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CHAPTER 2心を眠りに誘うハック

CHAPTER 2心を眠りに誘うハック「モンキーマインド」という言葉、聞いたことがありますか? 1日が終わり、ようやく布団にもぐり込んで、疲れを癒す静寂の時間が訪れました。ところが、このまま朝までぐっすり……のつもりが、何だか頭のなかが騒がしい。「昼間のアレ、どうなったんだっけ?」「明日、もしうまくいかなかったら、どうしよう……」「すぐ寝るつもりだったのに、何だか眠れないよ」穏やかな気持ちで眠りにつきたいときに限って、心をかき乱す厄介な雑念の数々。これこそが、モンキーマインドです。眠りを邪魔する考えや思考を、枝から枝へ大騒ぎで飛び移る猿にたとえてこう呼んでいます。この章では、心を鎮めたり気をそらしたりして、静かで平穏な境地へと入っていくコツを紹介しています。モンキーマインドをシャットアウトして、夢のような眠りの時間を手に入れましょう。

目次

036 5つの「イイコト」を数えよう

羊を数えるのはやめて、幸運を数えてみませんか? 毎晩、今日 1日の「イイコト」を 5つ書き留めるか、声に出して言ってみるのです。ほんのちょっとしたことでかまいません。「オフィスで誰かにお茶を淹れてもらった」「スーパーで特売品を手に入れた」「一度も赤信号にあたらなかった」「お財布に 500円玉があった」 「『そのシャツ、いいね』と言われた(うれしかった!)」 ……そんなささやかなことでいいんです。 英国とカナダの大学が実施した心理学の研究から、感謝の日記を書いたり、就寝時に悪いことではなく良いことを考えたりすることで、より早く、より長く眠れることがわかっています。 ぜひやってみてください──感謝の気持ちに想いをはせるだけでぐっすり眠れるなんて、素敵な 1日のしめくくりになりそうです。

037 「心配事の嵐」は、声を出して封じ込めよう

ベッドに入ったときに「心配事の嵐」に襲われたら、とにかく、しゃべってみましょう! 声に出して話すときに使う脳の領域は、心のなかで否定的な思いを反芻するときに使う脳の領域とは異なります。 話すことは、頭のスピードをゆるめるのにも役立ちます。 一方で思考は、物理的に話すよりもはるかに速く流れていくからです。心配事が頭に浮かぶたびに「もっとゆっくり」と言うだけで OKです。その後、悩みに立ち向かうための前向きな考えや思いつく解決策を声に出してください。 バンガー大学が実施した研究で、被験者に書面による指示を与え、黙読するグループと声に出して読むグループに分けました。集中力とパフォーマンスを測定したところ、どちらも指示を声に出して読んだグループのほうが優れていました。自分の声を聞くことで、状況をコントロールしやすくなるのだと考えられています。 多額の請求書が届いて予算オーバーしないか心配になったときは、こんなふうに声に出して言ってみましょう!「明日になったら、銀行の残高を調べよう」「今月の予算リストを書き出してみよう」「次の数週間ちょっと節約すれば、何とかなるよね」 ちなみに、この戦術は、小声でささやいても同じように効き目があります。大声で宣言して夜中にパートナーを起こしてしまっては、どちらにとっても安眠につながりませんね!

038 悩みを抑え込まない

寝る前に「白いゾウのことを考えてはいけない」と言われたら、白いゾウのことがくり返し頭に浮かんでしまうものですよね? 同じように、寝る前に心配事を抑え込もうとすると、逆効果! 何度も思い出してはストレスを感じることになりかねません。 興味深い研究があります。オックスフォード大学の研究者が被験者に、眠る前に最も頭のなかを支配しそうな「考え」をひとつ選んでもらいました。経済的な不安、進級できなかったらどうしようという心配などです。その後、被験者はふたつに分けられ、ひとつめのグループは「考えを抑え込むように」と言われ、ふたつめのグループは「リラックスして自由に考えを行き来させるように」と言われました。 ……さて、結果はどうなったでしょうか? 考えを抑え込むように言われたグループは、自由に考えたグループに比べて、寝つくまでに時間がかかり、睡眠が中断される回数が多かったのです。 自分の思考をむりやり抑制しようとすると、思考が増大するだけではなく、脳が動揺します。そうすると、脳は「リラックスモード(睡眠)」ではなく、「忙しく作業するモード」になってしまうのです。ですから、眠る前には考えを排除しようとせず、自由に行き来させるようにしてください。 心配事が浮かんだら、その存在を認めて、落ち着いて心配事にこう話しかけましょう。「頭に浮かんでくれてありがとう。今はあなたに何もしてあげることができないんだ。でも、明日対処するからね」と。 静かな心を保つことで、「警戒することは何もないよ」と脳に伝えることができます。そして「今は問題解決のために何もする必要はないんだよ」とさらに言い聞かせれば、眠りに落ちる可能性がはるかに高くなるのです。

