもっていない会社が数多くあり、また、ホームページを用意したほうがいいかなと考えていたこともあり、私はとりあえず話だけ聞いてみることにしました。

ホームページ制作会社の方が来てくださり話をしていると、「税理士の紹介とかはしていないんですか?」と聞かれました。

私は、財務を改善するコンサルティングを仕事としていたのですが、実際の税務署類の作成や提出などは税理士さんにお任せすることになっており、「確かに税理士の紹介までワンストップで提供できたら便利かもな」というインスピレーションが浮かびました。

ホームページ制作会社の方はさらに、税理士と経営者のマッチングサービスを提供しているサイトがあることも教えてくれました。

教えていただいたサイトを一通り調べてみて私は「勝てる!!」 純粋にそう思ったのです。

よくよく調べてみると、税理士のマッチングサイトは会計の知識が脆弱な I T企業が運営していて、掲載されている情報はどれも見様見真似の素人同然のように感じました。

その時、

  • 最初の会社で知った、経営者の会計に関する要望
  • 私自身の会計知識
  • 2社目で学んだマーケティングの知識

などの点がつながり、線となったのです。今でも、テレアポで電話をくれたホームページ制作会社さんには本当に感謝しています。

決断!税理士紹介 1本で勝負する

それまで財務コンサルティングを仕事としてきましたが、私は心機一転、税理士紹介 1本で勝負することを決断しました。

最初のホームページのひな形をそのホームページ制作会社さんに依頼して作ってもらい、ホームページに掲載する文章やコンテンツを私が作りました。

やはり会計の知識が一番のポイントと考えており、実務がわかる私だからこそ、ただの仲介ではないサービスを提供できると考えたのです。

また、もう一つのこだわりとして、私は経営者の方とも税理士とも、できる限り顔を合わせて面談するようにしました。

ただのマッチングではなく、経営者の悩みや展望、想いなどの「ニーズ」をしっかりと把握し、その「ニーズ」に合わせた税理士を紹介することにしたのです。

それぞれの税理士について、

  • どの分野が強いのか
  • これまでどんな企業の担当をしてきたのか
  • サービスとしてどんな月次サービスを展開しているのか

を徹底的に把握してから紹介しているため、経営者から非常に好評となり、税理士との関係に悩む新規の経営者を紹介してもらうことも増えていきました。

また、ミスマッチが少なく、紹介後は長期間に渡って顧問関係が続くため、税理士からも大変喜ばれたのです。

ちなみに、本書で強調していることなのですが、特に年商 5000万円ぐらいの会社規模になると税理士との相性が非常に大切になります。

年商 5000万円を達成した後、そこからさらなる成長を目指すことを考えているのか、それとも事業規模を大きくせずに現状の年商を保っていくのかでも紹介する税理士がまったく異なるのです。

税理士の紹介やマッチングだけを目的としたサービスでは、ここで経営者と税理士の不一致が生まれやすいので、あえてここは面談して紹介するというアナログな方法をとっているわけです。

私どものサービスは、以上のように会社を希望の方向に向かわせるための手段として税理紹介を行っているので、単純にマッチングだけを行っているサービスに比べて高い評価をいただけているのだと自負しています。

なお、経営者の方によく「御社に顧問税理士をお願いできないですか?」と聞かれますが、それはやっていません。経営者のニーズや目的を聞いて、それにふさわしい税理士を紹介することが私たちのサービスです。

10年間で 1000人の税理士と面談した結果

サービスを開始してこれまでに 10年ぐらい経験してきましたが、悪い業者も結構いるものです。  今でも税理士を送りこめばそれでいいだろうというような、経営者の悩みや今後の展望を聞くことなく税理士を紹介するところだって多いのが実情です。

あとで問題になる可能性を考えれば、よくそんな無責任なことができるなと思いますが、実際にそういうところがあるのです。

私はこれまでに 1000人ぐらいの税理士と面談してきましたし、 1000件程の契約にも立ち会ってきました。  ただ紹介するだけでなく、成長のきっかけのお手伝いこそが私たちの強みだと考えて取り組んできたわけですが、その結果、今では会って 5分ぐらいすれば、その税理士さんの得意分野が分かるようになりましたし、経営者の方も少し話せばどんな税理士さんが適切なのかも頭に浮かびます。

マーケティング等に ITは利用していますが、結局は人と人ですからアナログな部分こそが大事なのです。

ちなみに、これまでの実績が認められ、税理士業界では知らない人がいない出版社にお声がけいただいて本を出版させていただくこともできました。

税理士向けの経営に関する本で、成功している税理士をタイプ別に分けて解説した本なのですが、実は他業界の人にも好評いただいている本なので、よろしければ手に取ってみてください。

税理士事務所7つの経営戦略(清文社) https:// www. amazon. co. jp/ dp/ 4433641464/  以上が、私のこれまでの歩みです。

次章からはいよいよ実践的な内容になります。

これからどうしていくべきか、また事業規模が大きくなってきて税理士の変更を考えている経営者にこそ役立つ内容なので、自身の会社をイメージしながら読んでいただければと思います。

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