039 あえて眠らないようにする

眠りたいのに、眠らないようにする……!? 一見、矛盾しているようですが、これが案外とうまくいくかもしれないのです。 グラスゴー大学の研究者は、不眠症の人をふたつのグループに分け、ひとつめのグループには通常通りに寝てもらい、ふたつめのグループには、ベッドに横になって目を開いたまま、できるだけ長く起きていてもらいました。……さて、結果は? なんと、できるだけ長く起きていようとしたグループのほうが早く入眠し、眠ることへの不安が少ないことが報告されたのです。入眠は自動的に起こるプロセスです。そのため、眠ろうと意識することで、そのプロセスが阻害される可能性があるのだと考えられています。加えて、「眠らなければ」というプレッシャーなしにベッドに入ることが、プラスに働いているようです。

040 あなたの幸せな場所へ

金色に輝く砂浜、日陰の川沿いの散歩道、透き通った水がはじける滝、色とりどりの花が咲き乱れる野原……。 オックスフォード大学の研究から、不眠症の人は「幸せな場所」や「リラックスできる景色」を思い描いたときのほうが、何も考えないようにしたり羊を数えたりしたときよりも、 20分寝つきが早くなったことがわかりました。 羊を数えるのはわりと根気が必要で、面倒になるときもあります。そのため、不眠症の人が羊を数えても心配事から気をそらすことができません。一方で、幸せな場所のイメージに没頭することは、楽しくて夢中になれるために、気がまぎれるのだと考えられています。 さらなる研究から、不眠症の人は、ぐっすり眠る人に比べて、眠ろうとするときに不快なイメージを想像する割合が高いことがわかりました。 自分にとって心地良い、ハッピーな景色や風景を思い浮かべるだけで、入眠には効果があるということです。

041 五感フル活用で夢心地

HACK 040の続きですが、「幸せな場所」をイメージするときは、五感を使って、できるだけ鮮やかに、具体的に思い浮かべるのがおすすめです。 どんなものが見えて、何が聞こえますか? 味わいや触った感覚、そして、匂いはどうでしょうか? のどかな浜辺の風景を心の目で見るだけではなく、空高く飛ぶカモメのかすかな鳴き声、穏やかな波の音に耳をすませます。 顔にあたる熱気や、つま先に入る柔らかい砂を感じ、磯の香りを吸い込んで、喉を潤す冷たいカクテルの味も想像してみてください。 五感すべてを使うことで、余計な思考から離れることができ、「幸せな場所」に浸りきることができます。

042 ペンと紙があれば脳も安心

にはっと目が覚めて、支払っていない請求書、未提出の課題や宿題、まだプレゼントを買っていない誰かの誕生日を、ふと思い出したことはないでしょうか? 眠ろうとベッドに入ったとたんに、こういうことが突然浮かんでくることはよくあります。 貧困問題や地球温暖化をどうするか……などの、全人類が直面している世界規模の重要課題に比べれば、取るに足らない小さなことですね! でも、なかなか抜けないトゲが気になって仕方がないように、日常生活のささいなことが気になって目が冴えてしまうのは、「朝になったら忘れてしまうのではないか……(いや、忘れてはいけない!)」と、脳が心配するからです。 では、どうしたらいいでしょうか? 解決策としておすすめなのは、ベッドのそばにペンと紙を置いておくことです。もしも何か気になることを思い出したら、すかさずメモしておくのです。こうして脳に「夜の間は忘れていいんだよ。大丈夫」という許可を与えておけば、安心して眠ることができます。

043 シンプルな頭の体操

眠る前に、頭の体操で、脳に刺激を与えてみましょう。 南イリノイ大学の研究で、不眠症の人に就寝時に適度に難しい暗算の問題を与えたところ、早く入眠できることがわかりました。 たとえば、 100から(さらには 1000から) 5ずつ、逆算してください。 わりと簡単にできたら、もう少し難しくしてみましょう。たとえば、 4、 7、 12、 18ずつ逆算します。 このような頭の体操に集中すると、心配事から気をそらすのに役立ちます。また、一定の数ずつ数えるというリズミカルなパターンが、眠りを誘うのです。 算数が苦手なら、ちょっとやり方を変えてみてもいいですよ。 ひらがなの「あ」で始まる都市名や地名、「う」で始まる動物の名前などを、ひたすら考えてみてください。 注意点がひとつだけ。この研究では、睡眠に問題のない人がこのような頭の体操をすると、かえって入眠に時間がかかるという結果が出ています。この方法は、眠れない夜にだけ、試してくださいね。

044 大人も聞きたい子守唄

子どもの頃に、子守唄を聞きながら、すやすやと眠りについた記憶はありませんか? 子守唄には、眠りとポジティブな関連性があります。子守唄を歌うことで、今のあなたに子どもの頃と同じリラックスした「安全な」心の状態をつくり出すことができるのです。 歌うという行為に集中することで、心のなかの雑念を取り除くこともできます。 さらに、歌うときの口の動きが、あごをゆるめるのにも役立ちます。ストレスがかかってあごが緊張している人には朗報です! なにせ、あごの緊張は、リラックスした心地良い眠りの大敵なのですから。 ところで、子守唄にちょうどいいテンポは、どれくらいだと思いますか? 毎分およそ 60 ~ 80拍の、安静時の心拍のくり返しがおすすめです。米国のケースウエスタンリザーブ大学の研究によると、このテンポで心地良い音楽を聞いた人は、寝つきが良くなり、睡眠時間が長くなったそうです。 メトロノームで 60 ~ 80拍の速さを確認しておくと、だいたいの目安がわかります。

045 マントラをひたすらたんたんと

日中にしたこと、しなかったこと。 今日言うべきだったこと、言うべきではなかったこと。 ……ベッドに横になってから、こんなことが思い浮かんで、自分を責め続けたことはありませんか? 自分を責めてしまって眠れないときは、心のなかでマントラを唱えてみてください。 学術誌『 Brain and Behavior』に掲載された研究によると、ひとつの言葉を何度もくり返し言い聞かせることで、脳のすべての領域、特に自己批判や反省の原因となる「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる部分の活動を減らし、心を落ち着かせることができます。「良い」「幸せ」「素晴らしい」など、肯定的な意味合いを持つ単語をひとつ選びましょう。その言葉を、心のなかで何度もくり返し、唱えていることに意識を集中します。 心がさまよいかけて自分を責める気持ちが湧いてきたら、ふたたびマントラのほうに意識を引き戻すようにしましょう。心配な思いが、ほどなく和らいでくるはずです。

046 小指をタッピング

ストレスや不安といったネガティブな感情を解放するのに役立つと考えられているのが、タッピングを用いた「 EFT(感情解放テクニック)」という療法です。「心理的鍼治療」と呼ばれることもあります。身体のあちこちにあるエネルギー経路をすばやくたたく(タッピングする)ことで、脳内の神経経路の配線を変え、状況を前向きに捉えるのに役立てるというものです。 韓国の大学の研究から、この療法が高齢者の不眠症に効果があるというデータが得られました。 テクニックは、セラピストやワークショップなどを通じて学ぶことができますが、ここではストレスを感じているときにベッドで使える簡単なやり方を紹介します。 2本か 3本の指で、「空手チョップポイント」(手の小指のつけ根の肉づきの良い部分)をタッピングするのです。 タッピングしながら、抱えている不安に意識を集中してください。心配事に対する見方が変わり、落ち着いて眠れるようになる効果が期待できます。

047 心配事はすべて「流れる雲」

不安な考えを、「空を流れてゆく雲」だとイメージするのも効果的です。思考を自分から切り離して、客観的な視点から見るのです。 温かい野原に寝転がっている自分を想像してみましょう。 草の上に広げたピクニックシートに寝そべっているあなたは、心地良くて、眠くなっています。温かいそよ風がふわりと吹いてきて、花の香りが漂い、遠くでミツバチの羽音がします。晴れた美しい日で、青い空にはぽつりぽつりと雲が浮かんでいます。 もしも、気持ち良さを邪魔する考えが浮かんできたら、「心配」「悲しみ」「不安」「怖れ」などの名前をつけて、ふわふわの白い雲のなかに入れてしまうのです。ネガティブな考えにしがみつかないように。ありのままにその存在を認め、漂いながら消えていくのを見送りましょう。 このイメージトレーニングを行うと、役に立たない考えにどう反応するかは、自分で選べるのだと気づけるようになります。すべてはあなた次第──「心配」「悲しみ」「不安」「怖れ」に関わることも、そして手放すこともできるのです。

048 認知シャッフル睡眠法

「認知シャッフル睡眠法」は、連続してさまざまなイメージを想像することで眠りを促す方法です。認知科学者のリュック・ボードワン博士によって考案されました。 これは、就寝時に脳内で起こって眠りを妨げる分析的思考や問題解決から心をそらすテクニックです。具体的には、互いに関連しない、つながりのないイメージを、次々に思い浮かべていきます。 睡眠の研究から、私たちが眠りにつくときには、多様なイメージを次々に思い浮かべて「マイクロドリーム」を見ていること、それらのイメージが眠りを誘う可能性があることがわかりました。このテクニックは、脳を、睡眠前のイメージを見るぼんやりとした状態に持っていくことを目的としています。やり方は次の通りです。認知シャッフル睡眠法 ❶最初に、 5文字以上の言葉をひとつ考える。できれば、くり返しの文字がないものを(例:「れいぞうこ」「とうもろこし」「すいぞくかん」など)。 ❷次に、言葉の最初の文字を使って、できるだけ多くのイメージを思い浮かべる。 もし「れいぞうこ」を最初に考えたとしたら、「れすりんぐ」──屈強な選手が激しくタックルし合う姿を想像する。次は「れんげそう」──色とりどりの花が咲き、風に揺れる様子を想像する。そして「れいとうこ」──開けたとたんにひんやりした空気が漂い出すのを想像する。 ❸「これ以上思いつかない!」と感じるまで、言葉とイメージの想像を続けたら、次の言葉へと進む。

049 ベッドから出て一度リセット

不眠を防ぐ方法のひとつが、「ベッド(眠る場所)」と「睡眠」の間に強い関連性を持たせることです。「寝返りを打つばかりで眠れない」「目が覚めても、寝直すことができない」という場合、多くの専門家は、 15 ~ 20分後にいったんベッドから出ることを推奨しています。矛盾しているように聞こえますが、起き上がることで、「ベッド」と「目が覚めてイライラすること」の関連づけを断ち切るという理屈なのです。 ただし、ここで注意が必要です。 15 ~ 20分の間、ベッドのなかで目が冴えていてもリラックスして落ち着いているときは、そのままの状態でいてください。これは、全く問題ありません。 一方で、そわそわしたり、不快感や不安を感じたときは、寝床から出ましょう。別室に行ってもいいですし、寝室の椅子などに座って、心が休まる音楽を聞いたり、暗めの照明をつけて本を読んだり(スリルを感じない内容)、ありきたりのことをしてください。ふたたび眠くなり始めたら、ゆっくり立ち上がってベッドに戻ります。 この一連の動きが、ベッドがそわそわする場所ではなく、眠る場所であるという意識を強化するのに役立ちます。 ベッドから出るほどではないなと感じる場合は、ベッドの上で身体を起こしたり、ベッドに腰かけて読書をしたり音楽を聞いても OKです。眠くなってきたら、また横になりましょう。そうすれば、「ベッドに横になること」と「眠気」との関連を強化することができます。

050 感情ラベリングの術

布団のなかで心配事が頭に浮かんで、そのことに完全に支配されてしまったように感じると、扁桃体(「闘うか逃げるか反応*」に関与する脳の器官)が過剰に働いてしまうことがあります。 でも、自分の感情に「ラベル」( =「アイデンティティ」)を与えることで、その感情的な反応を効果的に食い止めることができます。 たとえば「私は怒っている」「私はストレスを感じている」「私は不安を感じている」「私は圧倒されている」というように感情を言語化するのです。 学術誌『 Psychological Science』に掲載されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究から、ラベルづけによって扁桃体での活動が少なくなり、過剰反応を止める脳の右腹外側前頭前野の活動が多くなることがわかりました。 また、同大学による別の研究では、クモが怖い参加者のうち、不安な感情にラベルをつけるように指示された人は、心臓の鼓動が激しくなるなどの恐怖に反応する生理学的兆候が、最も少なくなりました。 不安な感情が頭に浮かんだら、名前をつけてみてください。感情の激しさが和らぎ、心が鎮まって、寝つきが良くなるかもしれません。*闘うか逃げるか反応:恐怖や危機的な状況において、危険を回避するために扁桃体が瞬時に引き起こすストレス反応。

051 眠れない夜だってある

「よく眠れなくて不健康になったらどうしよう」「仕事に悪影響があったらどうしよう」 不安や怖れを感じると、不眠が悪化することがあります。 典型的なシナリオはこうです。 あなたは眠れないままベッドに横になっています。「明日は忙しい日なのに、全部の仕事をまわせないかもしれない」とパニックに陥ります。「うまくいかなかったら、同僚や上司の前で恥をかくかもしれない」「リストラの噂があったので、解雇されるかもしれない」「仕事を失ったら、家やアパートも失ってしまうのでは……」 心配と不安のサイクルが悪化して、ますます眠れなくなるのです。 入眠できず目が冴えているときに感じる不安を軽減するのに、非常に効果があるのが、不眠症の認知行動療法( CBT-I)です。この治療では、睡眠についてネガティブで誇張された誤った考えを持っていることを認識し、それらが頭に浮かんできたら、もっと現実的な考えに置き換えて「サイクルを断ち切る」ことを行います。 たとえば、「 10分以内に眠らなければ、明日は絶対に乗り切れない」という考えで頭がいっぱいになったら、事実関係を捉え直します──それは真実ではなく誇張だと認識するのです。 次に、今の考えをもっと現実的な考えに置き換えます。「前にも眠れない夜を過ごしたことがあるけれど、翌日はいつも何とかやり遂げられた。眠りについて心配するのをやめて、横になってリラックスしていることを楽しもう。ただ休んでいるだけで大丈夫」というふうに。 この思考法を定期的に行うと、夜にむくむくと湧き起こってくる、眠りを妨げるネガティブで誇張された思考のパターンを変えていくことができます。眠れない夜に関する悩みには、 HACK 052も役に立ちます。

不眠についての認識が正しいのか、それともネガティブな面をさらに強調して最悪のシナリオを組み立てているだけなのか──? それを判断するのに役立つのが、「思考の記録」をつけることです。記録から証拠を探して、自分の意見が正しいのか間違いなのかを裁くのです。「思考の記録」はノートに書いてもいいですし、インターネットからテンプレートをダウンロードすることもできます(「認知行動療法 思考記録表」と検索すると出てきます)。 睡眠について、強い思いや不安な考えが浮かぶたびに、用紙に書き込んでください。日中に行っても、夜にベッドに入ってから行ってもかまいません。 次は、一般的な記入例です。それぞれの項目に、眠りについての回答例を加えてあります。

052 「思考の記録」を活用しよう

「思考の記録」をしばらく続けると、就寝時に頭に浮かんできたり、想像したりしがちな「最悪の事態」が、役に立たない考えであることを認識しやすくなります。そうすると、睡眠を邪魔する考えのすべてを信じる必要はないことに、気づけるようになるのです。 興味深いことに、寝る前に書いた「睡眠についての考え」を日中に読むと、多くの人が、その壊滅的なシナリオにがく然とします。日中の「合理的な」心で読むと、それがいかに不合理で、誇張された思考なのかということが、実によくわかるのです。 ぜひ、定期的に「思考の記録」を試してみてください。 そうすれば、眠りを妨げる絶望的な考えを抑え込むことができ、真っ暗な部屋でも冷静かつ合理的に、考えられるようになります。

053 アファメーションのすすめ

私たちの心は、常に、人から言われた言葉に影響されています。誰かに「疲れた顔をしているね」と言われると、その瞬間まで頭が冴えわたっていたのに、急に疲れを感じ始めることがあるのです。 同様に、言葉を使って眠りに肯定的な意識を持つように働きかけることもできます。「私はすんなり眠ることができる……簡単にぐっすり眠れる!」 このような肯定的な宣言──アファメーション──を唱えると、睡眠についての自虐的な思考を変えられます。 眠りについて、楽観的で前向きな言葉を自分に言い聞かせることで、「眠りは自然に起こるもので、睡眠がじゅうぶんでなくても心配する必要はない」と思い込ませるのです。 私たちの脳は、常に新しい神経接続を形成しています。睡眠についての肯定的なアファメーションを定期的にくり返すことで、脳に新しい経路をつくり、睡眠に対する意識を再構築することができるのです。脳が変化し適応する能力は、「神経可塑性」と呼ばれています。 アファメーションには、きまりがあります。 ●「現在形」を使うこと。 ●「できない」や「しない」といった否定的な単語を使わないこと。 このふたつのことを、忘れないでくださいね。 たとえば、夜に入浴するときに、次のような宣言を自分にしてみましょう。鏡に映った自分を見ながら言ってもいいですし、声に出すのがイヤなら心のなかでつぶやいても大丈夫ですよ。「私は簡単に、すやすやと、眠りにつける」「私は寝室が好き。落ち着いてリラックスできる素敵な場所だから」「私はすぐに寝入ってしまう。そして一晩中ぐっすりと眠り続ける」 このようなアファメーションを、毎晩、そして日中に数回くり返して、自分が眠りの達人であると心に言い聞かせてください。

054 脳を「作業モード」から「存在モード」へ

マインドフルネス瞑想は、眠るための素晴らしいツールにもなります。この瞑想を行うと、脳が「作業モード」(心配、悩み、分析、問題解決など、眠りを妨げるすべての行為)から「存在モード」にシフトして、「今、ここ」に存在することに意識を向けることができるのです。 まずは、自分の呼吸に集中しましょう。 この瞑想の目的は、心配事をストップさせることではありません。浮かんでくる考えを観察し、ありのままを認め、あたふたとリアクションしたりくよくよしたりせずに、受け流していくことです。 シカゴのラッシュ大学医療センターで行われたランダム化比較試験では、 8週間マインドフルネス瞑想を実践した慢性不眠症の成人の眠りが改善したという結果が得られました。 次のように試してみましょう。マインドフルネス瞑想の方法 ❶就寝時に考えや心配事が頭に浮かんでいるときは、その存在を認めて、それに執着したり、「考えるのなんてばかげている」「いらついている自分がイヤだ」などと批判をしない。代わりに、自分の呼吸に集中して、「今、ここ」に注意を向ける。たとえば、「落ち着きを吸い込んで、ストレスを吐き出す」というような言葉は、集中力を高めるのに役立つ。 ❷ゆっくりと息を吸い込み、身体と心に安らぎがあふれるイメージを持つ。次に、息を吐きながら、内にあったストレスが吐き出す息とともに遠くに去っていくのを想像する。 ❸①②のように呼吸をする。もし、心のなかに何か考えが浮かんできたら、その存在を認めて、「今ではなく、もっと適切な時間に対処します」と自分に言い聞かせる。それから呼吸に意識を戻す。 マインドフルネス瞑想は、アプリで学ぶこともできます。 また、住んでいる地域の教室や、オンライン受講できる教室を探してみるのもいいですね。

055 おでこ、なでなで

心配や不安を抱えているときや、問題を解決しようとするときに、知らず知らずに「キネシオロジーの感情的ストレスリリース( ESR)」のテクニックを使っていることがあります。この「 ESRのテクニック」とは、いったい何か? 要はただ、おでこに触れるだけのことなのです。誰でもやったことがありますね! やり方は簡単。眉毛と髪の生え際のほぼ中間にある額のふたつの反射ポイント(少しふくらんでいるところ)に触れるだけ。古典的な「考える人」のポーズも額に触れていますが、心を落ち着かせる効果もあるのですね。では実際に試してみましょう。 ESRのテクニック ❶両手の指先で反射ポイントに触れ、手のひらは閉じた目と頬に軽くあてる。触れることで脳の前頭葉エリアの血行が良くなると考えられている。前頭葉は推論と問題解決を司り、瞑想中に活性化される部位。 ❷反射ポイントに触れながら、ストレスの原因となっている問題についてできる限り詳細に考える。できれば五感のすべて使う。 ❸最後に深呼吸をする。 しばらくすると、動揺が減ったように感じるはずです。解決策を思いつくかもしれません。たとえ問題が解決しなくても、心配や不安への認識が変われば、ストレスも軽くなります。

056 おでこ、ひんや ~り

眠りにつくためには、脳が落ち着いている状態が理想です。 脳の画像検査から、不眠症の人の前頭前皮質は、忙しく活動していることがわかっています。脳のこの領域は、考え事や心配事が抑えられない状態と関わりがあります。 頭が働き続けていたら、ぐっすり眠るのは難しいですね。 ピッツバーグ大学の研究者が、脳の前頭前皮質を冷やすと、代謝活動を減らせるという画期的な発見をしました。 不眠症患者に冷却効果のある帽子を与えたところ、睡眠に問題のない人よりも早く眠ることができたのです。また、ベッドに横になっている時間の 89パーセントを睡眠に費やすことができました。これは普通に眠る人と同じ割合です。 眠れないときには、布にくるんだ冷却材をおでこにあててみましょう。眠りの邪魔をする考えが氷漬けになれば、ぐっすり眠れるかもしれません。

057 自然の音は眠りの味方

に揺れる木々や雨音など、身近な自然音に耳を傾けると、脳内の接続が切り替わります。過度な心身の緊張がほぐれ、リラックスモードになるのです。 ブライトン・アンド・サセックス・メディカルスクールの研究者は、有志のグループに、自然環境の音または人工環境の音を再生して聞かせ、脳と神経系の活動を測定しました。 すると、ストレスを抱えた状態で自然音を聞いた人は、身体がリラックスし、脳の内向きの思考が収まることがわかりました。内向きの思考は、ストレスや不安、うつ病と相関関係にあります。 意識をそらせて眠りに誘う自然音をダウンロードできるアプリやサイトは、たくさんあります(試しに、「自然音のリラックスアプリ」などのキーワードで検索してみてください)。「夜のカエルの鳴き声」から、「荒れ狂う雷雨」「心が鎮まる熱帯雨林」まで、お好みでいろいろ選んでみるのも楽しいものです。 あらゆる音に触れてみて、その癒しの効果を実感してみましょう。

058 睡眠トラッカーに執着しとらんか?

ウェアラブル端末による睡眠トラッカー(睡眠管理)を習慣にしている人もいますね。ところが、 2017年に発表された研究は、ウェアラブル端末が睡眠を妨げる可能性があると警告しています。 睡眠トラッカーによる新たな睡眠障害を発見した研究者たちは、「正しい・完璧な」睡眠に執着しすぎる症状を「オルソソムニア」と名づけました。普段よく眠れる人でさえ、睡眠をトラッキングして「完璧な 8時間」を達成することに夢中になるあまり、不安が強まって──おわかりですね──眠れなくなるのです。 こんなことに気をつけましょう。 あなたが、すでに眠れないことを心配していて、睡眠トラッカーの使用がさらに不安を増大させているように感じるなら、使用はやめましょう。 また、夜中に目が覚めて睡眠トラッカーをしつこくチェックしたり、測定値を心配してストレスで眠れなくなったりするなら……やはり、使うのをやめましょう。 ウェアラブル端末によっては、科学的に実証されている“範囲外”の数字を出すこともあるため、測定値が必ずしもあなたの眠りを正確にあらわしているとは限りません。 睡眠トラッカーに眠りが「悪い」と判定されても、すっきりして元気な実感があるなら、数字ではなく自分の身体の声に耳を傾けるのが正解です。 良い点を挙げると、睡眠トラッカーは、睡眠量が実際よりもはるかに少ないと思い込んでいる不眠症の人には便利に使えるかもしれません。そういう人は大勢いるようで、学術誌『 Behaviour Research and Therapy』に掲載された研究レビューには、不眠症を訴えた人の約 3分の 1は、アクチグラフ*で測定すると、特に睡眠不足ではなかったと示されています。不眠症だと思い込んでいると、目を覚ましたときに疲労や不安や落ち込みを感じてしまいます──まるで本当に不眠に苦しんでいるかのように。 別の研究によると、アクチグラフのデータを見て、思ったよりもよく眠れているとわかった人は、不安が減り、翌日はぐっすり眠れたそうです。 不安が少なければ、よく眠れるのです。睡眠トラッカーを、睡眠を奪うのではなく促進するツールとして使えればいいですね。*アクチグラフ:腕時計型の小さな加速度センサー。利き手とは反対の手首や足首につけるだけで、正確な睡眠・覚醒時刻を記録できる。

059 眠れない自分も肯定する

「指ハブ」という工芸品のおもちゃがありますね。 植物の皮で編んだ筒の口から指を入れて、引っ張ると筒がしまります。抜こうとして強引に引っ張れば引っ張るほど、きつくしまって、指が抜けなくなってしまうのです。 とっさに引っ張ってしまいそうになりますが、反対のことをするとどうなるでしょう? 抵抗するのをやめて、指をリラックスさせ、引っ張る代わりにそっと押す──すると、簡単に罠から抜けることができるのです。 不眠症も指ハブと同じです。 抵抗してもがくと、目覚めている不快感に加えて、怒りや欲求不満やパニックなどの不快な感覚を味わうはめになり、さらに夢の国が遠のいてしまいます。 眠れないことをありのまま受け入れて、じたばたするのはやめましょう。 そうすれば、逆説的ですが、あなたが不眠に勝つ可能性が高くなり、結果的によく眠れるようになります。 近年、患者の睡眠の問題を克服する方法として「不眠症を受け入れること」を奨励する睡眠療法士が、続々と増えています。眠れないことをリラックスして受け入れ、それに抵抗せず、否定的な反応(パニック、心配、怒り、欲求不満)を肯定的な反応に置き換えるのです。 眠れないときは、次のことを思い出しましょう。眠れないときに思い出すといい 5つのこと ❶今は目が覚めていたとしても、自分を含めどんな人も眠ることができる。 ❷誰でもいつか必ず眠くなる。自分も必ずそうなるので、自信を持つ。 ❸「眠れない」ことを怖がらないで、「どんな人でも眠れる」と自分に言い聞かせる。時間はかかるかもしれないけれど、最終的には必ず眠ることができる。 ❹たとえ眠れなくても、ベッドで休んでいるだけで、身体が回復して翌日にうまく対処できる。 ❺数時間眠れないだけで大きな害はないと、自分を安心させる。 眠れないことを受け入れると、不眠に伴う不快感の多くが、不眠に抵抗するときの不満と怒りによって引き起こされていることに気がつくでしょう。 言い換えれば、最大の問題は目が覚めていることではありません。目が覚めていることに対する感情的な反応が、不眠を悪化させるのです。 眠らないことに対する否定的な感情が収まるにつれて、ストレス反応のスイッチが切れて、気がつけばいつのまにかすやすや眠っているかもしれません。

060 1日たりとも、同じ夜はないのです

「ビギナーズマインド」つまり「初心」は、禅仏教に由来する考え方で、先入観や障害物に惑わされることなく、新鮮な気持ちで物事を見たり体験したりすることです。経験だけに頼らず、初めて見聞きしたことをイチから学ぼうという「ビギナーズマインド」の心構えは、「エキスパートマインド(名人の心)」と対極にあります。くり返し経験して疑問を持たなくなると、名人の心で物事に接するようになります。何も考えずに、それが正しい唯一の方法だと信じ込んでしまうのです。 一部の心理学者は、多くの不眠症患者が、眠り方に関して「名人の心」になりきってしまっていると指摘します。「自分は眠れない体質なので、睡眠薬やアルコールに頼るしかない」「他の新しい解決策を試すのは無意味だ」と信じ込んでしまうのです。「今、ここ」で感じていることをありのまま受け入れる「マインドフルネス」に基づく不眠症の治療に、実は「初心」の概念が取り入れられているのです。不眠の人が抱いている眠りのイメージの大前提を取り払い、まっさらな視点で睡眠を見つめさせることで、快眠を促すのです。「初心」に基づく不眠症の治療法 ❶「初心」つまり「偏見のない心」でベッドに入る 毎晩、夜が来るたびに、唯一無二の全く“新しい夜”と見なすこと。他の夜と比べてどのように展開するだろうかという思いは捨てる。そして、「これは新しい夜だ。昨夜何が起こったのかは関係ないし、明日何をする必要があるのかを心配するのも無意味だ。私は今夜のこれからの展開に、怖れではなく新鮮な気持ちで接する」と、自分に言い聞かせる。 ❷睡眠についての先入観を捨てる まっさらな気持ちで始めること。「私の身体はよく眠れない」「明日はひどい気分になるに違いない」「健康によくない」と考えるのは NG。誰でも眠ることができるという事実を認識し、自分にもその能力があることを認める。「私が偏見を捨てれば、私の身体と心はよく眠ることができる。私は自然にそうできると信じている。心配したり不安に思ったりしても意味がない。私の身体と心は、私を助けたがっている。 7時間でも 8時間でもかまわない。休息は私にとって重要だからこのリラクセーションを楽しもう」と、自分に言い聞かせる。 ❸自分の心を「今、ここ」に開く 眠れなかった過去の心配も、明日疲れることへの未来の心配もなし。心地良くベッドに横になり、自分が感じることに意識を向ける。心拍と呼吸、鼻を満たす空気、頭からつま先までの身体全体の感覚に。「初心」は、他の方法でも育むことができます。たとえば、「レーズン」をまるで初めて見るかのように、触れて、匂いをかいで、味わってみるといったエクササイズでは、簡単にマインドフルネスの境地を味わえます。散歩しながら、ときどき高いところを見上げてみるのもいいでしょう(今まで気づかなかった素敵な風景が広がっているかもしれません!)。新しい趣味を始めたり、新しいスキルを習得したりするのもおすすめです。「初心」という新しい物の見方を取り入れることは、自分の眠りを新しい視点で見ることにつながります。

061 アロマのオイ活、始めよう

芳香植物から抽出されたエッセンシャルオイルを吸入するアロマセラピーは、脳と身体への治療効果があると信じられており、複数の研究から、心を落ち着かせ、ストレスを和らげ、寝つきを良くするのに役立つことがわかっています。 アロマセラピーのオイルは、さまざまな方法で使うことができます。バスタブに入れたり、寝室のポプリに数滴たらしたり、ディフューザーで温めたり、水と混ぜて枕にスプレーしたり、キャリアオイルに加えて肌のマッサージに使うこともできます。 催眠と鎮静効果があると考えられているオイルは、ラベンダー、ジャスミン、ゼラニウム、シダーウッド、イランイランなどです。 妊娠中の使用に適さないオイルもありますので、必ず禁忌事項を確認してください。

062 自分を「三人称」に言い換えて話す

心配事があって寝つけないときは、自分のことを話してみましょう。声に出しても、心のなかでつぶやいてもかまいません。ただし「三人称」を使ってください。 ミシガン州立大学とミシガン大学が行った研究で、ひとつのグループに動揺するような写真を見せ、別のグループには苦痛な経験を思い出してもらいました。 被験者の脳の活動を、この不快な体験の後に測定したところ、どちらのグループも、自分のことを一人称ではなく名前を用いて三人称で話した場合は、感情的な脳の活動が急速に減少しました。 研究者はこの結果について、自分自身を「彼」または「彼女」と呼ぶことで、自分のことを他者のように捉えることができ、心配や苦痛から少し心理的な距離をとることができたのだと考えています。三人称を使うことで、自分の感情を調整し、物事を比較的はっきりと落ち着いて見ることができるのです。 たとえば、自分の名前が「マイ」なら、こんなふうに。「マイは明日のプレゼンで失敗するのではないかと心配しています」「マイはこれから何時間も眠れないとわかっているので、本当にうんざりしています」 このように話すと、自分の感情を分析しやすくなり、偏った見方をしなくなります。自分の心配事を別の視点から、客観的に見ることができるのです。すると心が落ち着きますし、過剰に反応したり、抵抗したり、心配したりしている自分に気づくきっかけにもなります。

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